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 聖杯戦争
 万能の願望器をめぐり、選ばれたマスターとそのサーヴァントたちが最後の一人となるまで争う儀式

 どうしてそんなものに自分が選ばれたのか、吉良吉影は分からなかった。

 日本の東北地方、杜王町の住人である、ごく平凡なサラリーマン。
 年齢33歳。
 中肉中背、決して人目を引く風貌ではない。
 自宅は杜王町東北部の別荘地帯にあり、結婚はしていない。
 仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。
『心の平穏』
 それこそ彼の最も重視する価値観である。
 出世したい、金が欲しい、威張りたい…。勝ち負け、だの、刺激的な事件、だの、そんなのはテレビのドラマか映画の中の連中にでもやらせておけば良い、と、常々そう思っている。
 ただ日々安心して過ごし、悩みもなくくつろいで熟睡できること。
 それこそが、彼の求める『植物のように穏やかな人生』である。

 漠然とした違和感から、自分が杜王町ではなく、見知らぬ都市で日常を送らされていたことに気がつき、そして令呪とやらが右手に宿った。

 あくまでも平穏を望む吉良にとって、まさにこの聖杯戦争は『平穏』を乱す要因であった。
 確かに、何でも願いを叶えられるという聖杯とやらに、興味がないと言えば嘘になる。それに願えば、自分の『性(サガ)』を許容した上で、より平穏を謳歌できるようになるかもしれない。だが、闘争とは平穏ともっともほど遠い行為でもあるのだ。
 そして、吉良は聖杯を疑っていた。いや、もっと言えば、聖杯戦争そのものを疑問視してもいた。
 頭に刷り込まれた筈の知識によると、サーヴァントとやらが割り当てられるはずだ。だが、彼の前にはサーヴァントどころか誰も現れなかった。
 えもすれば新手のスタンド使いによる攻撃かとも思ったが、これほど大がかりにかつ無意味な芝居を打つ必要性が思い浮かばない。
 自分のサガを知っている人間の仕業も思い浮かんだが、それを知っているのはこの吉良吉影ただ一人だということは確かだった。
 
 何にしても、マスターとして覚醒した上で、彼のもとにサーヴァントが現れなかったのは事実であった。
 記憶を取り戻した当日も、その翌日も、明後日も、何も変わらない日常が続く。
 ただ、その日から何かが変わったのは確かだった。

 
 まず、音が聞こえるようになった。
 キシリ、キキー、という、金属の擦れるような細い音を、ふと耳にするのだ。夜中にふと目を覚ました時、壁の向こうから聞こえることがあった。浴室でシャワーを止めた瞬間、換気扇から洩れる微かな音に気づくこともあった。
 錯覚かと思い耳を澄ましていると、大抵はすぐに聞こえなくなってしまう。

 そんなことが二、三日に一度の頻度で起きて二週間ほど経った頃、吉良はあれと遭遇したのだった。
 同僚からの飲み会を断り、そうそうと帰宅し自宅まで一人で歩いていたときの事だった。
 地方都市にしても珍しく、その夜は何故か不気味なほど人通りが少なかった。
それを妙だと思いつつ、かえって人目もなく落ち着くぐらいだとと受け流し、帰路につく。
 
 交差点で立ち止まり、目の前を車が駆け抜けた。エンジン音が遠ざかった後に、不意に背後からあの音が現れたのだ。


 キキュ…… キシリ……


 その響きは錯覚と決めつけるにははっきりし過ぎていた。金属が擦れるような音の発信源は、吉良に近づきも離れもせず、その場に留まっているようだった。

(まただ……何なんだ一体っ)

 吉良はそのまま交差点を渡ってしまおうかとも思ったが、奇妙な音への好奇心が勝った。
 そっと振り向くと、十メートルほど離れて大きな鳥籠を提げた男が立っていた。


 街灯の淡い光を正面に浴びて立つ、男の身長は2メートル近くあった。黒い帽子はシルクハットに似ているが鍔がやたら大きく、端の方は少し垂れ下がっていた。
鍔の陰になって顔が見えない。黒いマントは空気を抱くように膨らみを保ち、ザラザラして見えた表面は黒い羽根をまんべんなく縫いつけているのだった。
烏の羽根だろうか。男の服は派手な赤や黄や青、緑の布きれをモザイク状に繋ぎ合わせたもので、吉良は一瞬ピエロかと思った。

