【名前】シャア専用ズゴック
【出典】SD
ガンダムフルカラー劇場
【種別】じおん公国水陸両用MS
【名台詞】「地球は持たんところに来ているかもしれないって誰かが言っていたけれど。まあそこに住む者達も捨てたものでも無いんじゃなイカ?」
【本ロワでの動向】
知る人ぞ知るSDガンダム4コマ漫画の名作『SDガンダムフルカラー劇場』のメインキャラクター。主人公の
ガンダムとは、組織のリーダーとして季節の挨拶を、個人としては喧嘩を欠かさない仲。呼び名は主にシャアで、偶にシャズゴなどの略称や部下から階級で呼ばれることもある。本編でも機体の正式名称で呼ばれることは極めて稀。
正統派なSDガンダムのキャラクターなのでパイロットのシャア・アズナブルとは全くの別人……なのだが、ロワ住人からは「どの作品のシャアよりも人間ができている」と評判である。水ロワでは大切な物を一度失って色々なものに寛容になれた7巻以降からの参戦だったのも大きいだろう。
登場話では久々にズゴックに着替えたら拉致された上に殺し合いを強要され、しかも殺し合いの道具として支給されたのがカードゲームという状況に本気で困惑し、悩んでいた。だが名簿を確認して知り合いが1人もいないことに安堵する(
ガンダムぐらいはいても良かったとか思っていたが)と、落ち着きを取り戻し、水場の多い会場内ならズゴックのボディも活かせると、取り敢えず探索を開始する。
途中で分裂しようとして制限の為に失敗してちょっとした事故を起こしてしまうなど、紆余曲折を経てある物を発見する。それは、魔法のステッキだった。だが、ただのステッキではない。昔、シャアがシャア専用ゲルググからジオングに変身する時に使ったステッキだったのだ。
思わぬ所で黒歴史を抉られたシャアは悶絶するが、この状況では戦力増強の為には手段を選んではいられないと、ステッキを手に取る。近くの物陰に様子を覗っている人の気配があることにも気付かずに。
「プリティリリカルマジカルパワーで、いざ!」
「パラリパラリラ♪ 私のお願い叶えてラブリン♪ ジオングになれ~!」
……が、駄目。ゲルググ、リックドム、サザビーと試したがどれも失敗し、自分の体に掛けられた制限の存在に逸早く気付く。が、今やったことに気恥しさを覚えてステッキをいそいそとしまった所に、物陰から1人の少年が姿を現した。
シャークさん「……随分とメルヘンなやつだな。嫌いじゃないぜ」
先程の一部始終をばっちり見られていたことを悟ったシャアは、血を吐くような思いでのた打ち回った。暫くして落ち着くと、神代凌牙ことシャークと話し合い、殺し合いという異常事態を切り抜ける為に力を合わせて行くことを約束する。この時、シャークの不良ぶったツンケンした態度にマークⅡ三兄弟やれんごーの三馬鹿を思い出していた。
その後、シャークからデュエルモンスターズについてのレクチャーを受けながら、シャアは最寄りの人が集まりそうな場所である港へと向かった。
港に着くと、そこには別の2人連れの姿があった。ライダーとカエルだ。見た目こそ名前の通りの両生類だが、立派な騎士であるカエルとはすぐに打ち解けることができた。だが、様々な世界の現在過去未来から集められた支給品目を付け、それらの“お宝”を収集することを第一の目的とするライダーは、その邪魔をするならば誰であろうと容赦はしないと断言。挑発的な問いと共に、シャアクの2人に殺気をぶつけて来る。
あわや一触即発かと思われたが、シャアが「私の一番大切な宝物はここにはいないから別にいいぞ」とあっさり了承。イラッとしていたシャークもそれに毒気を抜かれたのか、決闘者の魂であるデッキに手を出さない限り感知しないと承諾した。すると、この返事が気に入ったのかライダーはニッと笑い「だったら、ここで会ったのも何かの縁だ! あんたらも一緒に来な!」と半ば強引に仲間に引き入れられた。
話が一段落すると、港なのに舟が一艘も無いことに話が移る。すると、試してみたいことがあるとシャークがシャアに支給されたデュエルモンスターズのカードを取りだした。シャークは支給品の説明文にあった『カードの効果は現実化する』という一文に目を付け、儀式魔法『高等儀式術』を発動しデッキから対応するモンスターを墓地に送り要塞クジラを儀式召喚、実体化に成功する。
