「ここに間違いないのか?」
「ああ、確実にサーヴァントが居る」
セイバーのマスターは静かに鳥居を見上げた。生粋の魔術師の家系であり、家督を継いだ身である彼が、此度の聖杯戦争の知識を得てマスターとして覚醒したとき、根源に至るために聖杯を獲るという選択を選んだのは、至極当然の流れであった。
幸いにも、彼が召喚したのは最優のクラスとして名高いセイバーであり、正統な魔術師であるマスターに召喚されたためか、ステータスも件並み高かった。
さて、彼らが聖杯戦争に本格的に身を乗り出してすでに三日が経つが、冒頭で解る通り、ふたりは都内の神社に来ていた。
顛末は実に単純で、街中を霊体化し、他の主従を探索していたセイバーが、この場所にサーヴァントの気配を確信したからだ。
通常なら魔術師のマスターは、自信の工房へと籠っていることが聖杯戦争における定石である。だが、彼は若く、そして野心家であった。
自ら戦場に立ち、初陣の勝利を勝ち取りたかったのだ。
さすがにセイバーは渋ったが、触媒なしの召喚だったためか、彼もまたマスターと似通った性格だったため、熱意に押され、
戦闘においては自身の指示に従うことを条件に、これを了承した。
無論、準備は怠っていない。
全身を幾重にも練り上げた魔術礼装で不足し、今の彼ならサーヴァントの攻撃でも多少は防げるだけの準備は施している。
「では行こうかセイバー」
「ええ、生きましょうマスター」
そうして意気揚々と神社に踏み込んだ。
彼らは若く、野心家で、そして馬鹿であった。
ポーチの丸いテーブルに着物の年老いたサーヴァントが腰掛け、若い少女(恐らく老人のマスターであろう)が付き添っていた。
サーヴァントとは、基本その英霊の全盛期の姿で召喚されると聞いていたが、あのサーヴァントはかなりの高齢だ。
皺深い顔に灰色の髪と長い髭。平均からするとその身長はかなり小柄であり、青年が読み取ったステータスによるとバーサーカーのクラスであった。だが、何らかのスキルを持っているのか、ステータスが読み取れない
一方の少女の方は、恐らく10代後半と言ったところか、アイヌの巫女服を着用している。彼女は青年とセイバーに気がついたのか、硬直していた。
しかしバーサーカーの方はというと、セイバー達を一別すらせず、美味しそうに何かを咀嚼していた。
バーサーカーはプリンを食べていた。
「ううーむ。うまいのう。やっぱりグリコのプッチンプリンは最高じゃな」
満足そうに頷くバーサーカーの額には、文字が描かれていた。
マジックインクで書かれたその三文字は『大』と『災』と『厄』であった。
ーなんだあのバーサーカーは?ー
ーとりあえず、話しかけてみるかー
念話でやり取りした二人は、取り敢えず会話をしようとポーチに近づいていった。
距離が三十メートルほどになったところで、漸く硬直していたマスターの少女が動いた。
「だ、誰ですか貴方たちは……」
震えながらたずねる。
巫女服からして東洋の魔術師かとも疑ったが、どうやらそれは杞憂のようだった。
「貴女はそこのバーサーカーのマスターだな? 安心してくれ。女子供に手をあげる気はない
我らは聖杯を勝ち取るため、そこのバーサーカーと騎士道に乗っ取った決闘がしたいのだ」
女子供に手をあげる気はない。で安堵し、決闘がしたいの部分で瞬時に真っ青になる
気の毒なほどの百面相に、魔術師は彼女が巻き込まれただけの一般人なのでは?という疑問に確信を抱いた。
少女を苛めて楽しむほど人間性は歪んでいない。あくまでもサーヴァント同士の決闘がしたいというと伝えようと口を開きかけた。
その時、それまで静観を貫いていたバーサーカーが、喋った。
「まちちゃん、そんなゴミは置いといてプッチンプリンを食べさせてくれんかのう」
「え、は、はい」
まちと呼ばれた少女は、慌てて匙を手に取った。今度はセイバーとそのマスターが固まった。
