たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ
6.火
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rm96
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深い色をした泉はぼんやりと月を浮かべている。
吸い込まれるほどのこの漆黒に、あなたの心が映ればいいと願った。
吸い込まれるほどのこの漆黒に、あなたの心が映ればいいと願った。
微かに風に水面を揺らす泉。
ミキは顔をかかった前髪を掻き揚げながら、そのまま空を仰いだ。
ここに来て、どれだけの日が過ぎたのだろう。
ミキは顔をかかった前髪を掻き揚げながら、そのまま空を仰いだ。
ここに来て、どれだけの日が過ぎたのだろう。
漆黒の水面はただ揺れているだけ。
零れ落ちたため息は涼やかな風の中に流れていった。
零れ落ちたため息は涼やかな風の中に流れていった。
*
ランプの中の小さな赤い火が揺らめく。
紅く煌きながら揺れる赤ワイン。
グラスに絡んだ細い指は何かをもてあますように紅い水面を揺らし続ける。
紅く煌きながら揺れる赤ワイン。
グラスに絡んだ細い指は何かをもてあますように紅い水面を揺らし続ける。
扉が軋んだ音を立てて開く。
気だるげな足音がリカの横を通り過ぎていく。
擦れた声を上げながらゆっくりとしまった扉。
ミキはリカを一瞥するとベッドの上に転がった。
気だるげな足音がリカの横を通り過ぎていく。
擦れた声を上げながらゆっくりとしまった扉。
ミキはリカを一瞥するとベッドの上に転がった。
ちりちりと芯を焦がすランプの火。
少し動くたびにベッドが擦れた小さな声を上げる。
見つめる天井にゆれる紅い光。
「なぜ…行かなかった?」
コトッとグラスの底がテーブルを叩いた音。
「なぜ?」
足音もなくベッドへと来たリカ。
「それを聞いて…どうするの?」
「……聞いてるのはこっちだ」
「…」
ベッドに腰掛けるリカ。
ミキはぼんやりと天井を見つめたまま、呟くように続けた。
「追いかけることはできたはず。なぜついていかなかった?」
太陽の光に当たらなければ済むこと。ただそれだけ。
「なぜ自分のものにしなかった?」
「…」
ランプの中の小さな火が大きく揺らめいて、壁に描かれた影も揺れる。
かすかにため息の音。
「住む世界が違う…。あなたならわかるはず」
「…」
吸血鬼も狩人も所詮は闇に生きる獣。
ミキは体を起こすと、後ろから包むように腕を回して抱きしめた。
リカの体が強張る。
ミキは首筋に顔をうずめて、掠れた声で呟いた。
「…逃げるな。何もしないから…」
「…」
「このまま…」
強く抱きしめる腕から伝わる温かさ。首筋を掠める微かな吐息。
少し動くたびにベッドが擦れた小さな声を上げる。
見つめる天井にゆれる紅い光。
「なぜ…行かなかった?」
コトッとグラスの底がテーブルを叩いた音。
「なぜ?」
足音もなくベッドへと来たリカ。
「それを聞いて…どうするの?」
「……聞いてるのはこっちだ」
「…」
ベッドに腰掛けるリカ。
ミキはぼんやりと天井を見つめたまま、呟くように続けた。
「追いかけることはできたはず。なぜついていかなかった?」
太陽の光に当たらなければ済むこと。ただそれだけ。
「なぜ自分のものにしなかった?」
「…」
ランプの中の小さな火が大きく揺らめいて、壁に描かれた影も揺れる。
かすかにため息の音。
「住む世界が違う…。あなたならわかるはず」
「…」
吸血鬼も狩人も所詮は闇に生きる獣。
ミキは体を起こすと、後ろから包むように腕を回して抱きしめた。
リカの体が強張る。
ミキは首筋に顔をうずめて、掠れた声で呟いた。
「…逃げるな。何もしないから…」
「…」
「このまま…」
強く抱きしめる腕から伝わる温かさ。首筋を掠める微かな吐息。
ランプの火が揺れる。
ちりちりと芯を焦がして燃え続ける小さな火。
淡い赤い光は二人をやさしく包み込んだ。
ちりちりと芯を焦がして燃え続ける小さな火。
淡い赤い光は二人をやさしく包み込んだ。
*
ずっと一人だったと狼は言った。
自分を生んで母は死に、同業者の騙まし討ちにあって父は死んだ…と。
剣を手に一人流浪の旅。
騙され、裏切られ…。
踏み躙られ、汚され…。
剣を手に一人流浪の旅。
騙され、裏切られ…。
踏み躙られ、汚され…。
強くなりたかった。
自分だけがあればいい。
何もいらない。
そう思っていた。
自分だけがあればいい。
何もいらない。
そう思っていた。
愁いを帯びた微笑。
抱かれた時…わかった。
同じだと…。
紅い瞳の奥に見えた深い闇。
抱かれた時…わかった。
同じだと…。
紅い瞳の奥に見えた深い闇。
それが愛というものかは知らない。
ただ…嬉しかった。
冷たい体から感じた温かさが。
生まれて初めて感じる穏やかな時間。
ずっとこのままでいたいと…初めて思った。
ただ…嬉しかった。
冷たい体から感じた温かさが。
生まれて初めて感じる穏やかな時間。
ずっとこのままでいたいと…初めて思った。
狼は穏やかに、けれどすごく切ない顔で静かに笑っていた。
わからないけど、なんでかわからないけど涙が零れた。
狼は片手をそっと美貴の頬に添えた。
重なった唇。
指先が掬い取るように涙をぬぐって、目を開けた時にはもういなかった。
わからないけど、なんでかわからないけど涙が零れた。
狼は片手をそっと美貴の頬に添えた。
重なった唇。
指先が掬い取るように涙をぬぐって、目を開けた時にはもういなかった。
淡い闇の中。
ざわざわと森が歌う悲しい歌。
銀色の月は静かに微笑んでいるだけだった。
ざわざわと森が歌う悲しい歌。
銀色の月は静かに微笑んでいるだけだった。
(2007..3.30)