「リリカルマジカルプリティーパワー、ヘンシン!」

目の前にいる中年のおばさんはいかにもなデバイスを天に掲げると、
いかにもなキーワードをきりりとした表情で叫んだ。
刹那。私達の周囲の景色が塗り替えられる。
パステルカラーの景色に星がちりばめられた、空間。
その中でおばさんがウィンクをかました後、くるりと一回転。
そうして、またデバイスを天に掲げると……おばさんの服がはぜた。
あ、えっと。大事なことなのでもう1度言いますね。

お ば さ ん の 服 が は ぜ た。

それを目視した私と吉岡さん、それから真討さんは思わずポカン。
でもそれはこれから始まる変身シークエンスという名の悪夢の序章(プレリュード)にすぎなかった。

一糸まとわぬ姿になったおばさんは透過光に包まれて、フィギュアスケーターよろしく高速回転を始める。
その回転の最中、私達はあることに気がついた。
成長、しているのである。否。成長っていうよりかは最早『貫録がついてきた』と言った感じ。
頭がぼーっとする中、私は考えていた。
もしもこれが少女なら、今頃この娘は美しく成熟した大人の身体になっていることだろう、と。

急成長の件はほどなくして終わった。
またまた「おばさん」はウィンク、である。
……背筋が凍った。

デバイスの先端から虹色のリボンが現れる。
それがおばさんボディにギュッと密着、発光。
瞬間、アニメ版『乙女伝説☆パンジーちゃん』にでてきたようなひらひらドレスが発現した。
フリルたっぷりのミニ丈のショッキングピンク色のドレスの胸元に大きな黄色いリボン。
袖は膨らんでいて、袖口にはこれまたフリルが。
そうそう。リボンの中央部分には赤いハートの飾りがついていた。
続いて、虹色リボンがまとわりつく先は足。
やっぱり発光。毒々しいまでに赤いハイヒールが現れた。
おばさんの前頭部がキラキラし始める。あ、これティアラだ。
このコスチューム、所謂少女が纏う分なら何の問題もない。
だが、現実はどうだ。おばさんだ。
どう見ても、どやさのあの人です、本当にありがとうございました。

いつの間にか、透過光は解除され目の前にいるその人は、再度くるりと回った。
90年代のアニメのような決めポーズをかましてくる。そして、言った。

「魔法少女、プリンセスミツバ!悪しき魂は滅殺よ!」

うわあ。魔法少女らしくない前口上!
ウィンク付きで言われても怖さは減りませんよっ!
さて、とんでもない物を見てしまった私達の反応はそれぞれ違っていた。

「お前のような幼女……いや、少女がいるかー!!」
キレた、吉岡さん。
「違う、魔法少女はロリなんだよ―」
泡を吹いて昏倒した、真討さん。
そして、私はといえば……。
あまりにも衝撃的すぎる光景を目視してしまったばかりに……。

「あ、ちょうちょがとんでる」

現実逃避、した。

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最終更新:2014年01月05日 20:37