たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ
あなたに触れる、その時に
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rm96
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唇が触れるその瞬間、あなたは何を思うんだろう?
眠り姫には、わからない。
□
ソファの上。
あなたは小さく体を丸めて眠っている。
あなたは小さく体を丸めて眠っている。
誰もいない楽屋。
ドアの向こうからなんとなく聞こえてくる声がいくつも通り過ぎていく。
穏やかな寝顔を眺めながら、ソファの前にしゃがんだ。
「梨華ちゃん…」
そっと唇を指でなぞる。
「ん…」
小さく零れた声。
やわらかい弾力と温かさ。
軽く押して、もう一度なぞって…。
「梨華ちゃん…」
そっと唇を指でなぞる。
「ん…」
小さく零れた声。
やわらかい弾力と温かさ。
軽く押して、もう一度なぞって…。
「すきだよ。梨華ちゃん」
素直になれない気持ちを、そっと吐き出す。
零れてる前髪を払いあげて、少し指先でいじってみる。
美貴の手の中でさらさらと流れる茶色の髪。
美貴の手の中でさらさらと流れる茶色の髪。
『ねぇ、美貴ちゃん』
もっとその甘い声で囁いて?
ねぇ、もっと美貴の名前…呼んで?
ねぇ、もっと美貴の名前…呼んで?
その腕でもっと美貴のこと、抱きしめてほしい。
「ねぇ、梨華ちゃん?」
すき。
求めてくれたら、美貴はそれ以上をあげるよ?
誰にも…渡さない。
いじっていた前髪から手を離して、もう一度ゆっくり唇をなぞる。
薄く開いて、美貴を誘う唇。
薄く開いて、美貴を誘う唇。
“愛してる。”
言葉にするのはなんだか違うような気がして、心の中にしまっておいた。
そのかわり唇に想いを込める。
そのかわり唇に想いを込める。
「梨華ちゃん…」
すき。すきだよ。
ドキドキと心臓が高鳴って、速くって、なんか苦しい。
辿っていた指先を離して、そっと唇を寄せた…。
■
ドアがわずかに開いてた。
なん…誰か閉め忘れたと?
そう思ってそのまま入ろうとして、足が止まった。
そう思ってそのまま入ろうとして、足が止まった。
…みきねぇ?
奥のソファの前に座ってる横顔。
そして眠ってる人。
そして眠ってる人。
いしかーさん…?
「レイナ?」
入ろうとしないレイナに不思議そうにさゆが後ろから声をかける。
でも振り向かなかった。
でも振り向かなかった。
だって、みきねぇが…いしかーさんを見つめてる。
すごく優しい目。なのに…ちょっとせつなそうで…。
唇にそっと触れてる指先が優しいのも、髪に触れた指の動きがやわらかいのも…。
唇にそっと触れてる指先が優しいのも、髪に触れた指の動きがやわらかいのも…。
ズキン…。
胸が…痛か。
いしかーさん?
いしかーさんは…やっぱみきねぇがすきなん?
いしかーさん。
レイナは…レイナは、コドモじゃないちゃ。
レイナのことも…見つめてほしい。
レイナのことも…見つめてほしい。
心臓がどきどきいってる。
苦しい…。
苦しい…。
髪をいじってた指先がまた唇に動いた。
そっと顔が近づいて……!
そっと顔が近づいて……!
みきねぇ!
やだ! 離れてっ!
なのにカラダが動けんちゃ!
声が…でない…。
声が…でない…。
いしかーさんは相変わらず眠ってる。
ゆっくりといしかーさんに近づく、みきねぇの唇。
□
レイナが急に立ち止まった。
後ろから覗き込んだら、藤本さんが石川さんを見つめていた。
ソファの前に座ってる藤本さんは、なんかいつもよりも大人っぽく見えた。
だって、すごく切なそうな横顔。
唇をなぞる指先がなんだか苦しそう。
だって…なんだかゆっくりと確かめるような動きが、そのままキモチのような気がして…。
唇をなぞる指先がなんだか苦しそう。
だって…なんだかゆっくりと確かめるような動きが、そのままキモチのような気がして…。
レイナは唇を噛んで、じっと様子を見ている。
起きる気配のない石川さん。
髪をいじる藤本さんの微笑み。
髪をいじる藤本さんの微笑み。
ぎゅっとレイナの手に力がこもって、痛い。
たぶんこれは、れいなの痛み。
小さな小さな胸の鈍い痛み。
小さな小さな胸の鈍い痛み。
だから握り返した。
できるだけ、強く。
できるだけ、強く。
藤本さんの指先がまた石川さんの唇に戻る。
見つめるまなざしのせつなさ。
すっと、顔が近づいて、レイナがはっと息を詰めた。
すっと、顔が近づいて、レイナがはっと息を詰めた。
■
そっと重なった唇。
眠り姫は、まだ起きない。
(2005/3/21)