【名前】阿紫花英良
【性別】男性
【出典】からくりサーカス
【スタンス】対主催

【ロワでの動向】
本編最終巻、死亡後より参戦。そのためか自らの命にもあまり頓着なく、当初はなるようになれといった風にふらふらしていたが…
会場ギミックの自動人形に襲われていた白銀御行を発見し、「助ける義理があるでなし」と静観しようとしていた矢先、ボロボロにされながらも体を張って一矢を報いる白銀の姿に、かつての依頼主を重ねる。
やれやれとため息をつきながら、偶然にも支給されていた生前の相棒――懸糸傀儡・プルチネルラの一撃で以て助太刀し、自動人形を粉砕した。

そのまま去っていこうとする阿紫花を、白銀は呼び止める。あなたを雇いたい、探し人とこの殺し合いからの脱出のため、力を貸してくれ、と。真っ直ぐな瞳で。

シケモクをくわえたまま振り返った阿紫花は、頭を掻きながら、坊や、名前は、と尋ね、その名を聞くとともに、くっくっく…と笑い出す。

「『しろがね』ねぇ……どうやらとことんあたしに付いて回るらしいや…」

それは、阿紫花にとっては、あまりにも因縁の深い「名前」だった。

「……で、会長さん? お代は…いかほど頂けるんで」

白銀とのコンビでは、対主催として他の参加者を助けたり、殺し合いに乗った参加者や会場ギミックと戦うなど、単純戦闘力はさほど高くないものの、息の合った連携で状況を切り抜けていく。
特に阿紫花は、行く先々で黒賀村の同胞であるぶっ殺し組や誘拐組の繰るマリオネットを回収して行き、その場に応じて使い分けていた。プルチネルラ以外では、全身に刃を持ち近接戦闘を得意とする加納のバビュロの登場頻度が多かったようである。

また、「鬼」である朱紗丸との遭遇戦では、血鬼術を前に苦戦を強いられ、命のやり取りに熱くなっているところを、白銀に止められて頭を冷やすなどの一幕も見られた。

いささかナイーブで女々しい面もありながら、芯が強くひたむきで、探し人―四宮かぐやとの恋愛頭脳戦にて培った経験から、阿紫花さえも驚かせるような大胆な決断、奇策もかましてみせる白銀のことはかなり気に入っていたらしく、時には白銀からの無茶ぶりに愚痴をこぼし、その甘さには、
「ったく…“しろがね”って付く奴らは、どいつもこいつもこんなお人好しなんですかい」
とぼやきつつも、「退屈しない」と笑っていた。

また、原作でのラスボスであるフェイスレスの顛末を白銀に話した際には、

「…少しだけ、ほんの少しだけ、わかってしまうかもしれない。
“かぐや姫”を奪われたとしたら、俺もその「顔無し」になってしまうかもしれない。何十年かかっても、何百年かかっても…それこそ、月の裏までだって、追いかけて…」

そう呟く白銀に、「そんなんじゃモテねえですよ」などと冷やかしたりもをしていた。

中盤、ついにかぐやの所在を突き止めた二人は、急いでそこへ向かう。
しかし、彼女たちのチームは、熱血クソ野郎こと烈火星宮によって夜明けのヴァンと引き離され、絶体絶命の危機に陥っていた。
小日向満月を狙った蟲をバビュロで弾き飛ばすも、動きを止めない蟲は、満月を庇ったかぐやに着弾し、焔ビト化……と思いきやまさかの種火が『適合』したことで、星宮の狙いはかぐやへと切り替わる。

「白銀の坊っちゃん!無茶はやめなせえ!!ありゃ人の形をした化け物ですぜ!あんた、あたしに命を無為に捨てるなと言ったでしょうが!」
「すまない阿紫花さん…だがかぐやを…あんなやつに渡すわけにはいかないんだ…まだ…やれる!」

ステルスマーダーが露呈するのも構わず、そのままかぐやを攫おうとする星宮の前に、とっさに白銀が立ち塞がった。
そして――星宮の“星拳突き”が、白銀を打ち貫く。
白銀も人形破壊者の血の混じった阿紫花の血を貰い、常人よりもはるかにタフになっていたとはいえ、そこまでだった。
白銀御行は、焼け褪せた黒い血の海に沈んだ。
星宮の撤退後、震えながら、泣きながら寄り添ったかぐやへの告白と接吻を交わし、消えそうな声で、必死の言葉をかける白銀。
それを、阿紫花は苦い顔で眺めていたが、

「――阿紫花さん」
「……何です」
「不甲斐ない、俺からの、もう一度の、依頼だ……
――四宮を、守ってくれ。頼む」

その言葉を最後に、白銀の手は地に落ちた。

「……とんだ依頼人に捕まったもんだ。追加の仕事を頼んどいて、あたしの返事も聞かずに逝っちまいやがって」

白銀の骸を抱きしめて嗚咽するかぐやを見つめて、阿紫花はぼやきながら、手袋を嵌めなおす。

「受けましたぜ、“しろがね”さんよ」

これ以降、阿紫花は新たな警護対象であるかぐやと行動を共にする。
白銀の死によって心折れるかと思われた少女は、死に際の白銀との誓いを胸に、復讐者として覚悟を決め、殺し屋の阿紫花も顔負けの胆力で、修羅場を潜っていった。
あの坊やにして、この嬢ちゃんありか――と何度目かわからないため息をつきながらも、阿紫花は矢張りどこか楽しそうに、数多の傀儡を繰って、彼女をサポートした。

