運命の巡り合わせというのはどうしてこんなにも残酷なのだろうか


色んな事があった、色んな出会いがあった、色んな別れがあった、笑えることも、楽しいことも、悲しいことも、辛いことも、いっぱいあって、私は今こうして生きている


でも、一番の恩人である私のサーヴァントには結局お礼を言えずじまいだったのが唯一の心残り。けれども、あの人のおかげで私はこうして生きている。
あの人の力なんて自分には不相応なものを受け付いてしまったけど、それでも彼が守ってくれたこの命に恥じない生き方をしたいと思っている。


それが、私の唯一無二のわがままだ

そして私は、こうして唯一生き残った友達を目の前にしている





「……久しぶりだな、紫音。……無事で良かったよ」

「……私もほまれさんが無事で良かったです。……私の方は色々ありましたけど」


本当に、色んな事があった。そしてこうして彼女と再開出来たのも奇跡なのだろうと私は思う


「私もだな……私も、色んな事があって、それで……むつと、あすかが」

「………」

「だからさ紫音、お前だけでも生きていたのがとにかく嬉しくて……今まで(・・・)仲間には巡り会えた事はあっても、みんなと再開なんて出来なかったからさ」


……そう、私は、ほまれさんに今まで(・・・)何があったのかなんて分かるわけがない。()に何があったのか、私に知る手段はない


「……そうですか。それでも、ほまれさんは、私にとって頼りになる、大切な友達の一人ですから。」


だけど、あの無人島で、そこで出会った3人はかけがえのない友達で
私にとっては、ほまれさんは頼りのあるリーダーだった


「……頼りになる、か。こんな殺し合いでは、私が今まで父さんから培ったサバイバル技術なんててんで役にも立たなかったよ、自分の無力さを思い知って、それで……紫音はどうなんだ?」

「私も、多分同じだと思います。自分の無力さを思い知って、頑張ろうとして結局みんなの足を引っ張って迷惑をかけてしまって……」

「……苦労したんだな、辛かったんだな、紫音。でも……紫音は強くなったよ」

強くなった――確かに戦える力だとかは手に入っちゃったけど、心の強さの方は言われると少々あれである
だからそこ、私には、ほまれさんは最後まで私たちにとっての無人島遭難生活の頼れる鬼島ほまれでいてほしかった

――いてほかったのに

「あの人に比べたら、まだ私は強くなんて無いですよ、ほまれさん」

「……そうか。でだ、紫音」

「……なんですか?」













「――引き下がる気は、無いんだな?」

「それはこちらのセリフです、ほまれさん。本当にあんなふざけた願いを実現させるつもりなんですか」

「――ああ。覚悟なんて何周目前の時点で決めたさ。私はこの殺し合いを勝ち抜いて、私なんかのために死んでしまったみんなを蘇らせる。例えどんな犠牲を払ってでも、例え他の全てが殺戮の舞台に堕とそうとも」

――最初から分かっていた、ほまれさんが引き下がるつもりなんて無いことぐらい
そして、それは私も同じ

マギアコナトスによる願望の実現。それはブエナ・フェスタとドゥーム判事による、無限に繰り返される殺し合いの祭典(スタンピード)の引き金
もしほまれさんの願いがマギアコナトスによって叶えられて、私達4人の日常(無人島遭難生活)が戻ってきたとしても、その結果としてこの先どれだけの世界の命があの二人の享楽に食いつぶされるのか想像したくない

「――させない。絶対に。そんな事をしてむつやあすかが戻ってきても嬉しくなんて無いし、そんな事のために他の世界を殺し合いに巻き込ませなんてしない」

そんな事、絶対にさせない。

私なんかと一緒にいてくれたエステルさんやグレイさん

高圧的で偉そうだったけど根は意外にいい人だったアンナさん

私に色々と教えてくれたエルメロイ先生

もういなくなってしまったけれど、あの時落ち込んでいた私を励まそうとしてくれた遊矢くん


――そして、私にここまで生きてこられた一番の理由、私のサーヴァント(施しの英雄カルナ)のために



「世界の人口なんて今でも増え続けている。数万人死んだ所で世界に支障など出ないだろう。むしろ私欲にまみれたクズだけを一掃してくれれば世界にとっても幸運だろう」


――今まで何があったのか、今まで彼女が繰り返してきた殺し合いの中で何があったのかなんてわからない

だけど、そんな言葉を、鬼島ほまれに、ほまれさんに、絶対に言ってほしくなかった



「――ッ! あの人たちをただの『世界の人口』でなんて切り捨てるな、鬼島ほまれッ!」

「……?!」


怒りの感情が湧いて出る。感情のあまりフルネーム呼びしてしまったけどそんな事を気にしてる場合じゃない

私の心の叫びに応じ、私の姿も戦士(クシャトリヤ)に相応しい姿へと変わる
髪は赤く染まったセミロングへ、背中には金色の瞳をあしらった赤い翼、そして肉体と一体化した黄金の鎧と、胸元に埋め込まれた赤い宝石。吹き荒れる熱風は並の人間なら怖気づく程の威圧だろう
(正直言ってかなり恥ずかしい)

ほまれさんの方も私の臨戦態勢を前に、どこからともなく取り出した二刀を構え、その姿を変える
氷の鎧のようなものを纏い、そのツインテールも水色に染まる。背中には氷でできた龍の翼のようなものが生え、ほまれさんの周りには桜吹雪の如く吹き荒れる氷と雪の嵐。

だけど、そんな程度で怖気づいてはいられない、だから――

「私は、私なんかと今まで一緒にいてくれたあの人たちに報いるために、ほまれさんを止めるためにここに居る―――だから」







「私の目を見ろ――鬼島ほまれぇぇぇッッッ!!!!」

「九条――紫音ッッッ!!!」





私と彼女の叫びが響き渡った刹那、炎熱と猛吹雪が激突した







ここは封印されし幻想、万能の頂きに最も近き場所


一人の少女は永遠に繰り返された地獄の中で藻掻き、数多を地獄に堕とそうともたった一つの『日常』を取り戻すため


もう一人少女は世話になった大切な友人たちに報いるため、そしてたった一人の友人を『救う』ため


これは少女たちの信念のぶつかり合い、ただの遭難者に過ぎなかったはずの彼女たちのクル・クシェートラ(輪廻の終着点)


Sword, or death
with What in your hand...?
Flame dancing,Earth splitting,Ocean withering.

GRAND BATTLE
1/1


――これが少女(九条紫音)彼女(鬼島ほまれ)の、たったそれだけの物語(マハーバーラタ)

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最終更新:2019年11月19日 18:33