ワイルドセブン - (2013/03/25 (月) 20:16:08) の1つ前との変更点
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*ワイルドセブン
こつこつ。こつこつ。
透明な水晶で彩られた螺旋階段を、ワイルドセブンは段数を減らしていく。
登った先にあるのは本物の女神、デウスエクスマキナの居城。
本物の理想郷。“願い”が叶うであろう夢の場所。
「膨大な長さだな……かったるいと言いたくなっちまう」
そこに到達しようと、ワイルドセブンは消耗した力を振り絞って上へと登る。
それは、既にいない杉村達の為か。
それは、今も下界で闘っているであろう桐山の為か。
それは、亡霊の如くこの世界にとどまっている自分の為か。
既に、“七原秋也”としての自分は終わっているのだ。
どんな答えに達しても、それはワイルドセブンとしての自分だ。
桐山も、ワイルドセブンも。ほんの少しのロスタイムをもらって今を生きているだけなのだから。
「……はっ」
何をセンチメンタルに考えているのだ。
今は女神の居城へと早く至ることだけを考えねばならない。
“親友”が殿を務めてまで、自分を上へと押し上げてくれたのだ。ここでかっこ良く決めれないでロックスターは名乗れない。
「さぁ、アンコールの時間だ」
そして、彼は――頂上へと辿り着く。
夢の残骸、“願い”の欠片で創られた理想の城。
生存者無き世界で、彼は――前を向く。
そっと、彼は水晶のドアノブに手をかけて。
「はじめまして、女神様。いや、久し振りって言った方がいいかな? 典子」
ワイルドセブンは、思う。
きっと、俺の物語は――――ここで、終わる。
#########
「どうか、世界の理に絡め取られた彼に、憐れみを」
#########
そこは、理想の世界だった。
国信慶時が、杉村弘樹が、三村信史が、川田章吾が、桐山和雄が。
「よっ、何ボケーっと突っ立ってるんだよ」
「注意力散漫だぞ、七原。怪我でもしたらどうする」
「妄想に耽っていたんだろ~。それよりも、学校サボってどっか行こうぜ」
「ははっ、いいんじゃねぇの? そういうのも青春だ」
「それならゲーセンに行きたい。エヌアインという格闘ゲームにハマっていてな」
肩を預けて、一緒に歩くことができる。
「ゲーセンはうるさいから嫌いだわ。優雅に紅茶を飲んでいる方が有意義ではなくて?」
「……どうでもいいが、俺を巻き込むな」
真紅が、秋山蓮が。
ふてくされた顔で、困ったような顔で。
そこには、皆欠けずに生きていて。
「ふふっ……楽しいね。とっても、賑やかだけど、なんだかすごく落ち着く」
最愛の彼女も変わりなく、笑っている。
ずっと続くとさえ思える永遠がそこにあった。
楽しすぎて。幸せすぎて。
だからこそ――――。
「あぁ、そうだな。幸せだよ。幸せすぎて――嘘だってわかる」
――――これは、夢なのだと気づくことができる。
「こんな幸せは今更なんだよ、女神様。いいから、とっとと御顔を拝顔させてもらえねぇかな?」
両手に生成したレミントンを強く握りしめ、ワイルドセブンは弾丸を放っていく。
かつてのクラスメイトを撃つ。新しくできた友達を撃つ。最愛の彼女を撃つ。
淡く輝いていた世界を撃つ。
「確かに、昔の弱かった俺なら負けていたかもしれない。“七原秋也”だった俺は、迷ったと思う」
確かに、この夢はワイルドセブンの――。
否、七原秋也の“願い”そのもの。
元々、七原は闘わざるをえないから。平穏な日常を過ごすことが自分には無理だとわかっているから。
だからこそ、争いがない、皆が笑える世界を望んだ。
「残念だったな。俺はもう“七原秋也”じゃねぇんだ。今の俺は、ワイルドセブン。その“願い”じゃあ、止められないんだよ」
だけど。七原の本当の“願い”は仲のいい友人達といつまでも、日常を続けることだった。
ちょっとしたことが楽しい毎日を胸に、生きること。
闘争とは無縁の一男子中学生として、彼が願ったのは――綺麗な幻想だった。
「綺麗すぎるんだ、それが嘘だってわかるくらいに」
だからこそ、わかってしまうのだ。
この世界は嘘で、本当の醜く、クソッタレな世界が本物だと。
「夢に溺れて、過去をなかったことになんかできねーよ。
積み上げてきた絆も、死体も!! 俺の頭は覚えている!!!」
後悔はしても、忘れないと誓った。
“七原秋也”は、ワイルドセブンは――――そうして、走ってきた。
「ブレイブ・ストーリーじゃない、後悔だらけの不恰好な物語でもっ!
