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PARADIGUM - (2012/07/08 (日) 14:01:43) の1つ前との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*PARADIGUM
賢人が扉を開けば世界は知識を映しだす。
薄暗い広間の中、
茫洋とした足取りで大きめのコートを羽織った男が進む。
足音はない。無音。それ自体はだけれど。
その空間には音が響いていた。
周囲至る所に設置された音を流す機械。
臨場感を高めるためのそれは己の役割全うする。
全うして、今にも果てそうな声で叫んでいた。
「観客のいない映画館」
誰もいない。男がいるではないかと言うだろう。
だが男の正体を知る者ならば
迷いなくそこは無人だと断言する。
「今は……魔界の王を決める戦いが上映されているのか」
中央の席に腰掛け、スクリーンに映しだされる光を見る。
長いあいだ弟を憎んでいた兄の誤解が解かれ、
安らかな気持ちで脱落する場面だった。
「家族を捨てるのは一度でいい」
銀髪の少年の体が光に包まれ、天へと昇っていく。
「二千年の間、忘却を憎悪で補うことしかしなかった愚かな賢人よ」
視界に薄桃色の線が走り、
画面いっぱいに映しだされた
金色王の顔を両断する。
「世界の果実は未来のために」
指でその線を摘み上げると
瑞々しさを失った一本の髪の毛が
所在なげに宙をたゆたう。
「デウスの核はこの手中にある」
この映像を何者が放映しているのかはわからない。
コトはキクを用いて解析を行わせていたが
ゲーム管理の膨大な作業に追われすぐに興味を失った。
参加者がここに来た様子はない。
《赤き血の神(クイーン)》がここにいたのがわかるのみ。
「死に逝く世界の走馬灯」
断末魔に似た轟音とともに巨人が海を割った。
「だが俺こそは――」
―――――――――――。
――ああ、今も頭の片隅で泣き声が聞こえる。
これを最初に聞いたのはいつだったかわからない。
初めて人を殺した時かもしれない。
初めて人を陥れた時かもしれない。
両親を失った時からだったのかも。
その声はいつもどんな時もどんな場所でも
テロリスト雨流みねねの脳に木霊していた。
この声をやませるにはどうすればいいのか。
考えるまでもなくみねねにはわかっていた。
神を殺せばいい。信じる者も含めた全てを。
山のように人を焼き殺し、死骸の上でいくら笑っても。
頭にこびりついて離れないあの声は油断すると
鼓膜の機能をやすやすと踏み越えて心を引き裂いてしまう。
爆発が3m前方で起こり。
砕け散った手榴弾の破片が飛び交い、
これまたへし折られた車のドアを盾にしてそれらを防ぐ。
ザザッ、とみねねの手元からノイズの音が聞こえ
何よりも優先して日記の記述に目を走らせる。
################
8体のキャンチョメが&い掛かってくる。
%#$に賭けたみねねは烈火ガスを作動した。
################
「ああ!?」
目の前に突き出していた
ドアが溶接されたみたいに動かなくなる。
咄嗟に指を離したがもう遅い。
左右から同時にキャンチョメが飛び出し
雨流みねねに飛び込んでくる。
タイミングも速度も反応可能範囲を優に超えてしまっている。
躱すことはできない。
薄汚れた白色の服を着た少年の指先が
みねねに触れるか触れないかの瞬間。
みねねの親指は辛うじてスイッチを押すことが出来ていた。
掌にすぽりと収まる大きさの薬缶型のそれは瞬く間に
この場にいる二人を焼け爛れた皮膚にしてしまうだろう。
本能で危機を察知したのかキャンチョメは
ガスが周囲を包む前にBIMを奪いとると上空高くに放り投げた。
雲にも届きそうな高さまで突き進むBIM。
発生したガスが尾を引いてくるくると回る。
