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第五話 べぇず、デュエルの向こうへ~後編~

(さて・・・)

スタンバイフェイズでドグマガイを墓地から除外し、守備表示で特殊召喚させた俺はメインフェイズ1に入ることを宣言した上、長考する。
相手の…伊吹先生の場にはモンスターが三体。
団結の力によって攻撃力5200へ上昇しているティタニアル、何も手をつけられていない、そのままのティタニアル。
そして、スーペルヴィスを装備されたギガプラント。
魔法罠ゾーンには団結の力、スーペルヴィスと、さらに二枚。

仮にD-ENDの効果で攻撃力5200のティタニアルを破壊しようとしても、対象をとる効果のためティタニアル自身に無効化されてしまい、
無防備な姿を晒すだけになってしまう。
しかも伊吹先生のフィールドには増草剤が二枚発動されている。あの二枚をどうにかしなければ、いくら破壊しようにも何度もフィールドに植物達が並ぶことになる。

俺の手札を一瞥。
リビングデットの呼び声。Bloo-D。ダイヤモンドゲイ。そして、聖バリ。
…そういえばみんなミラーフォースのことなんて略すのだろうか。前姉ちゃんに聖バリと言ったら通じなくて焦ったのだが。

意識をフィールドへ戻す。

この手札では埒があかない。一応手段と防護策は残されているものの……やるしか、ないか。

「俺はダイヤモンドガイを召喚!効果を発動します!」

何をしてもどうにもならなくても…、俺は少しでも前へ進む努力をする。
…そう、誓ったから。

信じるんだ、自分のデッキを!

願いを込め、俺はデッキの一番上のカードをめくった。

緑枠。ノーマルカード。通常魔法。…レベル8のモンスターをコストに、二枚の手札をドローするカード。
トレードインだった。

「…よし!」

俺は小さく右拳を握る。
…あの時。人間不信に陥り、他人というものが信じられなかった俺が、唯一信じ続けたこのデッキは。
俺を裏切ることはしてくれなかった。

「カードを二枚伏せてターン終了です」

ターンの終了を告げる。しかし、いくらトレードインを落とせたからといってまだこの戦力差を跳ね返せたわけではない。

このターン、凌げるか。

「俺のターンか。引きが若いな…全く」

苦笑交じりに伊吹先生が言う。ドローしたカードを確認し、手札に加えていく。

「随分と強気な選択だが…それほどその伏せは自信があるってことか?」

俺は、答えない。

「…まぁいい。バトルフェイズに入ろう。5200のティタニアルでD-ENDに攻撃する」

「聖バリで」

「…」

「…先生?」

「ああいや、なんかデジャヴが見えただけだ。スーペルヴィスが墓地に送られたから…俺はギガプラントを…守備表示で特殊召喚する」

墓地から這い出るギガプラント。何故守備表示なのだろう。少なくとも、ダイヤモンドガイは倒せたはずなのに。
俺の疑問を晴らす間も無く、メイン2で伊吹先生は二枚の増草剤でティタニアルを蘇生。
カードを一枚伏せターンを終了した。

俺のターン。
D-ENDは破壊を免れたので、スタンバイフェイズに挙動することは何もなかった。
ドローしたカードは戦士の生還。
しかし、俺にはまだダイヤモンドガイの効果が残っている。
諦めるな。諦めるな。諦めるな。…逃げるな。逃げるな。逃げるな、俺!

二枚のカードを、デッキからドロー。
引いたのはデブリドラゴン。そして、ミラクルフュージョン。
…ここは黒薔薇でぶっぱして奇跡に繋げるのが得策だろうか。そう考え、俺はデブリドラゴンを召喚しようとして。
ふと、残されたもう一枚の伏せカードの存在を思い出した。

墓地にはエアーマン、Bloo-D、沼地、そして。

…これだ。

途中までの手順は変わらない。

「俺はデブリドラゴンを召喚…効果で沼地を特殊召喚します」

「ん、ブラックローズか」

「いいえ。俺はD-END、デブリドラゴン、沼地をリリースして…手札からBloo-Dを特殊召喚します」

「…ほう」

「Bloo-Dの効果。対象はギガプラント!」

「ティタニアルの効果。…無効なのは分かってるが、吸収されるとやっかいなんでな」

リリースされ、墓地に送られるギガプラント。想定内。
次に為す事は。

「ミラクルフュージョンを発動。沼地とエアーマンを墓地から除外し、Zeroを特殊召喚します」

「…解せないな。だったらぶっぱした方がよかったんじゃないか?」

「その必要はないですよ、先生。…このターンで、決着がつきますから」

何、と眉を顰める伊吹先生に、バトルフェイズ突入を宣言する。

「Zeroでティタニアルに攻撃!」

「そう来たか。しかし通せてやれないな…俺も引いていたのさ、ミラフォをな…まぁ痛み分けといった所…」

「それはどうですかね?リバースカード発動、リビングデッドの呼び声!俺はこれでドレッドガイを蘇生します」

2ターン目に墓地に送っていた、D-HERO。幽獄の闘士が墓地より躍動する。

「…蘇生したところでどうなる。無駄にカードを消費するだけじゃないか」

「ドレッドガイが特殊召喚されたターン…俺の場のD-HEROと名のついたカードは破壊されません。…聖バリは効かないんですよ、Zero以外には」


結果。
俺のフィールドからZeroが離れたことにより、伊吹先生の場のモンスターは全て破壊。
残ったのは、俺のフィールドのモンスター達。
ダイヤモンドガイ。攻撃力1400。
Bloo-D。攻撃力1900。
そして、ドレッドガイ。攻撃力は自分以外のD-HEROの攻撃力の合計。3300。
伊吹先生のライフポイントは、6000。

