たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ
たぶん、それとないおとぎばなし
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rm96
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森で道に迷った。
真っ暗な真っ暗な森の中。
真っ暗な真っ暗な森の中。
「にゃあ」
鳴いても誰も出てこない。
ざわざわって木が揺れて、なんかあっちこっちに誰かがいるようないないような…。
ざわざわって木が揺れて、なんかあっちこっちに誰かがいるようないないような…。
「サユ? エリ?」
だけど二人は出てこなくって…。
どれくらい歩いたかなぁ…。
泥だらけになったスニーカー。
森の湿気にじんわりと濡れたデニムのショートジャケットが重くなってきた…。
泥だらけになったスニーカー。
森の湿気にじんわりと濡れたデニムのショートジャケットが重くなってきた…。
真っ暗な森の中にぽつん。
どうしよぅ…。
きゅうっとしっぽを握って、ざわざわざわざわって風が吹いて木が揺れるたびにぴくっぴくって耳が動く。
きゅうっとしっぽを握って、ざわざわざわざわって風が吹いて木が揺れるたびにぴくっぴくって耳が動く。
怖い…怖ぃよ…。
『森には魔女がいるんだって』
『見つかったら食べられちゃうらしいよぉ』
『見つかったら食べられちゃうらしいよぉ』
肝試し。
そんなノリで森の中に入ったら見事に二人とはぐれた。
だってさぁ…。おばけ…おばけが…。
ぐあーーーって…。
そんなノリで森の中に入ったら見事に二人とはぐれた。
だってさぁ…。おばけ…おばけが…。
ぐあーーーって…。
思い出しただけでも体が震えた。
きゅって体を抱きしめてとぼとぼと歩き続けてたら、
きゅって体を抱きしめてとぼとぼと歩き続けてたら、
ガサガサ…!
「ひっ!」
目の前で草が揺れた。
おっきな木の向こうに誰かいるっ!
がくがく足が震えて、ぺたんって座り込んだ。
思うように動けなくって、がさがさと揺れてる草の方を見てたら、
「誰?」
声。高くって、でもかわいい声だった。
なんか拍子抜けしたような感じだけど…でも…もしかしたら…!
おっきな木の向こうに誰かいるっ!
がくがく足が震えて、ぺたんって座り込んだ。
思うように動けなくって、がさがさと揺れてる草の方を見てたら、
「誰?」
声。高くって、でもかわいい声だった。
なんか拍子抜けしたような感じだけど…でも…もしかしたら…!
『魔女ってなんにでも化けられるんでしょー』
『なんかねぇ、色が黒いんだって』
『なんかねぇ、色が黒いんだって』
ガサガサ…。
「ぅぁっ…!」
木の後ろから出てきたの色の黒い、だけどキレイな女の人だった。
「う…ぁ…わぁ…!」
色が黒い…色が黒いよ…。まっ…まままままままま魔女!?
わたわたと暴れるだけで体が動かない。
魔女が不思議そうな顔をして、こっちに向かってくる!
「う…ぁ…わぁ…!」
色が黒い…色が黒いよ…。まっ…まままままままま魔女!?
わたわたと暴れるだけで体が動かない。
魔女が不思議そうな顔をして、こっちに向かってくる!
どっ…どーしよっ!
しっぽがぴぃんって緊張して、耳がふいっと後ろを向く。
キレイな魔女はそっとレイナの前に屈むと、ふわりとほっぺに手を…。
「ん? どうしたの? 大丈夫?」
ちょっと冷たい手。
ふんわりと微笑みかけられて、びっくりするほどすーっと怖さが消えていく。
不思議な手…。
やさしい笑顔。
見とれてて、気がついたときには腕の中だった。
肩口が大きく開いた薄いシャツとカーディガン越しのぬくもり。
キレイな魔女はそっとレイナの前に屈むと、ふわりとほっぺに手を…。
「ん? どうしたの? 大丈夫?」
ちょっと冷たい手。
ふんわりと微笑みかけられて、びっくりするほどすーっと怖さが消えていく。
不思議な手…。
やさしい笑顔。
見とれてて、気がついたときには腕の中だった。
肩口が大きく開いた薄いシャツとカーディガン越しのぬくもり。
トクトクトク…。
心臓の音が優しい。
心臓の音が優しい。
あったかくて…気持ちよくって…。
あぁ…なんか眠くなってくる。
へんなの…ほっとする。
まぶたが重い…。
でも…寝たら食べられちゃうかな…。
ちらりと見上げたけど、なんかおかーさんみたいなおねーさんみたいなやさしい目。
しっぽがくてーっとリラックス。
あぁ…なんか眠くなってくる。
へんなの…ほっとする。
まぶたが重い…。
でも…寝たら食べられちゃうかな…。
ちらりと見上げたけど、なんかおかーさんみたいなおねーさんみたいなやさしい目。
しっぽがくてーっとリラックス。
ほぁってため息がこぼれ出て、どっと疲れが噴きあがった。
見上げたら、魔女はレイナの頭をゆっくりゆっくり撫でながら微笑んでた。
「こんなところでどうしたの?」
「ぁ…その…トモダチと……はぐれて…」
「そっか。道に迷っちゃったのね」
こくりとうなずいたら、
「でも、どうしてこんなところに来ちゃったの?」
見上げたら、魔女はレイナの頭をゆっくりゆっくり撫でながら微笑んでた。
「こんなところでどうしたの?」
「ぁ…その…トモダチと……はぐれて…」
「そっか。道に迷っちゃったのね」
こくりとうなずいたら、
「でも、どうしてこんなところに来ちゃったの?」
森は危ないところだから、入っちゃダメなんだよって…オトナは言う。
「んぅ…。その……あの…」
言いづらい。
だって、こんなやさしい人が魔女…だなんて…。
なのに、この人はふふふって、笑った。
「魔女を見に来たの?」
言いづらい。
だって、こんなやさしい人が魔女…だなんて…。
なのに、この人はふふふって、笑った。
「魔女を見に来たの?」
ドキッ!