シャアが呆気に取られていると、要塞を背負ったクジラが目の前に召喚されて昂ったのか、ライダーが宝具『黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)』を展開してシャークに張り合った。カエル落としという大技を使えるカエルもこの状況に順応していたが、シャアは「ファンタジーだなー……」と、マスターガンダムとシャイニングガンダムが山菜(ガンダムヘッド)を撃退した時のガンダムのようになっていた。
ともかく、ここに2つの海上移動拠点を持つ一大グループが誕生した。流石にどちらも色々と制約があった為、使用は交互という風になったが。
出港してから暫く、一行は船旅を楽しんだ。特にシャアは個性的な面々と積極的に談笑し、寄せ集めの集団が打ち解ける切っ掛けを作っていった。
カエル「お前を見てると、昔の友人を思い出すよ」
シャア「ふふ、どうやら中世にも赤いイケメン騎士はいるようだな」
カエル「ああ、いや。そうじゃない。昔出会った、未来のロボットさ」
シャア「未来か……私も過去になら迷い込んだことがあるんだがな」
ワイルドハントを沈めようとやって来た村妙を返り討ちにして、同じ女船長だからかライダーが彼女を気に入って仲間に引き入れたのに続き、ジンベエと御手洗の2人も加わり海賊団の戦力は順調に増強されていった。だが、ステルスマーダーの干柿鬼鮫も一行に加わったことで、俄かに暗雲が立ち込め始める。
そして、第2放送が終わった直後に突如として海面の急上昇現象が発生。海も嵐のように荒れ始めたのだが、折悪く海上で船の交代のタイミングが来てしまった。ワイルドハントから要塞クジラに乗り移っていた、その時、海中から襲撃者が現れた。当時トップマーダーに君臨していた、凶暴にして凶悪な人喰い鮫の代名詞、ジョーズだ。
要塞クジラは背の上のマスターであるシャークやその仲間達を気遣って反撃することもままならず、ジョーズの牙によって腹を食い破られ、戦闘破壊されて消滅してしまう。そして、要塞クジラに乗っていたシャーク、ライダー、御手洗、村妙はジョーズのいる海に投げ出されてしまう。
それを見て、シャアは危険も顧みずに即座に海中へ飛び込みライダーを救助。ジンベエによってシャークと御手洗も救助されるが、鬼鮫は間に合わず村妙の眼前にはジョーズが迫っていた。ジョーズの口が開き、最早これまでかと思われた時、ライダーが怒りの叫びと共に『黄金鹿と嵐の夜』を最大展開し、ジョーズに一斉砲撃。村妙も舵輪を握っていたカエルのベロによって救出され、一行はワイルドハントへと戻りそのまま航行を続けることになった。この時シャアは、やはり赤が似合うやつは違うな、などと思っていた。
辛くも全員が生き延びたものの、ライダーは魔力と体力の消耗が激しい上にワイルドハントの維持の為にデュエルモンスターズのカードを使ってまで魔力を酷使し続け、村妙も生前のトラウマに新たなトラウマが重なってしまい主に精神的にボロボロだった。他の面々も疲れが溜まっていたことがあり、シャアは海面上昇により最寄りの陸地からすぐの位置となった温泉施設へ向かうことを提案した。全員、これに賛成し一行は温泉へと向かった。
この温泉には急激な海面上昇によって濡れて冷えしてしまった体を温めようと、数多くの参加者が続々と集結していた。そして『わくわく温泉大決戦』が勃発するのだが、シャアはこれを完全にスルー。制限が緩和され施設内でのみ自由に着替えられるようになっていたので、本体だけになって湯船にぷかぷかと浮かび、濱口の手持ちのヌマクローのシンヤと一緒にのんびりまったりとした時間を過ごしていた。
風呂から上がると仲間達から何処にいたのかとか、ロッカーに着替えとして入っていたズゴックボディは何だったのかとか、色々と問い詰められたが笑って全て受け流した。
温泉での騒動を経てアトランティスとイカ娘も海賊団の仲間に加わったのが、出発直前にアトランティスとジンベエが対立。シャアはこれを「別に同じ対主催同士でも個人が嫌い合っててもええやん?」と容認し、2人は格闘家なのだから試合で決着を付けるように促す。ライダーもそれに賛成し、シャークも頷くと要塞クジラと素材となる
モンスターを『サルベージ』し、改めて要塞クジラを儀式召喚する。すると、どうしたことか、この時に限って要塞クジラは要塞の代わりにプロレスのリングと実況席を備えた試合会場を背負って儀式召喚されたのだ。これを見てシャアは、ソリッドビジョンって空気読むなぁ、としみじみと呟いていた。
