「 -(過負荷) 」




エリアにある公園には一人の男子が佇んでいた。
公園には遊具があった。ブランコ、シーソー、ジャングルジム、滑り台。
男は、その公園の真ん中に立っていた。
その男はどことなく不気味なオーラを醸し出していた。

『いやあ、まったく困ったもんだね。』

開口一番に気の抜ける、ダルっとした喋り方で言った。
彼の名前は球磨川禊という名であった。

『なじみちゃんもいるみたいだねぇ。』

禊はカバンに入っていた参加者名簿を眺めながら言った。
街の建物はどれも電灯がついておらず、夜空の星が空を彩っていた。
月の光に当たっていた彼は懐中電灯の光を参加者名簿に当てて読んでいた。
人気の無い街の公園というのは実に不気味なものであり、
禊が歩けば人気の無い街には禊の足音が響いた。

シャリシャリと。

二、三歩歩くとそこはジャングルジムがあった。
球磨川禊は、ジャングルジムに手を触れ、言った。
『このジャングルジムを無かったことにした』、と。
すると、球磨川禊は再び歩き出し公園を後にした。

禊の去った公園には遊具があった。ブランコ、シーソー、滑り台。

ジャングルジムは、無くなっていた。

『「大嘘憑き」も大丈夫みたいだな。』

これは彼の能力だった。
“有”を“無”にする、能力。
一歩間違えると、世界を消しすらしかねない能力であった。


◆◆


『さあて、ここにするか。』

エリアにある住宅やビルは全て鍵やロックは無かったため、だれにでも入ることができた。
禊は手ごろなビルに入って階段を昇って行った。
3階に着くと、ここでいいかと言い適当な個室に入った。


禊は確認したい事が一つあった。

それは武器であった。

いくら禊の能力があろうと、禊は能力だけでは勝てないことは自覚していた。
禊のいた元の世界でもこの能力を持っていても負けていたからだ。
彼は地球上で一番弱い男。そして過負荷(マイナス)であった。

『ふむ、これは全ての参加者に配られるものみたいだな。』

禊はカバンの中にあるものを机に並べていた。
最後にランタンが机に置かれると禊は不気味に嗤った。

『さて、本命の支給武器。』

『なにが出るやら。』

禊は勢いよくカバンに手を突っ込んだ。そして触れた。
触れた、その支給武器は柔らかった。折りたたんだ布の感触であった。
禊の右手はそれを握り取り出した。それは折りたたまれた布だった。
禊はそれを広げた。
広げた、それをみた禊は嗤った。



エプロン。



普通ならハズレの武器であるが、彼は違った。

『これは、僕に最高の武器じゃないか!』

球磨川禊はゲームが始まってから一番の笑顔になっていた。
悪意も邪心も過負荷も腹心もない、純粋な笑みであった。


『分かってるだけでなじみちゃんがいる!』

『なじみちゃんじゃなくても、誰か女に着せよう!』


『もちろん、裸エプロンで!』


球磨川禊は張りきった。

勢いよくカバンを持ち走り出し、階段を下りた。

禊は素敵な裸エプロンを視るための旅に出たのだ。




【A-4 街・1日目 深夜】
【球磨川禊@めだかボックス】
[状態]:健康 興奮
[装備]:エプロン
[道具]:食料三日分 万能ナイフ コンパス 地図 名簿 筆記用具 時計 ランタン
[思考・状況]1、裸エプロン


球磨川禊 027:Caduceus

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最終更新:2012年11月21日 22:15