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アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(前編) - (2008/06/12 (木) 21:18:09) の最新版との変更点
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**アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(前編)◆d.NbLKVxEc
幾つもの計器やスイッチがひしめき合うそんな一室で、機械を操作する音と無感情な声が響く。
『オートパイロット起動…、システムオールグリーン、目的地を設定して下さい』
機械を操作している者―茶々丸―は考える。
時計回りに飛行場を回るか、それとも反時計回りに回るか。
全てのシャトル発着所を回るのだから、どちらから回っても大した違いは無いのだが。
茶々丸は少し思案した後、目的地を入力した。
『設定完了…五分後に発射します』
メッセージの後、発着所上空の外壁の一部が展開し、外へとつながる連絡用の通路が現れ、そこにシャトルが運ばれていく。
シャトルが中に運びこまれると、後方で外壁が元の様に閉じて行いく。
後方の外壁が閉じきると、今度は前方のシャッターが展開していく。
展開されたシャッターの向こうは、満天の星空。
茶々丸はその星空を見て、改めて自分達が宇宙にいる事を実感した。
『進路オールグリーン、…発射します』
一体どのような技術が使われているのか、茶々丸には発射の際に殆どGを感じる事は無かった。
それは茶々丸の知る技術力では再現不可能であり、改めてシグマの保有する技術力の高さを思い知らされた。
気づけば目の前には星空が広がっている。
茶々丸は目の前に広がる宇宙を凝視し、自分のデータの中に当てはまる星座は無いか探す。
例えば、このシャトルをハッキングしコントロールを奪う事で、この会場から逃げだせられるとする。
その際ここが地球の直ぐ傍かそれとも別の銀河系なのか、近くに生存可能な惑星やコロニーの有無、それを把握してなければ取るべき行動が全く変わってくる。
流石に宇宙を当てもなくさ迷う気にはなれない。
そんな事をしても、待っているのは食糧及び燃料不足による、機能停止と死であるから。
最もここが自分の居た世界であるという保証は無い。
もし自分の世界では無かった場合、どうやって自分の世界に帰るかも考えなくてはならないだろう。
「…検索中…現状では該当する星座を確認できず。……検索を続行します」
該当する星座が無い。
それはここが別の銀河系、もしくは自分の住む世界とは別の世界である事を意味する。
しかし茶々丸は諦めない、どこかに該当する星座は無いかと、目前の星の海を必死で検索する。
そうする間にもシャトルは進んでいく。
■ ■ ■
一方、茶々丸と別れたアルレッキーノの方は、学校のすぐ傍まで来ていた。
目の前には学校の塀が続いている。
校門まではまだ多少距離があるが、わざわざ校門から入る必要は無いので、塀を飛び越える事にした。
目の前の学校の塀にアルレッキーノが飛び乗ると、何者かが凄い勢いでこちらに近づいてくるのに気が付いた。
その人物は緑色の髪をした少女で、人間では有り得ない速度で走ってくる。
(さっそく自動人形の襲撃か…)
少女までの距離と速度から考えて、PDAから長ドスを転送する時間は無い。
しかたがないので、アルレキーのはどの様な攻撃が来てもすぐに対応出来るよう身構える。
その少女は、塀の上で身構えるアルレッキーノの、眼前数m先で立ち止まる…事無く、そのまま通り過ぎて行った。
「…まさか、こちらに気づいて無いのか?」
やや拍子抜けしながら、アレルッキーノは呟く。
そうやってアルレッキーノが少し気を抜いた瞬間、その少女が立ち止まりこちらを振り返った。
アルレッキーノは瞬時に身構え直し、警戒を強める。
「こちらの気が抜けた瞬間を突こうとするとは、たが…」
警戒高めるアルレッキーノを余所に、その少女はそこから動こうとしなかった。
よく見て見れば、微妙に視線がこちらを向いていないような気がする。
そうなると、こちらから仕掛けるべきかどうか迷うところだ。
相手は先程の走るスピードから察して、人間では無い様だが。
攻撃される前に先制として、『緋色の手』を叩き込みたい所だが茶々丸の様な例もある。
もしかしたら彼女は自動人形では無く、ロボットとか言う者なのかもしれない。
それならば、協力を呼び掛ける事が出来るかも知れない為、迂闊な事は出来ない。
もちろん自動人形という可能性も、無くなった訳では無いのだが。
(どっちにしろ、このまま黙って見てる訳にもいかんか…)
PDAを操作して阿紫花の長ドスを転送し戦闘準備を整えた所で、アルレッキーノは試しに少女に声をかけてみた。
「おい、そこのお前…」
「えっ? あ、はい。どこに…って、そんな所に居たのですか?」
ビクリと身を震わせ、驚いた様にキョロキョロと辺りを見回してから、漸くこちらに気がついた様だ。
どうやら本当に私の事には気づいていなかったようだ。
「あの、私ソルティといいます。あなたのお名前は何て言うんですか?」
「…アルレッキーノだ」
「アルレッキーノさんですね。はじめまして…」
自分の居場所を教えても、襲ってくる様子を見せないソルティ。
それどころか、名前を聞いて挨拶までしてくる。
アルレッキーノは、自分が完全に独り相撲をしていたのを悟った。
ソルティ―彼女は殺し合いに乗っているわけでは無い。
たまたま走る進路がアルレッキーノの近くであって、たまたま振り向いたおおよその方向にアルレッキーノが居ただけなのだ。
何となく気恥しい様な気がしたので、帽子を少し目深く被りながら、アルレッキーノは少女の前に降り立った。
■ ■ ■
「つまり、そのエックスの様子が気になって、どうしようかと悩んでいたと」
「はい、何て言うのでしょうか、とにかく不安なんです、エックスさんが今危険な目に会っているんじゃないかって」
アルレッキーノは学校の塀から降りた後、ソルティと情報交換を行った。
その際、ソルティが血濡れの長ドスを見て騒ぎ出したのは、ちょっとした御愛嬌だ。
ソルティの話では、この殺し合いが始まってからついさっきまでエックス共に居て、フランシーヌ様には合って居ない様だった。
こちらもゼロという人物に会っていないか聞かれたが、あいにくと自分はいままで茶々丸にしか会っていない。
アルレッキーノはエックスについて思案する。
自分の記憶が確かなら、この殺し合いの説明がされている時に、シグマに食って掛かった自動人形―いや、『りぷれろいど』とか言うらしい。
エックスと接触できれば、シグマについて何らかの情報が得られるだろう。
そうすればシグマの目的についても、何かわかるかも入れないな。
それにあの時の様子から、エックスとシグマは敵対関係にあるようだ。
目の前のソルティに危害を加えていない事から、協力関係意を結べる可能性は高いとみるべきか。
とにかく接触しておいても損は無いだろう、今後の方針の参考にもなるしな。
それならば効率の事を考え、ソルティにはこのままテレビ局に向かってもらい、フランシーヌ様が居ないか探してもらおう。
そして私が、エックスの所に向かう、これでいいだろう。
以外と幸先が良いな、アルレッキーノはそう思いながら、その事をソルティに話そうとして、…微かに聞こえた銃声がそれを遮った。
「………! 銃声です、それもエックスさんが居る方向から」
特徴的な耳? を上下させながらソルティが叫ぶ。
そして今にも駆け出しそうなソルティを、アルレッキーノが手を取り引き止める。
「まて、エックスの所には私が向かう。だからお前はこのままテレビ局に向かえ。そこにフランシーヌ様が居ないか見てくれると助かる」
「嫌です! 私だって戦えます、だからエックスさんを助けに行きます!」
「しかしだな…」
はっきり言ってしまえば、アルレッキーノはソルティが戦闘をこなせるとは思えなかった。
基本能力はそれなりにありそうなのだが、その言動からこういった事態の経験はそれほど多くないと見える。
下手に連れて行けば足手纏いなる、アルレッキーノはそう判断した。
