正午過ぎの商店やオフィスが立ち並ぶ路地を、4人の少年――成人と呼んで差支えない体格の青年達が走り抜けている。
正確には3人が1人を追いかけているのだ。
追われている1人は最近、この近辺で幅を利かせるようになった外国人の若者である。
全体として彫りの深い顔立ちをしており、がっしりした顎や、一の字に結ばれた口元からはその勇猛さが窺える。
陽光をたっぷりと吸った金髪を後ろに撫でつけ、銀色のコートを羽織った姿はド派手としか言いようがないが、青年自身も負けてはいない。
日に日にストリートで存在感を増していく彼を、元々このあたりに屯していた連中は快く思わなかった。
今日、街で彼を見かけた3人組は特に予定を入れていなかったこともあり、急遽金髪の青年を襲撃することにしたのだ。
襲撃をかけられた金髪の青年は3人の姿を認めると、誘う様に今いる路地まで走り込んだ。
やがて高架下の駐車場で、青年は威圧的な格好の男達に取り囲まれる。退路を断たれても青年は微塵も揺るがない。余裕の表情で並んだ3つの顔を鼻で笑う。
それが3人の神経を逆撫でし、青年の背後をとっていたハリネズミめいた髪型の色白の男が殴りかかったのが、開戦の合図となった。
しかし状況は3人の想定外の方向に進んだ。二度と大きな顔が出来ないように痛めつけるつもりが、自分達とはあまりにも喧嘩の練度が違い過ぎた。
色白の奇襲を金髪の青年はあっさりと避ける。右腰に容赦ない前蹴りを浴びせられた色白は、身体をくの字に折って地に伏せた。
仲間があっさりと倒された一部始終を見ていた2人は瞬き1、2回程度の間、硬直してしまう。喧嘩の場においてこの隙が見逃される道理はない。
地を蹴る足音に残った2人は即座に反応したが、彼らの攻撃が金髪の青年を捉えることはなく、見る見るうちに追いつめられてしまう。
一人が落ち……そして今、最後の一人も地に沈んだ。
若者達が拳や蹴りの応酬を繰り広げている最中、その場に男が突然一人増えた。音もなく現れたその男は4人の喧嘩に加わることはせず、殴り合う彼らをじっと見ていた。
頭髪と瞳は燃えるように赤く、これなら街を行き交う群衆に紛れても瞬く間に見つかるだろう。
彼は厚い胸板の前で逞しい両腕を組んで等間隔で並ぶ柱の一つに身を預け、金髪の青年による蹂躙劇を観覧していた。
間も無く3人のチンピラを返り討ちにした金髪の青年は、左右の手で払う様に音を立てると肩で風を切って歩きはじめた。
表情の晴れない青年に赤毛の男は凭れていた壁から背中を外し、歩み寄って声を掛ける。赤毛の男はかなりの長身だったが青年も同じくらいに大柄だった。
「何をイラついてる」
受けた青年が足を止めて振り返った。
遠くを見据える猛禽のような眼差しが、赤毛の男に向けられる。
「これは戦争なんだろ!?それで人がやる気になってみれば、未だに一人も出てこない…いつまで俺を待たせる気だ!」
発酵しそうな程に溜まったフラストレーションを発散する様に腕を左右や上下に大きく振り、金髪の青年は不満の声を上げる。
出鱈目な軌道を描いていた腕が止まると、赤毛の眼前に人差し指が突き付けられた。
赤毛は退屈そうに溜息をつく。瞳だけが煌々と燃えている。
「大方、情報収集か陣地の構築に忙しいんだろうよ」
赤毛があらぬ方向に視線を向けると、腕を引っ込めた金髪の青年――サイファーは忌々しげに低く呟いた。
「チキン共が……!」
サイファーは大通りを目指して再び歩き始めた。足取りや表情には倦怠感と焦燥が滲んでいる。
記憶を取り戻した瞬間のサイファーは、興奮と期待、そして歓喜に包まれていた。
勝ち残った者が万能の願望器を掴みとる死亡遊戯。これこそ、けちの付いた自分の禊の場に相応しい。
聖杯を狙う敵を尽く蹴散らし、失った誇りと夢を取り戻す。そして復活を遂げた俺はもう一度スコールの前に立つ。完璧な筋書きだった。
さぁ敵はどこだと息巻いて探索に出れば、出会うのはどうでもいいチンピラばかり。
今のサイファーは、例えるならお預けを喰らっている犬だ。早くご馳走にありつきたくてしょうがない。
「…にしても記憶を取り戻した途端、学校ってやつに行かなくなるとはな」
思い出したように赤毛が口にする。
