選択肢
「ん~?」
ガサガサ
「おお~?」
ガタガタ
「む~……」
ドンドン
「ふむふむ……」
ガタガタ
「……よっこいしょ」
ガシッ
「ふぅ……どおおおおおおおっせい!!!」
ガタンッ!
■
音がした。
この建物内のどこかで。確実に。
緩慢な動作で身を起こして耳を澄ませる。
跳ねた心臓の音。落ち着かない呼吸の音。機械の駆動している音。
それらとは別の、何かの音。
「……誰かが、来た……?」
呑気にも呟いてから、慌てて理樹はデイパックを手に取り、部屋の四方に視線をめぐらす。
隠れられそうなところはあるか。誰かも分からぬ相手から逃げられる道はあるか。それは生存本能に従った行動。
そうして視線がロッカーを捉えると、一もにもなく駆け寄――――ろうとして、己の醜態に思わず自嘲する。
「生きたい……そういうことなんだね」
さっきまでの自分は、何をすればいいかもわからずに座り込んでいいただけだった。
けど誰かも知らない相手がこの建物内にいると分かった瞬間、生きるための行動をとろうとした。
自分から何かをしようとしないくせに、死にたくないという気持ちはしっかりある。
突然の出来事に現実感をつかめていなかったのに、死ぬかもしれない可能性に尻を叩かれてようやく動こうとする。
それが理樹には、どこかおかしいものに思えた。
「強く生きる……何をもって強いのかも分かっていないくせに……でも死にたくない」
強く生きると決めた。
鈴と二人で、強く。
なのに突然こんなところに放り込まれて、デスゲームをさせられて、死んだはずの友人たちがいると知って。
誓ったはずの言葉は、意思は。なんと空虚で頼りないことか。
「そうだよ、死にたくない」
まだ気持ちの整理はついていない。
地に足がついているかと問われれば答えはNO。
原初の感情に振り回されるようにして動いている。
だけど、それでも。
死にたくないって気持ちは、
「本心だよ」
もう一度耳を澄ます。
先ほどよりは幾分か落ち着いた心音に呼吸音。
そして一定のリズムで聞こえる機械の音とは別に、誰かが動いて会話しているような声が聞こえる……様な気がする。
この施設の広さがどれくらいかは分からないが、何にせよこのままここにいても敵かもわからぬ誰かと鉢合わせをするだけだろう。
なら、その前に、
「逃げよう」
誰かも分からぬ相手に特攻を仕掛けるほど、理樹は考えなしではない。
死にたくない。だから逃げる。
たとえ扉の先に、すごそばに誰がいようとも、逃げる。
よっぽど好戦的でもなければ、わざわざ追ってくることは無いだろう。
そう考えて、逃げる。
「運否天賦、か」
ドアノブに手をかけ、また自嘲を零す。
理樹自身、この行動が正解とは言えない選択であることは理解している。
理解しているが、ダメなのだ。
今はただ逃げる。
この状況から好転することを願って。
……本当は何から逃げたいのだろうか。
深層の本心は、まだ蓋を閉めたまま。
【一日目/3時30分/C-8、発電所内】
【直枝理樹@リトルバスターズ!エクスタシー】
[状態] 健康、精神消耗(小)
[装備]
[所持品]基本支給品、金属バット@リトルバスターズ!エクスタシー、ランダムアイテム×1~2
[思考・行動]
基本:?