みねねはBIMの行方を確かめるのは放棄し、
一目散にキャンチョメから逃げ出す。
腕と脚を軋むまで必死に動かして
変わり映えのない風景の中、走る。
平坦な道を駆けるのは楽ではあるがそれは相手も同じこと。
魔物の子として常人より優れた脚力を持つ
キャンチョメの足音が背後にまで迫る。
背中に張り付く気配。
##########
キ*ン*ョ@に追いつかれた
!‘ねは再度烈火BIMを作動する。
##########
「何なんださっきから!」
未来日記に意味不明の文字化けが
混じっていることに悪態をつくみねね。
しかし忙しなく動く口とはべつに
既にBIMはすぐ下の地面に落としていた。
「こいつもおまけだ!」
いざという時のために
首元にぶら下げていた手榴弾のピンを外し。
振り返ることなくBIMへと投げ捨てる。
大きく後方に下がったであろうキャンチョメ。
烈火ガスタイプのBIMの弱点は射程範囲の狭さ。
この僅かな時間でそれを見ぬいたのは見事と
百戦錬磨の爆弾魔であるみねねは評価した。
だが手榴弾の爆発が
BIMをさらにキャンチョメの方へと弾く。
放物線を超えた直線の軌道で少年へと襲いかかるBIM。
起動の時が来た。
胴体に刺さるよう調節したBIMは避けようなく
分身したキャンチョメに当たるだろう。
的が大きくなったからこその手。
空が赤く燃えるとともに背後から
喉が焼け爛れた少年の絶叫が聞こえるだろう。
脳の中から少女の泣き声が聞こえる。
レオの言葉が蘇る。
「うるさいんだよ。
どいつもこいつも」
いつのまにか足を止めていた
みねねは荒くなった息に胸を抑え。
キャンチョメがいた方を見やった。
声もなく死んだ少年。
罪悪感など存在しない。
自分が殺すまでもなく毎日どこかで必ず子供は死ぬ。
神を殺す“願い”のために殺すのと、どこが違う。
くだらない屁理屈で自分を正当化することは決してしない。
だが破滅思考に耽溺することしか知らない
みねねにはそんな思考が心地よく馴染む。
――ザザッ。
##########
手首%*ャ#チ、メが昇っ&(きた。
対応?きれない。
##########
「捕まえた!」
ノイズの音と同時にみねねの胸部に唐突に姿を現した
キャンチョメがみねねを羽交い絞めにして押し倒した。
勢い良く地面に倒れ、肺から空気が押し出される。
顔が苦痛で歪み、
滲んだ視界でキャンチョメの白色と空の雲が溶け合う。
「これでボクの勝ちだ!降参しろ!」
両肩を押さえつけて馬乗りになった
キャンチョメは緊迫した顔で叫ぶ。
顔についている嘴が弦のように
震えているのは恐怖のためか。
ウブなことだとみねねは失笑した。
「殺さないのか? あんだけ怒っておいて?」
「…………殺さない」
「へえ。そいつはお優しいことで。
けど私達のだれかのせいで
すでにお前の仲間は死んでいるかもしれないぞ?」
みねねはシニカルに頬を歪めてせせら笑う。
「とっくにお前の仲間
……ピンク色のチビが殺されていたら。
お前が殺す気なくてもあの拳法チュー坊が私を殺すかもな」
「……じゃあ、ボクがヒロキを止める」
「へえ」
虫唾が走った。
どこまでも甘いガキだ。
こいつみたいな
ガキが人間の持つ憎しみを抑えられるわけない。
今も頭の中で少女の泣き声がわんわんと響いてくる。
「覚悟もねえガキが生言ってんじゃねえよ」
底冷えする声と貫くように
冷えきった鋭利な瞳がキャンチョメを震わせた。
「仲間を殺されりゃ報復で誰かを殺す。
あたりまえのことだろうが!
テメエはダチや身内喪った人間相手にも
“みんななかよくてをとりあいましょう”と呼びかけるってのか!?」
「……そうだ!」
みねねの肩を押さえつける手に力が篭り、
肩甲骨がみしり、と音を立てた。
その気になればこの少年はみねねを楽に殺せるのだという証明。
「だって。誰かが殺された恨みで誰かを殺して!
