えっ…
とは言ったものの
別にその男の発言に驚いたというわけではない
むしろ慣れているぐらいだ
自分で言うのもなんだが、おれの外見は…中の…上の…だいたい上の中
だからまぁ他人から発せられた第一声が「うわ、イケメンだ」ということも少なくはない
未だに何が、うわ、なのかは謎であるが
では何に驚いたかというと、入学式中に見ず知らずの隣の人間に話しかけるその神経の図太さに、である
【第二話「見えちゃうもんは見えちゃうんですよ」】
場所は講堂の入口前。
おれともう一人の男がそこに立っていた
というか男の方は付いてきた、が正しいか
入学式が終わると直ぐさまおれの後ろにくっついてきたということだ
なるほどストーカー
「おれはストーカーじゃあらへんよ」
ストーカーじゃないらしい
「関西人か」
「さすがイケメン!」
「普通わかるだろ」
「仕方あるまい、ならば標準語で申し上げ給うっ」
「お前の標準はどこに位置しているんだ」
こんなところでお侍さん出てこられても困る
「おれの名前は天木和春、よろしくな!」
「あまぎかずはる、か。おれの名前は秋名紅葉。こちらこそよろしく」
「ところで、アッキーナ、なんでこんなところで止まってんの?」
おおおぉぉぉぉい!
その名を言うんじゃない!
というかそのあだ名はやめろ!今すぐ!
毎回呼ばれる度におれだけじゃなくて周りの人まで振り向いちゃうから!
「…アッキーナはさすがにやめてくれないかな」
「ところでアッキー、」
真顔で返すあたりコイツ慣れてやがる…
「…ん?」
「いや、だからなんでこんなところで止まってるのかって」
「あぁ、なんか目の前にいっぱい人だかりができてたから何だったのかなってちょっとびっくりしてさ」
「『地獄の細道』」
「えっ」
「アッキーはオープンキャンパス参加しなかったんだ」
「まぁな、勉強さえすれば受かると思ってたし」
「あれは地獄の細道といってね、運動部とかサークルの人達が一年生を勧誘しようとしてあんな風になってるんだよ」
「あれが勧誘!?」
「そう、入学式を終えた一年生は講堂を出ると文字通り地獄、そこから門まで抜けるのに最低でも1時間はかかるみたいだね。」
「1時間!?」
「かかる人は2、3時間はくだらないとか。もっとも、いろんなサークルのブースとかに行って話に花を咲かせていたらの場合だけどね」
「へぇ・・・」
地獄の細道といえど、いつもは門から講堂へとつながる普通の道である
もちろん、入学式に参加する前に通った道であったのだから、だいたい100m程度であったことは覚えてはいるのだが
100mの道を最低でも1時間とな・・・
「あ、アッキー、おれはちょっといろいろ運動部とかサークルの方も見てきたいから、また明日ね」
「ほいほい」
「んじゃっ」
・・・。
友達ができるのはやっ
さすがイケメンって何っ
ってか詳しっ
最近のオープンキャンパスってそんなに詳しいこと教えてくれるのか
おれも行くべきだったかも
さぁて行くか
まずはどこから見ていこうかな
とりあえずいろいろパンフ的なものとかもらえたらもらっとくか
それにしてもいろんな大学にはいろんなサークルがあるみたいだ
進みの遅い人混みの中をゆっくりと歩きながら周りを見渡す
サッカー、バスケ、テニスなど高校からある部活はもちろん、ゲー研、ロボット研、大道芸、空手やバンドなどもいろいろとある
その中に自分には一際目立って見えたものがあった
というか普通の人でも目につくか
「漫研です!よろしくお願いしますー!」
決して声量が大きかったから目に付いたというわけではない
・・・コスプレである
っていうかハルヒのコスプレって
さすがに目立ちすぎるだろそれは
個人的には消失のときの黒服で静かに勧誘ってのもアリなんじゃないかと
あ、でも今は俺妹の黒猫とキャラ被るか
ハルヒのコスプレをしていたのは元気いっぱいに看板を持っての女性であり
その後ろで数人の男の人達が話をしたり紙を配っている
ふーん・・・。
当然、自分には関係ないサークルである
こんなところに入ってしまっては例の三原則もあったもんじゃない
それにしても凄いな
しかも看板持ってる女の子なにげに可愛いし
その時である。
このように非常に人混みの場所でましてや歩きながらという状況
決して余所見というのは褒められた行為ではない
コミケのときだってそれだけは十分気をつけておかないと柱にでもぶつかってしまう
いや、それはさすがに嘘だが
おれは誰か肩と勢いよくぶつかり
そのまま地面の段差に脚をひっかけ
その場でころんでしまった
あちゃぁ・・・
しかもころんだだけならまだよかった
ころんだ場所が悪かった
コスプレをしている看板娘の前につんのめりの状態となってしまったのだ
見てない!スカートの中は見てない!見えたけど見えてない!
おれがバカなことを心の中で思っていると看板娘は
「あの、これ・・・」
んん?
あ・・・。
「このストラップ、シェリルですよね笑」
しまったあああああああああ
携帯につけているストラップ
転んだときに落としてしまった携帯の先についていたのはシェリルのストラップである
劇場版前売り券の特典のヤツ
外すつもりがつけたまま持ってきてしまったのである
どうにもかくにも言葉が出ない
何と言ったらいいものか
え、なんのことです?
なんてとぼけることなんて当然できないし
かといって、ハハハバレたかーっ では元も子もない
そう思っていると看板娘は
「部長、新しい部員ですよー!」
と言い放ったのである
「えっ、ちょっとそんなこと一言も言ってなんか・・・」
咄嗟で撤回するも、そんなおれに対し看板娘はおれの耳元で
「私のパンツ見たんだからそれぐらいしてもらはないと」
とボソりつぶやいたのである
以下、我思考回路停止。
「お、君か新入部員は。私が部長の・・・ところでいつまで地面に寝っ転がってるの君」
記憶に残っていたのはあの水色だけである
そこからというもの
簡単な話をすれば漫研に入るという意志(強制?)を部長に伝えて
なんとか門の近くまできたのである
部長と話してるとけっこうな時間になってしまった
一応、運動部とかも見たかったわけだが、自分は大学でスポーツする気はあまりなかったわけだし
まぁいいこととしよう
やっとのところで正門を出たところで一息しようとしていると急に斜め後ろから声がした
「こうちゃーん!」
なっ・・・!?
何者かに後ろから急に抱きつかれたのであった
最終更新:2010年11月12日 02:10