 白い手袋を嵌めた指は常人よりも細長い。その左手は丈一メートルを超える大型の鳥籠を吊っている。銅か錆びた鉄か、暗い茶色の格子は頑丈そうだ。

 キシリ、キキ、という金属の細い軋みは、鳥籠が揺れる際に吊り手とのジョイント部が擦れる音だった。

 その猿でも飼えそうな鳥籠の中に、一人の少年が閉じ込められていた。小学校高学年か中学生だろう。白いタオル地のパジャマに素足だ。

 吉良は目を見開いた。それは男に驚いたこともあるが、何よりその膝を抱えた少年の指は数が足りなかったからだ。
右手の薬指と小指、左手の人差し指が付け根からない。元々ではなく、断面には血がこびりついていた。改めて見ると足の指も五本ほどしか残っていない。

 少年の顔は青白く、瞬きしない瞳は虚ろに濁っていた。どうして閉じ込められているか、鳥籠の中で何を思うのか、気になった

 少年の目はまっすぐ吉良の方を向いていた。

 男の右手は、大きな剪定鋏を握っていた。柄の間にバネの入った全金属製で、半円を描く切り刃とその受け刃は十五センチほどの長さがあった。良く手入れされた刃は街灯の光を鋭く反射している。
 
 男の右手が、動き出した。柄を握る力が緩められ、ショキ、と、鋏が開いた。僅かな欠けもない、輝く刃。
 男は左腕を動かし、鳥籠を自分の目の前に差し上げた。マントが揺れた。右手の剪定鋏を鳥籠に近づける。半ば開いた刃先を中の少年に向けた。少年の、左手の辺りに。
 少年が虚ろな表情のまま、左手を開いて格子の隙間から指を出した。人差し指のない四本の指を。

 吉良は、目を逸らすことが出来なかった。

 男が、剪定鋏を丁寧に動かして、少年の左手中指を、根元から、切断した。鳥肌が立つような、骨の切れる嫌な音が響いた。
 落ちた指が地面にぶつかる前に、剪定鋏を持った男の右手が受け止めていた。他の指もそうやって切られたのだろう、切断面から鮮血がドロリと溢れ出す。鳥籠の少年は声を洩らすこともなく、青白い顔を少しずつ、スローモーションのように苦悶へと歪めていった。濁った瞳で吉良を見据えながら。

 男が、摘まんだ少年の指を自分の顔に近づけた。大きな帽子が上を向き、街灯の光が差し込んで男の顔が見えた。
 顔の上半分は金属の仮面で覆われていた。凹凸は殆どなく、両目の部分に丸い穴が二つ開いているだけだ。
 下半分……男の露出した生身部分はそこだけだったが、細く尖った顎は極端に長く、薄い唇は両端が吊り上がって大きなV字を作っていた。人間離れした顔立ちだった。
 剪定鋏と少年の指を持った右手を顔の上に捧げ、男は指を離した。開いた口の中に少年の中指が落ちた。
 コリ、コリリ、ゴリ、グジ、と、顎の動きに合わせて不気味な音が続いた。男は、少年の指を食べているのだった。
動作の段階でまさかと予想してはいたが、吉良は身震いした。
 狂っている。自分が言うのもなんだが、と吉良は思った。




 指を食べ終えた男が、吉良と正面に向き直った。仮面は鍔に隠れたが、吉良は男が自分を見つめているような気がした。
 鳥籠の少年も無表情に戻っていた。血の流れる切断面を押さえながらも少年は膝を抱えた。少年は黙っていた。助けを諦めているのかも知れない。
 
「……なんだ、お前は」

 吉良は問いかけた。同時に、彼の体から半身とも言うべきスタンドが現れる。しかし、それは無駄に終わった。
 鳥籠と男が、唐突に消えた。そこには街灯に照らされた暗い地面だけが残っていた。
 
「……何だったんだ」

 ツゥー、と額から冷や汗を流れる。
 明らかにあれは、普通のものではなかった。日常の、平穏の、そして正気の外にあるものだ。
 吉良はしばらく立ち尽くしていたが、ふと信号が青になっていることに気がつき、あわてて交差点をわたった。
 
 なぜだか無性に、家に帰りたかった。
 
 気がついていないのかそれともあえて気づかないふりをしているのか。
 あの男の吉良への視線は、吉良が『彼女』へと向けるものと同一のものだった。




 結論から言えば、あの鳥籠の男ーーバーサーカーは吉良のサーヴァントだ。
 吉良自身は知らぬことだが、彼はこの数日間、確かに吉良の側に居た。
 そして、今も背後からじっとついてきていることに、吉良は気づけなかった。






