【名前】トゥバン・サノオ
【出典】海皇紀
【性別】男
【愛称】おっさん
【称号】大陸一の兵法家
【人物】
海洋ファンタジーとも言うべき作品『海皇紀』(全45巻)の第一話から登場する主人公の仲間であり、作品における最強の存在。
同作でのトゥバンに次ぐ実力者たちは総じて「何このおっさん本当に化物」と評している。忍者っぽいキャラが「壁走ってる……」とドン引きした場面も。
ファンからの愛称はおっさん。ちなみに主人公の名前もファンで、トゥバンをおっさんと呼ぶ張本人。そういう風に呼ばれても笑顔で「うむ」と頷く人格者でもある。
剣士ではあるが、棒術や馬術の心得もあり、武芸百般に秀でた人物と思われる。
原作での最たる悩みの種は、本人の力量と目指す領域が人間の域を超えているので、トゥバン・サノオの全力に耐えられる剣が見つからないこと。所持する剣の基準に「切れ味」以外に「強度」が重視される剣士は、この人ぐらいのものであろう。
それでも普通の名剣からなまくらまで、あらゆる剣を使いこなす最強の剣豪である。
【オールロワでの動向】
オールロワでは海都に逗留していた時期からの参戦。
どうやら海都一の刀匠から剣を受け取る前日に連れて来られたようで、そのことを随分と不満がっていた。だが、支給品の一つを確認してすぐにそんな物は霧散した。
聖剣エクスカリバー。星が鍛えた最強の聖剣。遥か古、赤き竜と称された騎士王が振るった最強の聖剣。
剣を見る眼も優れているトゥバンは、エクスカリバーの刀身を見るなり笑みを浮かべ、試しにと手近な石柱(電信柱)で試し斬りをした。
電信柱は音も無く斬られ、音が生じたのはずれ落ちた上部が地面に倒れた時だった。
木どころか石柱でさえも容易く両断し、しかも刃毀れ一つない。今まで見たことも無い、ニホントウにも優るとも劣らぬ至上の名剣に巡り合えた興奮は、次の話がエクスカリバーの剣としての素晴らしさの解説に終始してしまう程だった。
余談だが、この時近くにいた複数の現代人キャラに目撃されており、その容姿と剣の腕前、いきなり電信柱を斬るという奇行から「まさか、呂布!?」と勘違いされてしまった。中華武将のような風体ではないのだが、作者が三国志のカードゲームにイラストレーターとして参加してるし仕方ないね。
その後は、ギュメイ、壬生宗次郎などの強豪との戦いに恵まれ、笑みを浮かべてそれらに応じ、勝利していった。
それ以外の時は見込みのある少年・駆を鍛えたり、偶さか出会った白い狼アマテラスの背に乗るなど、けっこう悠々自適に過ごしていた。というか平常運転だった。
戦いを現代人に目撃される度に呂布と勘違いされていたトゥバンだが、ロワ終盤、遂にその呂布と戦う機会を得る。
呂布との戦いは凄惨を極め、トゥバンは回避を捨てて皮や肉が斬られ抉られようとも更に踏み込み、飛将軍の首級を得んと猛る。すると呂布はその戦法を見切るや、同様の手段に打って出て来たのだ。
互いに衣服や鎧は容易く断ち切られ、皮が破れ、肉が抉れ、所々の骨も罅が入り、全身を自らの血で赤く染めていた。
だが、2人は眼前の敵の強さに恐怖しながらも、笑っていた。
片や、あらゆる柵を捨て去って、ただ目の前の強敵を倒す為だけに己の全身全霊を費やせるという、生まれて初めての喜びに。
片や、己より強いかもしれぬ者との戦いに、身が震え、魂が奮えて。
そして、トゥバン・サノオの魂が吠えた。
呂布の渾身の一撃を、呂布の目にも残像を映すほどの神速でかわし、乾坤一擲の刃をその身に刻んだ。
地に伏せる修羅は憑きものが落ちたような穏やかな笑みを浮かべ、地に立つ鬼は笑みを深めた。
この戦いを見ることになった一般人達は、ただただ恐怖で身がすくみ、涙を浮かべて顔をひきつらせ、身動き一つ取ることができないまま、ただ目の前の暴威がいつ己に向けられるのかと他の全てを忘れて恐怖していた。
お陰で以降、トゥバンは主催戦に至るまでマーダーではないが危険人物として見做されてしまい、要らぬ誤解を生まない為に駆らとも別れて単独行動を取ることになった。
決戦前にハルバードに合流する際も、少なからぬ人間から恐怖され、軋轢を生んでしまう。
しかし平時は気さくで結構ノリのいいおっさんなので、千手柱間の機転もあってすぐに周囲と打ち解けられた。
主催との決戦ではドン・サウザントの放ったバリアンの兵団――もとい、深海棲艦の艦隊との戦いに参戦。
艦を名乗りながら人の体にカガクの武装を融合させたような異様な姿に、海と船を愛するファン・ガンマ・ビセンがいたら何を思うだろうかと暫し思案し、やはり自分もこういうものは好かぬと叩き切ることを決意する。
雑兵は雷神組に任せ、トゥバンはマキナと共に艦隊中枢の大物目掛けて突貫する。
行きがけの艦を一撃で斬り伏せ続けたが、艦隊の中枢には最強の戦艦“レ級”と鬼と姫の名を持つ要塞級達が立ち塞がる。
人類では到底太刀打ちできない、人知を超越した怪物たちを前に、トゥバン・サノオは――歓喜した。
「森守……!」
記憶の深奥、あまりにも強烈だった故に霞みがかっていたカガクの魔獣の輪郭が、僅かに揺らめき、確かな形を見せた気がした。
この人ならぬものたちの向こうで待っていると、そう言わんばかりに。
雷神組のアドルフが駆けつけた時には、もう遅く。
トゥバン・サノオとマキナの2人によって、少女の形を借りた怨念達は深海へと還っていた。
深海棲艦の中でもとりわけ強力なものたちと戦えて満足したのか、ふぅ、と大きく息を吐くと、マキナとお互いの健闘を称えて笑いあった。スポーツを終えた後のような爽やかさだが、この時2人とも返り血とオイルと自身の流血と汗で凄いことになっていた。
そして内心では是非ともマキナと手合わせしたいと考えていたが、ここで空気を呼んで自重できるのがおっさんのいいところである。
余談だが、ドンの計らいでこの戦いの中継映像を見ていた衛宮士郎は、サーヴァントのような存在の軍団を相手に、エクスカリバーの真名解放もせずに戦略級の大活躍をするおっさんの姿に絶句していた。
サクシャ云々の事情は「うむ」の一言で済ませまさかのスルー。
興味ない上によく分からないことだから、理解した上で戦う者達の助けとなることを選んだのだが、いかんせんあっさりしすぎていたので、他の面々には呆れられていた。
ロワが終わると、エクスカリバーを元の世界に持ち帰ろうとしたのだが、世界を渡ると同時にトゥバンの手から消えてしまった。
聖剣エクスカリバーは、人々の幻想によって編まれた宝具。つまり、世界からエクスカリバーという王様の剣の伝承はおろか、アーサー王伝説さえも跡形も無く消え去ってしまった海皇紀の世界に、宝具エクスカリバーは存在できなかったのだ。
幻想へと還った、バトルロワイアルを共に戦いぬいた戦友との別れを惜しみながら、トゥバンは仲間達の下へと還って行った。
最終更新:2024年08月24日 11:27