だからこのままテレビ局に向かわせて、フランシーヌを探させようとしたのだ。
しかしソルティには意外と強情な面もあり、おそらくアレルッキーノではソルティを説き伏せる事は無理であろう。
そんな言い争いをしている間に、二度目の銃声そして閃光。
もはや向こうで何かが起こっているのは確定である。
「放して下さい! 私も戦えるって言ってるじゃないですか、どうして分かってくれないんですか!」
「戦えないと思われているから、エックスにテレビ局に行くよう言われたのだろう」
「……あ」
ソルティと別れてからあまり間を置かずに、エックスは襲撃されている。
エックスはおそらく何所かで、襲撃者の存在に気が付いていたのだろう。
ソルティはアルレッキーノのその言葉で、エックスの隠れた気持ちを察した。
ソルティは嬉しかった、しかし同時にとても悲しくてとても悔しかった。
出会って数時間しか経ってないのに、自分の事を守ろうとしてくれるエックスの気持ちが嬉しかった。
その反面、『自分だって戦える』という言葉を信じてくれなかった、その事が悔しくて悲しかった。
確かに自分は、いつもロイやミランダに迷惑ばかりかけてばかりいるかもしれない。
それでも、いつも自分は彼らの役に立ちたくて必死だった。
だから、
「それでも私は、エックスさんを助けに行きたいんです!」
エックスを助けたい、この気持ちに偽りは無い。
ソルティが決意すると同時に爆音が響く。
どうやら戦闘は、より苛烈になっているようだ。
ソルティはアルレッキーノに向き直ると、握られている自分の手をしっかり握り返した。
そして、
「失礼しま~す」
「う……おおおぉぉぉ!?」
掛け声とともにその手を思いっきり引っ張った。
アルレッキーノは知らないが、ソルティのパワーはアルレッキーノを大きく上回る。
十数トンは有るのではないかと思われる防衛用重機EV-002を、一撃で高層ビルの屋上よりもはるか上空に殴り飛ばしたことがあるのだ。
幾ら制限されているといっても、不意を突かれた状態でソルティに思いっきり引っ張られたら、アルレッキーノになす術は無かった。
そのまま引き寄せられるアルレッキーノを、ソルティはしっかり抱えて抱きなおした。
俗に言うお姫様抱っこに。
アルレッキーノも何とか抜け出そうとするものの、予想以上にソルティの力が強くなすがままであった。
「エックスさ~ん待ってて下さ~い、今行きますよ~」
アルレッキーノを抱きかかえたまま、ソルティは全力で駆け出した。
■ ■ ■
ソルティとアルレッキーノが駆け付けた時には、すでに戦闘が終わった所だった。
「エックスさんしっかりして下さい、エックスさん…」
倒れ伏すエックスの元に、ソルティが駆け寄っていく。
原形を保っている事から、エックスはまだ生存しているとアルレッキーノは判断した。
流石に内部の機械がどうのこうのとなって来ると、彼も判断はつかないが。
アルレッキーノは辺りを注意深く見まわす。
ここにはある筈のものが無いのだ、故にアルレッキーノは警戒を強める。
エックスが何者と戦っていたのかは分らないが、相手の残骸が無いのは不自然だ。
実は内部が破壊されていて、エックスが死んでいると言うなら不自然では無いが。
こちらの気配を察知して逃走、もしくは隠れたか?
だがこちらの存在を気取られるような行動は…
アルレッキーノはそこでふと思い出す、自分達がどうやってここに来たかを。
雄叫びを上げ疾走するソルティに、お姫様抱っこされて運ばれた自分を。
すぐさま首を振って、頭からその映像を消す。
逃げられたのならともかく、隠れられたのならかなり厄介だ。
しかし相討ちだったと言うのなら…。
アルレッキーノはエックスの正面、壁の壊れた民家を見据える。
あそこしか有るまい。
「ソルティ、エックスと相討ちになった相手があの民家にいるかも知れない。私が様子を見て来るからそこでエックスを守っていろ」
「それなら私も一緒に行った方が「駄目だ」」
「あくまで可能性にすぎない。他の所に隠れている可能性もある。二人してあそこに行っては、その隙にエックスに止めを刺されかねんぞ」
アルレッキーノの冷静な判断を前に、ソルティは何も言えなかった。
こういった状況での経験が、ソルティには圧倒的に不足している。
その為ソルティは、最善の判断を下せない。
だからみんな自分を戦わせようとしないのか、ソルティはそんな事を何となく思った。
アルレッキーノはPDAを操作して長ドスを転送すると、慎重に歩を進めていく。
壁に空いた大穴の近くまで来るが、中で何者かが動く気配は無い。
さて、相手がこの中にいるなら、当然はいらなければならない。
しかし民家の中で振り回すには、この長ドスは少々長過ぎた。
大穴から一直線上は、家具も薙ぎ払われている様だから、突き位なら出来そうだが。
ここで自動人形に対して、有効な武器を使わないという手もないだろう。
だが民家の中の戦闘で、邪魔になって捨てた所を拾われても厄介だ。
いや、ここはあえて拾わせるべきかもしれんな。
まずPDAをあらかじめ操作しておいて、すぐに再転送できる状態にしておく。
そして相手が長ドスを拾い、こちらに攻撃を仕掛けようとした所で再転送する。
そうすれば相手から長ドスが無くなり、こちらに隙を見せる事になる。
もし相手が長ドスを拾わなかったら、そのまま戦えばいいだけの事だ。
(ふむ、PDAも使い方次第で武器になりうるか…)
PDAの認識を改めつつ、民家の中へ踏み込む。
同時に、戦闘中相手の落した武器を迂闊に拾わない方が良い事も気がつく。
PDAで転送、再転送が可能という事は、奪われた武器等をすぐに取り返せると言う事だからである。
もっとも再転送可能な範囲くらいは、あるかも知れんが。
さらに歩を進めていくと、中で人影を見つけた。
ここからでは姿がはっきり見えないが、微動だにする様子が無い事から、相手は気絶しているのか死んでいるのだろう。
何にせよ絶好の機会、どんな理由があるにせよこの殺し合いに乗った者、主であるフランシーヌを傷つける可能性があるもの、
その人物に対する容赦など、アルレッキーノには一片もなかった。
全力でその人影の胸に向かって突きを繰り出す。
人影は動かない。
それで終わりだった。
■ ■ ■
程無くして民家からアルレッキーノが出てきた。
「あ、アルレッキーノさん無事だったんですね」
無事に戻ってきたアルレッキーノに、ソルティが喜びの声を上げる。
アルレッキーノが無言でPDAを、ソルティに放って渡す。
「おそらくエックス戦っていた男の物だ。止めを刺したついでに頂いてきた」
「なっ…酷いですよアルレッキーノさん、どうして殺しちゃったりしたんですか!」
淡々としたアルレッキーノの、聞き捨てならない発言にソルティが食って掛かる。
「……ソルティ、お前には殺さずに置く理由があるのか」
「……それは、どういう意味ですか」
「このPDAの持ち主は、…エックスをそんな風にしたのだぞ」
その言葉にソルティは、思わず息を飲む。
それだけでは無い。
もし、殺さずに連れて行けば、男が目覚めた時に自分達に襲いかかってくるかもしれない事。
その結果、誰かが殺されるかもしれない事。
仮に放置した場合、自分達は危害を受けなくても、他の者達が危害を受けるかも知れない事。
以上の事から現状では、殺しておく事が最善である事をアルレッキーノは告げる。
その言葉をソルティは、ただ黙って聞いているしかなかった。
「お前の抱く感情は正しいだろう、しかし今はどうしようもない。相手を無力化し続けるだけの、場所も道具もないのだからな」
ソルティは憤る。
どうしようもない、そんな理由で相手を殺して良い筈が無いと。
確かにエックスを傷つけられた事は許せる事では無い。
だからと言って、死んでも構わないかと言ったらそれは別だ。
ロイと一緒に捕まえた犯罪者の中には、確かに悪い人も沢山いた。
しかしビンセントみたいに、何か事情があって仕方なく悪事を働く人もいたのだ。
その人だって、何か事情があったのかもしれない。
しかし同時に、アルレッキーノの言葉が間違っていないのも分かってしまう。
ロイの手伝いをしている時は、捕まえた犯罪者は警察に引き渡せば俺で終わりだった。
しかしここには警察など無いのだ、倒したら終わりそんな訳にはいかない。
もし目覚めて襲ってきたら一体するのか?
