【名前】鬼人正邪
【出典】東方Project/
妖怪ロワ2
【性別】女
【年齢】不明、見た目は少女
【種族】天邪鬼
【人物】
何でもひっくり返す程度の能力を持つ、天邪鬼の少女。キルラキルとか言ってはいけない。
人が嫌がることを好み、人を喜ばせると自己嫌悪に陥る。命令は絶対に聞かない。自分が得しても見返りは与えない。人間、妖怪に嫌われるのは当たり前だったが、彼女は嫌われると喜ぶ……という正に「あまのじゃく」という言葉が似合う嫌な性格。
東方輝針城から登場した5面ボスであり、同作における異変の真の黒幕。
安定した幻想郷をぶち壊し弱者が支配する楽園を作るという野望を持っており、輝針城では野望達成の手段として小人の一族の末裔である針妙丸を騙して利用したことが異変の発端となっている。更に異変解決後は針妙丸を見捨てて逃げるなど、自分のためだけに何も知らない他者を利用することを厭わない典型的な「吐き気を催す邪悪」である。で、ついたあだ名がゲスロリ。
設定上はあくまで小物の妖怪で大した力は持ってない……ハズなのだが、ゲーム上で戦うとめっちゃ強い。背後から襲い来る弾幕や何でもひっくり返す程度の能力による画面反転&操作上下左右反転などがとにかく曲者。ボムによるゴリ押しが弱点であると言えるが、逆に言えばボムがないと攻略難易度が格段にはねあがる(ボムを使ったらスペカ取得は諦めるしかない)。実力は5ボス史上最凶と言っても過言ではない。
まさかの自機に抜擢された次回作の「弾幕アマノジャク」では輝針城での騒動により幻想郷中からのお尋ね者になっている。
【あらすじ】
妖怪ロワ2においては一マーダーとして鬼太郎と最遊記八戒と弾幕合戦を繰り広げたり、他の参加者に嘘を吹き込むなどして暗躍した正邪。
終盤にてマーダーから足を洗ったフリをして最遊記悟空を騙し討ちで殺したことで、悟空の仲間であり因縁ある八戒を怒りを買ったのがアダになり、悟浄の忘れ形見である錫杖を腹にうけ、命を散らした。
そんな彼女はこの
オールリピロワにて再び生を受けることになる……
【本ロワの動向】
ロワ開始直後に初っ端から自殺しようとしている赤毛の少女を発見。
事情は知らないが何もかもに絶望しきってた様子の少女を草むらから伺い、人の絶望を喜ぶ正邪が助けるわけもなく見世物でも見るかのように愉悦の表情で自殺ショーを眺める正邪。
いっそ煽ってもっと絶望させてやろうかと草むらから出ようとするが、そこへ自分より高い妖力(魔力)を持つ女、ウタウタイのゼロの気配を察知し話を聞いてくれそうな雰囲気でもなかったので、少女やゼロがこちらを察知する前にその場から離脱する。
この時、正邪とニアミスした少女とは思わぬ場所で再会することになるのだが、それは後の話。
楽しんでいた自殺ショーの結末を見損ねた正邪だが、気を取り直して本格的に行動を開始する。
以前の殺し合いと同じく、彼女はマーダーとして行動を開始。
できれば自分を殺した八戒がこの殺し合いにいれば、嘘の噂を流して貶めてやろうと考えたが、参加者にいなかったので断念。その代わりに八戒の仲間であり自分が殺した孫悟空(作品やロワの出典が違う別人だが)と同じ名前の者がいたため、半ば八つ当たり的に悪評を流すことを念頭に入れる。
それだけ正邪は腹に負わされた傷を根に持っており、そして同時に恐れている証左であった。
行動方針はマーダーであるものの、300人近い参加者を一度に相手にできる実力は自分にはないことは自覚していたため、最初は迂闊に暴れ回らずに偽の情報を流して対主催の混乱を招いて勢力の拡大を防ぎ、殺し合いに乗るべきか否か悩んでいる者をマーダーに引き込むなど、殺し合いをかき乱して参加者を減らしていく扇動ステルスマーダー方針で進む。
その過程で、かつて鼠に騙されて干支に入れなかった十二支の猫に下剋上を唆してステルスマーダーにし、有力になりそうな対主催グループなどは悪評を流して他の対主催への合流を遅らせた。せがたロールや肉体言語タッグ、キモティカ組や魔王ゼロのグループなどが中々他の対主催グループに接触できなかった要因が、この正邪にもある。