それが俺の物語だ!! 辛かった昨日は苦しいけど、忘れない! その上で、幸せな明日を願う!」
だから、革命家になったのだろう。
世界を変えて、物語を紡いで。
いつか見た綺麗な幻想の夢を、他の誰かが願えるように。
「問うぜ、女神っ!!! アンタはそれだけの力を持っていながら何故、抗わない?
俺が今まで出会ってきた奴等は形はどうであれ、抗っていた。“願い”に意志を乗せて、貫いていたんだ」
返答はない。返答はない。
女神はただ黙し、幸せな幻想を創造し続ける。
「夢は覚めるものなんだ! どんなに幸せでも、暖かくて心地よくても!
いつかは、現実に還らないと駄目なんだよ!!!」
綺麗な水晶の夢を――ワイルドセブンは否定する。
夢は夢でしかない。自分達が生きるのは現実で、妄想の中ではない。
ワイルドセブンも、桐山も元の自分とは程遠い所まで来てしまったけれど。
それでも、現実を選んだのだ。
「幸せな世界が夢のなかにしか無くても! 今ここに居るのは現実だっ!!!!
さぁ、女神! 始めようぜ、ラストゲームッ!」
【Last game “ブレイブ・ストーリー”】
『全ては、世界の理に従うのでしょう』
「その理を否定する為に、登ってきたんだよ」
|[[キルミーベイベー]]|投下順|[[]]|
|[[キルミーベイベー]]|時系列順|[[]]|
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*ワイルドセブン
こつこつ。こつこつ。
透明な水晶で彩られた螺旋階段を、ワイルドセブンは段数を減らしていく。
登った先にあるのは本物の女神、デウスエクスマキナの居城。
本物の理想郷。“願い”が叶うであろう夢の場所。
「膨大な長さだな……かったるいと言いたくなっちまう」
そこに到達しようと、ワイルドセブンは消耗した力を振り絞って上へと登る。
それは、既にいない杉村達の為か。
それは、今も下界で闘っているであろう桐山の為か。
それは、亡霊の如くこの世界にとどまっている自分の為か。
既に、“七原秋也”としての自分は終わっているのだ。
どんな答えに達しても、それはワイルドセブンとしての自分だ。
桐山も、ワイルドセブンも。ほんの少しのロスタイムをもらって今を生きているだけなのだから。
「……はっ」
何をセンチメンタルに考えているのだ。
今は女神の居城へと早く至ることだけを考えねばならない。
“親友”が殿を務めてまで、自分を上へと押し上げてくれたのだ。ここでかっこ良く決めれないでロックスターは名乗れない。
「さぁ、アンコールの時間だ」
そして、彼は――頂上へと辿り着く。
夢の残骸、“願い”の欠片で創られた理想の城。
生存者無き世界で、彼は――前を向く。
そっと、彼は水晶のドアノブに手をかけて。
「はじめまして、女神様。いや、久し振りって言った方がいいかな? 典子」
ワイルドセブンは、思う。
きっと、俺の物語は――――ここで、終わる。
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「どうか、世界の理に絡め取られた彼に、憐れみを」
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そこは、理想の世界だった。
国信慶時が、杉村弘樹が、三村信史が、川田章吾が、桐山和雄が。
「よっ、何ボケーっと突っ立ってるんだよ」
「注意力散漫だぞ、七原。怪我でもしたらどうする」
「妄想に耽っていたんだろ~。それよりも、学校サボってどっか行こうぜ」
「ははっ、いいんじゃねぇの? そういうのも青春だ」
「それならゲーセンに行きたい。エヌアインという格闘ゲームにハマっていてな」
肩を預けて、一緒に歩くことができる。