殺し合いの終盤、ダグラス・バレットの全方位宣戦布告と時を同じくして、ついにかぐやたち一団は星宮を見つける。
志々雄真実率いる軍勢の一角となっていた熱血クソ野郎へと弔い合戦を挑むかぐやだったが、阿紫花は彼女と引き離され、一刻堂・マンドライバーとともに、死の具現たるバラガン・ルイゼンバーンとの戦いを余儀なくされる。
生来の勘から、目の前の存在が規格外の怪物であることを察した阿紫花は、対星宮用として秘蔵していた“とっておき”、フェイスレスこと白金のマリオネットである「白のあるるかん」を躊躇なく繰り出すが…

マンドライバー「あれは、いったい…」
阿紫花「何だってんでえ……あたしの持ってる懸糸傀儡の中でも飛びっきりの逸品…"顔無し"の野郎の傀儡が、あっという間に朽ちちまいやがった…あの姿……まるで……」
一刻堂「……黒死病(ペスト)で未曾有の犠牲者を出した中世末期ヨーロッパの美術では、あらゆる身分の人々が、あるものに扇動され、狂い踊るように墓場へと向かう一連の絵画が立て続けに作られたという。──"髑髏"のモチーフだ。
──人間の、いや、恐らくはこの世に在る全てが等しく逃れられぬもの。朽ち果てた骸が、命を刈り入れる鎌に類する道具を携えた姿で、人はそれを表してきた……死を司るもの──"死神"を――』
バラガン『ほう。人の身で世の真理を、我の姿を語るか、小賢しき術師。貴様も、儂の前では等しく蟻の一匹に過ぎぬ。
舌先で我が死の息吹を避けたとて、逃れられると思ったか。
儂が掲げるは収穫の鎌などではない──この"滅亡の斧(グラン・カイーダ)"は、王に刃向かう不逞の輩を裁く、滅びの具現。
我こそは、バラガン・ルイゼンバーン。全てのものに等しき老いと滅びとをもたらす、虚ろの圏の真の王なり!』

本物の死神であるバラガンを前に、阿紫花のできることはあまりにも少なく、結局、マンドライバーの特攻と一刻堂の命を賭した最後の言霊によって、襲来したヴァネッサたち共々バラガンが転移されるまで、無数の傷を負いながら、生き延びるのがやっとだった。

あまりにも弱い自分を苦々しく思いつつも、阿紫花は、自分に課された依頼を果たすために動く。

適合者となった四宮かぐやは、烈火星宮と戦っていたが、序盤こそ押していたものの少しずつ対応されていた。
ついには星宮即席の広範囲技「星拳・大文字焼き」をもろに食らってしまい、さらに仇相手でヒートアップしていたのか、発火能力の使いすぎによる最悪のタイミングでのオーバーヒート。
諦めず抵抗しつつも、そのまま止めを刺されそうになった時、修羅の少女は目を閉じ、恋した男の名を、無意識に呟いていた。しかし。

「おいおい、参ったな!いかにも悪いやくざが俺の邪魔をしに来たのか!」
「かぐやの嬢ちゃん…いや、姐さんよ。
惚れた男の名を呼ぶのは…もっと色っぽい時って、相場が決まってるんですぜ…!」

間一髪で間に合った阿紫花を加え、最悪の伝道者との第2ラウンドが始まる。

とはいえ、星宮はあまりに強かった。

「うむ…まぁ問題ない!死体がひとつ増えるだけだ!!
おい、やくざ者ってのは、鉄火場に強いんだってな!?それは素晴らしいことだ… なら、炎にも負けない強い人間に、なろうぜっ☆!! 」
「けっ、とんでもねえ熱血漢もいたもんだ……こいつを切り刻んでやりな、『バビュロ』ォ!」
「おっと、物騒な刃は、こうやって……星拳突き!!」バガン
「ちいいッ!!加納のバビュロをこうも簡単に…なら『テオゴーチェ』の爆弾でてめぇの炎ごと吹き飛べば……ぐっ!?テオゴーチェの四肢が……」
「俺を誰だと思ってる?火災にともなう爆発物処理は!お手のものだ!!」
「……そうでしょうねえ、そうだと思った…だがよ、首元がお留守ですぜ!『ダクダミィ』!!」
キリキリキリキリ……ヂキン ヂギッ
ボンッ
「……おいおい気を付けろよ!どれもこれも……こんな危ない刃をむき出しにしてたら、子どもが怪我するかもしれないだろ!?」
「ッ……参りやしたね…山仲ほど上手くはねぇが、気配を消して急所へ忍ばせたダクダミィを一瞬で焼き尽くすたぁ…」