1:今は誰かに鉢合わせしないように逃げる
【備考】
Refrain、虚構世界から鈴と二人で脱出後からの参戦
■
「ん? なんか音したっぽくね?」
「ん~? 誰かいたっぽい、的な感じ?」
耳を澄ませ、音の出所を確認するような仕草を見せる少年――戌井榊。
かたかたかた。PCを操作しながら今の発言に応答する少女――片瀬真宵。
二人は同時に耳を澄ませると、機械の駆動音とは別種の別の音が確かに聞こえた。
「他に参加者がいたってことじゃろかね~」
「うーん、さっきの女の子が追ってきたかな……」
ぶるり。さきほどA-8の灯台で邂逅した少女の事を思い出し、思わず榊は身を震わせた。
なんだかもう、嫌な予感がビンビンにするのである。まぁ別れ方も別れ方だったし、追われても不思議はない。
「んー……遠のいているみたい、かな?」
音は少なくとも近づいてきてはいない。
こちらに来ているのなら話は別になるが、遠のいているのなら無理にコンタクトを取る必要はないだろう。
「ま、いいや。警戒はこっちでするから、そっちはよろしく~」
「おっけーじゃよ♪」
気軽い会話。それもそのはずで、二人はここに連れてこられる前からの知り合いである。
県立猫毛高等学校のトラブルメーカーズと言えばこの二人。
知り合いどころかなんなら友人同士である。
『ふ、ふんごごごご、ぬぬ~……っ』
『何やってんだ』
ちなみに榊と真宵の再会は、つい三十分くらい前。
灯台から距離を取るべく全力で南下していた榊が、発電所に窓から侵入したはいいが、何故か詰まってにっちもさっちもいかなくなった真宵を見つけ、彼女を救出したのが切っ掛けである。
お互いにトラブルメーカーで、且つ若干不幸体質なところがあるにも関わらず出会えたのは、僥倖と言う他ない……いや、こんなことに巻き込まれている時点で特大の不幸ではあるのだが。
閑話休題。
まぁ、ともかく。
真宵は支給品のPCを使いたくて近くにあった発電所を目指しており。
彼女を手伝う形で、榊も行動を共にしているわけである。
「いや~、はやくみなさんと会いたいんじゃよ~」
「そうだな~――――っ!?」
ぶるり。再び身を震わす榊。
「どうしたんじゃよ?」
「いや、なんか、怖気が……」
「え、もしかして……幽霊!?」
いや、幽霊というか、多分……
そう言おうとして榊は口をつぐんだ。いや、よく言うじゃん? 嫌な予感は口にすると当たりがちって。
思い浮かべるは先ほど出会った女の子。
薄紫色のショートヘアーの、なんだ怖い感じの美少女。
というか、
「そもそも灯台から一番近い建物ってここだし、こんな夜に普通は森を抜けないし、確実にここを通るし…」
「ん? どうしたんじゃよ?」
「いや、その、あー」
まぁ、出たとこ勝負でいいか。
あっちも敵対心はなさそうだったし、別に俺は相手に怪我させたわけじゃないし。
そう無理やり自身を納得させると、榊はそれ以上を考えることをやめた。
……本当にそれで大丈夫なのか。
深層の警告には、無理やり蓋を。
【一日目/3時30分/C-8、発電所内】
【片瀬真宵@あっちこっち】
[状態] 健康
[装備]
[所持品]基本支給品、PC
[思考・行動]
基本:皆を捜して、脱出
1:PCを使用したい
2:発電所内散策
【備考】
参戦時期は未定
【一日目/3時30分/C-8、発電所内】
【戌井榊@あっちこっち】
[状態] 健康
[装備]
[所持品]基本支給品、手榴弾×4、発煙筒×2
[思考・行動]
基本:皆を捜して、脱出
1:真宵と行動
2:何か悪い予感がする……
【備考】
参戦時期は未定
■
はたして。
榊の危惧の通り。
実は榊が真宵と再会してすぐのところ。その場面をゆりには見られていたのだ。
彼女は榊を追うべく、同様に南下していた。
それはこの夜に森を通るわけがなく、確実に南下先にある発電所に寄るだろうとの予測をつけていたからだ。
故に。彼女が榊に追いつくのは必然。
ただそこで、ゆりにとって想定外の事象が発生する。
「……もう一人いる?」
ゆりが榊たちを見かけたのは、二人が発電所内に入ろうとするちょっと前。
会話こそ距離があったので細部までは聞けていないが、その親密さからこの場で出会った仲ではく、顔見知りに出会ったことは容易に察せた。
「てことは、単純に2対1よね……」
先ほどと同様にモデルガンで応戦をする、というには分が悪い。
顔見知りなら、こちらが話術でどうにかするということもできない。
結果として、ゆりは2人が発電所内に入るのを、気が付かれないように見送るしかできなかったのである。
さてはて、ではどうしたものか。
そんなわけで今に至るまでうんうんと策を考えているゆりだったが、いまだにいい案は出てこない。
1人でいる弊害。やっぱり多少強引にでも無理やりさっきの西原君(仮)を仲間にすべきだったか……
そうすれば上手くすれば3人で主催者に反抗できたかもしれないのに……
「ん?」
そんな彼女の耳に別種の音が聞こえる。
それは自然に発生した音ではなく、人工的に発生した音。
恐らくは誰かが走る音で――どうやら遠のこうとしているらしい。
もう発電所内の散策を終えて出て行ったということだろうか?
だがそれにしては随分と足早すぎる。
「追うか、それとも中に入るか……」
どうしようかと悩むにしても時間はない。
突然の2択を前にして、彼女が選んだのは――――
【一日目/3時30分/C-8、発電所付近】
【仲村ゆり@Angel Beats!】
[状態] 健康
[装備] モデルガン
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~2、手榴弾×1
[思考・行動]
基本:対主催、ゲームの打破
1:足音を追うか、発電所に入るか……
2:西原(仮)を仲間にしたい
【備考】
参戦時期は未定
最終更新:2024年08月27日 01:05