「ゲーセンはうるさいから嫌いだわ。優雅に紅茶を飲んでいる方が有意義ではなくて?」
「……どうでもいいが、俺を巻き込むな」
真紅が、秋山蓮が。
ふてくされた顔で、困ったような顔で。
そこには、皆欠けずに生きていて。
「ふふっ……楽しいね。とっても、賑やかだけど、なんだかすごく落ち着く」
最愛の彼女も変わりなく、笑っている。
ずっと続くとさえ思える永遠がそこにあった。
楽しすぎて。幸せすぎて。
だからこそ――――。
「あぁ、そうだな。幸せだよ。幸せすぎて――嘘だってわかる」
――――これは、夢なのだと気づくことができる。
「こんな幸せは今更なんだよ、女神様。いいから、とっとと御顔を拝顔させてもらえねぇかな?」
両手に生成したレミントンを強く握りしめ、ワイルドセブンは弾丸を放っていく。
かつてのクラスメイトを撃つ。新しくできた友達を撃つ。最愛の彼女を撃つ。
淡く輝いていた世界を撃つ。
「確かに、昔の弱かった俺なら負けていたかもしれない。“七原秋也”だった俺は、迷ったと思う」
確かに、この夢はワイルドセブンの――。
否、七原秋也の“願い”そのもの。
元々、七原は闘わざるをえないから。平穏な日常を過ごすことが自分には無理だとわかっているから。
だからこそ、争いがない、皆が笑える世界を望んだ。
「残念だったな。俺はもう“七原秋也”じゃねぇんだ。今の俺は、ワイルドセブン。その“願い”じゃあ、止められないんだよ」
だけど。七原の本当の“願い”は仲のいい友人達といつまでも、日常を続けることだった。
ちょっとしたことが楽しい毎日を胸に、生きること。
闘争とは無縁の一男子中学生として、彼が願ったのは――綺麗な幻想だった。
「綺麗すぎるんだ、それが嘘だってわかるくらいに」
だからこそ、わかってしまうのだ。
この世界は嘘で、本当の醜く、クソッタレな世界が本物だと。
「夢に溺れて、過去をなかったことになんかできねーよ。
積み上げてきた絆も、死体も!! 俺の頭は覚えている!!!」
後悔はしても、忘れないと誓った。
“七原秋也”は、ワイルドセブンは――――そうして、走ってきた。
「ブレイブ・ストーリーじゃない、後悔だらけの不恰好な物語でもっ!
それが俺の物語だ!! 辛かった昨日は苦しいけど、忘れない! その上で、幸せな明日を願う!」
だから、革命家になったのだろう。
世界を変えて、物語を紡いで。
いつか見た綺麗な幻想の夢を、他の誰かが願えるように。
「問うぜ、女神っ!!! アンタはそれだけの力を持っていながら何故、抗わない?
俺が今まで出会ってきた奴等は形はどうであれ、抗っていた。“願い”に意志を乗せて、貫いていたんだ」
返答はない。返答はない。
女神はただ黙し、幸せな幻想を創造し続ける。
「夢は覚めるものなんだ! どんなに幸せでも、暖かくて心地よくても!
いつかは、現実に還らないと駄目なんだよ!!!」
綺麗な水晶の夢を――ワイルドセブンは否定する。
夢は夢でしかない。自分達が生きるのは現実で、妄想の中ではない。
ワイルドセブンも、桐山も元の自分とは程遠い所まで来てしまったけれど。
それでも、現実を選んだのだ。
「幸せな世界が夢のなかにしか無くても! 今ここに居るのは現実だっ!!!!
さぁ、女神! 始めようぜ、ラストゲームッ!」
【Last game “ブレイブ・ストーリー”】
『全ては、世界の理に従うのでしょう』
「その理を否定する為に、登ってきたんだよ」
|[[キルミーベイベー]]|投下順|[[幕は対話篇にて降ろされる]]|
|[[キルミーベイベー]]|時系列順|[[幕は対話篇にて降ろされる]]|
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