アクア・ウィタエの力で焔ビト化こそしないものの、身体能力で完全に上回られた阿紫花は圧倒され、かぐやとの連携を以てしても、押されていく。
マリオネットの殆どが破壊され、かぐやも満身創痍、しかしその時、突然星宮の方向に閃光が飛んできた。

「んん~?誰だ君は!俺は今やくざ者をこらしめてる途中なんだぜ」
「下衆にあまり名乗りたくはないのだがな…仕方ない」

白い姿に、虚ろの双眸を宿しながら、人の「心」に興味を持ったもう一人の「死神」。

「第4十刃、ウルキオラ・シファー 十刃内での力の序列は4番目だ」

ウルキオラの助勢により、再びの九死一生を得る。
志々雄真実に対して劣勢の他の仲間の元へと、ウルキオラに向かってもらうよう頼み、

「……本当にいいのか?奴は下衆だが、人と思えぬほど強いぞ」
「大丈夫です、ありがとう……おかげで、もう、動ける……
だから、あの人たちの方を、助けてあげてください」
「……それに、そっちのお前は…」

ウルキオラの言葉に、阿紫花は焼き切られた傷の止血を行いながら、飄々と返す。

「おっと、そりゃ言いっこなしですよ。……どこの誰だか知らねえが、マジでやばかったんだ、感謝しますぜ。
だが、こいつはあたしの受けた仕事だ。後はキッチリ、御代分やらせてもらいやすよ」
「……そうか。それがお前たちの…」

最終ラウンドとなった星宮VS阿紫花・かぐやの戦いの決め手となったのは、白銀が生前に手に入れていた、用途不明の支給品──炎炎ノ消防隊において、カリム・フラムの用いていた、熱音響冷却の武器であった。
適合者であっても使い手本人ではないかぐやには、それを当てる技量がなかったが、阿紫花が命がけで星宮を止めることで――初めて『炎を凍らせる』熱音響冷却を決めることができたのである。
熱き血潮を燃やす外道は、半身を縫い留められ、叫ぶ。

「うおおおおお!?くそ、これは、まさか…ぐっ!
だが……こんなもので……俺の熱い思いを止めたと思ってるのか?
残念だったな、お前たちは二人とも、もう動けない!
誰も俺がこれを出るまで、助けてくれる者はない!
素直にあの化け物…死神だったか、に助けてもらえば良かったんだ!まぁそれでも、俺が負けることなんて…」

しかし、その時にはすでに、最後の一手は打たれていた。

キリキリキリキリ…と、静かに、操り糸の音が響く。
かぐやが、ふっと微笑む。

「本当に、どこまでも熱くて、暑苦しくて…百年の恋も冷めそうな、殿方ですこと」
「何?」

キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ

膝をついた阿紫花の、折れ曲がった腕の先で。
指の一本が、動いていたのだ。

「……忘れてたんですかい。……あたしらァ……商売柄、奥の手ってのは最後まで、隠しとくもんなんだ」

星の瞳を見開いて、星宮が笑う。
その背後に、四本足で駆動する巨大な道化の影が、迫っていた。

「おいおい、まだ、人形が残っ……」

それは、いつもそうしていたように、棍棒を振りかぶり――

「やりな、『プルチネルラ』ァ!!!」

ブ  ン
ゴギリ


最悪の熱血漢は、姫君の想いと、殺し屋の執念の前に、その生を終えた。



そして、阿紫花もまた――

「……なんとか、片付きやしたね。…すっかり、コートが焦げちまった」
「……」

立ち尽くすかぐやの前で、壁にもたれた阿紫花は、くっくっく…と笑いながら、煙草の空箱を取り出し、そっと握りつぶす。

「奴に棍棒を食わせる、操り糸の一本。気取らせなかったあたしの芸も……なかなかのもんでしょう。プルチネルラもだいぶ焼かれちまったが、なぁに……この商売、生傷が付き物で……」
「阿紫花、あなた……」
「……先に行ってて下せえ。まだまだやることはあるんでしょ。さすがにちょっと休ませてもらいますよ」
「…………。……わかり、ました……
………阿紫花……ありがとう」

短い時間ながら共に時を過ごした殺し屋の言葉から全てを理解し、まだ戦っている仲間の元へと、駆け去って行く。

「………………。やれやれ、泣いていやがった。何だかんだ言って、まだ子どもってこった。
考えてみりゃ、平馬に、菊、れんげ、百合と、そう変わらねえ歳か……
……やっぱり、あたしは焼きが回ったらしいや」

そんなかぐやの背を見送りながら、阿紫花は、薄れていく視界の中で、独り言ちる。

──四宮を、守ってくれ。頼む──

「……しろがねの、坊やからの……依頼は……
まだ、途中……だってのに……」

退屈を嫌う人形遣いの殺し屋は、自嘲気味に再び笑うと、その意識を闇に委ねた。
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最終更新:2024年08月24日 11:20