理性がない筈のバーサーカーが会話をしたことにも十分に驚くべきことだが、何よりもあの老人は、あろうことか、自分達をゴミ呼ばわりしたのだ。
魔術師のプライドは痛く傷つき、そして、彼は非常に怒った。
それは相方も同じで、兜で端からは見えないが、セイバーの額には青筋が浮かび上がっていた。
彼は、少なくともゴミ扱いされたことに怒れるほどに、英霊としての自身に誇りを持っていた。
ーそうか、そっちがそういうつもりならば、仕方ないー
魔術師は指先を相手に突きつけるーーガンドという、指先から弾丸のごとく魔力を放出するーー比較的ポピュラーな魔術を行使する。
高い魔力により、物理攻撃力を持ったその一撃は、バーサーカーのプッチンプリンを跡形もなく吹き飛ばした。
ひゃい!?と悲鳴をあげ、少女は弾みで倒れた。バーサーカーは信じられないといった顔で、地面にぶちまけられたプリンの残骸を見ていた。
セイバーが剣を抜いたとき、そこにバーサーカーの姿はなかった。魔術師が横を見ると、セイバーの鎧がぶち壊れていた。
ーーそんな馬鹿な!?ーー
魔術師は驚愕した。
セイバーの鎧は、【Aランク以下のあらゆる攻撃を無効化する】という強力な性能を誇る、宝具だった。
魔術師がこうして自信満々に戦場に駆り出せた要因も、その宝具の強固さに信頼をおいていたからに他ならない。
その、無敵の防御を誇るはずの鎧に、バーサーカーが片腕を突っ込んでいたのだ。
分厚い甲冑は紙のように破れ変形し、内の肌が露出していた。
「ふうむ。ゴミかと思うたが、こりゃ若造じゃないか」
完全に破壊された鎧から、無理矢理セイバーが引きずり出された。
魔術師も始めてみた彼の姿は、欧州の伝記を原点とするセイバーは、端正な顔立ちをした白人青年であった。
その顔は驚愕と苦痛に歪んでいた。
「ぎゃあああっ、が、ががが」
セイバーの断末魔が神社に響く。
メリメリ、ミチチと、バーサーカーの片手がどんどんと頭にめり込んでいき、頭蓋骨をあっさり突き破り脳が抉れた。
バーサーカーは念入りに脳の大部分掻き出すと、無造作に死体を放り捨てた。
ゴミのように打ち捨てられた体は、光の粒子となってーー消滅した
セイバーが死んだ。魔術師はパニックになっていた。こんな馬鹿な。こんな序盤で、こんなことが起こるはずがない。何かの間違いだ。
セイバーの宝具が無効化された?何らかのスキルかそれとも宝具か!?いやそんなのはもう関係ない、どうする。どうしよう。一旦離脱しなければ、工房に、体制を建て直さなければ
「おい」
高速で思考する魔術師の利き手を、バーサーカーが無造作に掴んだ。
「若造…さっきの手品、もう一度撃ってみんか」
バーサーカーは皺深い顔に微笑を浮かべていた。だがその口角がどんどん左右に広がり、目も吊り上がっていく。
「ほれ、早う撃て。早う撃たんと間に合わんぞ」
バーサーカーが指先を自分の額の中心、丁度『災』と書かれた場所に押し当てた。ぐい、とバーサーカーが前に出る。
「が、や、やめ、ぎゃ」
指先がしなる。ぐいぐい、と更に近寄ってくる。メキメキと鈍い音がした。指が折れた。
バーサーカーの顔は初めて見る類のものに変わっていた。魔術師はそれが東洋の魔物である『鬼』に似ていると思った。だがそれどころではなかった。
メシッ、と、魔術師の体を守護していた幾重もの魔術礼装が悲鳴をあげた
魔術師の視界のすぐ目の前に『大災厄』が迫っていた。怒り狂った老人の顔。
バーサーカーの肌は意外に艶やかで、全て揃った歯は鋭く尖っていた。熱い息が魔術師の皮膚をチリチリと焼いた。
魔術師はその短い生涯でもっとも情けない悲鳴をあげた。
礼装が塵のように破られたことで、ここにきてようやくセイバーの敗北と、自身の状況を理解した彼に、素晴らしい恐怖が襲ってきた。
不躾な客達は始末された。