マーダーとしてはいささか地味な動きではあるが、後半にて有力な対主催グループにほとんど接触できないまま肉体言語タッグやキモティカ組が全滅したことを考えると対主催陣営にかなりの打撃を与えている。
とはいえ、正邪自身も全くの無傷とはいかず、対主催にもジョセフなど正邪の嘘を見抜けるものも数多くいた上、殺し合いの主催などやった覚えはないのに一反木綿が「鬼人正邪は
道具ロワでは主催の一人だった」という発言も出て、ついには幻想郷での正邪の悪行を知る比那名居天子が情報を拡散したことにより、前半の終わり頃までには対主催陣営のほぼ全体から警戒されてしまい、安易に近寄ることができなくなってしまった。
殺し合いが後半に入ると、全ての参加者に害を成す魔神の如き存在、小保方マザーが出現。
これに対し対主催達は西の連合軍、東の同盟軍と小保方マザーを討つための軍団と包囲網を作り上げていた。
一方、一部のマーダーたちも小保方マザーの出現に危機感を覚え、あくまで一時的なものだが結託し、対主催の築き上げた包囲網に便乗して北側から小保方マザーを攻め討とうとする。
そのメンバーは悪魔猫、黒贄、小次郎、書文、そして正邪である。
さすがの正邪も小保方マザーは危険であると判断しての参加であった……少なくともこの頃は。
そして小保方マザー包囲網戦は始まった。
だが戦況はとても厳しいものであり、白面一派を加えた小保方マザー勢力の熾烈な攻撃の前に晒されて次々と参加者が脱落していく。
この上に連合軍旗艦ラー・カイラムの突然のフレンドリーファイア。同盟軍旗艦ブリとん号の轟沈。悪魔猫たちとは違う、マーダーたちの背後からの進撃により包囲網は瓦解し始める。
その中で正邪は包囲網作戦が失敗に終わると見立てるやいなや、悪魔猫たちを背後から攻撃して裏切ったのだ。
最初は自分にも害になる小保方マザーを殺すべきと考えていたが、自分たちの不利を悟ると白面一派に取り入り、小保方マザーを利用して参加者の数を減らす方針に変更したのである。
弾幕や何でもひっくり返す程度の能力によって悪魔猫たちを翻弄するも、流石に強者揃いだったため、多少のダメージを与えはしたが殺すには至らず。
ここで下克上したくてもできない実力差を悪魔猫たちに教えられ、正邪は自分が弱小妖怪に過ぎないことに歯がゆさを覚える。
しかし彼女の冷静な部分が無理に戦って命を散らす必要はないと考えたため、悪魔猫たちが大量の赤さんに足止めされて身動きが取れなくなった瞬間を見計らって逃げだした。
そして彼女は優勝への近道として小保方マザーを利用している白面一派に寝返ろうとする、が、ここで思いもよらぬ事態が発生する。
取り入ろうとする前に白面一派は壊滅し、白面の者もエレンによって討たれたのである。
拠り所を失い、「裏切るタイミングを間違えた……」と彼女は途方に暮れる。
一度裏切った以上、悪魔猫らに取り入るのはもう不可能だろうし、奴らのような強マーダーを殺せるような実力が自分にはないことを先ほど教えられた。
それで優勝を諦めて対主催に取り入ろうにも自分が危険人物である情報は既に対主催間に行き渡っていてどのグループにも参入は厳しい。
生き残るにはどうすべきかと彼女は必死で考える。
するとそこへ、彼女に転機が訪れた。
主催者たちの意向により、正邪は主催本拠地に転送されたのである。
目が覚めると、正邪は多くの者に囲まれていることに気づいた。
その者たちはは呪術王や鏡形而、多くの魔王たち、神星人など、ひと目で神に等しい力を持つものが結集しているのがわかった。ちょっとでも逆らえば、小物妖怪である自分などひと捻りだろう。
下克上を野望とし、天邪鬼である彼女としては逆らいたくなる相手ではあるがここは生存のためにグッとこらえる。
彼らの口から、我々こそこの殺し合いを開いた主催者であると告げられ、さらに正邪をここに招いたのは自分たちの手伝いをして欲しいからであると伝えられた。
そして、正邪は参加者の中ではいち早く、この殺し合いの真の目的を教えられることになる。
主催者の目的は「神堕とし」であり、端的に言えば自分たちよりも高い次元にいる神々を打ち倒し、成り代わってしまおうという計画だ。
