アットウィキロゴ
「ねぇ貴女、貴女はそこで一人で、何をしているのかしら?」

突然かけられた他人の声に、雪華綺晶は顔を上げてその相手を見た。
その相手 - 紅のドレスを着て、金髪をツインテールにしている少女は、私の顔を見ると少し驚いたようだった。

きっと私の右目には空洞がぽっかり開いていて、眼の代わりに白い薔薇が差されているせいだろう。
生まれた時からこうだった。その空洞には親の趣味によって白薔薇がこうして施されたし、白く腰の下まで伸びる長い髪にも、飾りとして二個ほど白薔薇を付けられ、彼女と同じようなツーサイドアップになっている。

そんな顔のせいか、あるいは両親の仕事の事情に振り回されて、何度も何度も転校を経験しているせいなのか、雪華綺晶はほとんど人と話すようなことをせず、ただ一人でひたすら読書にふけったりするのが日常だった。
あるいは他にすることといえば…。

「私は今、詩を書いています」

雪華綺晶は話し掛けてきた金髪の少女に対して、答えた。

学生時代からIQ149をもち、高校時代には既にその教師群を卓越する知識と知恵を持っていた雪華綺晶は、国内でも最も難関な大学UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入学した。
ところがこのとき彼女は両親からひどく反対をされたものだった。なぜなら彼女が志望した学部は映画科だったからである。
両親は娘が映画関連の職業につこうとすることをあまり望まなかった。それでも雪華綺晶は反対をおしきり、この映画科に入学した。
それだけ、彼女は映画に強い思い入れがあったのだ。

「あら…そうなの。」

話し掛けてきた金髪の少女は嬉しそうに微笑み、雪華綺晶の隣の席に座った。

「私は真紅。このあたりで仲間数人とバンド活動をしているの。私は仲間のことを"姉妹(Maidens)"と呼んでいるわ。ねえ、よかったら貴女の作ったその詩を、私にも聴かせてくれないかしら?」

今度は雪華綺晶が驚く番だった。
趣味的に詩作に一人でふけることずっと、自分の詩を他人から聞かせて欲しいなどと言われたのは初めてだからだった。
同時に自分の詩に興味を持ってくれる人がいることに嬉しくなった雪華綺晶は、さっそく最新作の詩をその真紅という少女に対して読んでみることにした。


Let's swim to the moon, uh huh
"月まで泳いでいきましょう"

Let's climb through the tide
"潮に乗って昇ってゆきましょう" 

Penetrate the evening
"夕方を過ぎ抜けて"

That the city sleeps to hide
"町はひそひそと眠っている"

Let's swim out tonight, love
"さあ一緒に今晩、泳いてゆきましょう"

It's our turn to try
"私たちの番なのです"

Parked beside the ocean
"海の傍らに滞りましょう"

On our moonlight drive
"私たちの月の光の旅に"

幻想的な内容を持つ詩を、まるで自分の世界にトリップしたように読み続ける雪華綺晶。その彼女に真紅は並みならぬ才能を感じた。
まるで詩を読んでいるときの彼女は別世界の人のようだ。
全て見えているものが私達のものとは違うような、綺麗な金色の瞳…。そして響き渡る、まるで一点の穢れもない存在のみに許されたような、透き通った声。


Let's swim to the moon, uh huh
"月まで泳いでゆきましょう"

Let's climb through the tide
"潮に乗って昇ってゆきましょう"

Surrender to the waiting worlds
"待っているだけでは世界は変わらない" 

That lap against our side
"それが私たちの側面を塞いでいる"

Nothin' left open
"左からは何も開かない"

And no time to decide
"判断してる時間などないのです"

We've stepped into a river
"すでに河に足を踏み入れたのです"

On our moonlight drive
"私たちの月の光の旅に"

「すごいわ!」

雪華綺晶の詩に、真紅は聞き浸ってしまった。感動に青い瞳を輝かせながら、言葉で絶賛する。

「あなた、天才よ!間違いないわ。透き通った詩、あなたの美しい声…。夢中になってしまいそう…」

過敏すぎとも思える真紅の反応に、少し戸惑っている雪華綺晶を気にもかけず、真紅はいきなり彼女の手を持つとこう迫った。

「ねえ、よかったら、私のバンドのボーカルをやってみないかしら?いいえ是が非でもお願いするわ。
実は私のバンドにも一応歌詞を作る子はいるのだけれど、どうも合ったボーカルが見つからなくて…困っているところだったの。」





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年06月06日 15:49