倒すのか殺すのか、そしそれを何回も繰り返すのか?
こちらの犠牲が出ずに、倒し続けれるのか?
だからソルティは迷う、一体如何すれば良いのかと。
しかしここにはロイやミランダの様に、ソルティを導いてくれる人物はいない。
エックスも気絶している今、彼女の悩みにこたえる事は出来ない。
ソルティが一人で答えを出すしかないのだ。
しかしその答えを出すには、彼女の精神はあまりにも未熟過ぎた。
沈黙が続く中、アルレッキーノが口を開く。
「これからの事なんだが、シャトルの発着所に向かわないか」
アルレッキーノは説明する。
自分には茶々丸という仲間がいて、放送後にシャトルの発着所で落ち合う事になっている事を。
「今の状態ではエックスは戦えまい、……ソルティお前もだ」
「私は…」
戦えるという言葉が続かなかった。
今の迷いを持った自分が、本当にちゃんと戦えるのか?
思い出すのは一つの光景。
はじめての友達―メリルが襲われて、ただ怒りにまかせておそった相手を殺し、その友達に拒絶された事。
もしエックスがもっと傷つけられたら、自分は冷静に戦えるのか?
相手を殺す所をエックスに見られたら、メリルの様に拒絶されるのか?
そうやって、自分はまた同じ事を繰り返すのだろうか?
だからソルティには判断できなかった。
自分が殺されるのも怖い。
大切な人が殺されるも怖い。
自分が相手を殺して、拒絶されるのも怖い。
ソルティは今、この殺し合いの本当の恐怖を理解しつつあった。
「とにかくシャトルの発着場に向かう、……いいな」
「……はい」
ソルティは力なく返事した。
■ ■ ■
D-5のシャトル発着所に、一機のシャトルが止まる。
そのシャトルから茶々丸が降りてくる。
しかし、その足取りは軽くない。
結局の所、データに該当する星座はおろか、付近に惑星やコロニーすら見あたらなかった。
たがこんな所で落ち込んでいられない。
茶々丸は気を取り直して、飛行場の探索を開始する。
最初に行く場所はD-5の発着所において、パソコンの置かれていた部屋。
まずは分割ファイルの有無、それを確かめなくてはならない。
そう思い部屋に向かう途中だった、誰かの足音を捉えたのは。
茶々丸は咄嗟に息を潜めて、身を隠す。
わざわざ飛行場で待ち構える人物等居ないと思っていたのが、甘い考えであったのを悟る。
(迂闊でした、あれだけ派手にシャトルで出入りすれば、誰かが寄って来てもおかしくはありません)
他の発着所を回る時は、もう少し警戒を強めようと茶々丸は思う。
だが今は、目の前の危機を何とかする方が先である。
相手が殺し合いに乗ってないのなら良いが、乗っているのならやり過ごした後に、しばらくしてから探索を再開した方が良いかもしれない。
足音が近づくにつれ、相手の姿が見えてくる。
それは、凶器となる槌を持った、黒いゴシック調の服の少女、いやロボットだった。
そのロボットの容姿に、茶々丸は聞き覚えがあった。
しかし、確信を得るまでにはいたらなかったので、いつでもスタン・グレネードを投げ、逃げれるようにしてから尋ねた。
「あなたは、コロンビーヌさんですか?」
■ ■ ■
ここで少々時間を巻き戻そう。
コロンビーヌは意気揚々と、今まで来た道を戻る。
行ったり来たりで、あまり色んな所に移動して無い様な気がしたが、あまり気にしなかった。
場所は発着所前、そこでコロンビーヌはおもむろにバイクを止めた。
傍にセリオの残骸が転がっているが、自分の壊した相手などコロンビーヌには興味は無かった。
彼女はバイクを走らせている時ふと思ったのだ、PDA自体は沢山あっても意味が無いと。
肝心なのは支給品であって、PDAは沢山あっても邪魔なだけだ。
「正直かさばって仕方ないのよねぇ、余分なのは捨てとこうかしら」
四つあるPDAを取り出すと、支給品のIDを次々と移動させていく。
自分のPDAに、タブバイク、グラーフアイゼン、たずね人ステッキを、パンタローネのPDAに残りの支給品を、残りのPDAはその場に捨てた。
支給品を二つのPDAに分けた理由は簡単、念の為である。
まずアルレッキーノと協力出来るかどうかわからないが、仮に協力出来たとしよう。
それで最後の二人まで残ったとする、その際どちらがエレオノールの元に戻るかで、もめて戦闘にならないとも限らない。
その時にアルレッキーノの知らない切り札を持っていれば、こちらが有利だからだ。
コロンビーヌは考える、自分が最後まで生き残るにはどうしたらいいのか。
その為には何して、どういう事態を考えておかなくてはいけないのかを。
コロンビーヌが思考に耽っていると、上空で大きく低い機械音がし始めた。
驚くコロンビーヌを余所に、外壁の一部が展開して、そこからシャトルが降りてくる。
「へ~、地図に載ってたシャトルって、乗って移動する事も出来るんだ~。一体誰が乗っているのかな?」
コロンビーヌは思う、次の獲物が来たと。
「お人形さんなら破壊しましょう、お人形さん見たいな人間も破壊しましょう、でも人間なら……人間? あ、あ、ああ~~~!」
シグマは言った。
ここにいる者の全ては身体構成の一部に機械を使っている、と。
(身体構成の一部って、どれだけよ?)
鳴海みたいに四肢を人形のモノに取り換えているのだろうか。
ここでコロンビーヌにとって一番重要な事は、『人間』の参加者がいるかも知れないと言う事。
「O」達ほどでは無いにしても、「鳴海」の様に体の一部が機械である、『人間』参加者。
お人形の様な人間では無く、一部がお人形の『人間』。
コロンビーヌの顔が歪む。
もしそんな参加者が居たら、自分はそいつを殺せない。
いや傷つける事すらできない。
勝との約束、エレオノールの命令がコロンビーヌを縛る。
そいつが弱かったらいい、何故なら自分が殺さなくても勝手に誰かが殺してくれるだろうから。
でも鳴海みたいにとても強かったら? 最後まで生き残っていたら?