そのためにはまず50の殺し合いの妄念から産まれ、創造神に等しい能力と全てを超越した力を持つに至った、魂と妄想の集合体・セカイジュの掌握が不可欠である。
会場の中央に生えているこの大樹は、殺し合いによって生じる感情エネルギーを餌にし、成長の糧としている。
この大樹を自分たちにとって都合のいい「兵器」に成長させるため、より濃厚な負の感情エネルギーを与えるのがこの殺し合いが開かれた理由であったのだ。
この話を聞いて正邪が興味をそそられないわけがなかった。
彼女の野望は下剋上であり、主催者たちの目的も高次の存在への、まさに下剋上であった。
さらに上を支配すれば下を支配できるのも道理であり、セカイジュを支配できれば50の殺し合いに関わった世界全てを支配できるとも主催たちは語った。
もし主催の尖兵として働くなら、報酬として征服した世界の一部をくれてやるとも言い、さすればそこで自分の目指している弱者が支配する楽園を作り出すことも可能だ。
正邪にとってなんとも魅力的な目的と報酬であろうか。
だが、このままでは彼女が主催の一員として働くにはあとひと押し足りなかった。(主催は自分を散々使い潰して最後はボロボロの雑巾のように捨てるつもりでは?)という疑念が正邪を悩ませた。そもそも他人の命令は聞かないのが天邪鬼である。
しかし、主催の一人である道具ロワ主催のドラえもんが放った言葉により、正邪の心が決定的に揺らぐことになる。
「まあ、おまえではまず無理だろう。おまえの代わりなどいくらでもいるしな」
これが道具ロワドラえもんが道具ロワにおいては放送係だった正邪の、天邪鬼の性質を知ってるが故のさし金か単なる煽りかは不明だが、相手の言葉の反対の行動を取りたがるのが天邪鬼。天邪鬼の性か侮蔑を含めた言葉に怒ったのかその両方か、正邪は主催に了解してしまった。(そもそも主催の前に一人で招かれた時点でNOと言えば殺される道しかなかったろうが)
この時点より正邪は主催と契約を交わし、尖兵として働く
ジョーカーとなった。
さらに主催たちは、今の正邪の実力不足を考慮して改造手術を施すことにした。
手術によって正邪に与えられた力の名は「ヴォルケーノ」。
ヴォルケーノとは獄炎を使う殺戮と破壊衝動のみ根本とした無秩序な破壊者であり、
オリロワ5の終盤にて出現し、虐殺の炎を撒き散らした存在である。
しかも肉体を乗っ取られたミラスとは違い、正邪の場合はヴォルケーノの力のみを与えられたため、乗っ取られる心配は一切ない。
加えて他者の負の感情を喜びとする天邪鬼の性質と、憎しみを糧にする魔人の力は非常によく噛み合っており、改造を施した道具ドラによると、最大で能力をミラスのヴォルケーノと比べて120%まで発揮できるらしい。
改造人間ならぬ改造妖怪となり、やつは無敵になった!
弱点はもうヤツにはない! おそらく反則もヤツにはきかないッ!
超火力!超動体視力!誰もピチュれない!
アルティミット・ファウル・シイング
『究極反則生命体、正邪の誕生だッーーっ』
……失礼、ネタに走った。
所詮小物に過ぎなかった天邪鬼が、大妖に等しい存在に昇華したのである。
この正邪に一対一で勝てる参加者はそう多くないだろう。
悟空やサイタマ辺りなら話も変わってくるだろうが、悟空はデビルひで戦での敗北から未だ消耗しており、正邪の改造が終わった頃にはサイタマは戦死している。本当に彼女を止められる存在は多くはないだろうと思われた。
正邪はもし、主催が裏切って約束を守らなかった時はヴォルケーノの力を持ち逃げする算段を企てるほどだった。
この圧倒的すぎる力があれば少なくとも幻想郷を一晩あれば制圧できるだけのパワーがあると確信したのであり、死ぬまで借り続ける……どころか死んでも返さない腹づもりであった。
ついでに主催から辞令が下る前に殺し合いでこれまで起きた出来事を。暇つぶしも兼ねてモニターで確認する。
色々な悲劇が目白押しであったがその中でもレッドドラゴンビルで対主催のミラスが危険対主催のセリュー@
アニロワ3に惨殺されるところはあまりにも絶望的過ぎて、常人なら悲しむか嘔吐するところを笑い転げながら見ていた。