みんながそんな風になっちゃったら
ボクみたいな弱虫はすぐに死んじゃうんだよ!!」
みねねの頬に雫が落ちて。
響きあうようにキャンチョメの背後に
顔を覆ってしゃくりあげる一人の少女が現れた。
「ボクは苦しんで救われなくなるような生き方は嫌なんだよ…………」
涙が溢れる瞳は弱々しく揺らめいていて。
少しでも強い風が吹いたら
たちまちに折れてしまうように思えた。
背後にいる少女とキャンチョメが重なってしまうのを
見るのがどうしても嫌でみねねは眼を閉じた。
「……誰かが死んだのか?」
「友達が……死んだ」
「そうか」
寒々しいほどに虚ろな裡を痛いほどに感じ。
みねねは眼を開けた。
「わかった。降参だ。
一時停戦ってことにしてやる」
小さな声で呟いたみねねの言葉に
まだ警戒を残しながらもキャンチョメは
おっかなびっくり手を離した。
ゆっくりと起き上がって
みねねは解放された肩の痛みを紛らわそうと腕を回した。
「はあ、もうちょっと優しくしてもよかったんじゃねーの?」
「ご……ごめんよぅ」
「ははっ、冗談だ。気にすんなよ」
子供らしくしょげるキャンチョメに
みねねはあっけらかんと笑って頭を撫でた。
殺し合いをしていたときとはまるで違うみねねに
戸惑いを隠せなかったキャンチョメも次第に安堵の表情を見せる。
――ザザッ。
#############
白$+!=<&ダーに
*~&は心臓を*+“た。
DEAD END
############
突然、声が出なくなった。
さっきまで撫でていたはずの
キャンチョメはかなり離れた場所へ突き飛ばされている。
みねねの腕が突き出されていることから彼女がやったようだ。
みねねがぼんやりと視線を下に降ろすと
胸から一振りのレイピアが生えていた。
滑らかに生えていたレイピアはみねねの体内へと戻り。
体内を異物感が駆け抜け、たまらず膝をついた。
「9th.雨流みねねだな」
純白の仮面と北岡のものに比べると
かなり軽量のアーマーに身を包んだ何かが立っていた。
今まで何の気配も感じなかったはずの場所に。
――ADVENT――
「自爆でも仕掛けられたら困るんでね。
安全策をとらせてもらう」
草原に広がった鏡面から
羽ばたいた機械仕掛けの白鳥がみねねに狙いをつけて襲い掛かる。
呆気ないほどに片腕が喰われ、
大量に血を喪ったみねねの脳から血が引いていく。
悲鳴の声が上がったのはみねねの背後から。
振り向くとキャンチョメが腰を抜かして立てずに眼を見開いていた。
「……げろ!」
上手く言葉を口に出せず。
夥しい血泡が舌を飲み込み。
烈火BIMを抱きかかえると仮面ライダーに突進した。
どくん、とみねねの心臓が大きく跳ねた。
それを他所に無情にも
みねねの片腕も白鳥に喰いちぎられた。
一思いに殺さないのは万全を期してのことだろう。
いつから観察していたのか知らないが
キャンチョメはどうにでもできると確信しているのだろう。
最悪、仮面をかぶっているのだから素知らぬ顔で近づくこともできる。
最後の力を振り絞って立ち上がったみねね。
烈火ガスは既に作動してみねね自身を包んでいた。