心臓が跳ね上がって、またぴんってしっぽが逆立った!
「あっあっ…あのっ! それはっ!」
「ふふっ。いいよ。そう思われてもしかたないもん」
「へ!?」
「魔法使いなの。だから魔女って言われても間違ってないし」
そう言って、魔法使いさんは笑った。
「あっあっ…あのっ! それはっ!」
「ふふっ。いいよ。そう思われてもしかたないもん」
「へ!?」
「魔法使いなの。だから魔女って言われても間違ってないし」
そう言って、魔法使いさんは笑った。
こんな暗い森の中に住んでたら…そりゃそうだよね。
それに…よくここからは大怪我したり帰ってこなかったりする人がいるし。
こんな暗い森だから狼に襲われたり、迷って力尽きたりはあるんだろうけど…怪物を見たって人もいる。
それに…よくここからは大怪我したり帰ってこなかったりする人がいるし。
こんな暗い森だから狼に襲われたり、迷って力尽きたりはあるんだろうけど…怪物を見たって人もいる。
魔法使いさんは相変わらずレイナの頭を優しく撫でてくれていた。
「あの…」
「なぁに?」
「魔法使いさんは…なんで、ここにいるの?」
そしたら、少し悲しそうな顔をして…笑った。
「うん…。そうだね」
くしゃくしゃと頭を撫でて、そっとぬくもりは離れていった。
「あの…」
「なぁに?」
「魔法使いさんは…なんで、ここにいるの?」
そしたら、少し悲しそうな顔をして…笑った。
「うん…。そうだね」
くしゃくしゃと頭を撫でて、そっとぬくもりは離れていった。
「帰る場所がね…ないから」
そう呟いて、そして笑って…。
そんな顔もキレイだった。
そんな顔もキレイだった。
そっと魔法使いさんが手を差し出す。
「立てる?」
「あっ。はい」
しっかりと手を掴んで立ち上がると、ふと人影に気づいた。
「…!?」
魔法使いさんが出てきた木の後ろ。
「立てる?」
「あっ。はい」
しっかりと手を掴んで立ち上がると、ふと人影に気づいた。
「…!?」
魔法使いさんが出てきた木の後ろ。
レイナとおんなじ頭に耳。そしてしっぽ。
暗いからわかりにくいけど、たぶん黄色と黒の縞模様。
腕を組んで木の陰からじっとこっちを睨んでる。
『なんかしてみろ。おまえを食い殺す』
そんな言葉が耳元で聞こえるぐらいの視線。
その冷たい目に体がすくんで、背筋にゾクゾクと恐怖が走った!
トラだ! トラがいるっ!
レザーのジャケットにジーンズ。しっぽをくるりと左足に巻きつけて、じっと伺ってる。
暗いからわかりにくいけど、たぶん黄色と黒の縞模様。
腕を組んで木の陰からじっとこっちを睨んでる。
『なんかしてみろ。おまえを食い殺す』
そんな言葉が耳元で聞こえるぐらいの視線。
その冷たい目に体がすくんで、背筋にゾクゾクと恐怖が走った!
トラだ! トラがいるっ!