自分は優勝できないではないか。
(協力者が必要ね。アルレッキーノ以外に、『人間』を殺せる協力者が)
コロンビーヌの視線は、自然とシャトルの方に向かっていた。
■ ■ ■
ここで時間軸を戻そう。
いきなり自分の名前を呼ばれ、コロンビーヌは驚きながら、声のした方に振り向いた。
相手は見たことも無いし、聞いた事も無い声だった。
「おかしいわねぇ、アタシにあなたみたいな知り合いは居ないんだけど~」
コロンビーヌはグラーフアイゼンを両手に持ち、警戒を強める。
もしかしたら相手は、何か参加者の情報を得る道具を持っているのかもしれない。
だとしたら、どうせ自分はろくな事が記されてないのだろう。
今まで自分が何をやって来たのかは、一応自覚している。
しかしそうなれば、自分は危険人物と見なされ、攻撃されるかもしれない。
できれば利用出来る相手かどうか、接触して試してみたかったが、ここは攻撃される前先手を打つべきか?
コロンビーヌが悩んでいると、予想外の言葉が発せられた。
「あなたの事は、アルレッキーノさんから聞きました」
「アルレッキーノからぁ?」
自分の事を、アルレッキーノから聞いたというお人形さん-茶々丸。
コロンビーヌは、茶々丸を破壊するのは保留にして、一先ず彼女の話を聞く事にした。
茶々丸から得た情報は、色々と興味深いものだった。
「つまり、放送の後でDー5の飛行場に行けば、アルレッキーノに合流できるのね」
「はい、そういう手筈になっています」
茶々丸の話を聞いて、コロンビーヌは考える。
正直アルレッキーノの評価が、少し下がった。
(アルレッキーノ、身体構成の一部に機械を使ってるって、シグマが言ってたじゃないの、ちゃんと話聞いたの)
フランシーヌ、いやエレオノールの体に機械の部分は無い。
だから、アルレッキーノの捜すフランシーヌが見つかる筈は無いのだ。
もっとも、パンタローネと違って、説得しやすそうなのがわかっただけでも収穫だ。
そして、コロンビーヌは思考を茶々丸に移す。
ツナギにスカートという、女子らしい格好していないので尋ねたら、上着はアルレッキーノの『緋色の手』で燃やされてしまったらしい。
どうやらアルレッキーノは、茶々丸を自動人形と間違えて攻撃したらしく、ちょっと戦闘になったようだ。
まあ、コロンビーヌ自身も、自動人形とロボットの違いはよく解らないが、人間ではないというのなら特にどうでもいい。
アルレッキーノに負けているということは、茶々丸の能力は自分達より低いのだろう。
少なくとも、自分を大きく上回るという事はないと思えない。
それなら敵対した時に、負ける可能性も大きくないだろう。
ならばちょうどいいのではないか?
茶々丸に、自分の殺せない『人間』を殺して貰えば。
勝との約束も、エレオノールの命令も、あくまでコロンビーヌ自身による行動を禁じているのだ、他人がする分には問題ないだろう。
もっとも茶々丸は、殺し合いに乗っているわけではないから、全ての『人間』をという訳にはいかないだろうが。
だが、殺し合いに乗っている相手になら、可能性はあるのではないか?
なら今はそれで十分。
もしもっと良い相手がいれば、茶々丸を破壊してそっちに乗り換える、それだけの事なのだから。
茶々丸はこの殺し合いを止める気でいる様だが、正直自分には興味のない事だ。
コロンビーヌの目的は、あくまで勝の元に帰る事。
例え爆弾を外せようが、シグマを倒せようが、ここから脱出できようが、勝の元に帰れなければなにも意味が無いのだ。
まあ、確実に勝の元に戻れる手段が見つかったのなら、手伝ってもいいが。
正直期待は全くしていない。
ここが自分の居た世界では無いかも知れない、なら絶望的では無いか。
茶々丸とはあくまでこの会場の中で、生きている人間がいなくなるまでの共闘だ。
もしここにいる人間が全て死んでしまったら、彼女に用は無いのだ。
だから今しばらくは、茶々丸の良い仲間を演じよう。
さいわいアルレッキーノの仲間と言う事で、それほどまでに警戒されているという訳でもない。
ならば付け入る隙は充分ある。
「アルレッキーノと協力しているなら、あたしが手伝わない理由は無いわ。よろしくね茶々丸」
「はい、こちらこそ」
笑顔のコロンビーヌの言葉に、茶々丸も笑顔で返す。
茶々丸は安堵する、新たな心強い仲間が出来た事に。
だが彼女は知らない、目の前の少女の笑顔の裏に確実な悪意を潜ませている事を。
その悪意が何時牙向くのかは、誰にも分らない。
「そういえば、茶々丸ってここに来る前はどんな生活をしていたの」
「ああ、それはですね…」
■ ■ ■
「どうしても行っちゃうんですか、アルレッキーノさん」
「ああ、私にはお守りせねばならない方が居る。フランシーヌ様を見つける為にも、少しでも辺りを捜索しておきたいのだ。…すまんな」
アルレッキーノ達三人は飛行場まで戻ってきた。
エックスは今奥の部屋に寝かせてあり、アルレッキーノが当たりの探索を再開しようとしていた所、ソルティに呼び止められたのだ。
ソルティは心細かった。
エックスが気がついていたら、こんな気持ちにはならなかっただろう。
今、ソルティには傍で支える人が必要だった。
だがアルレッキーノには無理な話だった。
それは200年近く続く、彼の使命故に。
結局ソルティに、アルレッキーノを止める事は出来なかった。
エックスが眠る部屋で、ソルティは膝を抱え座り込む。
正直不安で胸が押しつぶされそうである。
もし今誰かが襲ってきたらどうしようかと。
相手にも何か理由があるのかもしれない。
でも殺される訳にはいかないし、殺させる訳にもいかない。
しかし殺す以外に止める手段はあるのだろうか?
ふとアルレッキーノに渡されたPDAの事を思い出す。
あれには何が入っているのだろうかと。
現実逃避気味に、ソルティはPDAを操作する。
転送されたのは、一振りの剣と見覚えのある銃。
ソルティはその銃、K&S Model 501に自然と手が伸びた。
思い出すのは、しかめっ面の中年男性。
どこと無く無愛想だが、何時もさりげなく自分を気遣ってくれる。
今すぐここに現れて、自分の頭に手を置きながら「家に帰るぞ」と、そう言って欲しかった。
でも彼はここには居ない。
だからソルティは、その銃を胸に抱きしめ呟く。
「ロイさん、私どうしたら…」
だが、その呟きに応える者はいない。
【D-5 シャトル発着所内/1日目・早朝】
【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:気絶中、疲労大、全身に大きなダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 赤い仮面@現実
[思考・状況]
1:……X……無事なのか……?
