1日目
主人公「ラインハルトさん?なにをそんなに悩んでいるんですか?」
ラインハルト「いや、大したことではないのだ。気にしなくて構わない。」
主人公「そうなんですか?」
みささぎ「そんなこといって、その野菜棚の前でずーっと悩んでるじゃないですか。」
みささぎ「なにか決めかねてるなら、誰かの意見を聞いた方がいいと思いますよ?」
みささぎ「そうだ、野菜のことなら畑持ちのアリス(アレス)さんに聞いたらどうです?」
ラインハルト「む……そうだな。それが合理的かもしれない。」
ラインハルト「アリス(アレス)どの、知恵を貸してもらえるだろうか?」
主人公「いいですよ。なんでしょう?」
ラインハルト「新鮮でおいしそうな野菜をひとつ、選んでほしい。」
主人公「………?」
ラインハルト「………。」
主人公「……え、それだけですか?」
ラインハルト「それだけだが。」
主人公「どんな野菜がいいとかないんですか?葉物がいいとか、根菜がいいとか……。」
ラインハルト「なんでもいい。新鮮で、おいしそうであれば。」
主人公「なんでもよくはないんじゃ?なんの料理に使うとか、そういう指針は……。」
ラインハルト「そこも含めてお任せする。いちばんおいしい野菜が欲しい。」
主人公「うーん……じゃあ、このきゅうりかな?」
ラインハルト「なるほど……。ちなみに、なにを基準にこれを選んだのだろうか?」
主人公「新鮮そうだったからです。」
主人公「このきゅうりが、いちばんハリがあるじゃないですか。ヘタの切り口も新しいし。」
ラインハルト「そうやって鮮度を見分けているのだな。そして新鮮なものがおいしいと。」
主人公「はい、なんの野菜でも元気があってつやつやしていればおいしいはずです。」
ラインハルト「助言、感謝する。みささぎどの、これをいただきたい。」
みささぎ「はいはい、お買い上げありがとうございます。またどうぞ!」
主人公(それにしても……なんでもいいってどういうことなんだろう?)
2日目
ラインハルト「アリス(アレス)どの、先日は助かった。野菜の選び方、実に勉強になった。」
主人公「構いませんけど……あれ、なにに使ったんですか?」
ラインハルト「お嬢さまに
料理を作ろうと思った。」
ラインハルト「レストランの料理も美味しいが、たまには故郷の料理をお嬢さまに、と思ってな。」
主人公「それじゃやっぱりなんでもよくはなかったんじゃ……。」
ラインハルト「そうだな、本当にそのとおりだ。」
ラインハルト「王国にいた頃、お嬢さまはとても豪華な料理を召し上がっていた。」
ラインハルト「野菜たくさんのスープ、色鮮やかな魚のテリーヌ、ふかふかのパンや新鮮な野菜の酢漬け……。」
主人公(さすがお姫さま……)
ラインハルト「質のいい野菜なら、その内のひとつでも再現できるかと思ったのだが。」
ラインハルト「1品でもやはり豪華にならなくてな。その上、私は特に料理が上手いわけでもない。」
ラインハルト「ただ焼くだけの節約料理しか作ったことがない私に、王宮の料理など再現できるはずもなかった。」
主人公「な、なるほど……きゅうり1本では難しいかもしれませんね……。」
主人公「でも、
ベアトリスさんもラインハルトさんの気持ちはうれしかったと思いますよ。」
ラインハルト「……そうだといいが。」
主人公「ちなみに、酢漬けに使っていた野菜ってなんだったか覚えてますか?」
ラインハルト「日によって様々だったが、そうだな。きゅうりの日もあったように思う。」
主人公(きゅうりの酢漬けか……それなら手に入るかもしれないな)
3日目
ラインハルト「これは?」
主人公「このあいだ話に出た、きゅうりの酢漬けです。」
主人公「1品だけだから、豪華ではないですけど……よかったらどうぞ。」
ラインハルト「なんと……感謝する。私のほうから、お嬢さまにお届けしよう。」
主人公「そうだ、よかったらラインハルトさんもいっしょに食べてくださいね。」
主人公「味がわかれば、次から自分でも作れるようになるかもしれませんし。」
ラインハルト「………。」
ラインハルト「……そうだな。」
主人公(なんだろう、今の間は……?」
4日目
ラインハルト「ああ、アリス(アレス)どの。先日は本当に助かった。」
主人公「先日って……きゅうりの酢漬けのことですか?どうでした?」
ラインハルト「お嬢さまはとても喜び、美味しいと言ってくださった。」
主人公「そうですか、よかったです!」
ラインハルト「お嬢さまの勧めで、私も少しいただいた。ありがとう。」
主人公「美味しかったですか?」
ラインハルト「……味に関するコメントは控える。」」
主人公「な、なんでですか?」
ラインハルト「私が褒めると、逆にけなしているようだからな。」
エルシェ「ラインハルトは味音痴なんだよ。」
主人公「味音痴?」
エルシェ「このあいだ
フーカが料理を失敗して、とんでもない味の超失敗作ができたんだけど……」
エルシェ「それをぺろっと食べてね。あまつさえ、おいしかったと言いだしたんだよ。」
ラインハルト「……味音痴なのは自覚している。料理の感想を言うのが下手なことも。」
ラインハルト「だが、感想は言えずともこの感謝の気持ちは変わりない。」
ラインハルト「ありがとう、アリス(アレス)どの。この恩は、必ず返す。」
主人公「いやいや、それは別にいいんですけど……。」
主人公(最初に渡した野菜、ベアトリスさんは無事に食べられたのかな……?)
最終更新:2022年04月04日 01:12