アメリカ

 アメリカでは業務上過失致死罪の該当する罪はありませんが、「故意のない殺人罪(Involuntary manslaughter)」と言う罪があります。
 アメリカの医師に対する制裁は行政処分(と懲罰的賠償)がほとんどで、医師の刑事責任を問うケースは極めてまれです。もっとも、最近は医師の刑事責任を問うケースが増加している、との指摘がされているようです。
http://www.ajronline.org/cgi/content/full/179/2/331


Criminal prosecution of physicians has historically been uncommon. ・・・ However, in recent years there has been a marked increase of criminal prosecutions of physicians centering on a charge previously seen only rarely: reckless endangerment of patients

 しかしながら、Involuntary manslaughterは故意に準ずるような過失がある場合(Recklessness)に処罰するものなので、医師からは特に刑事は脅威と考えられてはいなさそうです。アメリカにおいては、不適切な医師への対応は主に行政処分と懲罰的損害賠償によってなされます。
  • 2000年の統計では、約70万人の医師のうち、免許取り消し1642人、免許停止745人、戒告・けん責1014人。免許取り消しだけでも日本の過去35年の累計の33倍に当たり、医師数が日本の3倍弱であることを考慮しても多い。


 アメリカにおいて、医師にとって最も脅威と考えられているのは民事賠償についてです。アメリカにおける医療事故情報収集システムについての議論は、この民事賠償との関係を考慮に入れなければなりません。そうした観点から、民事・刑事への証拠利用の禁止等の制度が作られるなどの対策がされています。
参照:http://shakai-gijutsu.org/vol2/2_285.pdfhttp://shakai-gijutsu.org/vol2/2_293.pdf
最終更新:2008年11月28日 21:15