レザーのジャケットにジーンズ。しっぽをくるりと左足に巻きつけて、じっと伺ってる。
カチッと目が合った。
怖い…。
怖いけど、静かなその目はどこかさびしそうで…なのに、やさしくも感じて…。
それはきっとこの人のせいなんだ。
きゅって手を握って、
「さぁ、帰ろうか。案内してあげるよ」
って、微笑むこの人の…。
怖い…。
怖いけど、静かなその目はどこかさびしそうで…なのに、やさしくも感じて…。
それはきっとこの人のせいなんだ。
きゅって手を握って、
「さぁ、帰ろうか。案内してあげるよ」
って、微笑むこの人の…。
わかんないけど、なんだかあのヒトが近く感じる。
じっと見つめ返したら、くるりと背中を向けてトラさんは暗闇の中に消えていった。
じっと見つめ返したら、くるりと背中を向けてトラさんは暗闇の中に消えていった。
「どうしたの?」
「あっ…あの…大丈夫です。なんでもないです」
けれど、魔法使いさんはくるりと振り向いて、そしてやわらかく微笑んだ。
「…」
わかんないけど、悔しかった。
「あっ…あの…大丈夫です。なんでもないです」
けれど、魔法使いさんはくるりと振り向いて、そしてやわらかく微笑んだ。
「…」
わかんないけど、悔しかった。
「さぁ、行くよ」
「はい」
「はい」
驚くほどあっという間に森を抜けて、あの人はまた暗い暗い森の中へと消えていった。
あれから森には近づけなくなっちゃって、もう…あの人には会えなかった。
あれから森には近づけなくなっちゃって、もう…あの人には会えなかった。
☆
ぼんやりとにぎやかな楽屋を眺めてた。
さゆは相変わらず鏡に夢中で、エリも負けじと鏡に夢中。
さゆは相変わらず鏡に夢中で、エリも負けじと鏡に夢中。
あの人は楽屋に遊びに来たのんつぁんとおしゃべりしてて、みきねぇが楽しそうにツッコミを入れてる。
なんだったのかなぁ。
暗い森。
迷子のレイナ。
魔法使い。
木の陰のトラ。
迷子のレイナ。
魔法使い。
木の陰のトラ。
不思議と懐かしい。
なんかおとぎばなしみたい。
やっぱりネコなのか…なんてことも…。
なんかおとぎばなしみたい。
やっぱりネコなのか…なんてことも…。
ほぅとため息をついたら、ふと後ろに人の気配。
「レイナ?」
「あっ! はいっ」
振り向いたらいしかーさん。
隣に座ると、後ろから抱きしめられた。
「ん? どうしたの? 大丈夫?」
「あっ! はいっ」
振り向いたらいしかーさん。
隣に座ると、後ろから抱きしめられた。
「ん? どうしたの? 大丈夫?」
あ…。
「具合悪い? ぼーっとしてるみたいだけど」
顔を覗き込まれて、思わず目をそらした。
ゆっくりと頭を撫でる手。
薄いキャミ越しのあったかいぬくもり。
「最近は暑いからねぇ。ばててない?」
「あっ。ハイ。レイナはいつでも元気ですよぉ」
心配そうな笑顔に笑って見せた。
そしたら満足そうに笑って…。
顔を覗き込まれて、思わず目をそらした。
ゆっくりと頭を撫でる手。
薄いキャミ越しのあったかいぬくもり。
「最近は暑いからねぇ。ばててない?」
「あっ。ハイ。レイナはいつでも元気ですよぉ」
心配そうな笑顔に笑って見せた。
そしたら満足そうに笑って…。
ふと、視線を感じて前を見たら腕組みしてこっちを見ているみきねぇと目が合った。
「ぁ…」
鋭い視線だったけど、ふっ…と笑って、ゆっくりと楽屋を出て行った。
ちらりといしかーさんを見たら、やさしい目でその後姿に微笑みかけていた。
「ぁ…」
鋭い視線だったけど、ふっ…と笑って、ゆっくりと楽屋を出て行った。
ちらりといしかーさんを見たら、やさしい目でその後姿に微笑みかけていた。
ドキドキした…。
すぅっとあの森が淡く視界にぼやけてて…。
すぅっとあの森が淡く視界にぼやけてて…。
いしかーさんは立ち上がると、
「さっ。あたしたちも行こう」
手を差し出したから、しっかり握った。
「はい」
「うん」
ぎゅっと力がこもって、
「さっ。あたしたちも行こう」
手を差し出したから、しっかり握った。
「はい」
「うん」
ぎゅっと力がこもって、
「…!」
唇に触れたいしかーさんの唇。
「……」
言葉なんて出なくってただ見つめてたら、ふわりと微笑んだ。
言葉なんて出なくってただ見つめてたら、ふわりと微笑んだ。
「さぁ、行くよ」
「はい!」
「はい!」
並んで歩き出す。
光の中はあったかくて、少しだけ眩しかった。
光の中はあったかくて、少しだけ眩しかった。
(2004/8/20)