のっといこーる第六話

「私は人を危めたのではなく、自転車を危めたのです」

理解できない
できなかったわけだが

その理由として以下のことがあげられるだろう

1つ目、聞き間違い
まぁ聞き間違いなら仕方ない
しゃーなし
人間そんなこともあるよ

2つ目、言い間違い
まぁ言い間違いなら仕方ない
しゃーなし
人間そんなこともあるよ
そんな肩を落とすなって

「別に肩を落としてはいませんよ」

「ですよねー!」

「あなたの肩が落ちてますよ」

「ほっといてくれ…」




【第六話「大きいのと小さいのどっちがいいの」】




「あなたは大きな勘違いをおかしているようです」

どっちが勘違いしてるんだか…

「はいどうぞ、3行で」

「さっきの
現場に
戻ってみろ」

「年下の女の子から命令されるとかやだー!」

ちなみにおれは断然お姉さん派だ
幼女ペロペロとかいってるヤツの気はほんとうに理解しがたいものがある

それにしても、
さっきの現場に戻ってみろとはどういうことだ?
トラックが凹んでいて自転車がぐちゃぐちゃになっていて今頃は警察とか人だかりとかができているんじゃないのか?
そんな光景を見ただけで今この胸の中にあるモヤモヤした何かが解消されるとも思えないのだが

なっ…

現場に戻ったおれは必死であたりを見回す
そしてここがさっきの現場だったことを確認する
おれは確かにここに戻ってきたはず
だった
しかしそこは先程事故(?)が起こった場所とは思えなかった
なぜならそこには凹んだトラックもなければ、ぐちゃぐちゃの自転車も警察もまして人だかりもなかった
そこにあったのは事故が起こる前にあったその風景だったのである
いつもの秋葉原。

「…おい幼女」

「あなたから幼女と呼ばれる要素もなければ呼び捨てされる筋合いもありません」

いや、幼女は肯定しろよ

「で、なんでしょう」

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「日本語でおk」

さらりと返された…

「はやくおれのこの開きっぱなしの口を閉じてくれ」

「私にそんな趣味はありません」

「説明してくれって意味だろうぃ!」

なんでそこだけ飲み込み悪いんだよ

「そうでしたか、では私が今から説明を開始させていただきますが、私が話している間は絶対に一言も挟まないでくださいね」

「お、おう」

「いや、挟めなくなるの間違いでしたか」

この発言のためおれの背筋にはひやりと冷たいものが走ったが、あえてここは何も言わないことにした

「では。」

彼女がそういうと、急におれの前は真っ暗になった
しかしここでの真っ暗になったというのはポケモンでいうところの負けた状態ではなく(そしてポケモンセンターに送られることもなく)素で前に何も見えないのである
いや、前だけでなく周りにも何も見えない
しかしその視界は段々と見えるようになってくる
どうやら真っ暗というわけではないらしい
限りなく黒に近い紺色というところか

「説明するにあたって見てほしいのですが、これは各物体が所有している視野です。ちなみにこれは先程の自転車の視野になります」

彼女の声はどこから聞こえてくるのかわからない
まるでおれの心に喋りかけているみたいだ

「私には物体の気持ちというものがわかります」

言葉にならない何かを叫ぼうと思ったがさっきの彼女の忠告を思い出し、唾を飲み込むだけに留めておくことができた
つか物体に感情なんてあったんだ

「物体の中でも特に人間によって作られたものに限定して私はその物の感情を理解することができます」

「理解し、そして動かすことができる」

動かす…?

「人間の場合でも言葉の一つや二つで感情を動かすことができましょう、私はそれが物体において優れているのです」

「そして、さっきのあなたが事故ととらえたその事象は私が殺人、もとい、殺物、でしょうか。そのお手伝いをさせていただきました」

な…

「あの自転車は私に『おれを殺してくれ』と頼んできました」

「どうやらチェーンが壊れていてこれ以上走れなかったようですね。さらに廃棄自転車で誰も乗らないような外見だったようです」

外見だったようです?お前は直接その目で自転車を見たんじゃなかったのか?

「『これ以上路上でほっておかれるぐらいなら死んだ方がマシだ』とも言ってましたね。だから私が殺した、いえ、お手伝いをさせていただきました」

「そして。事後、現場には何もありませんでした。ここでもあなたはおそらく思い違いをされているでしょうが、あれは消したのではなく消えたのです」

どういうことだ…

「あなたは更地を見たことがありますか?」

「もしあるならあなたはその更地を見てこう思うことでしょう。」

「ここに何があったっけ、と」

「そこにあったそれは、あなたとは何の関連性もない、あるとすれば学校の登校時に見かける1件のただの建物でしょう」

「いつもはあるはずの建物がなくなった途端にそこには何があったのか思い出せなくなる。しかし、それはあなたの記憶力が弱いということではありません」

「”あなたにとってその建物はどうでもいいものだった”ということです」

「これはさらに人間に例えることができます」

「日々ニュースで報道されている殺人事件を見たとき、あなたはどう思いますか?」

「殺された人に対して、あぁ、かわいそうだ、と思うでしょう。そうでなくともそれに近い感情を抱くことになるでしょう」

「しかし。その人の死はあなたの記憶に残りますか?悲しみ続けますか?涙を流し続けますか?そんなことはありません」

「つまり…他の死など自分に関係ないどうでもいいことなのです」

「記憶に残らない。だから先程の事故は全て人々の記憶から消えていったのです。トラックと自転車の衝突も人間によってなかったことにされました。そして自転車もまたこの世からなかったことにされました」



「ですが、他の死はその者や物を知っている人物の記憶には確かに残ります」

「ですから私は今まで何千もの死を目の当たりにしてきたということになるでしょう」

何も言い返す言葉はない
どころか納得してしまった
しかし…しかし、
それではあまりに可哀相ではないのか
例え人ではなく物の死といえど死は死だ
そんなものを何度も何度も目の当たりにしてきただなんで
そんなこと人間のすることじゃない

ってあれっ…

この幼女って人間なのか…?
いや、どうやらおれの頭はあの電波幼女にやられてしまったようだ
思考回路まで狂ってきている
人間じゃなかったらなんだ、なんなんだ

………

「お、お前何者な…」

気になってしまい思わず口を開いてしまったが言い終える前には視野が開けていた
秋葉原の交差点前。
喋ったら魔法とけるとかいうシステムか?
どうやらあの幼女はもういないようだ
んー、
なんだったんだろうほんと

どうやら一気にいろんなことが起こりすぎて頭が疲れたようだ
買い物は中止、家に帰って寝ることにしよう

その夜、喋る自転車に追いかけるという夢をみたが
あまり覚えていない




月曜日。
朝、部長からメールがきていて
どうやら今日部室に来いとのこと
活動は金曜だけじゃなかったのかよ


1限目を終えて部室を訪ねると
そこには部長と…昨日の幼女がいた

「あ、秋名君、この娘は小南ありすっていうんだ。新入生で昨日漫研に入りたいって…」

「ありすちゃんペロペロ!」

「あなたもトラックにひいてあげましょうか?」

どうやらおれも幼女趣味に成り下がってしまったようだ



続く

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最終更新:2011年02月06日 08:00
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