サイファーは記憶を取り戻してから、学校に全く寄り付かなくなった。
聖杯戦争の場において目立つ行動を取るのは自ら危機を呼び込む愚行でしかないが、接敵の機会が増えるのは赤毛のサーヴァントも望む所だったので、サイファーに改めさせる気はない。
「誰が好き好んで、あんな所いくか」
サイファーが退屈そうに返した。大通りを行き交う人々が視界に入る。
「よく今まで耐えてたもんだ。……教える方も、教えられる方も、ありゃ何がしたいんだ?」
サイファーにとって、「学校」の授業は苦痛極まりなかった。
招かれるまで受けてきた「ガーデン」の授業は退屈ではなかったし、良い刺激に満ちている。教員はともかく。
戦闘技能の訓練、知識の習熟。そして世界を股にかける傭兵「SeeD」として活動するうえで必要な知識の習得。
SeeDになれなかったとしても今後の人生の糧にはなるだろう。なれる実力は既に身につけているが。
しかし学校で受けた授業は平々凡々、毛ほども心が動かない。
自分の周りで机に向かっていたあいつら――NPCとか呼ばれる再現らしいが、大元になったものはいるはずだ。
連中は学校から巣立った後で何になるつもりなんだ。街を歩きながらそんな事ばかり考えていた。
「さぁな。これだけ動いたんだ、…すぐにウンザリするほど敵が来るぞ」
赤毛の視線が油断なく周囲に走る。ややあってサイファーの隣を歩く赤毛は静かに霊体化した。
「望むところだ」
酔った様な口調でサイファーは言った。たとえ雑魚相手でも戦うのは楽しい。聖杯も、魔女も、アイツも―俺の夢は終わらない―通り過ぎてみせる。
「なぁ、ヒート」と不敵に笑うと、脳裏に愉快そうな吐息が聞こえた。実体化していたなら、ヒートと呼ばれた赤毛の青年も口の端を上げていることだろう。
歩調を緩めるとサイファーは大きく息を吸い込み、来たる戦いの予感に胸を膨らませる。
そしてアスファルトをぐっと踏み込むと、サイファーは人の列が行き来する中心街の一際高いビルを目指して駆け出した。
【クラス】アーチャー
【真名】ヒート
【出典作品】DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー
【性別】男
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具A+
アグニ 筋力A 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A+
ヴリトラ 筋力A 耐久A++ 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A+
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
対魔力:E(C+、B+)
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
アグニに変身すると第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。特に炎熱を利用する魔術に対しては高い防御力を発揮する。
ヴリトラに変身すると詠唱が三節以下のものを無効化できる。炎熱を利用する魔術ではヴリトラに傷をつけることは出来ない。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【保有スキル】
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
魔術:-(B、B-)
通常は使用できない。
アグニに変身することで魔術を行使できる様になる。アーチャーは強烈な火炎魔法を一工程で発動させる。
ヴリトラ形態では使用できる魔術が制限される。
喰奴:A
「悪魔化ウィルス」を照射された事でアートマが発現した者のこと。身体の何処かにアザが刻まれるのが特徴。
魂喰いを含む捕食行為によって、魔力を回復することができる。
保有者に高い身体能力を保証するが、覚醒中は常に飢餓感に苛まれるデメリットがある。