2:弱き人を守る
3:テレビ局でソルティと合流。
4:ゼロと合流(ゼロは簡単には死なないと思ってるので優先順位は低い)
5:シグマを完全に破壊する。
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っています。
【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:健康 意気消沈
[装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン 紫の仮面@現実 K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ 神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
1:戦う事への不安。相手は殺さなくてはいけないのだろうか…
2:エックスとはぐれたら仮面を付ける
3:シグマをやっつける
4:ロイさんやローズさんの元に帰りたい
5:ミラクルショットはエックスがOKというまで出来る限り撃たない。
[備考]
※スラッシュクローの武器チップの事をエックスに言い忘れています。
※マッハキャリバーをただの首飾りと思っています。仮に詳細を知った場合、操れるかどうかは不明です。
※参戦時期はアニメ10話~11話です。
**アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(前編) ◆d.NbLKVxEc
幾つもの計器やスイッチがひしめき合うそんな一室で、機械を操作する音と無感情な声が響く。
『オートパイロット起動…、システムオールグリーン、目的地を設定して下さい』
機械を操作している者―茶々丸―は考える。
時計回りに飛行場を回るか、それとも反時計回りに回るか。
全てのシャトル発着所を回るのだから、どちらから回っても大した違いは無いのだが。
茶々丸は少し思案した後、目的地を入力した。
『設定完了…五分後に発射します』
メッセージの後、発着所上空の外壁の一部が展開し、外へとつながる連絡用の通路が現れ、そこにシャトルが運ばれていく。
シャトルが中に運びこまれると、後方で外壁が元の様に閉じて行いく。
後方の外壁が閉じきると、今度は前方のシャッターが展開していく。
展開されたシャッターの向こうは、満天の星空。
茶々丸はその星空を見て、改めて自分達が宇宙にいる事を実感した。
『進路オールグリーン、…発射します』
一体どのような技術が使われているのか、茶々丸には発射の際に殆どGを感じる事は無かった。
それは茶々丸の知る技術力では再現不可能であり、改めてシグマの保有する技術力の高さを思い知らされた。
気づけば目の前には星空が広がっている。
茶々丸は目の前に広がる宇宙を凝視し、自分のデータの中に当てはまる星座は無いか探す。
例えば、このシャトルをハッキングしコントロールを奪う事で、この会場から逃げだせられるとする。
その際ここが地球の直ぐ傍かそれとも別の銀河系なのか、近くに生存可能な惑星やコロニーの有無、それを把握してなければ取るべき行動が全く変わってくる。
流石に宇宙を当てもなくさ迷う気にはなれない。
そんな事をしても、待っているのは食糧及び燃料不足による、機能停止と死であるから。
最もここが自分の居た世界であるという保証は無い。
もし自分の世界では無かった場合、どうやって自分の世界に帰るかも考えなくてはならないだろう。
「…検索中…現状では該当する星座を確認できず。……検索を続行します」
該当する星座が無い。
それはここが別の銀河系、もしくは自分の住む世界とは別の世界である事を意味する。
しかし茶々丸は諦めない、どこかに該当する星座は無いかと、目前の星の海を必死で検索する。
そうする間にもシャトルは進んでいく。
■ ■ ■
一方、茶々丸と別れたアルレッキーノの方は、学校のすぐ傍まで来ていた。
目の前には学校の塀が続いている。
校門まではまだ多少距離があるが、わざわざ校門から入る必要は無いので、塀を飛び越える事にした。
目の前の学校の塀にアルレッキーノが飛び乗ると、何者かが凄い勢いでこちらに近づいてくるのに気が付いた。
その人物は緑色の髪をした少女で、人間では有り得ない速度で走ってくる。
(さっそく自動人形の襲撃か…)
少女までの距離と速度から考えて、PDAから長ドスを転送する時間は無い。
しかたがないので、アルレキーのはどの様な攻撃が来てもすぐに対応出来るよう身構える。
その少女は、塀の上で身構えるアルレッキーノの、眼前数m先で立ち止まる…事無く、そのまま通り過ぎて行った。
「…まさか、こちらに気づいて無いのか?」
やや拍子抜けしながら、アレルッキーノは呟く。
そうやってアルレッキーノが少し気を抜いた瞬間、その少女が立ち止まりこちらを振り返った。
アルレッキーノは瞬時に身構え直し、警戒を強める。
「こちらの気が抜けた瞬間を突こうとするとは、たが…」
警戒高めるアルレッキーノを余所に、その少女はそこから動こうとしなかった。
よく見て見れば、微妙に視線がこちらを向いていないような気がする。
そうなると、こちらから仕掛けるべきかどうか迷うところだ。
相手は先程の走るスピードから察して、人間では無い様だが。
攻撃される前に先制として、『緋色の手』を叩き込みたい所だが茶々丸の様な例もある。
もしかしたら彼女は自動人形では無く、ロボットとか言う者なのかもしれない。
それならば、協力を呼び掛ける事が出来るかも知れない為、迂闊な事は出来ない。
もちろん自動人形という可能性も、無くなった訳では無いのだが。
(どっちにしろ、このまま黙って見てる訳にもいかんか…)
PDAを操作して阿紫花の長ドスを転送し戦闘準備を整えた所で、アルレッキーノは試しに少女に声をかけてみた。
「おい、そこのお前…」
「えっ? あ、はい。どこに…って、そんな所に居たのですか?」
ビクリと身を震わせ、驚いた様にキョロキョロと辺りを見回してから、漸くこちらに気がついた様だ。
どうやら本当に私の事には気づいていなかったようだ。
「あの、私ソルティといいます。あなたのお名前は何て言うんですか?」
「…アルレッキーノだ」
「アルレッキーノさんですね。はじめまして…」
自分の居場所を教えても、襲ってくる様子を見せないソルティ。
それどころか、名前を聞いて挨拶までしてくる。
アルレッキーノは、自分が完全に独り相撲をしていたのを悟った。
ソルティ―彼女は殺し合いに乗っているわけでは無い。
たまたま走る進路がアルレッキーノの近くであって、たまたま振り向いたおおよその方向にアルレッキーノが居ただけなのだ。
何となく気恥しい様な気がしたので、帽子を少し目深く被りながら、アルレッキーノは少女の前に降り立った。
■ ■ ■
「つまり、そのエックスの様子が気になって、どうしようかと悩んでいたと」
「はい、何て言うのでしょうか、とにかく不安なんです、エックスさんが今危険な目に会っているんじゃないかって」
アルレッキーノは学校の塀から降りた後、ソルティと情報交換を行った。
その際、ソルティが血濡れの長ドスを見て騒ぎ出したのは、ちょっとした御愛嬌だ。
ソルティの話では、この殺し合いが始まってからついさっきまでエックス共に居て、フランシーヌ様には合って居ない様だった。
こちらもゼロという人物に会っていないか聞かれたが、あいにくと自分はいままで茶々丸にしか会っていない。
アルレッキーノはエックスについて思案する。
自分の記憶が確かなら、この殺し合いの説明がされている時に、シグマに食って掛かった自動人形―いや、『りぷれろいど』とか言うらしい。
エックスと接触できれば、シグマについて何らかの情報が得られるだろう。
そうすればシグマの目的についても、何かわかるかも入れないな。
それにあの時の様子から、エックスとシグマは敵対関係にあるようだ。
目の前のソルティに危害を加えていない事から、協力関係意を結べる可能性は高いとみるべきか。
とにかく接触しておいても損は無いだろう、今後の方針の参考にもなるしな。
それならば効率の事を考え、ソルティにはこのままテレビ局に向かってもらい、フランシーヌ様が居ないか探してもらおう。
そして私が、エックスの所に向かう、これでいいだろう。
以外と幸先が良いな、アルレッキーノはそう思いながら、その事をソルティに話そうとして、…微かに聞こえた銃声がそれを遮った。
「………! 銃声です、それもエックスさんが居る方向から」
特徴的な耳? を上下させながらソルティが叫ぶ。
そして今にも駆け出しそうなソルティを、アルレッキーノが手を取り引き止める。
「まて、エックスの所には私が向かう。だからお前はこのままテレビ局に向かえ。そこにフランシーヌ様が居ないか見てくれると助かる」
