1日目
シモーヌ「最近、町のあちこちで手品をしているらしいね。」
ルーカス「ええ。」
ルーカス「みなさん笑顔になってくれるので、以前よりよく出向くようになりました。」
主人公「ルーカスさんの手品は本当にスゴイんですよ!」
ルーカス「……手品ではありません。あれこそ神の技…むぐ。」
主人公(話がややこしくなりそうだから、おさえとこう)
シモーヌ「……先日、町の母親たちから相談があってね。」
シモーヌ「子供たちがルーカスの手品や歌に夢中になりすぎて、暗くなるまで帰ってこないと心配していた。」
シモーヌ「かくいう私も、
ルーシーと
ジュリアンの帰りが遅くて叱ったところだ。」
シモーヌ「親としては、暗い帰り道でケガをしたり、カラダを冷やしてカゼでもひいたら…と心配になる。」
シモーヌ「実際にそういうことが起これば、町長としても母としても医者としても見過ごせなくなってしまう。」
シモーヌ「ただ、できれば、子供たちの楽しみを奪いたくはない。」
シモーヌ「だから日の出ているうちに家に帰れるように解散してもらえればいい。」
ルーカス「なるほど……承知いたしました。」
シモーヌ「すまないが、頼むよ。」
ルーカス「ふうむ……。」
ルーカス「私は子供たちよ喜ぶ顔を見るのがうれしくて、よかれと神の技を見せてきただけでしたが……。」
ルーカス「母親たちの気持ちをそこねてしまっていたとは。神としたことがウカツでした。」
ルーカス「今後はきちんと気を配るようにいたしましょう。」
2日目
ルーカス「ぱちん、と指をはじくとーー」
ルーカス「おや不思議、
テリーさんのポケットに入れたはずのリンゴは、ほら、私のアタマの上に。」
ひな「わあっ、すごいすごい♪」
ユキ「いつ見ても、驚かされるわねえ。」
テリー「消したり出したりはタネとしかけでなんとでもなるが……」
テリー「これまで見たどんなマジシャンよりカンペキな手並みだな。」
ジュリアン「そうだ、ルーカスさん。」
ジュリアン「ごにょごにょ…… みたいなのはできる?」
ルーカス「もちろん、できますよ。」
ジュリアン「ほんと!? じゃあ、やってみてよ!」
ルーカス「かしこまりました。」
ルーカス「ワン、ツー、スリー。」
ひな「わあっ。ひなのまわりに、おはながさいた〜♪」
ユキ「ほんとうに見事だこと。」
テリー「うーむ…… それなりに手品のタネは知っているつもりだがこいつはお手上げだ。まるで見抜ける気がしない。」
主人公(ふふ、本当の神技だからね)
ジュリアン「どうだ、ひな!」
ひな「すごい、すごいっ♪ たのしくて、うれしいの〜。」
ジュリアン「よしっ、それなら次は……。」
ジュリアン「ごにょごにょ…… ってのはどう?」
ルーカス「ふむ、やってみましょう。」
ルーカス「ワン、ツー、スリー。」
(小鳥のモンスター出現)
ユキ「ひゃっ!?」
(ユキが転倒)
主人公「ユキさん!!」
ユキ「だ、大丈夫。少しびっくりしただけよ。」
ユキ「あいたたた……。」
テリー「動かないでください。……どうやら足首をひねってしまっている。」
ルーカス「なんと……。」
ジュリアン「お、オレがひなをびっくりさせようとしてヘンなことたのんだから……。」
テリー「念のため病院に行きましょう。オレが付き添います。」
ユキ「そ、そうかい? 悪いわねえ。」
ひな「ユキさん、だいじょうぶかな……。」
ジュリアン「しんぱいだな。オレたちもいこうぜ。」
ひな「うん。」
ルーカス「……………。」
3日目
シモーヌ「幸い、ユキさんは足を軽くひねっただけで、尾を引くケガではありません。」
シモーヌ「ただ……。」
スカーレット「タイミングがよくないですね。」
シモーヌ「ちょうど、問題になっていたところだからね。」
ルーカス「神の技が、人を傷つけてしまうとは……申し訳ありません。」
スカーレット「あなたの手品が直接起こしたことではないですし、犯罪でもありませんが……。」
リヴィア「んあ~……かりに神さまがわるさをしてもとめられる者などおらんが、しばらく、ひかえてもらうしかないか。……その、てじなを。」
主人公「そんな。」
主人公「ルーカスさんはみんなを楽しませようとしただけなのに……。」
主人公「そもそもあのとき小鳥モンスターを出したのはーー」
(ルーカスが手を叩く)
主人公(ジュリアンが頼んだからで……!)