飢餓感は魔力を消耗するほど強くなっていき、NPCやサーヴァントを喰らって消耗を補わない場合、肥大化した飢餓感によって同ランクの狂化に匹敵する精神の変質を一時的に起こす。
暴走したアーチャーは飢えを満たそうと敵味方問わず襲い掛かる。満足した時点で暴走は解除される。
【宝具】
『咆哮す火神の顎門(ファイアーボール)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
右腕のアートマに意識を集中することで"アグニ"に変身する。ステータスやスキルを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。
アグニは火炎属性の魔術に長け、屈強な肉体を使って敵を粉砕する悪魔である。発動にかかる魔力は少ないが、ステータスの向上や魔術スキルの使用が可能になった事で飢餓感が増大しやすくなっている。
『我は宇宙を塞ぐもの(ヴリトラ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:陣地全域 最大捕捉:1人(自身)
"ヴリトラ"に変身、ステータスやスキルを専用のものに修正、魔術スキルを解禁する。
アーチャー単独で発動させる事は出来ず、魔術師が作成した陣地にアーチャーが存在していることが絶対条件。
宝具を発動するとアーチャーが陣地全域を取り込み、丸く膨れた胴体と二本の触手、三つの口を持つ巨大な竜と化す。飢餓感については上述と同じ。
この形態に変化したアーチャーは頭部から吐き出す極寒の冷気、超高温の熱波、思考を攪乱する怪音波、巨大な触手による叩き付けや薙ぎ払いによって敵を蹂躙する事が可能だがその場から移動することが出来なくなる。
また、自発的に人間態に戻る事も出来ず、令呪一画によってのみ人間態に戻る事が可能。
【weapon】
無銘:グレネードランチャー
【人物背景】
セラの主治医「ヒート・オブライエン」をモデルにしたママゴトAIが戦闘AIに生まれ変わったもの。
ジャンクヤードでは、所属するトライブ「エンブリオン」のアタッカーを務めていた。
アートマを獲得してからは直情かつ好戦的な性格になり、同チームのリーダーであるAI「サーフ」をライバル視するようになる。
その性格から仲間達と違い、敵を喰らう事に躊躇いが無い。
アートマ出現と同時期に出会ったセラに対して出所不明な執着を持っていたが、ジャンクヤードからニルヴァーナ(地上)へとやってきて真実を知ると、彼は仲間を裏切りカルマ協会に加わる。
後にEGGと一体化し、ヴリトラと化したヒートはセラを含むかつての仲間達、EGGから脱出したサーフによって倒された。
太陽に情報が到着する以前から参戦。
【聖杯にかける願い】
?
【マスター名】サイファー・アルマシー
【出典】FF8
【性別】男
【Weapon】
ガンブレード(ハイぺリオン)
【能力・技能】
「疑似魔法」
オダイン博士が、奇跡を操る"魔女"の研究から編み出したもの。
本来のそれより威力は劣るが訓練次第で人間にも扱える「偽物の魔法」。
「始末剣」
サイファー固有の技術。剣技と魔法の複合技。
火炎魔術によって標的を牽制した後、斬撃や衝撃波を浴びせる。
【ロール】
高校3年生。
【人物背景】
シド・クレイマーが「SeeD」育成のために設立した学校「バラムガーデン」で一番の問題児。
学園トップレベルの実力者ながら自己中心的かつ好戦的な性格の為、万年候補生に甘んじている。
実地試験の際の命令違反によって懲罰房に入っていたが、旧知の仲であるレジスタンス構成員「リノア・ハーティリー」の危機を知ると、ガーデンを脱走して大統領拉致を敢行。
姿を現した「魔女」イデアの目に留まり、彼女の騎士となる。魔女の騎士となった後はスコールやリノアたちと幾度となく対立、一時はガルバディア軍司令官にまで昇りつめた。
ルナティックパンドラでの戦いに敗れた直後から参戦。
【聖杯にかける願い】
追い込まれた現状をひっくり返す。くわえて聖杯戦争に勝利することで傷ついたプライドを立て直し、スコールと再戦を果たす。
最終更新:2016年06月22日 17:56