ちょうどよくトドメを誘うと接近してきた
白鳥は装甲がボロボロと焼け剥がれ、激痛に叫ぶ。
みねねの肺に否が応にも侵入する
烈火ガスは思わずごくりと飲み込むと
食道全てを焼け爛れたホースにした。
――どくん。
死の淵にあって活発化していく心臓。
それとは他所にたしかに溶けていく肌、皮膚。
ばさりと何かが落ちた。それはみねねの頭髪。
口を開けていないはずなのに零れた白いものは
失った頬を通って落ちた歯。
首を緩慢な動きで動かした
みねねはキャンチョメのいた方を向く。
今もまだ少女の泣き声が聞こえた。
そこにむかってゆっくりと脚を前に進め。
ガスが充満する空間を歩く。
泣き声がまだ聞こえる。
涼しけな風が肌を撫でて、
一瞬だがみねねからもキャンチョメが見えた。
少年とその隣で泣く少女。
キャンチョメの顔はもう見えなくなっても
少女の表情はまだ見えた。
とは言っても、顔は手で覆われて判断ができない。
――どくん。
今までにないほどの大きさで心臓が膨らみ。
みねねの下から巨大な掌が産まれ、
同時に苦し紛れの足掻きか機械仕掛けの
白鳥、ブランウイングがみねねへ突進した。
けれどもそんなことは少しも意に介さず。
みねねは少女を見つめ続けた。
「――ああ」
最後の最後に少女の手が下がって、
表情が露になった。
みねねの口が動き。
その瞳が感情を映そうとした。
けれど、ブランウィングの嘴がみねねの胴体を貫き。
みねねの鼓動も蠢く胎動も全て喰らい尽くした。
みねねが死に。
彼女に眠っていた因子を喰らった仮面ライダーファム。
心を通わせた敵を目の前で喰われた魔界の王、の卵
同じ時を以って始まった彼らの権能は拡大し。
ついには《時空王》と《白色魔王》へと変容した。
「シン・ポルク」
少年の言葉とともに二人を取り巻く世界が歪み。
会話なくとも激突は避けられないと《時空王》は悟った。
両者ともに純白の雪景色と無垢なる空模様を体現する外観を
漆黒の闇が包み込み、濡れ烏のように粘りに照らされる。
二人から二柱へと拡大変容を果たし。
異なる“願い”を秘めて刃を向け合う。
共通する性質はただ一つ。
――無敵――
ゆえに
――物理破壊は不可能――
&color(red){【雨流みねね 死亡確認】}
&color(red){【残り 14名】}
【キャンチョメ@金色のガッシュ!!】
[状態]:健康、力への渇望、全身裂傷、疲労(中)、心の力消費(???)、シン・ポルク発動
[装備]: キャンチョメの魔本@金色のガッシュベル!! 、粘土@現実、ポップコーン@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探す
1: 。
[備考]
何故かパートナーがいなくても術が使えることは理解しました。
本がフォルゴレ以外でも読めると知りました。
フォウ・スプポルクを修得
シン・ポルクを修得(効果:精神面において限りなく全能)
参戦時期:ファウード編以降
【ミツル@ブレイブ・ストーリー~新説~】
[状態]:デウス因子とり込み??