ジンベエとアトランティスの魚人超人異種格闘技戦は実況をシャアとライダーがノリノリで勤め、他のメンバーは観客として試合を見守っていた。
シャア「ああっと! いったいった、ジンベエがいった~!」
シャークさん「いけぇ! ジンベエェー!!」
イカ娘ちゃん「アトランティス、負けるなでゲソー!」
カエル「ゲゲェ!? あ、あれは!?」
御手洗「ジンベエの正拳を首の傷跡で受け止めた!?」
ライダー「おおーっと! アトランティスはジンベエの攻撃をストロングポイントで受け切ったー!!」
鬼鮫(なんですかストロングポイントって……)
ゆで物理やゆで科学、そしてフルカラー劇場や遊戯王のノリまで混ざったゆで時空に包まれた試合は熱い名勝負となったが、時間切れにより引き分けとして、シャアとライダーによるジャッジが下されて決着となった。ジンベエとアトランティスはそれぞれ不満を口にしながらも、相手に敵意だけでなく敬意を持ち、決して口には出さずとも互いを認め合うようになっていた。
この結果に満足し、そろそろ出発しようとシャアが実況席から降りた、その時だった。鬼鮫の凶刃がシャアの胴体を貫き、術がシャアの身体を砕いた。目玉が、観戦を終えたシャークの足元に転がって行く。
温泉で桃地再不斬と密会し密約を交わした鬼鮫が、主戦力に疲労が溜まり最善の状態ではない状況を好機と見て、遂に牙を剥いたのだ。
【シャア専用ズゴック@SDガンダムフルカラー劇場 死亡確認】……とは、ならなかった。
シャアにとってズゴックのボディはただの『着替え』であり、本体は別にある。その本体が無事な限り、シャアはボディがバラバラになろうと無事なのだ。では、その本体はどこかと言うと……モノアイである。シャークさんの足元に転がって行った目玉、あれである。
ボディを粉々に砕かれたこそしたが、却ってそれが幸いしてシャアは一命を取り留めていた。だが、気絶してしまい仲間達に自分の無事を知らせることができなかったのだ。
その間に忍者らしい汚い戦い方を見せる忍び七本刀タッグと海賊団の激闘が繰り広げられ、結果として致命傷を負わされたジンベエと御手洗が、鬼鮫と再不斬を倒す為にズゴックボディの残骸と一緒にシャークドレイクの素材としてオーバーレイされて命を落としてしまう。
戦闘が終わり、ズゴックの目玉をシャアの形見と思い込んでいたシャークに本体を強く握りしめられたことでシャアは気が付き、胴体でなければ即死だったと漏らす。これには海賊団のメンバー全員が驚き、シャアの生存を喜ぶよりも先に珍妙過ぎる正体に呆れ果て、ライダーに至っては腹を抱えて笑っていた。
しかしこの一件によってシャアは制限と首輪から解放され、温泉に戻って代えのズゴックに着替えると、以後は主にシャークと一緒に全く自重しない活躍をするようになる。基本的には着替えなければ他のシャア専用機にはなれないのだが、後に活躍する分裂能力とある姿だけは例外だったりする。
流石にケイネスとシャークの決闘の際には自重して、余計な手出しはせず2人の決闘を最後まで邪魔が入らないようにサポートしていた。
ロワも終盤に差し掛かり海賊団は一大対主催グループとして成長していた。その時を待っていたように、最強最大の試練が姿を露わした。
ある世界の超古代に於いて、その力によって海を造り出したとされる神の如き力を持つポケモン――カイオーガ。どっかの水を求めていたバカのせいで凶暴化し、その能力『あめふらし』を遺憾無く発揮し、会場の殆どを水没させたのだ。
雷雨を呼び寄せ海を操り従える絶大な力は、大自然そのもの――海の化身とも錯覚してしまう程だった。カイオーガの猛威に、誰もが息を呑んだ。特に海の使者を自称するイカ娘の動揺は酷く、海の意志に逆らってはいけないと涙ながらに諦めの言葉を口にしてしまう程だった。
誰もがただただ圧倒され、立ち竦んでいる中で、2人の男がカイオーガに向かって飛び出した。孤高のハンター濱口優と、悪魔超人アトランティスだった。神の如き相手に畏れを抱こうとも決して怯まず、必死に生き抜こうとする2人に導かれるように、シャア達もカイオーガへと立ち向かっていった。
しかし、カイオーガの力は圧倒的だった。初手の『黄金鹿と嵐の夜』の一斉砲撃にも耐えるどころか『なみのり』の一撃で船団を壊滅せしめ、その他の攻撃もまるで意に介した様子すら見せ無かった。