「嫌です! 私だって戦えます、だからエックスさんを助けに行きます!」
「しかしだな…」
はっきり言ってしまえば、アルレッキーノはソルティが戦闘をこなせるとは思えなかった。
基本能力はそれなりにありそうなのだが、その言動からこういった事態の経験はそれほど多くないと見える。
下手に連れて行けば足手纏いなる、アルレッキーノはそう判断した。
だからこのままテレビ局に向かわせて、フランシーヌを探させようとしたのだ。
しかしソルティには意外と強情な面もあり、おそらくアレルッキーノではソルティを説き伏せる事は無理であろう。
そんな言い争いをしている間に、二度目の銃声そして閃光。
もはや向こうで何かが起こっているのは確定である。
「放して下さい! 私も戦えるって言ってるじゃないですか、どうして分かってくれないんですか!」
「戦えないと思われているから、エックスにテレビ局に行くよう言われたのだろう」
「……あ」
ソルティと別れてからあまり間を置かずに、エックスは襲撃されている。
エックスはおそらく何所かで、襲撃者の存在に気が付いていたのだろう。
ソルティはアルレッキーノのその言葉で、エックスの隠れた気持ちを察した。
ソルティは嬉しかった、しかし同時にとても悲しくてとても悔しかった。
出会って数時間しか経ってないのに、自分の事を守ろうとしてくれるエックスの気持ちが嬉しかった。
その反面、『自分だって戦える』という言葉を信じてくれなかった、その事が悔しくて悲しかった。
確かに自分は、いつもロイやミランダに迷惑ばかりかけてばかりいるかもしれない。
それでも、いつも自分は彼らの役に立ちたくて必死だった。
だから、
「それでも私は、エックスさんを助けに行きたいんです!」
エックスを助けたい、この気持ちに偽りは無い。
ソルティが決意すると同時に爆音が響く。
どうやら戦闘は、より苛烈になっているようだ。
ソルティはアルレッキーノに向き直ると、握られている自分の手をしっかり握り返した。
そして、
「失礼しま~す」
「う……おおおぉぉぉ!?」
掛け声とともにその手を思いっきり引っ張った。
アルレッキーノは知らないが、ソルティのパワーはアルレッキーノを大きく上回る。
十数トンは有るのではないかと思われる防衛用重機EV-002を、一撃で高層ビルの屋上よりもはるか上空に殴り飛ばしたことがあるのだ。
幾ら制限されているといっても、不意を突かれた状態でソルティに思いっきり引っ張られたら、アルレッキーノになす術は無かった。
そのまま引き寄せられるアルレッキーノを、ソルティはしっかり抱えて抱きなおした。
俗に言うお姫様抱っこに。
アルレッキーノも何とか抜け出そうとするものの、予想以上にソルティの力が強くなすがままであった。
「エックスさ~ん待ってて下さ~い、今行きますよ~」
アルレッキーノを抱きかかえたまま、ソルティは全力で駆け出した。
■ ■ ■
ソルティとアルレッキーノが駆け付けた時には、すでに戦闘が終わった所だった。
「エックスさんしっかりして下さい、エックスさん…」
倒れ伏すエックスの元に、ソルティが駆け寄っていく。
原形を保っている事から、エックスはまだ生存しているとアルレッキーノは判断した。
流石に内部の機械がどうのこうのとなって来ると、彼も判断はつかないが。
アルレッキーノは辺りを注意深く見まわす。
ここにはある筈のものが無いのだ、故にアルレッキーノは警戒を強める。
エックスが何者と戦っていたのかは分らないが、相手の残骸が無いのは不自然だ。
実は内部が破壊されていて、エックスが死んでいると言うなら不自然では無いが。
こちらの気配を察知して逃走、もしくは隠れたか?
だがこちらの存在を気取られるような行動は…
アルレッキーノはそこでふと思い出す、自分達がどうやってここに来たかを。
雄叫びを上げ疾走するソルティに、お姫様抱っこされて運ばれた自分を。
すぐさま首を振って、頭からその映像を消す。
逃げられたのならともかく、隠れられたのならかなり厄介だ。
しかし相討ちだったと言うのなら…。
アルレッキーノはエックスの正面、壁の壊れた民家を見据える。
あそこしか有るまい。
「ソルティ、エックスと相討ちになった相手があの民家にいるかも知れない。私が様子を見て来るからそこでエックスを守っていろ」
「それなら私も一緒に行った方が「駄目だ」」
「あくまで可能性にすぎない。他の所に隠れている可能性もある。二人してあそこに行っては、その隙にエックスに止めを刺されかねんぞ」
アルレッキーノの冷静な判断を前に、ソルティは何も言えなかった。
こういった状況での経験が、ソルティには圧倒的に不足している。
その為ソルティは、最善の判断を下せない。
だからみんな自分を戦わせようとしないのか、ソルティはそんな事を何となく思った。
アルレッキーノはPDAを操作して長ドスを転送すると、慎重に歩を進めていく。
壁に空いた大穴の近くまで来るが、中で何者かが動く気配は無い。
さて、相手がこの中にいるなら、当然はいらなければならない。
しかし民家の中で振り回すには、この長ドスは少々長過ぎた。
大穴から一直線上は、家具も薙ぎ払われている様だから、突き位なら出来そうだが。
ここで自動人形に対して、有効な武器を使わないという手もないだろう。
だが民家の中の戦闘で、邪魔になって捨てた所を拾われても厄介だ。
いや、ここはあえて拾わせるべきかもしれんな。
まずPDAをあらかじめ操作しておいて、すぐに再転送できる状態にしておく。
そして相手が長ドスを拾い、こちらに攻撃を仕掛けようとした所で再転送する。
そうすれば相手から長ドスが無くなり、こちらに隙を見せる事になる。
もし相手が長ドスを拾わなかったら、そのまま戦えばいいだけの事だ。
(ふむ、PDAも使い方次第で武器になりうるか…)
PDAの認識を改めつつ、民家の中へ踏み込む。
同時に、戦闘中相手の落した武器を迂闊に拾わない方が良い事も気がつく。
PDAで転送、再転送が可能という事は、奪われた武器等をすぐに取り返せると言う事だからである。
もっとも再転送可能な範囲くらいは、あるかも知れんが。
さらに歩を進めていくと、中で人影を見つけた。
ここからでは姿がはっきり見えないが、微動だにする様子が無い事から、相手は気絶しているのか死んでいるのだろう。
何にせよ絶好の機会、どんな理由があるにせよこの殺し合いに乗った者、主であるフランシーヌを傷つける可能性があるもの、
その人物に対する容赦など、アルレッキーノには一片もなかった。
全力でその人影の胸に向かって突きを繰り出す。
人影は動かない。
それで終わりだった。
■ ■ ■
程無くして民家からアルレッキーノが出てきた。
「あ、アルレッキーノさん無事だったんですね」
無事に戻ってきたアルレッキーノに、ソルティが喜びの声を上げる。
アルレッキーノが無言でPDAを、ソルティに放って渡す。
「おそらくエックス戦っていた男の物だ。止めを刺したついでに頂いてきた」
「なっ…酷いですよアルレッキーノさん、どうして殺しちゃったりしたんですか!」
淡々としたアルレッキーノの、聞き捨てならない発言にソルティが食って掛かる。
「……ソルティ、お前には殺さずに置く理由があるのか」
「……それは、どういう意味ですか」
「このPDAの持ち主は、…エックスをそんな風にしたのだぞ」
その言葉にソルティは、思わず息を飲む。
それだけでは無い。
もし、殺さずに連れて行けば、男が目覚めた時に自分達に襲いかかってくるかもしれない事。
その結果、誰かが殺されるかもしれない事。
仮に放置した場合、自分達は危害を受けなくても、他の者達が危害を受けるかも知れない事。
以上の事から現状では、殺しておく事が最善である事をアルレッキーノは告げる。
その言葉をソルティは、ただ黙って聞いているしかなかった。
「お前の抱く感情は正しいだろう、しかし今はどうしようもない。相手を無力化し続けるだけの、場所も道具もないのだからな」
ソルティは憤る。
どうしようもない、そんな理由で相手を殺して良い筈が無いと。
確かにエックスを傷つけられた事は許せる事では無い。
だからと言って、死んでも構わないかと言ったらそれは別だ。
ロイと一緒に捕まえた犯罪者の中には、確かに悪い人も沢山いた。
しかしビンセントみたいに、何か事情があって仕方なく悪事を働く人もいたのだ。
その人だって、何か事情があったのかもしれない。
しかし同時に、アルレッキーノの言葉が間違っていないのも分かってしまう。
ロイの手伝いをしている時は、捕まえた犯罪者は警察に引き渡せば俺で終わりだった。
しかしここには警察など無いのだ、倒したら終わりそんな訳にはいかない。
もし目覚めて襲ってきたら一体するのか?
