【名前】杣口鵜平
【出典】邪眼は月輪に飛ぶ
【性別】男
【台詞】
「互いによ……獣になんねばならんらしいなァ」
「だからな、小僧。お前の負けよ」

【本ロワでの動向】
世を捨て山奥にて暮らす老マタギ。性格は偏屈で人嫌いだが、地元では「仙人」とまで称される凄腕であり、死の呪いによって日本を未曽有の大災害と恐怖に陥れたフクロウ・ミネルヴァに唯一手傷を負わせた、邪眼の宿敵とも言うべき存在である。

本ロワへの参戦時期は不明。主催の気まぐれか、長年の相棒とも言える村田銃二十八番口径を支給されていた。

登場話『名人伝』にて、同作者の短編出典の人物であるケンジロウ・サキサカと遭遇。
背を曲げてしょぼしょぼと山道を行くサキサカの内に秘められた剣呑な気配を感じ取り、村田銃を構えて離れた草蔭より狙うも、同じく研ぎ澄ました達人の心眼によって威嚇の気配を察したサキサカは、逆に鵜平に向かって「気合」(気を込めた一喝による金縛りの一種)を放つ。びりびりと空気を震わす大喝に、しかし老マタギは全く怯まず足を狙い引き金を引いたが、その刹那に生じたほんの少しのずれでもって銃弾を回避した柔術使いが、恐ろしい速さで射手の潜む草蔭へと迫った。登場話にして老練の達人同士による死合いが始まるかと思われたが――――

サキサカは寸前で拳を止め、鵜平もまた、サキサカの軌道にかざした山刀の刃をぴたりと返していた。互いに相手の攻撃に悪意と殺気が無いことを、看破したのである。

「孫たちのとこに、帰らにゃならんからな」
互いの事情と現状を話し合った後、そう言って笑ったサキサカに、鵜平も仏頂面をしながら、一人娘の輪のことを思い返す。そして、この殺気に満ちた「山」の中では、自分もお前も獣にならざるを得ないだろう、獣を狩るためには……とサキサカに告げる。

こうして互いに技と心を交わしあった老兵二人は、しかし合流という道を取ることなく、緑深い山の麓で相分かれた。

サキサカはその後、それぞれの形で大戦の記憶を共有するキャプテン・アメリカ、天龍の二人と奇妙な「日米同盟」を結成し、ロワイアルの渦に飛び込んで行くことになるのだが、一方の鵜平はと言うと、ひたすらに単独行動を取り続けた。

基本的には、ホームグラウンドとも言える山や森のエリアに身を潜めながら移動し、狙撃や奇襲によって対主催の参加者(鵜平が直感で気に入った相手、という言い分だったが)を陰でサポートするというマタギらしいスタンスを貫いていた。
錯乱して暴れていたくまモンを退けたり、空をゆく龍たちに驚愕したり、いきなり怪獣に単身挑み殺されそうになっていた岩崎月光を村田銃による援護で(月光も知らぬうちに)助けたり、誰にもその姿を悟られぬまま行動する姿はさながら影の如くで、後には風に混じって草原の揺れる音と銃弾の遠い響きが残るばかりであった。

また、参加者の一人、安全地帯への神がかった嗅覚を持つスーモからは、その性質の故か「脅威の前触れ」と捉えられており、互いに意図しないうちに、スーモがその時点での安全地帯を発見、休息→鵜平with村田銃がその近辺へ接近→スーモ、拠点を移す……という不思議な追っかけっこの構図が発生していた。

そのようにして孤独なサポートを続けていた鵜平であったが、中盤において、邪眼フクロウ・ミネルヴァに勝るとも劣らない「獲物」を発見する――――月打された超能力者・バビル二世によって使役され、制空し殺戮する使途と化したアルター・ロプロスである。

空からの超音波とロケット弾で参加者と会場への破壊活動を続けるロプロスに対し、鵜平は死角からの攻撃を試みる。無論、元来強大な力を持ち、それがさらにアルター化によって強化されている「しもべ」に、老マタギの村田銃などがまともに通ずる筈もない。しかし、ロプロスを「魔鳥」と捉えた鵜平は、邪眼フクロウの知覚と渡り合った「殺気のない狙撃」と気配殺しによって、狙撃手を炙りだそうとするバビル二世の超感覚をかいくぐりつつ、執拗に攻撃を仕掛けて行く。そしてこの、極度に研ぎ澄まされ、神域に肉薄した鵜平の“技”が、ロプロスという、巨鳥の形をしたアルターにとっての銀の弾丸となった。

残弾数を見切られ、弾を撃ち尽くし、空になった銃を抱えたまま立ち回るも、絨毯状に爆撃を仕掛けられ、ついに致命傷を負って、ロプロスの眼前へと引きずり出された鵜平。血まみれの狩人に対し、正面からの爆撃を指示するバビルの無表情へ向かって、しかし老マタギはニヤリと笑い、懐から一発の弾を――――狩人の習いである「隠し弾」を取り出した。

「手負いの獣へ“犬”けしかけンのに、急いちまったか」
「だからな、小僧。
お 前 の 負 け よ 。」

くろがねの銃筒より撃ち出された最後の弾が、ロケット弾と交差する。
老マタギと彼のいた草原が爆炎に包まれるのと同時に、その弾丸は、アルター・ロプロスの中心――――「核」の部分を、寸分の狂いもなく貫いていた。


持ち前の頑固な性分のまま、このロワでは「犬」を連れることもなく一人で戦った鵜平であったが、常人の身でありながら、バビルのしもべの一角を落とすという活躍を見せた。「邪眼殺し」の名は伊達ではなかったと言えよう。
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最終更新:2024年08月08日 09:57