血と脳症にまみれたバーサーカーは、柔和な好々爺に戻っていた。ふと額の文字が掠れてしまったことに気がついたのか、まちの方へ振り替える。
「おおーい、まちちゃん。ちょっくら額の文字を書き足して……」
バーサーカーは途中で黙った。まちは精神の限界を越えたのか、泡を吹いて気絶していた。
「しょうがないのぉ」
バーサーカーはしぶしぶマジックペンを手に取ると、自分で書いた
【クラス】
バーサーカー
【真名】
唯一絶対超絶究極大殺戮神@唯一絶対超絶究極大殺戮神
【パラメーター】
筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力D 幸運C 宝具EX
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
狂化:EX
常人では理解できぬ思考により行動する、圧倒的という言葉すら生ぬるい究極の暴力。それがこのバーサーカーである
かつてバーサーカーのご機嫌を損ねて二つの大陸が沈み、数知れぬ民族が絶滅した
【保有スキル】
神性:A+++
バーサーカーは神である。だが、彼はけっして自身を崇めるものを守護しないし、何らかの加護ももたらさない
何故ならバーサーカーは、助ける神ではなく、守る神でもない。殺す神なのだ
神性秘匿:A
バーサーカーは、平時からその本質を他者に悟らせることはなかった。
機嫌が良いときのバーサーカーは、一見して変わり者の老人にしか見えない。
その逸話にならい、他マスターからのステータス視認も隠蔽される。
バーサーカーの本質を知ることができるのは、その怒りを買い、殺される段階に至ったときだけである
異形:C
バーサーカーが本気を出すとき、その顔は老人のものから一転、究極の怒りを表した鬼のごとき形相へと変貌する。
対峙した相手の精神耐性がランク以下の場合、即座に萎縮し、脆弱なものならその怒りに当てられて発狂してしまうだろう
【宝具】
『唯一絶対超絶究極大殺戮神』
ランク:EX 種別:対生命宝具 レンジ:無限 最大補足:対象となった種族すべて
バーサーカーと敵対、及びその逆麟に触れれば、その時点でその人物の死が確定する
より具体的に言えば、バーサーカーの『殺人』という『結果』を導く『行動』は、直接的な攻撃、あらゆるスキル、宝具による隔離なども含めた、いつ如何なる妨害手段を用いても、無効することは出来ない。
何処へ避難し脱出しようが、バーサーカーは即座に対象の位置を察知し、追い付き、殺す。 その効果はバーサーカーが祟った民族、及び種族が絶滅するまで収まらず、事実上バーサーカーの殺戮を阻止することは不可能。例え宇宙へ脱出し銀河系の外へ逃げ出そうが全くの無意味であり、無駄である
だが逆に、何からの要因で彼の怒りを買わなければ、バーサーカーは基本的に他者にとことんまで無関心である。
【人物背景】
唯一絶対超絶究極大殺戮神。それが彼であり、彼に祟られて生き延びられた種族はいない。
【サーヴァントとしての願い】
プッチンプリンが食べたい
【運用方針】
とにかく怒らせないことが第一。
一度機嫌を損ねると普通にマスターも殺しかねないが、どうやらまちのことを少しは気に入っているらしいのでうまくご機嫌をとってれば何とかなるかも…
【マスター】
雨宿まち@くまみこ
【weapon】
特になし
【マスターとしての願い】
熊出村に帰りたい
【能力・技能】
巫女らしい能力は皆無と本人は言うが、やはり巫女の家系なのか時々トランス状態になる
家電破壊と料理も得意。
前者に関しては、パソコン2台と電気釜をお釈迦にした前科を持つ。
【人物背景】
東北の山奥に暮らす中学生のアイヌ系巫女。
熊を奉った神社の巫女として仕えている。
【方針】
バーサーカーのご機嫌をとりつつ引きこもる
最終更新:2016年06月11日 07:46