[装備]:ミツルの杖@ブレイブ・ストーリー~新説~、
仮面ライダーファム(デウス因子吸収による存在変容)@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、BIM(爆縮型)@BTOOOM (7/8)
不明支給品×2~4(ゼオン、三村(武器ではない)、不明支給品(ノールの)、
チャンの首輪、ノールの首輪、ゼオンの首輪、BIM(クラッカー型)×5@BTOOOM!、
[思考・状況]
基本行動方針:妹を生き返らせる。手段は選ばない
1:キャンチョメを殺す。
[備考]
参戦時期:ゾフィが虚になった後。
魔法を使うと体力消耗。
※未来日記の世界についてある程度の情報を得ました。
※9thは危険だと認識しました。
雪輝、というよりも時空王に利用価値を見出しました。
※ミツルの目には女神像は由乃ではない姿に映りました。
※デウス因子を取り込んだ仮面ライダーファムはデッキを使用できません。
※仮面ライダーファム(デウス仕様)の性能:物質面において限りなく全能
|[[賢人は無限の幕、羽織り]]|投下順|[[]]|
|[[過去の産声]]|時系列順|[[循環型悲劇症候群]]|
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*PARADIGUM
賢人が扉を開けば世界は知識を映しだす。
薄暗い広間の中、
茫洋とした足取りで大きめのコートを羽織った男が進む。
足音はない。無音。それ自体はだけれど。
その空間には音が響いていた。
周囲至る所に設置された音を流す機械。
臨場感を高めるためのそれは己の役割全うする。
全うして、今にも果てそうな声で叫んでいた。
「観客のいない映画館」
誰もいない。男がいるではないかと言うだろう。
だが男の正体を知る者ならば
迷いなくそこは無人だと断言する。
「今は……魔界の王を決める戦いが上映されているのか」
中央の席に腰掛け、スクリーンに映しだされる光を見る。
長いあいだ弟を憎んでいた兄の誤解が解かれ、
安らかな気持ちで脱落する場面だった。
「家族を捨てるのは一度でいい」
銀髪の少年の体が光に包まれ、天へと昇っていく。
「二千年の間、忘却を憎悪で補うことしかしなかった愚かな賢人よ」
視界に薄桃色の線が走り、
画面いっぱいに映しだされた
金色王の顔を両断する。
「世界の果実は未来のために」
指でその線を摘み上げると
瑞々しさを失った一本の髪の毛が
所在なげに宙をたゆたう。
「デウスの核はこの手中にある」
この映像を何者が放映しているのかはわからない。
コトはキクを用いて解析を行わせていたが
ゲーム管理の膨大な作業に追われすぐに興味を失った。
参加者がここに来た様子はない。
《赤き血の神(クイーン)》がここにいたのがわかるのみ。
「死に逝く世界の走馬灯」
断末魔に似た轟音とともに巨人が海を割った。
「だが俺こそは――」
―――――――――――。
――ああ、今も頭の片隅で泣き声が聞こえる。
これを最初に聞いたのはいつだったかわからない。
初めて人を殺した時かもしれない。
初めて人を陥れた時かもしれない。
両親を失った時からだったのかも。
その声はいつもどんな時もどんな場所でも
テロリスト雨流みねねの脳に木霊していた。
この声をやませるにはどうすればいいのか。
考えるまでもなくみねねにはわかっていた。
神を殺せばいい。信じる者も含めた全てを。
山のように人を焼き殺し、死骸の上でいくら笑っても。
頭にこびりついて離れないあの声は油断すると
鼓膜の機能をやすやすと踏み越えて心を引き裂いてしまう。
爆発が3m前方で起こり。
砕け散った手榴弾の破片が飛び交い、
これまたへし折られた車のドアを盾にしてそれらを防ぐ。
ザザッ、とみねねの手元からノイズの音が聞こえ
何よりも優先して日記の記述に目を走らせる。
################
8体のキャンチョメが&い掛かってくる。
%#$に賭けたみねねは烈火ガスを作動した。
################
「ああ!?」
目の前に突き出していた
ドアが溶接されたみたいに動かなくなる。
咄嗟に指を離したがもう遅い。
左右から同時にキャンチョメが飛び出し