【クラス】
バーサーカー

【真名】
指食い@指喰いと腐れ風神

【属性】
混沌・狂

【パラメーター】
筋力B 敏捷B 耐久B 魔力C 幸運C 宝具C+

【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせる代わりに言語能力及び理性の大半は失われている
しかしバーサーカーは、マスターの『手』に触れようとした相手を優先的に襲う

【保有スキル】
気配遮断(偽):A
バーサーカーは存在の次元がズレているため、実態化を保った上で見える時と見えないとき、物理的に関われる時と関われない時がある
怪物としての本能か、バーサーカーは理性を失った状態でもある程度は自分の意思で姿を消しているようだ

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

単独行動(偽):A
『鳥籠』がその役割を果たしている時、バーサーカーはマスター不在でも最大20日間行動できる。

【宝具】
『指切り鋏』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:20
 バーサーカーの所持する剪定鋏。その刃はよく手入れされていて、鋭く肉を断つ。

『鳥籠』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
 バーサーカーが持ち歩いている、丈一メートルを超える大型の鳥籠
 バーサーカーは獲物として選んだ人間をこの鳥籠に閉じ込め、一本ずつ指を切りとり、食べる。
 籠の中に入れられた人間は心身の活動が低下し、指を切られても血がでなくなる。

 1日に1本、鳥籠に入れられた人間の指を食べることで、バーサーカーはマスター不在でも現界を維持できるだけの魔力を補充できる

 因みに、籠の出口は約三十センチ四方しかない。どう考えても人間を籠から出すには無理のある構造をしているが、バーサーカーにとってはどうでもいいことなのだろう

【weapon】
『指切り鋏』

『少年』
吉良に姿を表す前にバーサーカーに目をつけられた不運なNPC。指は残り十三本

【サーヴァントとしての願い】
マスターの指を食いたい。

【人物背景】
『指喰い』と呼ばれる怪人。
いつから存在するのか定かではなく、最も古い登場記録は十六世紀のヨーロッパ。 
日本での目撃例は明治二十四年からで、開国と同時に西洋人と一緒に渡ってきたらしい。






【名前】
吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
植物のような平穏な生活

【能力・技能】
いわゆる超能力者、スタンド使い。

【weapon】
スタンド能力、「キラークイーン」
【破壊力 - A / スピード - B / 射程距離 - D / 持続力 - B / 精密動作性 - B / 成長性 - A】

・「第一の爆弾」
 キラークイーンの指先で触れた物質や生物を爆弾に変化させる。人差し指の第一関節にスイッチがあり、これを押すことで爆弾に変えたモノは爆発する。
 あるいは、スイッチに関係なく他の物体に接触した途端に即爆発する、という設定も可能。
 前者はスイッチを押さない限り何をしても爆発せず、後者はスイッチ要らずだがこちらの任意では爆破できない(爆発の条件は接触のみでスイッチを押しても爆発しない)ため誤爆などのリスクがあり一長一短。
 また、爆発の種類も「爆弾に変えたモノ自体が爆発し跡形も残らない」「爆弾に触れた対象が爆発し爆弾に変えたモノ自体は残る(ただし一度爆発した時点で爆弾ではなくなる?)」の二種類がある。
 これらの性質は対象を爆弾に変えた後には変更できず、一度にひとつのものしか爆弾にすることはできない。

・「第二の爆弾『シアー・ハート・アタック』」
 キラークイーンの左手の甲から射出される爆弾戦車。自動操縦で敵を追尾し、爆破する。
 爆炎を放つ、あるいは接触した相手を爆破する、という方法で攻撃を行うため、爆発してもシアーハートアタックが消滅することはなく、残った敵を追い続ける。
 さらに非常に頑丈で、パワーも強い。
 だが自動操縦であるため単純な行動しかできず、敵を感知する方法も視覚などではなく周囲の熱を感知して温度の高い物体の方へ向かう、というものであるため人間よりも温度の高い物体があるとそちらへ向かってしまう。
 また、あくまでもキラークイーンの左手の一部であるため、ダメージや細工をされると吉良の左手にフィードバックする。

 第三の爆弾については参加時期的に持っていない。

【人物背景】 
 S市杜王町に住まう殺人鬼。
 女性の綺麗な手首を偏愛しており、自らの嗜好に合う手首を見つけると女性を殺害し、切り取り「恋人」として持ち歩く異常性癖を持つ。
 表向きは誰に対しても物腰柔らかで警戒心を与えない、という態度を装っているが、本質的にはプライドが高い。
 知能や才能も高く、それに対して自信を持っているが、「平穏な暮らし」のために隠している。
最終更新:2016年06月22日 18:08