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全ては愛人のために




「そ、そんな………」

彼女は今、起きてる事について大体把握してしまった。
殺し合いなのは先程の場所で宣告されているので分かっている。
その時は、ふざけたゲームだと思って怒りしか頭には無かった。
いや、少しだが恐怖心もあっただろう。だが、大体は怒りで埋まっていた。
会場から飛ばされ、現状。デイパックの中身を調べる。
しっかり名簿等々は入れられており、それに目を通し―――。
彼女は嘘だ、と信じられないといった表情でそこに立ちつくした。
そこには載っていた。彼女の大切な人が、愛してる人が。

彼女――右代宮朱志香が愛する者、嘉音の名前がそこにはあった。

朱志香は嘉音の名前にしか目がいかなく、譲治や紗音といった名前が見えてなかった。
この殺し合いに嘉音がいる。それだけしか確認しなかった。
さっきまでは、ふざけたゲームだと思ってたがまさにそう。
だが変わった。絶対に殺し合いなんてしないつもりでいた。
でも愛人がいれば話は別、愛人の無事の為に精を尽くすまで。
例え身が壊れようとも、朱志香は嘉音に生きて欲しいと誓った。
こうして、朱志香は愛人の参加という事だけで殺し合いに乗ることにした。
それからの朱志香の行動は素早かった。直ぐにデイパックの中身を確認する。
入っていたのは、詩が書かれた紙――それと、中華包丁が一丁入っていた。
武器としては少し物足りないが、朱志香にはそれを気にしてる時間が無かった。
今直ぐにでも参加者を減らして嘉音に出会う、それしか頭になかった。
中身を確認後、朱志香は直ぐにその場から動き出した。

(早くしないと、早く、早く、嘉音君が……!)

朱志香は、ただひたすらに焦っていた。
別に嘉音が弱いから心配な訳じゃない。
強かれ弱かれ、死ぬのが怖い。嘉音の死亡が怖い。
早く合流して嘉音の身を命懸けで守るつもりであった。
余裕なんて朱志香にはまったくなかった。
焦りからの行動は、失敗が起こる。

そこで、見つけたのは朱志香が嘉音の次に求めるもの。
参加者――嘉音を安全に近付ける為に減らさなければならないもの。
朱志香に迷いは無く、中華包丁を握りしめると一気に突撃していった。

「うあぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁああぁあぁぁぁ!!!」

冷静だったなら、無言のまま背後からザックリしていたかもしれない。
だが違う。朱志香は嘉音の事で一杯、焦り一色。
何も喋らずに人殺しを行うなど今の心情では無理であった。
声に気付いて、その参加者は振り返る。

「―――!」

標的となった者はその異常さに気付く。
狙われた標的に向かって、朱志香は中華包丁を縦に振った。
ブンッ、と音が鳴る。

「つっ―――!チッ、何だよお前!何しやがる!」

標的には掠り傷程度でしかダメージを与えられなかった。
朱志香はその言葉に耳を傾けることはなく、第二撃が襲いかかる。
今度は予想されていたのか、掠ることも無く避けられてしまった。
攻撃が当たらない事に尚更朱志香は焦りに追い詰められていく。



再度―――朱志香は攻撃を仕掛けた。



                   ◆◇



朱志香に襲われた参加者―――岸沼良樹は突然の事についていけなかった。
先ず会場内で言われた事は冗談か夢程度にしか思っていなかった。
そんな軽い気持ちでいて、気がつけば森の中にいて………突然後ろから大声がして……。
いきなり包丁で掠り傷で済んだが襲われた。それも女子に。
何度か言葉をかけても聞く耳を持たずに包丁を振ってくる。

(ラチがあかねぇ……こうなりゃ悪いが手荒い真似をさせてもらうしかねえな……)

良樹は殺し合いに乗るつもりはこんな状況に遭っても1%も無かった。
彼が好きであった篠崎あゆみに言われた事が頭に何度も語ってくるのだ。
あゆみはあの不気味な学校の中で教えてくれた。暴力では何も解決しない、と。
話で済ませれば被害は少なくて済む、何だか尤もな事を言われたなと今思った。
だから出来れば、手を加えずにこれを解決したかった。