主人公(あ、あれ……? 声が出ない!?)
シモーヌ「それでは、しばらく手品は禁止ということで。」
シモーヌ「それでいいかな、ルーカス?」
ルーカス「異存ありません。」
主人公「ルーカスさん……。」
4日目
ルーカス「♪波にゆられて 村から町へ 近くて遠い きのうとあしたへ」
主人公(ルーカスさんが歌ってる……)
ルーカス「♪来ては行き 寄せては返す 過ぎゆくときは おお我と伴(とも)に」
主人公(いつもどおり、意味がわからない……)
ルーカス「♪だからゆくんだ 僕はきたんだ 幸せの花 咲かせるため」
主人公(でも、なんだか気持ちいい……)
ルーカス「♪生きるよろこび あしたのともしび ああ 君に 道を照らす光を」
主人公(あたたかくて…… 幸せな気持ち…………)
ルーカス「♪世界の 喜びを」
主人公「ふわあ……。」
主人公「う……。」
ルーカス「目が覚めましたか。」
主人公「ここは……どうして?」
主人公「うわわ……!?」
主人公「腰が抜けて、た、立てない?」
ルーカス「どうやら私の歌の影響のようですね。」
主人公「え……。」
ルーカス「私の……神の歌を人に聴かせることは禁止事項としなければならないようです。」
ルーカス「みだりに聴かせれば、魂を昇天させてしまいそうだ。」
主人公「昇天……!?」
ルーカス「……ふう。」
ルーカス「自分がこの町にきたのはなにかの間違いなのでしょうか。」
わかりません・そうは思いません
▼わかりません
▼そうは思いません
(どちらもそのまま次の場面へ)
ルーカス「アリス(アレス)さん。あなたは、どうしてこの町にいるのです?」
主人公「どうして……。」
主人公「リグバースに来たとき、私(僕)には記憶がありませんでした。」
主人公「そんな自分にみんなとてもやさしくしてくれた。」
主人公「だから、できるだけのことを返したいんです。」
主人公「やさしい人たちのために、できるだけのことを。」
ルーカス「すばらしいと思います。あなたの純粋な想いを感じますよ。」
ルーカス「そう…… きっと私もそうなのです。」
ルーカス「人々の幸せな顔を見ていたい。」
ルーカス「それだけなのです。」
主人公「ルーカスさん……。」
主人公「だったら、その気持ちをみんなに伝えましょう!」
ルーカス「伝える……。」
ルーカス「しかしなにぶん私、口下手なもので。」
主人公「そうは思わないですけど、それなら……」
主人公「そうだ、歌で伝えるのはどうですか?」
主人公「ルーカスさんの歌なら、ハミングだけでも思い伝わる気がします。」
主人公「それなら言葉はいらないですよね?」
ルーカス「しかし私の歌はたったいま禁止事項にーー」
主人公「そこは、昇天しないくらいに調整してください。」
主人公「ルーカスさんならできますよね? なんたって、神さまなんですから♪」
ルーカス「フ、フフ、ハハハ。神を試すかのようなその言動。」
ルーカス「やはりあなたは神をもおそれぬ人だ。」
ルーカス「むろん、できますよ。少々、練習は必要ですが。」
主人公「じゃあ、ルーカスさんが練習しているあいだに私(僕)はシモーヌさんたちに相談しておきます。」
主人公「町のみんなに歌を聴いてもらう場を用意しないといけませんからね。」
ルーカス「……なにからなにまで。ありがとうございます。アリス(アレス)さん。」
5日目
主人公「シモーヌさん、お話があります。」
シモーヌ「どうした、アリス?」
主人公「ルーカスさんのことなんですけど……。」
シモーヌ「歌か……。」
主人公「はい。」
主人公「手品は禁止されましたが、歌は禁止されていないですよね。」
シモーヌ「たしかに、歌については禁止とは言っていないな。」
シモーヌ「………………。」
シモーヌ「わかった。」
シモーヌ「なにか考えがあるようだし、リヴィア署長と相談して場を用意しよう。」
主人公「ありがとうございます!」
6日目
主人公(わっ、すごい人が集まってる! みんなルーカスさんの歌を聴きに来てくれたんだ)
シモーヌ「思いのほか、大きなイベントになってしまったな。」
ユキ「そりゃあ、ルーカスが歌うと聞いたら駆けつけないわけにはいかないもの。」
ランドルフ「まだ足が痛むんじゃないかい? あまり無理をするんじゃないよ。」
ユキ「ふふ、ここに来るまで足取りが軽くて痛みも感じなかったわ。」
シモーヌ「では、そろそろ始めるか。」
スカーレット「問題が起これば即中止にしますので、そのつもりでお願いします。」
ルーカス「かしこまりました。」
ルーカス「えー、本日は晴天なり。本日は晴天なり……。」
ルーカス「私はルーカス。不思議の縁でこの町にたどり着き、みなさんには、とてもお世話になっています。」
ルーカス「私は神の技……手品でみなさんの喜ぶ顔が好きです。」
ルーカス「けれど今は理由があって、手品を披露することはできません。」
ルーカス「ですが、なにかみなさんに喜んでもらえたらと思い、歌を披露することにしました。」
ルーカス「こほん。……しばしご清聴を。」
主人公(ルーカスさん、がんばって!)