倒すのか殺すのか、そしそれを何回も繰り返すのか?
こちらの犠牲が出ずに、倒し続けれるのか?
だからソルティは迷う、一体如何すれば良いのかと。
しかしここにはロイやミランダの様に、ソルティを導いてくれる人物はいない。
エックスも気絶している今、彼女の悩みにこたえる事は出来ない。
ソルティが一人で答えを出すしかないのだ。
しかしその答えを出すには、彼女の精神はあまりにも未熟過ぎた。
沈黙が続く中、アルレッキーノが口を開く。
「これからの事なんだが、シャトルの発着所に向かわないか」
アルレッキーノは説明する。
自分には茶々丸という仲間がいて、放送後にシャトルの発着所で落ち合う事になっている事を。
「今の状態ではエックスは戦えまい、……ソルティお前もだ」
「私は…」
戦えるという言葉が続かなかった。
今の迷いを持った自分が、本当にちゃんと戦えるのか?
思い出すのは一つの光景。
はじめての友達―メリルが襲われて、ただ怒りにまかせておそった相手を殺し、その友達に拒絶された事。
もしエックスがもっと傷つけられたら、自分は冷静に戦えるのか?
相手を殺す所をエックスに見られたら、メリルの様に拒絶されるのか?
そうやって、自分はまた同じ事を繰り返すのだろうか?
だからソルティには判断できなかった。
自分が殺されるのも怖い。
大切な人が殺されるも怖い。
自分が相手を殺して、拒絶されるのも怖い。
ソルティは今、この殺し合いの本当の恐怖を理解しつつあった。
「とにかくシャトルの発着場に向かう、……いいな」
「……はい」
ソルティは力なく返事した。
■ ■ ■
D-5のシャトル発着所に、一機のシャトルが止まる。
そのシャトルから茶々丸が降りてくる。
しかし、その足取りは軽くない。
結局の所、データに該当する星座はおろか、付近に惑星やコロニーすら見あたらなかった。
たがこんな所で落ち込んでいられない。
茶々丸は気を取り直して、飛行場の探索を開始する。
最初に行く場所はD-5の発着所において、パソコンの置かれていた部屋。
まずは分割ファイルの有無、それを確かめなくてはならない。
そう思い部屋に向かう途中だった、誰かの足音を捉えたのは。
茶々丸は咄嗟に息を潜めて、身を隠す。
わざわざ飛行場で待ち構える人物等居ないと思っていたのが、甘い考えであったのを悟る。
(迂闊でした、あれだけ派手にシャトルで出入りすれば、誰かが寄って来てもおかしくはありません)
他の発着所を回る時は、もう少し警戒を強めようと茶々丸は思う。
だが今は、目の前の危機を何とかする方が先である。
相手が殺し合いに乗ってないのなら良いが、乗っているのならやり過ごした後に、しばらくしてから探索を再開した方が良いかもしれない。
足音が近づくにつれ、相手の姿が見えてくる。
それは、凶器となる槌を持った、黒いゴシック調の服の少女、いやロボットだった。
そのロボットの容姿に、茶々丸は聞き覚えがあった。
しかし、確信を得るまでにはいたらなかったので、いつでもスタン・グレネードを投げ、逃げれるようにしてから尋ねた。
「あなたは、コロンビーヌさんですか?」
■ ■ ■
ここで少々時間を巻き戻そう。
コロンビーヌは意気揚々と、今まで来た道を戻る。
行ったり来たりで、あまり色んな所に移動して無い様な気がしたが、あまり気にしなかった。
場所は発着所前、そこでコロンビーヌはおもむろにバイクを止めた。
傍にセリオの残骸が転がっているが、自分の壊した相手などコロンビーヌには興味は無かった。
彼女はバイクを走らせている時ふと思ったのだ、PDA自体は沢山あっても意味が無いと。
肝心なのは支給品であって、PDAは沢山あっても邪魔なだけだ。
「正直かさばって仕方ないのよねぇ、余分なのは捨てとこうかしら」
四つあるPDAを取り出すと、支給品のIDを次々と移動させていく。
自分のPDAに、タブバイク、グラーフアイゼン、たずね人ステッキを、パンタローネのPDAに残りの支給品を、残りのPDAはその場に捨てた。
支給品を二つのPDAに分けた理由は簡単、念の為である。
まずアルレッキーノと協力出来るかどうかわからないが、仮に協力出来たとしよう。
それで最後の二人まで残ったとする、その際どちらがエレオノールの元に戻るかで、もめて戦闘にならないとも限らない。
その時にアルレッキーノの知らない切り札を持っていれば、こちらが有利だからだ。
コロンビーヌは考える、自分が最後まで生き残るにはどうしたらいいのか。
その為には何して、どういう事態を考えておかなくてはいけないのかを。
コロンビーヌが思考に耽っていると、上空で大きく低い機械音がし始めた。
驚くコロンビーヌを余所に、外壁の一部が展開して、そこからシャトルが降りてくる。
「へ~、地図に載ってたシャトルって、乗って移動する事も出来るんだ~。一体誰が乗っているのかな?」
コロンビーヌは思う、次の獲物が来たと。
「お人形さんなら破壊しましょう、お人形さん見たいな人間も破壊しましょう、でも人間なら……人間? あ、あ、ああ~~~!」
シグマは言った。
ここにいる者の全ては身体構成の一部に機械を使っている、と。
(身体構成の一部って、どれだけよ?)
鳴海みたいに四肢を人形のモノに取り換えているのだろうか。
ここでコロンビーヌにとって一番重要な事は、『人間』の参加者がいるかも知れないと言う事。
「O」達ほどでは無いにしても、「鳴海」の様に体の一部が機械である、『人間』参加者。
お人形の様な人間では無く、一部がお人形の『人間』。
コロンビーヌの顔が歪む。
もしそんな参加者が居たら、自分はそいつを殺せない。
いや傷つける事すらできない。
勝との約束、エレオノールの命令がコロンビーヌを縛る。
そいつが弱かったらいい、何故なら自分が殺さなくても勝手に誰かが殺してくれるだろうから。
でも鳴海みたいにとても強かったら? 最後まで生き残っていたら?
自分は優勝できないではないか。
(協力者が必要ね。アルレッキーノ以外に、『人間』を殺せる協力者が)
コロンビーヌの視線は、自然とシャトルの方に向かっていた。
■ ■ ■
ここで時間軸を戻そう。
いきなり自分の名前を呼ばれ、コロンビーヌは驚きながら、声のした方に振り向いた。
相手は見たことも無いし、聞いた事も無い声だった。
「おかしいわねぇ、アタシにあなたみたいな知り合いは居ないんだけど~」
コロンビーヌはグラーフアイゼンを両手に持ち、警戒を強める。
もしかしたら相手は、何か参加者の情報を得る道具を持っているのかもしれない。
だとしたら、どうせ自分はろくな事が記されてないのだろう。
今まで自分が何をやって来たのかは、一応自覚している。
しかしそうなれば、自分は危険人物と見なされ、攻撃されるかもしれない。
できれば利用出来る相手かどうか、接触して試してみたかったが、ここは攻撃される前先手を打つべきか?