狂人が攻撃を仕掛けてくる。
精紳的に追い詰められてるせいか、単調な攻撃となっている。
避けるのは然程難しくは無く、良樹はそれを避ける。
振ったその隙をついて、良樹は思いっきりタックルを仕掛けた。

「あ……ううあぁぁあああああああああぁぁぁ」
「な―――ごふっ」

タックルは成功した。だが、倒れた彼女は抵抗をやめなかった。
良樹の腹へと拳が撃ち込まれる。その威力はとても女とは思えなかった。
地へと倒れて行く。意識が朦朧とする。
さっきの奴はタックル後に起き上がって……………。

(クッ………立て……ねえ……)

先程の腹の一撃で、立とうとすると激痛が走る。
若しかすれば骨が折れたか粉砕されたかもしれない。
あまりにも激痛が響き、立つことがままならない。
良樹は実感した。今この時、自分は死のうとしている。
殺されようとしている。こんなふざけたゲームの中で。


(もうダメ、か………スマン、篠崎………)


良樹は最期を覚悟して―――目を閉じた。


……………。


だが、意識は離れない。
再び目を開けてみようとすれば、簡単に目は開いた。
天国か何かかと思ったが、先程いた森なのは直ぐに分かった。
何故、自分はあの後に殺されていない………?
そんな疑問は今直ぐには浮かばず―――いや、その場で理解した。
姿こそは真上に向いてて分からないが、無事の理由は声で分かった。


「大丈夫か?」


そんな声が聞こえて、視界に顔が映った。
美少女に分類されるであろう女の子がそこにはいた。
先程の子とは勿論別の誰かがそこにいた。
良樹は無事が確認出来ると、安心して気が抜けていった。
そして言葉を返した。


「……ああ。……ありがとよ。」


その言葉がもらえると、無事を確認出来て向こうも安心した顔になった。
正直、身体は大丈夫といえる程の軽傷で済んでいないんだけどな、と心で一言。

「さっきの奴は、どうなったんだ……?」
「そなたに襲いかかろうとしていた所に私が一発かました。
 それだけで直ぐに逃げていった。」
「そうか………」

その言葉で良樹は、やっぱりこの子が来てなかったら死んでいたのかと思った。
あれは間違い無く死線。それを乗り越えたって感じだ。

「名前、訊いていいか……?俺は、岸沼良樹だ。」

命の恩人の名前ぐらい訊いたっていいだろう?
そして、返事がくる。

「生徒会長の坂上智代だ。」


これが、不良と生徒会長の出会いだった。



【F-2 森の中・一日目/深夜】
【岸沼良樹@コープスパーティーBCRF】
【状態】右肩に掠り傷 腹部の骨損壊
【服装】如月学園男子制服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:殺し合いに乗る気は無い。
1、坂上には感謝。
2、金髪の女(朱志香)を警戒。


【坂上智代@CLANNAD】
【状態】健康
【服装】光坂高校女子制服
【装備】なし
【道具】基本支給品 不明支給品1~3
【思考】基本思考:殺し合いに乗る気は無い。
1、岸沼が無事で良かった。
2、金髪の女(朱志香)を警戒。



【E-2 森の中・一日目/深夜】
【右代宮朱志香@うみねこのなく頃に】
【状態】狂気 焦り 身体に少し痛み
【服装】朱志香の服
【装備】中華包丁@現実
【道具】基本支給品 澪の詩@けいおん!
【思考】基本思考:嘉音の為に参加者を殺す。嘉音を守る。
1、早くしないと……早くしないと……



※【中華包丁@現実】

中華料理に用いられる、刃が四角く身幅の大きい包丁


※【澪の詩@けいおん!】

軽音部員である秋山澪が作詞した詩が書かれた紙。
その内容はとてつもなくメルヘンで、
澪のファンであろうがむずがゆくなってしまう。
勿論、何の得もない外れ支給品。


sm003:小さな小さな女の子の小さな企み 投下順 sm005:With no malice
START 右代宮朱志香 sm000:[[]]
START 岸沼良樹 sm000:[[]]
START 坂上智代 sm000:[[]]


最終更新:2011年12月06日 19:02