雨流みねねに飛び込んでくる。
タイミングも速度も反応可能範囲を優に超えてしまっている。
躱すことはできない。
薄汚れた白色の服を着た少年の指先が
みねねに触れるか触れないかの瞬間。
みねねの親指は辛うじてスイッチを押すことが出来ていた。
掌にすぽりと収まる大きさの薬缶型のそれは瞬く間に
この場にいる二人を焼け爛れた皮膚にしてしまうだろう。
本能で危機を察知したのかキャンチョメは
ガスが周囲を包む前にBIMを奪いとると上空高くに放り投げた。
雲にも届きそうな高さまで突き進むBIM。
発生したガスが尾を引いてくるくると回る。
みねねはBIMの行方を確かめるのは放棄し、
一目散にキャンチョメから逃げ出す。
腕と脚を軋むまで必死に動かして
変わり映えのない風景の中、走る。
平坦な道を駆けるのは楽ではあるがそれは相手も同じこと。
魔物の子として常人より優れた脚力を持つ
キャンチョメの足音が背後にまで迫る。
背中に張り付く気配。
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キ*ン*ョ@に追いつかれた
!‘ねは再度烈火BIMを作動する。
##########
「何なんださっきから!」
未来日記に意味不明の文字化けが
混じっていることに悪態をつくみねね。
しかし忙しなく動く口とはべつに
既にBIMはすぐ下の地面に落としていた。
「こいつもおまけだ!」
いざという時のために
首元にぶら下げていた手榴弾のピンを外し。
振り返ることなくBIMへと投げ捨てる。
大きく後方に下がったであろうキャンチョメ。
烈火ガスタイプのBIMの弱点は射程範囲の狭さ。
この僅かな時間でそれを見ぬいたのは見事と
百戦錬磨の爆弾魔であるみねねは評価した。
だが手榴弾の爆発が
BIMをさらにキャンチョメの方へと弾く。
放物線を超えた直線の軌道で少年へと襲いかかるBIM。
起動の時が来た。
胴体に刺さるよう調節したBIMは避けようなく
分身したキャンチョメに当たるだろう。
的が大きくなったからこその手。
空が赤く燃えるとともに背後から
喉が焼け爛れた少年の絶叫が聞こえるだろう。
脳の中から少女の泣き声が聞こえる。
レオの言葉が蘇る。
「うるさいんだよ。
どいつもこいつも」
いつのまにか足を止めていた
みねねは荒くなった息に胸を抑え。
キャンチョメがいた方を見やった。
声もなく死んだ少年。
罪悪感など存在しない。
自分が殺すまでもなく毎日どこかで必ず子供は死ぬ。
神を殺す“願い”のために殺すのと、どこが違う。
くだらない屁理屈で自分を正当化することは決してしない。
だが破滅思考に耽溺することしか知らない
みねねにはそんな思考が心地よく馴染む。
――ザザッ。
##########
手首%*ャ#チ、メが昇っ&(きた。
対応?きれない。
##########
「捕まえた!」
ノイズの音と同時にみねねの胸部に唐突に姿を現した
キャンチョメがみねねを羽交い絞めにして押し倒した。
勢い良く地面に倒れ、肺から空気が押し出される。
顔が苦痛で歪み、
滲んだ視界でキャンチョメの白色と空の雲が溶け合う。
「これでボクの勝ちだ!降参しろ!」
両肩を押さえつけて馬乗りになった
キャンチョメは緊迫した顔で叫ぶ。
顔についている嘴が弦のように
震えているのは恐怖のためか。
ウブなことだとみねねは失笑した。
「殺さないのか? あんだけ怒っておいて?」
「…………殺さない」
「へえ。そいつはお優しいことで。
けど私達のだれかのせいで
すでにお前の仲間は死んでいるかもしれないぞ?」
みねねはシニカルに頬を歪めてせせら笑う。
「とっくにお前の仲間
……ピンク色のチビが殺されていたら。
お前が殺す気なくてもあの拳法チュー坊が私を殺すかもな」
「……じゃあ、ボクがヒロキを止める」
「へえ」
虫唾が走った。
どこまでも甘いガキだ。
こいつみたいな
ガキが人間の持つ憎しみを抑えられるわけない。
今も頭の中で少女の泣き声がわんわんと響いてくる。
「覚悟もねえガキが生言ってんじゃねえよ」
底冷えする声と貫くように
冷えきった鋭利な瞳がキャンチョメを震わせた。
「仲間を殺されりゃ報復で誰かを殺す。
あたりまえのことだろうが!