一方、ロワ最序盤で見かけた自殺しようとしていた赤毛の少女・朝之光希は、結局自殺は未遂に終わり、紆余曲折経て今も対主催として頑張っているらしい。
人の喜びを見ると嫌悪したくなる正邪にとっては面白くない話であった。
もっともその光希も彼女の奉仕マーダーとなった月元と戦う羽目になり、いい気味だとモニターごしに観戦する正邪。
だが途中で主催からの出撃命令が来てしまい、モニターの中で展開される光希と月元の戦いの決着を見届ける前に出撃することになった。
主催から与えられた任務とは、浮遊要塞ダモクレスとそこから放たれる1つで大破壊をもたらす爆弾フレイヤを使って殺し合いを助長するマーダー・ロジェ長官の手伝いをせよ、とのことだった。
正邪が降り立った頃にはダモクレスには次々と対主催たちが攻め込んでおり、正邪は対主催の背後をつく形でダモクレスに侵入した。
ダモクレスに侵入した対主催を弾幕やひっくり返す程度の力、そしてヴォルケーノの獄炎で燃やしていく。
対主催の心地良い悲鳴と博麗の巫女すら一瞬で灰に変えられそうな絶大なパワーに正邪はエクスタシーすら覚えていた。
そしてヴィエル・ヒューナルと化した胡桃と、彼女を救うために奮闘していた遊矢、セイバー、モードレッドの対主催三人組を補足。
遊矢たちがこちらに気づく前に背後からの弾幕攻撃で一気にカタをつけようとした。
人間である遊矢に至ってはヴォルケーノに変身するまでもなく殺せると思い、正面の胡桃に集中している以上、躱すことはまず不可能。そう思い非情の弾幕は放たれた。
だが弾幕は遊矢の背後を守るようにして現れた異形の戦士に防がれた。
正邪「なにっ!?」
遊矢「君は!」
光希「くるみちゃん先輩の友達で魔闘士ロージィ、いや。
またの名を正義の味方! 仮面ライダークウガ・ロージィ!」
クワガタとバラを足した戦士、死亡した月元から霊石の力を譲り受けて新生したヒーローである朝之光希が遊矢たちを弾幕から守ったのだ。
仮面ライダークウガ・ロージィこと光希であり、遊矢と同じく胡桃とも縁の深い彼女も、胡桃を助けるためにダモクレスに駆けつけたのである。
彼女の乱入によって正邪の奇襲は失敗に終わり、四人の対主催とデュエル
モンスターたちを敵に回した正邪は万事休すと思われた。
正邪「な~んてな! 私が何の対策もしてないと思ったか!」
正邪がここで奥の手であるヴォルケーノに変身し、放った獄炎で次々とセイバーとモードレッドのモンスターを破壊し、セイバーとモードレッド、光希も傷つけられ、逆にに遊矢たちがピンチに陥る万事休すの状態になった。
デュエルという正邪の知らない土俵で戦ったがために攻めきれなかったきらいはあるものの、その絶大な能力で苦戦させる。
一度は悠矢の切り札の一枚である「スマイルワールド」すらあまのじゃくの呪いで打ち破ったほどであり、状況は正邪の方が有利だった。
……遊矢が一枚のカードを引くまでは
遊矢「約束したんだ。
何度辛い目に遭っても、何度迷っても、俺は俺の信じるデュエルをまっすぐ貫くって!」
正邪「嘘、だろ……。なんでひっくりがえらない。なんで心変わりしない……。
まさか、お前、その笑顔は嘘だっていうのか!? 私がひっくり返すまでもなく、お前はずっと偽りの笑顔を浮かべてきたってのか!?
くそ、お前のほうがよっぽど天邪鬼じゃねえか!」
正邪がヴォルケーノと化したことで有利と不利は確かにひっくり返った。
だが、遊矢の心まではひっくり変えることはなかった。
それもその筈、彼は顔に笑顔を浮かべながらも背中には悲しみを背負っていた。
これではひっくり返しても笑顔→泣き顔×悲しみ→喜びにより落差が生まれない。
そしてただの人間でありながら大きな力の前に絶望の色を見せず「誰かを喜ばせる」信念を貫く遊矢相手に、逆に動揺しだす正邪。
自らの精神を、存在そのものを嘘偽る、天邪鬼である自分を超えたアマノジャクが現れたからだ。
天邪鬼の本質に対して自分が「下克上」されてしまったのである。
そんな正邪が動揺した隙をついて、遊矢以外の対主催が正邪を攻撃して足止めし、その隙に遊矢は胡桃を救助するための「エンタメ」を始めるのだった。
正邪「待てよ、待ちやがれよ! 私は、負けていない! 私は、恐れてなんかいない!
