私に何か届き物があるなど考えもしなかった。何が送られてきたか見当も付かなかったが、開けてみることにした。
翼を失った今となっては、くちばしで包装を解くのも一苦労だったが、ようやく何が送られてきたか分かった。

一冊の本。

それも、この戦争についての本らしい。
終戦から既に数ヶ月、確かにこういった本が出版されてもおかしくない。だが、誰が何の目的で、それも私に送ってきた
のか、分からなかった。どうせルギア批判だろう……と読む気にはなれなかったが、空想も飽きてきた頃で、暇つぶしに読んでみた。

私は、愕然とした。
その本は、戦争の発端から終戦までを、兵士や民衆達から聞いた話や編者の主観が書かれた文章から成り立ち、そこには、
彼等なりの生活があり、怒りがあり、戦いがあり、深い悲しみがあった。よくまとまっていた。

――私はこの戦争に関わった。何のため? 自分の野望のためだ。それは正しかったのか? 他人の命や幸福を奪ってまで?
そして何より、この本の編者が、私が『プロトタイプ』として――物として扱ったあのシャワーズだと知ったとき、
私は絶望のどん底に叩き落とされた気がした。自分のやったことが、自分の犯してきた罪が、野望が、どれだけ他者を
傷つけ、苦しませてきたか。
私は、終戦後初めて泣いた。誰のためとも分からずに、どうせ、泣いたって何も変わりはしないと知りながら。

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最終更新:2007年02月06日 21:15