テメエはダチや身内喪った人間相手にも
“みんななかよくてをとりあいましょう”と呼びかけるってのか!?」
「……そうだ!」
みねねの肩を押さえつける手に力が篭り、
肩甲骨がみしり、と音を立てた。
その気になればこの少年はみねねを楽に殺せるのだという証明。
「だって。誰かが殺された恨みで誰かを殺して!
みんながそんな風になっちゃったら
ボクみたいな弱虫はすぐに死んじゃうんだよ!!」
みねねの頬に雫が落ちて。
響きあうようにキャンチョメの背後に
顔を覆ってしゃくりあげる一人の少女が現れた。
「ボクは苦しんで救われなくなるような生き方は嫌なんだよ…………」
涙が溢れる瞳は弱々しく揺らめいていて。
少しでも強い風が吹いたら
たちまちに折れてしまうように思えた。
背後にいる少女とキャンチョメが重なってしまうのを
見るのがどうしても嫌でみねねは眼を閉じた。
「……誰かが死んだのか?」
「友達が……死んだ」
「そうか」
寒々しいほどに虚ろな裡を痛いほどに感じ。
みねねは眼を開けた。
「わかった。降参だ。
一時停戦ってことにしてやる」
小さな声で呟いたみねねの言葉に
まだ警戒を残しながらもキャンチョメは
おっかなびっくり手を離した。
ゆっくりと起き上がって
みねねは解放された肩の痛みを紛らわそうと腕を回した。
「はあ、もうちょっと優しくしてもよかったんじゃねーの?」
「ご……ごめんよぅ」
「ははっ、冗談だ。気にすんなよ」
子供らしくしょげるキャンチョメに
みねねはあっけらかんと笑って頭を撫でた。
殺し合いをしていたときとはまるで違うみねねに
戸惑いを隠せなかったキャンチョメも次第に安堵の表情を見せる。
――ザザッ。
#############
白$+!=<&ダーに
@~&は心臓を*+“た。
DEAD END
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突然、声が出なくなった。
さっきまで撫でていたはずの
キャンチョメはかなり離れた場所へ突き飛ばされている。
みねねの腕が突き出されていることから彼女がやったようだ。
みねねがぼんやりと視線を下に降ろすと
胸から一振りのレイピアが生えていた。
滑らかに生えていたレイピアはみねねの体内へと戻り。
体内を異物感が駆け抜け、たまらず膝をついた。
「9th.雨流みねねだな」
純白の仮面と北岡のものに比べると
かなり軽量のアーマーに身を包んだ何かが立っていた。
今まで何の気配も感じなかったはずの場所に。
――ADVENT――
「自爆でも仕掛けられたら困るんでね。
安全策をとらせてもらう」
草原に広がった鏡面から
羽ばたいた機械仕掛けの白鳥がみねねに狙いをつけて襲い掛かる。
呆気ないほどに片腕が喰われ、
大量に血を喪ったみねねの脳から血が引いていく。
悲鳴の声が上がったのはみねねの背後から。
振り向くとキャンチョメが腰を抜かして立てずに眼を見開いていた。
「……げろ!」
上手く言葉を口に出せず。
夥しい血泡が舌を飲み込み。
烈火BIMを抱きかかえると仮面ライダーに突進した。
どくん、とみねねの心臓が大きく跳ねた。
それを他所に無情にも
みねねの片腕も白鳥に喰いちぎられた。
一思いに殺さないのは万全を期してのことだろう。
いつから観察していたのか知らないが
キャンチョメはどうにでもできると確信しているのだろう。
最悪、仮面をかぶっているのだから素知らぬ顔で近づくこともできる。
最後の力を振り絞って立ち上がったみねね。
烈火ガスは既に作動してみねね自身を包んでいた。
ちょうどよくトドメを誘うと接近してきた
白鳥は装甲がボロボロと焼け剥がれ、激痛に叫ぶ。
みねねの肺に否が応にも侵入する
烈火ガスは思わずごくりと飲み込むと
食道全てを焼け爛れたホースにした。
――どくん。
死の淵にあって活発化していく心臓。
それとは他所にたしかに溶けていく肌、皮膚。