ルーカス「♪晴れた春の日 吹雪く冬の日」
ルーカス「♪楽しく歌おう 歌い明かそう」
ユキ「うっとりするような歌声ねえ。」
ルーカス「♪青い大空 緑の大地 共に生きゆく 僕らは仲間」
シモーヌ「なんだ……? 胸にこみあげるものが……。」
ランドルフ「これは…… 得も言われぬ幸福感ですな。」
ルーカス「♪やさしい光 みらいへのきぼう」
ルーカス「♪さあ 手を取り 愛し合おう」
ルーカス「♪永遠に 願うよ」
ルーカス「♪この胸に 誓うよ」
ルーカス「ご清聴ありがとうございました。」
主人公(反応がない……? 伝わらなかったのかな……)
ジュリアン「わぁーっ!」
ひな「すご〜い♪」
セシル「なに、これ…… カラダがふるえてる。」
ユキ「ルーカス! すばらしかったわ!」
テリー「こりゃあ手品どころじゃないぞ! ブラボーだ!」
シモーヌ「子供たちが夢中になるわけだ……。」
ハインツ「これはもう歌じゃなくて…… ルーカスの心そのものだったね?」
シモーヌ「たしかに……。」
主人公(伝わった……!)
ジュリアン「……………。」
主人公「ジュリアン?」
ジュリアン「み、みんな…きいて。」
ジュリアン「こないだユキさんがケガしちゃったのは…… オレがわるいんだ!」
ジュリアン「オレがルーカスさんに、小鳥モンスターを出してってたのんだから……!」
ジュリアン「そうしたら、ひながよろこぶかなと思って…… でも、ユキさんをびっくりさせちゃった。」
ジュリアン「ごめんなさい、ユキさん。それに……ルーカスさん。」
ジュリアン「ルーカスさんは、なにもわるくないんだ!」
ジュリアン「だから……いままでどおり手品をさせてあげてください!」
シモーヌ「ジュリアン……。」
ユキ「わたしははじめから、怒ってないわよ。誰も悪いなんて思ってない。」
ユキ「あんなステキな手品を見せてくれたルーカスのこともね。」
ユキ「ねえシモーヌ。私からもお願いするわ。」
ユキ「ルーカスに、自由に私たちを楽しませてほしいの。」
シモーヌ「……そうですね。」
シモーヌ「子供たちの帰りが遅くならないという条件付きなら。」
ジュリアン「やった!!」
シモーヌ「ジュリアン!」
シモーヌ「これからは、自分がしたことは隠さずにきちんと話すこと。」
ジュリアン「わ、わかってるよ。」
シモーヌ「ルーカス、ご迷惑をおかけしました。」
シモーヌ「今度はぜひ、私にも手品を見せてください。」
ルーカス「喜んで。」
主人公「みんなに気持ちが伝わりましたね。」
ルーカス「アリス(アレス)さんのおかげです。ありがとうございました。」
主人公「いいんですよ。」
主人公「私(僕)もまた、手品……じゃなくて神の技を見たかったですから。」
ルーカス「そうですか。」
ルーカス「ではーー ワン、ツー、スリー。」
(ルーカスの手に花が現れる)
ルーカス「あなたに捧げる神の技です。」
主人公「ふふ、ありがとうございます。」
最終更新:2025年02月04日 20:54