たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ
かすかなノイズの向こう側
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rm96
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『…あ。梨華ちゃん?』
「美貴ちゃん?」
―
ちょっとざらっとしたノイズの向こうから届いた声。
きゅっと胸が締め付けられて、きゅんって胸が弾んで…。
きゅっと胸が締め付けられて、きゅんって胸が弾んで…。
会いたい…。
―
「どうしたの?」
ちょっと…元気ない?
『うん。起きてた?』
あ…起こしちゃったかなぁ…。
「ううん。なんとなく起きてた」
ちょっとうとうとしてたけど…ね。
『何? そのなんとなくって』
あー。気、遣わせちゃってる。寝てたって言ってもいいのに。
「うーん…。ちょっとうとうと…っとは…してたかも」
ウソついてもしょーがないしね。
『そっか。ごめんね』
疲れてるよね。梨華ちゃんも。
「ううん。うれしい」
ホントだよ。
『……あぁ』
うれしい。
『…ありがと』
あっ…。なんか笑ってる?
「ふふふっ。うん」
あーあぁ。照れちゃって。ふふっ。『なになに?』って、かわいいなぁ。
「なんでもない」
わけないんだけどね。美貴ちゃん反応がかわいいんだもん。
『なによぉ。今笑ってるでしょー』
もぉ。気になるなぁ。
「だって、美貴ちゃん…かわいいなぁって」
だからね、つい…ね。
『なにそれー』
理由になってないじゃん。うれしいけど。
『ま、いいけどさ。ね、何してた?』
おっと! 車が…。
「……」
あ、美貴ちゃん、外なんだ…。
『あ、ゴメン。何? 聞こえなかった』
ったく、他の道通れよ! 聞こえなかったじゃん!
「あぁ、うん。テレビ見てた」
なんとなくつけてただけなんだけどね。
『そうなんだ』
ふーん。
『何見てたの?』
でも、今日って、別になんかおもしろいのって…ないよね。
「うーん。何ってわけじゃないけど、なんとなくつけてただけって感じ」
だって、たいくつなんだもん。
『そっかぁ』
…………。
「美貴ちゃんは…仕事?」
ラジオの録りかな?
『うん。今さっき終わったトコ』
あーもー日付変わるじゃん。
「おつかれさま」
もう明日になっちゃうんだ…。
『ありがと』
ん…。
『…ぃ……』
っとぉ! だから他の道通れっての!
「何? 美貴ちゃん!?」
あーもー! 車のばかぁ!
「ゴメン。聞こえなかったよ」
もう一回言ってくれるかな?
『うん。なんか、さっきからさぁ…。ここ、そんなにこの時間通んないのに…』
んだよぉ。今日はさぁ。
「そうなの?」
じゃなくってね。美貴ちゃん?
『あ、ゴメンね。うん。梨華ちゃん』
待ってるよね。
「うん。なぁに?」
何て言ったの?
『だいすき』
やべっ。顔赤くなってきた…!
「…。あぁ」
うわ…。どうしよ…。
『あっ! なにぃ?』
あぁ。ってなによぉ!
「あっ! ごめん。そのっ…なんか…」
何であたし照れちゃってるのぉ!?
「ドキッとしちゃって…。美貴ちゃん。あたし今、真っ赤だよ…」
あーーーっ。バクバク言ってる!
『へっ!?』
もしかして、美貴とおんなじ?
「なんか、恥ずかしかった。今更なによって感じだよね」
いっぱいいっぱい言ってるのに、言ってもらってるのに…ね。
『ううん。美貴も自分で言ってて恥ずかしかった』
だぁーって、ドキドキしてるし。
「えー。何で恥ずかしいのぉ」
もっと言ってよ。
『えー。だってぇ、なんか改まって言い直すのって…照れない?』
ヘンに意識しちゃったし…。
『じゃあさぁ、梨華ちゃんも言ってみなよ』
絶対に照れるから。
「えー。うん…」
って…。
「いくよ?」
あっ。ドキドキするっ。
「すき」
きゃーーー! 言っちゃったぁ! うわっ。熱っ!
『えーーーっ!』
ちょっとぉ!
『イシカワさん? ちゃんと聞いてた?』
もちろん、聞いてるよねぇ。
『美貴は、だいすきって言ったんですけどぉ』
ずるくない?
「あー。だってぇ…」
ドッキドキなんだってば!
『だってじゃないじゃん。ね、ちゃんと言って?』
ね? ほらほらっ!
「…うん。わかった」
なんか不思議。なんで…しかも電話なのに、こんなに照れるんだろ。
「だいすき」
言っちゃった。
『ふふっ。ははははっ!』
きゃーーーっ!
『なんか、やっぱ恥ずかしいね』
やぁ、なんかくすぐったい!
『改まって言うのって、なんか…照れるね』
あー。ドキドキ止まんない。
「うん。だね。でも…うれしい」
ふふふっ。
「ね。……ちゅっ!」
こうなったら、何やってもドキドキするんだから。
『うわぁぁぁっ! きしょっ!』
梨華ちゃんっ! ちょっとぉ! それずるい!
「なによぉ! きしょいってぇ!」
ホントは直接したいんだぞっ!
『だってぇ』
恥ずかしかったんだからぁ!
『もう。梨華ちゃん!』
「ええっ!!」って。ふふっ。おろおろしてる。
『…ちゅっ!』
どうだっ!
「…ぁ。美貴ちゃん!?」
……ずるぃ。
『へへへっ。なんてね』
ホントは唇にしたいけど。
「もぉ…美貴ちゃん…」
ずるいよぉ…。
『うん?』
なに?
「……会いたいなぁ…」
―
声だけじゃ、物足りないよ。
―
ドアのチャイムが鳴る。
『ねぇ、梨華ちゃん』
そして、突然切れた通話。
キィッ…。
開けたらドアの横の壁によりかかった美貴の姿。
「来ちゃった」
「いらっしゃい」
ふわりと広がっていく梨華の笑顔。
抱き合って、唇が重なる。
カシャン…。
ドアが静かに閉まった…。
短い夏の夜は駆け足で、だけど熱く流れていく。
(2004/6/7)