ここでシャアは奥の手としてシャア専用ザズゴググングに変身し、更に支給品のガンダムの角を装備して最終形態シャア専用ザズゴググングムちなって戦列に加わるが、“はがねタイプ”の攻撃は“みずタイプ”に対して威力が半減してしまうこともあって有効打は与えられず、自らの角を『ひらいしん』として仲間達を『かみなり』から守ることで精一杯だった。追撃の『ハイドロポンプ』でいよいよ自分も最期かとシャアは覚悟したのだが、そこにシャークが割って入り、シャアを助けた。だがそれによってシャークは致命傷を負ってしまい、ライフはもう2ケタにも満たないほどになってしまった。
シャアが何故自分を助けたのか問うと、シャークは暫しの間を開けて答えた。友達を助けるのは当たり前だ、と。
そして、元の世界の友達に教えられたものを見せてやると、シャークは立ち上がった。シャアはザズゴググングから分裂し、シャアザク、シャアゲルググ、ジオングに必要最低限の力だけを分けて、シャークに託した。
シャークさん「……ビングだ。かっとビングだ! 俺えええええ!!」
シャークは魂の咆哮を上げて、本体のシャアズゴックを除く3人の分身シャアをオーバーレイ、切り札のシャークドレイクをエクシーズ召喚する。だがこの時だけは、シャークドレイクの体躯は深紅に彩られていた。そしてシャーク自身も同じ色の輝きを放ち、本来ならその時は持っていなかったはずの更なる力を解き放つ。カオス・エクシーズ・チェンジ――現れたのはカオスナンバーズ32、シャークドレイク・バイス。本来なら白いはずのその姿は、やはり赤いまま。
シャークはシャークドレイク・バイスの効果を連続で発動し、カイオーガの攻撃力を可能な限り下げた上で攻撃を行う。だが、自らの異常を察したカイオーガは『まもる』の態勢に入っており、シャークドレイクの攻撃は無効化されてしまった。
そう、無効化されたのだ。その事態を想定していたシャークは、シャアに支給されていた魔法カードを2枚、連続で発動。攻撃が無効化された時に攻撃力を倍にして追撃を行うダブル・アップ・チャンス、そして2度目の攻撃の際に攻撃力を倍にするバイバイ・テンション。シャークが友から託されたカードによる、渾身のマジック・コンボ。
これには流石のカイオーガも対応しきれず大打撃を受け、いよいよ反撃の狼煙が上がった。それからの一部始終を、シャアとシャークは要塞クジラの背の上で見守っていた。すると、ポツリ、ポツリと、今まで自分の話を全くしなかったシャークが、元の世界での身の上話をしてきた。シャアは、それを黙って聞いていた。
大切な妹のこと、やさぐれた切っ掛けとなった大会のこと、自分を仲間だと言って付き纏って来たお節介焼きの海老頭の友達のこと、ファンサービスに定評のある因縁のプロデュエリストのこと。そのどれもがデュエルで結ばれていたので、シャアはついつい、デュエルばっかりの日常だなと、苦笑しながら漏らした。シャークはそれに笑って頷くと、シャアにデッキを差し出した。友達のお前が持って行ってくれ、と。
シャアがデッキを受け取ると、ついに濱口の渾身の勝鬨が響き渡り、カイオーガとの決戦に終わりを告げていた。シャアとシャークはそれを見届けると、力尽き果てボロボロの体だったが、共に安らかな顔で息を引き取った。一緒に、デッキを握ったまま。
【シャア専用ズゴック@SDガンダムフルカラー劇場 死亡確認】……とは、またしてもならなかった。
シャアは幽体離脱した状態で、魂だけの状態で何処かをさまよっていた。外見は近未来的な造りの建物なのだが、その内部は色々なものがぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。様々な世界から集められた参加者と縁の深い建物の一部が融合した不気味な建造物の所在地は、マップの中心――謎の結界で覆われ、カイオーガの猛威からも唯一切り離されていた、主催者の本拠地とされる場所だった。
だが、誰もいなかった。しかし、確かに何かの気配がある。やがてシャアは建物の中枢に近付き、その中に入ろうとして――自分を呼ぶララァの声に気が付き、我に返ったシャアはその声に導かれ、無事に自分の体に帰還した。
シャアが息を吹き返すと、そこはバンガードの甲板の上で、生き残った面々が顔を揃えていた。そこでシャークの死を改めて告げられて、シャアは手に握ったままだったシャークのデッキを暫し見つめて、それを大事に仕舞った。そこで全員からシャークの本名について訊かれたのだが、シャアも最初に会った時に聞いただけでずっとシャークと呼んでいたので、なんとシャークの本名を忘れていた。その後、名簿と各人の情報を集めて何とか本名を割り出すが、危うく全員の記憶に凌牙の名が『シャークさん』として刻まれるところだった。
