【名前】藤原妹紅
【出典】東方project
【性別】女
【年齢】1000歳以上
【名ゼリフ】 「羨ましいわよ、そんな満足な顔して死ねるあんたが」

【支給武器】


【本ロワでの動向】
最初は不老不死である自分を殺し合いに招いた主催者を滑稽と嘲笑いながら、適当に会場をうろついていた。

しかし、一番最初に出会った参加者がよりにもよってフェイスレスだったのが運のつき。当時はまだカルナを従えていなかったとはいえ、彼の底知れない悪意に、妹紅は次第に飲まれていく。
フェイスレスは言う。
「永遠に死ぬことができないなんて、羨ましいなー。君は、これからもずっと孤独に生き続けられるんだからねぇ」
孤独に生き続ける。死という安息に逃げることができない。分かりきっていたことだし、今更言われるまでもない。
しかし、あらためて他者に突きつけられると、なぜこうも絶望的な気持ちになるのか。
「あ、でももしかしたら優勝の報酬で、殺してもらえるかもしれないねぇ。まあ、君のくそみたいに長い人生の最後のチャンスだよね、この舞台って」
ま、僕にはどうでもいいことだけど。そう言って笑いながら去っていくフェイスレス。
その背中を見ながら、妹紅の心にある言葉が残った。
『最後のチャンス』
そうだ、この機会を逃せば。もう自分は死ぬことができない。
永遠を共に出来る輝夜だって、本当に月に帰ってしまう時が来るかもしれない。
今は慧音がいても、いつかは孤独になる。それは、それだけは嫌だ。
ここに、マーダー藤原妹紅が誕生した。

そして、妹紅が最初に襲ったのはイリヤ、ハク、ロッケンフィールドの三人組。
イリヤと慧音が教える寺子屋の子供をだぶらせながらも、妹紅は三人に襲いかかる。
とっさに最古のしろがねの一人、ロッケンフィールドは『黒き門』で攻撃する。外見は少女にしか見えない妹紅、殺さないように腕に僅かに攻撃を加える。
しかし、
「嘘……再生した……」
イリヤの声が炎の中に響く。ロッケンフィールドがどれだけ攻撃しても妹紅は瞬時に再生する。
それはまさに不死鳥。が、炎の中でロッケンフィールドは笑みを浮かべる。

「もし良かったらオックスフォードにいるリッチーたちと友達になってはくれないか」
「元気な、とってもいい子たちなんだよ」

突然の言葉に戸惑うイリヤ、しかし、ハクはその言葉で全てを悟った。
この優しい紳士は、自分達を逃がして死ぬつもりだと。
「まだ炎は完全にまわっていない、行ってくれ」
その言葉を聞き、ハクはイリヤを抱きしめ、反対方向へと駆け出す。
別れの言葉は何も浮かばない、ただ、ロッケンフィールドの思いを無駄にしないために走る。
そして、残ったのはしろがね、スティーブン・ロッケンフィールド。
「ふふ、さあ来なさい、お嬢ちゃん。君の相手はこの私だ」
「お嬢ちゃん?口の聞き方には気をつけなよ。私から見ればあなたなんかまだまだ小僧よ」
軽口を叩きながらも、妹紅の心には苛立ちが募る。
そして、二人の激闘が始まった。
妹紅が妖怪に対抗するために編み出した、炎。それをロッケンフィールドは『黒き門』で防いでゆく。

次第に、ロッケンフィールドの動きは精彩を欠いていった。いつのまにか、体にはしろがねの死を伝えるひび割れが広がっている。体もあちこちが焦げ始まる。
しかし、ロッケンフィールドは倒れない。
「あの子達のもとへは通さぬと、そう思いたまえ。『シュヴァルツェス・トーア』の名に懸けて!」
そう叫び、ロッケンフィールドは戦い続ける。
その勇姿に、いつのまにか妹紅は自分の気持ちを暴露していた。
もう自分は死にたいのだと。これ以上知人の死を見たくないのだと。
「親しい者に先立たれる辛さ、私もよくわかるつもりだ。だからといって無関係な者を手に掛けてまで、自身の死を望む事は間違っている!」
「それはあなたがいずれ死ぬことができるから言えるのよ。私にはその『いずれ』が未来永劫来ることはない。それを改めてつきつけてくれたのは、あなたのお仲間なんだけどね……!」
そして、ついに炎がロッケンフィールドを包む。最後にロッケンフィールドが脳裏に浮かべたのは最愛の妻と息子だった。
しかし、戦いはここで終わらなかった。
「へー、『シュヴァルツェス・トーア』ってことは友軍かな? 
        いいよ、今の僕は気分がいい。あんたの仇、打ってあげるよ。
        それにそこの女、僕と同族だからさー」
そう言って現れたのは、少年だった。妹紅は人目で分かった。
こいつはロッケンフィールドのような銀色に輝く人間じゃないと。
どうしようもない怪物だと。
「犬と一緒にされたくないんだけど」
「えー、だってさー、君、いかにも親のために頑張って捨てられたって顔してるよ?
        それでいて人殺しだよね?」
「っつ! 知った口を!」
その少年に、妹紅は先ほどとは違う苛立ちを感じる。
この自分とよく似た少年が憎くて憎くて仕方がない。
二人の戦いは泥仕合となった。
互いに持てる力を使って相手を殺し続ける。炎が銃弾が、雪原の中で広がり続ける。
「あー、君見てるとさクリフトフに言われた言葉を思い出すんだよな…
かつての僕みたいに、ただの痩せさらばえた、捨て犬にすぎないってね」
「ダァァァマァァァァレェェェェェェ!!!」
死ねない少女と、死んでも戦い続ける戦士。
地を駆ける狼と、空を飛ぶ不死鳥。
二人は互いに殺して殺され、また殺し。
結果的に狼と不死鳥の戦いは痛み分けに終わった。