私は天邪鬼なんだ。生まれ持ってのアマノジャクなんだ! 私が、私こそがアマノジャクなんだあああ!」
吠える正邪を尻目に遊矢のとった行動はなんとダーク・リベリオンを召喚して胡桃を撃破するものだった。
胡桃が殺されたと思って、遊矢に食ってかかるモードレッドと膝をつく光希。
だが、胡桃を撃破したのはこれから起こる奇跡のショーの布石に過ぎなかった。
EM プリンセス・エリーゼのP効果:モンスターが破壊された時、そのモンスターを特殊召喚する「ビフレスト」
そして
理想郷の魔術師のP効果:墓地から儀式、融合、シンクロ、エクシーズモンスターが特殊召喚される時、その効果を無効にし、代わりに召喚素材となったモンスターを特殊召喚する「あの日の理想郷(ユートピア)」
これらの効果によって胡桃は死ぬことなく復帰できる。
しかもただ復活するだけではなく、彼女を蝕んでいたt-abyss、STAP細胞、ダーカーが分離した状態で復活するのだ。
胡桃は蘇り、元の人間に戻ることができたのだ。
このエンタメの結末に本人はもちろん、セイバーやモードレッド、光希、そして遊矢自身も笑顔にした。
だがこのエンタメが気に入らない者がこの場に一人いた。
鬼人正邪である。
彼女はただの人間である遊矢に精神的に圧され、都合の良い喜劇を見せつけられたことに腹を立てていた。
何より自分以上のアマノジャクが現れたことが許せなかった。
故にエンタメをぶち壊しにするために、負けを認めないために、下克上するために……この場にいる何もかもを焼き尽くすことにした。
正邪「まとめて燃やしてやるよ! アビス・
ノヴァ!!」
全てを灰燼に帰すヴォルケーノの奥義が放たれた。
遊矢たちはこれに対しカードで対処しようとするが、しかし……
遊矢「トラップカードが発動しない!?」
セイバー「モンスターカードもだ?! どうして守備表示にならない!」
正邪「はっはっは。私の狙い通りだな!」
遊矢やセイバーたちがつけているデュエルディスクは機械であり、機械はあまりに強い炎熱には弱いと踏んだのだ。
正邪の目論見通り、デュエルディスクは熱で誤作動し、カードが効果を発揮しなくなった。
強引で反則的なやり口だが、カードに頼って戦うデュエリスト相手には確かに効果的ではあった。
光希「超変身!……ぐううううううううッ!!」
光希が意を決して、クウガではもっとも高い防御力を誇るタイタンフォームになり、痛みと熱さを堪えて全員の盾になるが、強すぎる豪火と光希の体にある魔界植物は炎とは相性最悪であることも加えて、ものの数秒で燃え尽きるだろう。
そしてそのまま五人全員を焼き尽くせば自分以上のアマノジャクは消え、ロジェを援護する任務もまっとうできる……正邪はそう思っていた。
突如、デュエルモンスターとは違うモードレッドの一枚のカードが輝きだし、それに伴い漆黒の戦士が現れ、遊矢たちを飲み込んでいた地獄の炎が一瞬で立ち消えてしまうまでは。
正邪「!? こいつ火が効かない!!」
光希「この姿は……?」
胡桃「光希が黒くなった?!」
セイバー「モードレッド、そのカードは?」
モドレ「デッキに間違えて入れてた奴だ。しかし『絆』も捨てたもんじゃねーな」
ダモクレスに攻め込む前に、モードレッドがインデックスから譲り受けた際にデッキに入ってしまったカード――絆のタロット。
その効果は奇跡を起こすことであり、その結果、光希は究極の戦士であるアルティメットクウガに進化したのである。
アルティメットクウガの力の1つには周囲の物質を構成する原子・分子を操ることで、物質をプラズマ化し発火・炎上させる技「パイロキネシス」があり、これによってヴォルケーノの火炎能力を相殺したのだ。
つまり光希がこの場にいる限り、正邪は遊矢たちを焼き殺すことはできないのである。
遊矢たちのデュエルディスクも熱で一時的に誤作動は起こしたものの、無事に再起動し、デュエルの続行は可能。形勢は再び遊矢たちに傾いた。
正邪「クソ、クソッ、チクショオーーーーーーーッ!!」
策を打ち破られ、天邪鬼としてのプライドも壊された正邪はとうとうキレてしまった。
もはや策などなく、怒りのまま発狂《ルナティック》級の弾幕と炎を周囲に撒き散らした。
されどパイロキネシスを得た光希に守られることで遊矢たちにそれらが届くことなく、むしろ無差別攻撃によって仲間であるハズのヴィエル・ヒューナルたちとダモクレスにダメージを与えてしまう。
更にこれによって足場が崩壊して正邪自身と最前列で味方を守っていた光希がダモクレスの下層部に落下してしまった。
下層部で行われる鬼人正邪と朝之光希、天邪鬼と植物魔人、悪党とヒーロー、絶望を生み出す者と絶望していた者、ヴォルケーノとアルティメットクウガによる二人の死闘。
