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Story  青玉 ◆cEc2P5uewI 氏
Illust ID:08DzyAYCO 氏(16th take)

「Dark Angel」
Lylics 青玉 ◆cEc2P5uewI 氏
市立○○病院の6階、金色の夕陽が射す窓から悩ましげな歌声が響く。
「ばらのーくびわーつなげーてー ぎんのーくさりーくわえーてー
 こよいーもひとーりはてーるうー あなたがにくらしいーン♪」
真っ白な病室の真っ白なベッドに横たわり、真っ白な服を着て歌っている少女、柿崎めぐ。
腰ほどもある、長くクセのない黒髪はまさに烏の濡れ羽色。
その髪が長い長い入院生活でまったく日に焼けていない真っ白な肌に映えて、神秘的でさえあった。
スーッと静かな摩擦音を立ててこれもまた真っ白な引き戸が横に引かれたのを見て、めぐは歌うのをやめた。
戸を開けて入ってきたのは真っ黒な服を着た少女。
艶やかな光沢を放つ銀色の髪は傾いた陽の光を受けて赤く輝いている。
茜差す西日に切れ長の目をさらに細めた紫の瞳には一切の感情も読み取れない。
高校生であるにもかかわらず、なんでも完璧にこなす。
「あ、こんにちは。 黒い天使さん。 私の、天使さん」
天使と呼ばれた少女は、不機嫌そうに答える。
「私は天使じゃないって言ってるでしょ」
「分かってるわよ。水銀燈よね」
「ふんっ」
頬を紅く染めて目を逸らす水銀燈を見て、おかしさが堪えきれない様子で、めぐは小さな笑みを見せてクスッと笑いながら問いかけた。
「ねぇ、ところで水銀燈は今の生活に満足してる?」
「え……?」
親しげに発せられためぐの言葉に、水銀燈は目をかっと見開いて驚いた。
「私は生まれつきこんなだからね、ほとんど病院から出たことがないの。
でも……私は、満足してるわ。私には、普通の人が体験できない体験をしてきたから。
こんなだからこそ、見えてくるものがあった。こんなだからこそ、普通の人の苦しみを知らずに済むこともあるしね」
水銀燈はめぐの言葉をただただうつむいて聞いていた。
「ん……の……がう……」
下を向いているうえにとても小さな声だったのでほとんど聞き取れなかった。
「え? なんていっ」

                 「違う!!! そんなの違う!!!!!」


めぐの言葉を遮るように、水銀燈が感情を露にして大声を張り上げた。
突然のことに、めぐは目を見開いたまま固まった。
静かにしていなければならない病院で大声を出してしまったので、めぐの担当の看護士が飛んできた。
「あなたちょっと来なさい!」
水銀燈は両腕を掴まれ、病室からつまみ出された。
「水銀燈……何を言おうとしてたの……?」
ひとり病室に取り残されためぐ。不安に胸が苦しくなっ――――

「!」

ズキン!ズキン!
本当に胸が痛みだす。
その刹那、看護士に背中を押されていた水銀燈が、閉まりかけた戸の隙間越しに、
苦しそうに胸を押さえるめぐの姿を認め、看護士の手を振りほどいて駆け寄った。
「めぐ! 大丈夫!?」
腕を振り解かれた看護士が水銀燈に続く。
「うっ……だいじょ……ぶ……」
気丈に微笑んでみせたが、痛みに顔はゆがみ、額には汗が浮かんでいる。
「集中治療室に運ぶわ! あなたも一緒に来て!」
有無を言わせぬ迫力で看護士が対応する。
ピッ……ピッ……ピッ……
すぅ……すぅ……
真っ白な部屋にはめぐの鼓動に合わせて断続的に発せられる電子音と消え入りそうな寝息だけが響いていた。
すでに時刻は19時30分、窓の外には夜の帳(とばり)が下り始めていた。
「めぐ……」
すやすやと寝息を立てているめぐの汗を拭いながら寝顔を見る。
白い肌はよく見ると荒れている。その荒れた肌がなんとも言えない感情を埋め込み、胸を熱くさせる。
「めぐ……」
白い肌にひときわ赤く浮かぶ薄い唇。

「……」

枕の横に手をつき、目を閉じ、そっと唇を重ねる。
『なんとも言えない感情』が、駄目だと分かっていても自然とそうさせたのだ。
(めぐ……めぐ……)
心の中がめぐでいっぱいになる。こんな気持ちは初めてだ。
蕩けるほどに甘く、切ないほどに酸っぱい気持ち。
恋や愛とは違う、甘酸っぱい心の衝動。
衝動を何とか抑えこみ、必死に踏みとどまる。

これ以上はさすがにまずい。本当に、戻れなくなってしまう。
これ以上ここには居られない。
震える肩を押さえ、昂(たかぶ)る気持ちを抑え、書き置きだけしておいた。

次の日

あれからろくに眠れなかった。眠たい目をこすりながら、詞の執筆を始める。
―――ふと、昨日のめぐの言葉が脳裏に浮かぶ。

『ねぇ、ところで水銀燈は今の生活に満足してる?』

脳裏にちらつく昨日の出来事を必死で払いのけながらペンを走らせてゆく。
「Dark Angel 」
Lyrics:水銀燈 

I got no restriction,but I'm not satisfied 
Are you satisfied? Ain't satisfied 
If I were free as I can be, I wouldn't be satisfied 

You never break your cage like a silent canary 
But your lifestyle made like an angel 
So I captivated by your lifestyle 

†You told me"You're an angel,"but I'm not an angel 
 I think I'm actually devil to angel 
 I told you"I'm not an angel,"did I say? 

 I'm not an angel,so I have no force 
 So I can't lead to heaven,so I show you heaven 

I'm deserted even by parents 
But It's not reason why I'm scared like this 

I have wings on my shoulder which are dark and dirty wings 
If you'd like,why don't you ride on my back? 

†Repeat 
       ━━━━━━━━━━━訳━━━━━━━━━━━ 

       黒翼の天使 

       私はなにものにも制約されない、だけど何か物足りない 
       あなたは満足? 私は満足じゃない 
       もし私がなれるだけ自由になったとしても満たされることはないだろう 

       あなたはまるで歌うことを忘れたカナリアのよう 籠を壊すこともない 
       だけどあなたは天使のふりをしてる 
       そんなあなたに見とれたの 

       †『あなたは天使なの』と言ったけど 私は天使じゃない 
        天使と言うよりむしろ悪魔 
        『私は天使じゃない』って言ってるでしょう 

        私は天使じゃないからチカラも持ってない 
        天国へ導くことはできないから 天国を見せてあげる 

       私は親からも見捨てられた 
       けどそれは今私がこんなにおびえてる原因じゃない 

       私の背中には翼がある 黒く汚い翼 
       それでもいいなら乗ってみる? 
       †Repeat 
「……ふう。こんな感じかしら。ん~~」
疲れた両手を組んで伸びをする。
昨日の昂りは嘘のように落ち着いている。

「さぁて……真紅でもいじめてこようかしらぁ」


「ん……水銀燈……?」
体を起こして水銀燈の姿を探すが、黒い天使の姿はどこにも見当たらない。
机の上には一枚の破ったノートがあった。
そこにはこう書いてあった。

『ごめんなさい

    天使より』

「ぷっ、くすくす。何これぇ」
笑いがこみ上げてくる。

いつの間にか閉まっていた窓を開け、また今日も私は歌う。
純粋な黒の、穢れ無き天使の再訪を待ちわびて。



            終わり
















             おまけ
Illust ID:08DzyAYCO 氏(16th take)


最終更新:2006年07月27日 18:00
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