コロンビーヌが悩んでいると、予想外の言葉が発せられた。
「あなたの事は、アルレッキーノさんから聞きました」
「アルレッキーノからぁ?」
自分の事を、アルレッキーノから聞いたというお人形さん-茶々丸。
コロンビーヌは、茶々丸を破壊するのは保留にして、一先ず彼女の話を聞く事にした。
茶々丸から得た情報は、色々と興味深いものだった。
「つまり、放送の後でDー5の飛行場に行けば、アルレッキーノに合流できるのね」
「はい、そういう手筈になっています」
茶々丸の話を聞いて、コロンビーヌは考える。
正直アルレッキーノの評価が、少し下がった。
(アルレッキーノ、身体構成の一部に機械を使ってるって、シグマが言ってたじゃないの、ちゃんと話聞いたの)
フランシーヌ、いやエレオノールの体に機械の部分は無い。
だから、アルレッキーノの捜すフランシーヌが見つかる筈は無いのだ。
もっとも、パンタローネと違って、説得しやすそうなのがわかっただけでも収穫だ。
そして、コロンビーヌは思考を茶々丸に移す。
ツナギにスカートという、女子らしい格好していないので尋ねたら、上着はアルレッキーノの『緋色の手』で燃やされてしまったらしい。
どうやらアルレッキーノは、茶々丸を自動人形と間違えて攻撃したらしく、ちょっと戦闘になったようだ。
まあ、コロンビーヌ自身も、自動人形とロボットの違いはよく解らないが、人間ではないというのなら特にどうでもいい。
アルレッキーノに負けているということは、茶々丸の能力は自分達より低いのだろう。
少なくとも、自分を大きく上回るという事はないと思えない。
それなら敵対した時に、負ける可能性も大きくないだろう。
ならばちょうどいいのではないか?
茶々丸に、自分の殺せない『人間』を殺して貰えば。
勝との約束も、エレオノールの命令も、あくまでコロンビーヌ自身による行動を禁じているのだ、他人がする分には問題ないだろう。
もっとも茶々丸は、殺し合いに乗っているわけではないから、全ての『人間』をという訳にはいかないだろうが。
だが、殺し合いに乗っている相手になら、可能性はあるのではないか?
なら今はそれで十分。
もしもっと良い相手がいれば、茶々丸を破壊してそっちに乗り換える、それだけの事なのだから。
茶々丸はこの殺し合いを止める気でいる様だが、正直自分には興味のない事だ。
コロンビーヌの目的は、あくまで勝の元に帰る事。
例え爆弾を外せようが、シグマを倒せようが、ここから脱出できようが、勝の元に帰れなければなにも意味が無いのだ。
まあ、確実に勝の元に戻れる手段が見つかったのなら、手伝ってもいいが。
正直期待は全くしていない。
ここが自分の居た世界では無いかも知れない、なら絶望的では無いか。
茶々丸とはあくまでこの会場の中で、生きている人間がいなくなるまでの共闘だ。
もしここにいる人間が全て死んでしまったら、彼女に用は無いのだ。
だから今しばらくは、茶々丸の良い仲間を演じよう。
さいわいアルレッキーノの仲間と言う事で、それほどまでに警戒されているという訳でもない。
ならば付け入る隙は充分ある。
「アルレッキーノと協力しているなら、あたしが手伝わない理由は無いわ。よろしくね茶々丸」
「はい、こちらこそ」
笑顔のコロンビーヌの言葉に、茶々丸も笑顔で返す。
茶々丸は安堵する、新たな心強い仲間が出来た事に。
だが彼女は知らない、目の前の少女の笑顔の裏に確実な悪意を潜ませている事を。
その悪意が何時牙向くのかは、誰にも分らない。
「そういえば、茶々丸ってここに来る前はどんな生活をしていたの」
「ああ、それはですね…」
■ ■ ■
「どうしても行っちゃうんですか、アルレッキーノさん」
「ああ、私にはお守りせねばならない方が居る。フランシーヌ様を見つける為にも、少しでも辺りを捜索しておきたいのだ。…すまんな」
アルレッキーノ達三人は飛行場まで戻ってきた。
エックスは今奥の部屋に寝かせてあり、アルレッキーノが当たりの探索を再開しようとしていた所、ソルティに呼び止められたのだ。
ソルティは心細かった。
エックスが気がついていたら、こんな気持ちにはならなかっただろう。
今、ソルティには傍で支える人が必要だった。
だがアルレッキーノには無理な話だった。
それは200年近く続く、彼の使命故に。
結局ソルティに、アルレッキーノを止める事は出来なかった。
エックスが眠る部屋で、ソルティは膝を抱え座り込む。
正直不安で胸が押しつぶされそうである。
もし今誰かが襲ってきたらどうしようかと。
相手にも何か理由があるのかもしれない。
でも殺される訳にはいかないし、殺させる訳にもいかない。
しかし殺す以外に止める手段はあるのだろうか?
ふとアルレッキーノに渡されたPDAの事を思い出す。
あれには何が入っているのだろうかと。
現実逃避気味に、ソルティはPDAを操作する。
転送されたのは、一振りの剣と見覚えのある銃。
ソルティはその銃、K&S Model 501に自然と手が伸びた。
思い出すのは、しかめっ面の中年男性。
どこと無く無愛想だが、何時もさりげなく自分を気遣ってくれる。
今すぐここに現れて、自分の頭に手を置きながら「家に帰るぞ」と、そう言って欲しかった。
でも彼はここには居ない。
だからソルティは、その銃を胸に抱きしめ呟く。
「ロイさん、私どうしたら…」
だが、その呟きに応える者はいない。
【D-5 シャトル発着所内/1日目・早朝】
【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:気絶中、疲労大、全身に大きなダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 赤い仮面@現実
[思考・状況]
1:……X……無事なのか……?
2:弱き人を守る
3:テレビ局でソルティと合流。
4:ゼロと合流(ゼロは簡単には死なないと思ってるので優先順位は低い)
5:シグマを完全に破壊する。
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っています。
【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:健康 意気消沈
[装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン 紫の仮面@現実 K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ 神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
1:戦う事への不安。相手は殺さなくてはいけないのだろうか…
2:エックスとはぐれたら仮面を付ける
3:シグマをやっつける
4:ロイさんやローズさんの元に帰りたい
5:ミラクルショットはエックスがOKというまで出来る限り撃たない。
[備考]
※スラッシュクローの武器チップの事をエックスに言い忘れています。
※マッハキャリバーをただの首飾りと思っています。仮に詳細を知った場合、操れるかどうかは不明です。
※参戦時期はアニメ10話~11話です。
*時系列順で読む
Back:[[X ~Cross fight~]] Next:[[アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(後編)]]
*投下順で読む
Back:[[X ~Cross fight~]] Next:[[アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(後編)]]
|070:[[X ~Cross fight~]]|エックス|077:[[Strays in the dawn]]|
|061:[[未知数の邂逅]]|ソルティ・レヴァント|077:[[Strays in the dawn]]|
|063:[[分けられたモノ]]|アルレッキーノ|071:[[アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(後編)]]|
|070:[[X ~Cross fight~]]|神敬介|071:[[アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(後編)]]|
|061:[[未知数の邂逅]]|コロンビーヌ|071:[[アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(後編)]]|
|063:[[分けられたモノ]]|絡繰茶々丸|071:[[アルレッキーノ、コロンビーヌの事情(後編)]]|
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