正邪が無差別攻撃でダモクレスの一部を崩壊させたことが、これが結果的に自分と光希をわけのわからないデュエルの土俵から引きずり落とすことに繋がり、実力を発揮できるようになった。正邪にとっては嬉しい誤算である。
光希さえ始末できれば遊矢ら決闘者のディスクを再び熱暴走させて今度こそ殺せる可能性が見えてきた。
まずは遊矢たちを殺すための最大の障害と化した光希を殺すことに専念する。
それ以上に何より正邪は光希の存在が気に入らなかった。
元ロワで絶望しきっていた自殺志願者のハズが立ち直り、何度叩きのめされても立ち上がり、自分の邪魔をして遊矢による精神的敗北を誘発、最終的に今の自分と互角の力を得ているときた。
さっきまでは何でもない有象無象の参加者に過ぎなかったが、今では最序盤で補足した時に殺しておくべきだったと思わせるくらいの怨敵と化しているのだ。
本性を隠しもせず、殺意を剥き出しにして襲いかかる正邪。
正邪「おまえさえいなければ……殺してやる殺してやる殺してやる!!」
お互いに発火能力が効果を発揮しない以上、頼れるのは己の肉体のみとなった。
互いに80~100tを超える拳と蹴りの押収が続く。二人共天邪鬼や植物魔人の状態のままだったら、とっくの昔にミンチになっている威力の打撃を打ち合っているのである。
殴られるたびにその部分から出血し、血を吐く2人。とても中身に少女が入っているとは思えない泥臭い戦いが展開される。
実力は互角であるが、このまま殴り合っては共倒れになってしまうと見越した正邪はある技を使うことにした。
彼女が本来持っている「何でもひっくり返す程度の能力」と「スペルカード」である。
正邪「欺符 逆針撃!」
光希の背後から突如、弾幕が襲いかかった。
その弾幕は正邪がヴォルケーノと化しているため、威力が格段に上がっており、光希の背中を抉る。
さらに正邪は情け容赦なく畳み掛ける。
正邪「逆符 イビルインザミラー!」
光希が反撃に殴りかかろうとしたところを、左右の感覚を逆転させ混乱させているうちに弾幕を叩き込んだ。
正邪「逆転 リバースヒエラルキー!」
今度は上下左右の感覚までも反転させ、まともに動けなくなったところを弾幕と共に拳を叩き込んでタコ殴りにした。
そうしてボロボロになった光希を見下しつつ、勝ち誇る正邪。
正邪「私が元々持っていた何でもひっくり返す程度の能力の味はどうだ?。
卑怯とか言うなよ?
どんな手を使っても生き残ったもんが勝ちなんだよ」
頭を殴り潰して決着をつけようとゆっくりと歩み寄る正邪。
正邪「安心しろよ。他の四人も全員仲良く殺してやるよ。
おまえはお仲間が焼かれてのたうち回ってる様をあの世から見てるがいいや」
余裕の表情で嘲笑う正邪。
しかし、光希は再起したと同時に、油断しきっていた正邪に対して足から生やした花弁状の剣「ブラッティザッパー」で斬りかかる。
一瞬の隙を突かれて片腕が切断させられ、悲鳴をあげる正邪。
正邪には二つの失敗があった。
自分が先に本来の能力を使ったことで光希にクウガになる以前の能力も使える可能性を教えてしまっていたのだ。すなわち光希は「仮面ライダークウガ」ではなく「魔闘士ロージィ」としての能力を使ったのである。
正邪は光希がクウガだけでなくロージィとしての能力が使えることを失念していた。
そしてもう一つは仲間を貶める発言、これが光希の怒髪天をつき、怒りに火をつけてしまったのだ。
――仲間を殺された猪八戒のように。
光希の眼差しにかつて自分を殺した八戒とよく似た眼差しを感じた正邪は大いに焦り、がむしゃらに弾幕を放つも、パイロキネシスによって弾幕を全て焼き払われてしまう。
ならばスペルカード「リバースヒエラルキー」で感覚を上下左右ひっくり返そうとするが、同じ手は二度と喰うかと言わんばかりに光希はこれを気合で押切り、逆に接近を許してしまう。
反撃に蔓による捕縛技「ラナーウィップ」で捕らえられ、先述の花弁状の剣「ブラッディザッパー」による止めどない足技の連撃「クリムゾンラッシュ」を浴びせられてしまう。
猛反撃に合い満身創痍となった正邪に、トドメを刺すべく、光希は両足にありったけの力を込めて必殺の蹴りを放たんとする。
ブラッティザッパーによる刃までついている必殺のドロップキック「アルティメットキック」は、正邪にとってはかつて自分を殺した沙悟浄の錫杖のように見えていた。
あれを喰らえばヴォルケーノとてひとたまりもないと直感で理解するも、満身創痍の自分では回避は間に合わない。正邪は大慌てで迎撃をする。
弾幕、感覚反転、火炎能力、迎撃のために持てる能力全てを使った。
しかし、弾幕も火炎もパイロキネシスで全て防がれて、感覚反転もキックの軌道一つ変えることができなかった。
まっすぐ自分の腹へと向かってくる必殺のキック。
それが直撃する寸前のスローモーションになった世界で正邪は誰ともなく問いかける。
(下剋上はもうすぐそこだと言うのに……これじゃあ、前と一緒じゃないか!?