ばさりと何かが落ちた。それはみねねの頭髪。
口を開けていないはずなのに零れた白いものは
失った頬を通って落ちた歯。
首を緩慢な動きで動かした
みねねはキャンチョメのいた方を向く。
今もまだ少女の泣き声が聞こえた。
そこにむかってゆっくりと脚を前に進め。
ガスが充満する空間を歩く。
泣き声がまだ聞こえる。
涼しけな風が肌を撫でて、
一瞬だがみねねからもキャンチョメが見えた。
少年とその隣で泣く少女。
キャンチョメの顔はもう見えなくなっても
少女の表情はまだ見えた。
とは言っても、顔は手で覆われて判断ができない。
――どくん。
今までにないほどの大きさで心臓が膨らみ。
みねねの下から巨大な掌が産まれ、
同時に苦し紛れの足掻きか機械仕掛けの
白鳥、ブランウイングがみねねへ突進した。
けれどもそんなことは少しも意に介さず。
みねねは少女を見つめ続けた。
「――ああ」
最後の最後に少女の手が下がって、
表情が露になった。
みねねの口が動き。
その瞳が感情を映そうとした。
けれど、ブランウィングの嘴がみねねの胴体を貫き。
みねねの鼓動も蠢く胎動も全て喰らい尽くした。
みねねが死に。
彼女に眠っていた因子を喰らった仮面ライダーファム。
心を通わせた敵を目の前で喰われた魔界の王、の卵
同じ時を以って始まった彼らの権能は拡大し。
ついには《時空王》と《白色魔王》へと変容した。
「シン・ポルク」
少年の言葉とともに二人を取り巻く世界が歪み。
会話なくとも激突は避けられないと《時空王》は悟った。
両者ともに純白の雪景色と無垢なる空模様を体現する外観を
漆黒の闇が包み込み、濡れ烏のように粘りに照らされる。
二人から二柱へと拡大変容を果たし。
異なる“願い”を秘めて刃を向け合う。
共通する性質はただ一つ。
――無敵――
ゆえに
――物理破壊は不可能――
&color(red){【雨流みねね 死亡確認】}
&color(red){【残り 14名】}
【キャンチョメ@金色のガッシュ!!】
[状態]:健康、力への渇望、全身裂傷、疲労(中)、心の力消費(???)、シン・ポルク発動
[装備]: キャンチョメの魔本@金色のガッシュベル!! 、粘土@現実、ポップコーン@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探す
1: 。
[備考]
何故かパートナーがいなくても術が使えることは理解しました。
本がフォルゴレ以外でも読めると知りました。
フォウ・スプポルクを修得
シン・ポルクを修得(効果:精神面において限りなく全能)
参戦時期:ファウード編以降
【ミツル@ブレイブ・ストーリー~新説~】
[状態]:デウス因子とり込み??
[装備]:ミツルの杖@ブレイブ・ストーリー~新説~、
仮面ライダーファム(デウス因子吸収による存在変容)@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品、不明支給品×1、BIM(爆縮型)@BTOOOM (7/8)
不明支給品×2~4(ゼオン、三村(武器ではない)、不明支給品(ノールの)、
チャンの首輪、ノールの首輪、ゼオンの首輪、BIM(クラッカー型)×5@BTOOOM!、
[思考・状況]
基本行動方針:妹を生き返らせる。手段は選ばない
1:キャンチョメを殺す。
[備考]
参戦時期:ゾフィが虚になった後。
魔法を使うと体力消耗。
※未来日記の世界についてある程度の情報を得ました。
※9thは危険だと認識しました。
雪輝、というよりも時空王に利用価値を見出しました。
※ミツルの目には女神像は由乃ではない姿に映りました。
※デウス因子を取り込んだ仮面ライダーファムはデッキを使用できません。
※仮面ライダーファム(デウス仕様)の性能:物質面において限りなく全能
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