その後、シャアは幽体離脱して主催者の本拠地に迷い込んでいたことを告げると、全員が本拠地に誰もいないことを怪訝に思いながらも、それを確かめ、馬鹿げた殺し合いの舞台に幕を引く為に主催者の本拠地への突入を決行する。
カイオーガとの決戦の中で奇跡的にグランドリオンと勇者バッジを取り戻したカエルは、その真の力を発揮して本拠地の結界を破壊し、道を開いた。そして内部に突入したのだが、やはり中には誰もいなかった。
そして、全員が中枢部らしき場所に入ったが、そこには誰もおらず、代わりに夥しい数の海魔と量産型海原番長が犇めいていた。シャアが慌てて扉を閉めて見なかったことにしようとしたが、時すでに遅く、海魔と量産型海原番長放流までのカウントダウンが始まってしまう。
とにかく脱出だということになり、一行は再びバンガードに乗り込むが、カイオーガ戦のダメージが今になって響いて来たのか、或いは度の過ぎた魔改造が祟ったのか、バンガードの一部システムが機能不全に陥ってしまう。動力はカエルが自分の魔力を使うと引き受けてくれたが、制御中枢の処理装置が足りない。そこで、にとりがシャアの本体に目を付けた。
シャア「…いや、私はお着替え出来るだけで別に機械制御が得意な訳じゃ」
村紗「でもなんか普通に稼働してますけど」
シャア「うっそぉぉぉぉぉ!?あ、本当だ!何か繋がってる感覚がある!?」
にとり「な、なにこの処理能力!?ちょ…ちょっとだけ後で分解してもいい?」
本人もすっかり忘れているが、シャアは一応ニュータイプである。その能力が有効に作用した結果なのだが、本人はちっとも気付いていなかった。また、ムサイやクルーザーの操縦経験も役立ったようだ。ちなみに船舶免許も持っている。
バンガードの緊急発進とほぼ同時に、海魔と量産型海原番長の群れが、海に放たれた。それと同時に更に水嵩が増していき、やがて会場の全てが水没してしまった。しかしそれどころではないと、シャアはバンガードの制御に専念する。
だが、カエルが力尽き、カエルから託されたグランドリオンを片手にライダーが背後に迫った海魔の群れとスービエの迎撃に飛び出して、シャアはロワが始まってからずっと一緒だった仲間達がいなくなってしまったことを悲しんだ。だが、それでも振り向かず、彼らから託されたものの為にも前に進み続けた。
バンガードは大海原を往き――いつしか、彼らの住む世界へと辿り着いていた。
仲間達を送り届けて、シャアは自分の世界に辿り着いた。気付いたらコロニー“しおさい”の中だったという軽い怪奇現象だったが、もうそんなことでは驚かなくなっていた。
シャアにとってはほんの数日の出来事だったが、こちらではシャアが行方不明になってから10日以上が経過しており、じおんやねお・じおんの面々は皆、シャアの帰還を涙ながらに喜んだ。シャアがこの世界に残していた、彼の一番大切な宝である、あの女性も。
ただいま、ララァ
おかえりなさい、シャア
直後、ガンダムが「お前ララァさん一人ぼっちにしてどこに行ってたんじゃボケェエエエ!」と背後からドロップキックをくらわして来て、色々台無しになってしまったが。色々とメタ発言まで飛び交わせてガンダムとどつきあいながら、シャアは自分が生きて帰って来られたことを実感していた。
それから数日後に、シャアはみんなで地球へ海水浴に行った。みんなが楽しく遊ぶ姿と、静かな海の姿を眺めながら、生き残った仲間達、死に別れてしまった仲間達のことを偲んだ。
更に数週間後。シャアはララァの力を借りて別世界へと赴いていた。シャークから託されたデッキに込められた想いを辿ってやって来たのは、シャークの元居た世界のとある病院だった。
人目につかぬよう夜中に侵入し、ある少女の病室へと入る。そこは、退院を間近に控えた、神代凌牙の一番大切な女性――彼の妹の病室だった。
「やあ、私はシャア。君のお兄さんの友達さ」
シャークの失踪に纏わる全ての真実を全て伝えた後、シャアは彼女にシャークのデッキと、ある招待状を渡して去って行った。
それから更に時が過ぎたある日――シャアとララァの結婚式が、異世界の友人達も巻き込んで盛大に執り行われた。
最終更新:2012年12月05日 23:46