どうして私は勝てない?!どうして私はまた殺される!?)
正邪の疑問に対する答えは帰ってこない。
そしてアルティメットキックは正邪の腹に直撃し――
(……まだだ! 私は何が何でも下克上するんだよ!
上でふんぞり返っている強者を弱者に踏みつけられるくらいまで降ろし!
希望を抱いている奴を死にたくなるくらい絶望させて、ひっくり返してやる!!)
正邪の腹部分が突然、大爆発を起こし、光希の体が弾かれる。
光希のキックはまだ直撃しておらず、その爆発は正邪自身が起こしたものだ。
正邪は現実の戦車にもある装甲の周りを爆破させることで本体を守る爆発反応装甲の要領で、ヴォルケーノでできた外殻を爆発で吹っ飛ばし、キックの威力を相殺したのである。
しかしアルティメットキックの威力は400t以上。それを防ぐためには相応の爆破力が必要であり、ヴォルケーノと化した正邪も無傷とはいかず顔から腹にかけた外殻が失くなって正邪本来の肌を露出し、夥しい流血やアバラ骨の骨折による重傷を負っていた。
だが必殺のキックが直撃すればあの世行きは確実であり、生き延びるためには必要な
痛みであったと正邪はこらえて認める。
そしてこの傷を作った元凶であるは光希は恨みのままに殺してやろうとする。
必殺技が破られ疲弊した光希に容赦なく襲いかかる正邪。
手始めに足の剣をへし折り、鬱陶しい蔓もちぎってやった。
光希にはもう武器がないと見越した正邪は彼女の首を掴み、絞殺……否、その首をへし折ろうとする。
光希は苦し紛れに正邪の胸元にライダーパンチを放とうとするも僅かに腕のリーチが足りず、届かない。
正邪はここで王手を確信した。
この女さえ殺せば、遊矢や英霊たちをも殺すことができアマノジャクのプライドも取り戻すことができる。
その時の遊矢や胡桃の悲しみや憎しみの表情を浮かべると楽しくてしょうがない。
子供のようにケラケラと笑いながら怨敵の首をギリギリを絞めていった。
正邪「もう少しだ……もう少しで私は天邪鬼に、夢の下克上が……」
ザクッ
正邪「な……!?」
瞬間、正邪の残った片腕の力が緩んだ。
唐突に胸に走る激痛。
その痛みを辿って見てみると……光希の手に「菩薩掌」と呼ばれるパイルバンカーが現れ、その太い針が正邪の外殻が失くなって防御力を喪失していた胸部分を穿ち、貫いていた。
そして正邪は口から血の塊を吐き、とうとうダモクレスの床に倒れた。
正邪は知らなかった。
光希が月元から受け継いだのは霊石だけでなく、彼の魔界植物に寄生されることで魔拳士カクタスの力も引き継いでいたことを正邪は知らないが故の敗因だった。
訪れる二度目の死、また蘇生させられる偶然などまずありえない。
正邪はまた死ぬのかと悔やんだ、そして大妖クラスの力まで手に入れてどうして勝てないんだと泣いて喚いた。
そんな彼女の問いに答えたのは、先程まで殺し合い、正邪を打倒した光希だった。
光希は自分は多くの仲間に支えられてここまできたと告げる。
彼女は正邪も知っているとおり、最序盤では元ロワでの出来事が原因で絶望し、自殺未遂をするほど弱い人間だったが、ゼロやセリューに胡桃との巡り合い、多くの対主催との交流によって徐々に持ち直し、月元の力と意志によってヒーローとして再出発できたそうだ。
正邪がマーダーとして弱者による強者への「下克上」を目指していた頃、彼女もまた対主催として絶望から希望へと「下克上」をしていのである。
つまり、二人はコインの裏と表だったのだ。
その裏と表がこうして互いの障害となって立ち塞がった時、明暗を分けたのは「絆」の差だった。
仲間である悟空に対して卑怯な殺し方をしたことで八戒の怒りを買い、一度殺された。