…辛くも、俺は大和学園での初デュエルを、勝利で飾ることが出来たのだった。




体育館を出て、来た道を逆に戻り、再び昇降口からグラウンドへ戻る道の最中。
俺と伊吹先生には、先ほどのデュエルを振り返る時間が有り余るほどあった。

「全く参ったよ…あそこでトレードインを落とされるなんてなぁ」

「…すいません」

「謝るな謝るな。寧ろ楽しかったよ…やっぱデュエルはこうでなくちゃな」

心からの笑顔、といった感じで伊吹先生は言う。
負けたというのに…本当にこの人はデュエルが好きなんだなぁ、そう思えた。

「…しかし、いい引きをしていた。くーら先生とサーヴィが推薦してきた理由がよく分かったよ。もし出会いがあったなら俺が君を推薦していたかもしれない」

「…あの、一つ聞かせてもらってもいいですか?」

「うん?」

デュエルをしていた時、いや、する前から抱いていた疑問を、俺はぶつける。

「姉ちゃんとサーヴィは…俺のことなんて…」

「…あれはちょっと前のことかなぁ。二人が俺の机に君の写真や書類を叩き付けて言ったんだ。『この子をうちに転入させてくれ。さもなくばアレを公表する』ってね。」

アレってなんだ。

「それも、毎日。だいちゃ…アース校長はいつもの調子で『いいんじゃない?』って言うし…しかし、さっき言った通りあの二人が強く推して来たお前だ。…俺が試験することを前提として、お前の転入を認めたんだ」

…ってことは。
さっきのデュエルで負けてたら…俺やばかったってことか?
人知れず青くなる俺に対し、伊吹先生はフォローを入れてくれる。

「だがお前は俺に勝った。…最後まで転入を認めなかった人間を、お前は認めさせたんだよ。」

伊吹先生が立ち止まる。
俺も、立ち止まる。

「改めて。大和学園へようこそ、べぇず。これから色々な困難がお前を待ち受けると思うが…言ったな。仲間と団結すれば不可能を可能にできる。
 精一杯励めよ」

その言葉に、思わず俺は胸を打たれ涙しそうになる。
が、こらえる。ここで泣いてはならない。ハイ、と俺は大きく返事をした。

「さてそろそろ終わりの挨拶の時間だな…あいつらちゃんとサーキットやってるかな…」

グラウンドに辿り着く。
しかしそこには誰もいなかった…否、グラウンドの隅に二人だけ立ち尽くしている姿が目に留まった。
あれはねうろんと…?

「うぅ…みんなどこ隠れてるんだろう…」

「さぁ、な」

ねうろんも一緒に探してくださいよ!そこでずっと座ってないで!」

「いや、俺はずっとさっきから見守っているぞ…お前のことを」

「なんか怖いよ!?」

ああ、あれは確か姉ちゃんに名前を呼ばれてなかった…ああ、ゆてぃか。
空き缶の周りをうろうろしているということは…缶蹴りで遊んでいたのか。羨ましいというか…

「あいつら…授業を何だと思って…!」

浅はかというか。
こちらの存在に気づいたらしいねうろんが、大声で叫んだ。

「げ、ぶんめいだ!みんなぶんめいが帰ってきたぞー!!」

「「「退却ッ!!」」」

木々の木陰から、校舎の影から、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す…クラスメイト。
各々デュエルを楽しんでいたのだろうか。缶を蹴るつもりのない缶蹴りなど、鬼になった奴はひたすら不遇である。
まぁゆてぃなら良いような気がするけど。

ポケットから何やら手帳らしきものを取り出した。

「全くあいつらは…べぇず以外全員減点だな」

「は、はは…」

正直、俺も大人しくサーキットトレーニングをしていたと言い張れる自信はないけど。
っていうかデュエルしてたのに俺出席扱いになるのか。先生の支配下ならいいとか、そういう決まりがあるのかもしれない。

「…む、書くものを置いてきたか…べぇず、ボールペンか何か持ってないか?」

そういえば、行く前に蒼とかいう奴に渡されたっけな。
ポケットに刺していたそれを、伊吹先生に手渡す。
手渡した後に、気づく。

「あ、先生それ…」

「ん?どうし…KKUMM★♀→!!??????」

ボールペン型スタンガンだということをすっかり忘れていた。

「…先生……?」

「……………………」

へんじがない。ただのしかばねのようだ。

…どうしよう。保健室に運んでいくべきか。そうするべきだろう、俺に過失があるわけだし。
よいしょ、と先生をかつぐ。…おや、何か小声で言ってるぞ?

「…ダメだよ…もっと優しくムーチョムーチョ…」

…やっぱり放置することにした。

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最終更新:2009年12月22日 03:00
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