妹紅は市街地で会ったのは、戦国武将・長宗我部元親と、幻想郷の住民・物部布都。
布都は顔見知りの妹紅に気さくに話しかけた。
が、妹紅にとって、布都とは同じ幻想郷の出身とはいえ、宴会で同席した程度の関係だった。
なんの躊躇もなく妹紅は二人に襲いかかる。
「布都公、逃げろ!」
元親は布都を逃がし、一人不死鳥へと相対する。激しい戦いを繰り広げる元親と妹紅。しかし、やはり不死である妹紅のほうが常に有利。
ついに妹紅の炎が元親を捕らえる。
膝をつく元親。
「布都公……。逃げろって、言ったろうが」
しかし、割って入ったのは戻ってきた布都とグリモルディだった。
「すまぬな、元親殿。おぬしより預かったぐりもるでいをボロボロにしてしまった。
   ……我は元親殿に迷惑をかけてばかりであったな。
   元親殿の大切なからくりを二度も壊した、それにあの蓬莱人と接触を試みたのも我の責任だ。
   まっこと、申し訳ない」
「テメェ、急に何言って……!?」
「故にな、ケジメは我自身がつけたいのだ。
   ぐりもるでい、ふぁんとむ。元親殿を頼むぞ」
二つの人形が元親を押さえ込む。
「馬鹿野郎!俺はテメェにそんな事望んじゃいねぇぞ!……っぐう!」
「その傷ではまともに動けまい、後は、我にお任せを」
「テメェら離しやがれ!あのままじゃあ、布都公が……!」
元親の悲痛な叫びに背を向け、布都は妹紅と向かい合う。
「感動のやり取りの中悪いけど、逃がすと思うのかしら」
「ふん、嫌でも逃がしてもらうさ。ラストワード『大火の改新』」
そして、市街地は炎に包まれた。
「……っ!あんた、ここら一帯に火を!?」
「お主、火炎を扱えるとは言え炎に耐性がある訳ではあるまい?
   既に元親殿の脱出経路は確保済み。後は時間さえ稼げればよい!」
妹紅は唇を噛み締める。こいつも、あの男と同じか。
「心中覚悟って訳ね、生憎と確かに炎は熱いし痛いけど、だからって私が死ねるのかとは別問題よ!」
「そんな事は試してみねばわからんさ!
   貴様のせいで太子様達と元親殿の船に乗せてもらう約束を破ってしまったのだ!
   その報いは受けてもらうぞ!」
そして、元豪族と元貴族。彼女達の戦いが始まった。


燃え尽きた市街地で、妹紅は黒焦げになった少女だった物を見下ろす。
こいつもまた、命を輝かせ、満足げに死んでいった。
それはもはや自分にはできないことだから。


次に妹紅が戦ったのは壮齢の剣士だった。
全身に炎を纏わせる妹紅を見て男は言う。
「俺にはかつて、誇り高い友がいた。炎使いの友がな……」
モハメド・アヴドゥル。ポルナレフの脳裏に浮かんだのはかつての仲間だった。
「その男はどうなったの?」
「死んださ、俺をかばってな」
そうか、その男もそうなのか。
ならば、今から自分が燃やし尽くすのは庇われた命。守られた命か。
「富士山ヴォルケイノ!」
「そういうのは鳥頭になってからするんだな!」
この戦いは、連戦により体力を消耗していた妹紅が撤退したことで終わりを告げた。

そして、妹紅は因縁の相手、長宗我部元親と再戦する。
布都公の仇を取ると意気込む元親に、妹紅は父親の名誉を挽回すると意気込んでいた、不死になる前の自分を思い出していた。
二人の戦いは熾烈を極め、元親はからくりを、武器をすべて破壊されても倒れない。
炎に呑まれても、眼光はなお輝く。
「布都公と俺の分だ!」
そしてついに拳が妹紅に届く。思わず殴り飛ばされる妹紅。それを見て、元親は満足げに倒れ込んだ。
「羨ましいわよ、そんな満足な顔して死ねるあんたが」
それは妹紅の偽り無い本音だった。

妹紅が最後に出会ったのは神綺一行。神綺に母にそうするように懐くシュライバーを見て妹紅の心に憎しみと羨望が湧き上がる。
しかし妹紅の前に一歩でたのはシュライバーではなく神綺だった。
不死殺しのハルペーの鎌を構える魔界神に不死鳥は攻撃を仕掛ける。
しかし、爆炎の中を弾幕で突き進んだ神綺は、ついに妹紅の体を核である魂ごと切り裂いた。
自分の体が崩れていくのを感じながら、妹紅は死を感じる。
思っていたよりさみしいものだ、いや自分にはふさわしいか。
もはや何も見えず、何も聞こえない。
しかし、急に体が暖かくなりだした。
妹紅の体を神綺は優しく抱きしめる。それが彼女への手向けとするかのように。
その母の暖かさの中で、妹紅の心に浮かんだのは在りし日に抱いた夢。
父を愛し、父に愛して欲しいと願った少女が夢見た父や母、兄弟との幸せな日々。
藤原妹紅は、自分が殺した者達と同じように満足げに消えていった。

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最終更新:2014年02月26日 20:49