前の殺し合いで遊矢の胡桃を笑顔を取り戻したいと確固たる信念の前に負けて、エンタメを見せつけられた。
モードレッドの父や仲間を守りたい強い想いが絆のタロットを発動させてしまった。
そして今度は胡桃たち仲間を殺そうとする正邪の発言が光希の怒りのスイッチを入れてしまい、実力以上の力を発揮させてしまったのだ。
更に光希だけでなく大半の参加者は信頼し支えある仲間や裏切りたくない失いたくない仲間がいるのだという。
だからこそ光希は何度倒れそうになっても、竦み上がりそうな強敵を前にしても、支えられて立ち上がった。
そして支えられたことに報いるために、また立ち上がり、倒れそうな仲間を支えるのだという。
――正邪にはそれがない。
彼女には己の目標のために利用する相手はいても、支えてくれる仲間はいない。
他者に平気で嘘をつき、倒れた仲間がいても価値がなければ平気で見捨ててしまう……これでは絆が生まれるハズがないのだ。
仮に光希が月元から命を懸けるほどに愛されずクウガとカクタスの力を得ていなければあっさり殺せただろうに、主催の手駒として戦力強化だけのためにヴォルケーノの力を渡されただけの正邪とはここで僅かにでも差が出てしまったらしい。
もし正邪が絆の力を侮らず、どこかで利用ではなく信頼しあう仲間を得ていたら結果は変わっていたかもしれない。
だが正邪にはそれはできない。
彼女は生まれ持っての天邪鬼……信頼などという他人のポジティブな感情を見ると自己嫌悪で吐き気を催すのだ。
敗因は理解しながらも、仮に生き延びれたとしても正邪は実行する気はない。
なにせ彼女は生まれ持っての天邪鬼だからだ。
下克上するつもりが、自分より弱かったハズの少女にまんまと下克上されてしまったことに正邪は屈辱を覚える。
最後の抵抗にでも、せめて「弱者」正邪は自分を殺した「強者」光希に対して精一杯の天邪鬼をすることにした。
正邪「ケッ……希望や絆なんて反吐が出る……
いいか? 希望はでかいほどひっくり返った時の絶望もでかくなるんだ。
おまえらは主催共に下克上する気でいるようだが、奴らは強い、早々と諦めろ。
絶望が抱えきれないほどでかくなる前になあ?」
正邪は血反吐を吐きながらも狂ったような高笑いを上げる。
この殺し合いで死んだ者の魂はセカイジュに全て取り込まれる。
ということは、セカイジュの内部から主催と対主催の戦いを鑑賞できるのだろう。
もし対主催が敗北して光希たちがセカイジュに取り込まれたら思いっきり嘲笑ってしまおうというのが正邪の考えだった。
そしてとうとう、彼女の中のヴォルケーノとしての魔力が暴発して肉体と野望は爆散し塵となって消えた……天邪鬼 鬼人正邪の壮絶な最期であった。
光希「鬼人正邪……あなたの言った希望が大きくなるほど絶望が大きくなるのは本当かも知れない
私はこれからの戦いで何度だって絶望するかもしれない……
でも、希望が絶望に変わるんだったらその度に下克上(ひっくりかえ)してやるんだ! 諦めずに何度でもね!」
強敵(とも)の最期を見とどけ、彼女の天邪鬼に光希は決意を胸にアマノジャクで返した。
ある種、正邪の意志を受け継いだというべきか、ベクトルは違うが彼女もまた今日より下克上を目指す者になったのである。
神堕ろしによって多くの世界の支配を目論む主催と、解放を目指す参加者たちのセカイジュを巡る最終決戦(ゲコクジョウ)はまだ始まったばかり。
この時点では戦局はどちらにひっくり返るかわからず、正邪が望んだ結末になるかは誰にもわからない――
【称号:時るれさ上克下が鬼邪天】
最終更新:2024年01月16日 12:33