それはまだ、ローゼンメイデンのメンバーが薔薇学園高校に通っていた頃…
「ぜ…全治一ヶ月ですってぇ!!?」
有栖川大学病院に水銀燈の声が響いた。
…
……
………
「まぁ…良かったじゃない。あれだけ無茶して、それだけですんだのだから…」
真紅が苦笑気味に言う。水銀燈はベッドでトホホと項垂れている。
右足にはギブスが巻かれていた。
彼女はつい先日、メンバー達と一緒に学園祭のステージでライブを行ったのだが…
「まったく、ステージから飛び降りて転けるなんて…水銀燈はホント馬鹿ですぅ」
ローゼンメイデンのドラマー、翠星石は呆れ顔である。
「まぁまぁ、翠星石。ロックっぽくて良いじゃないか」
同じくベーシストの蒼星石はそう言うものの、顔は完全に苦笑していた。
「もう、水銀燈…無茶したらめっめっ!なの」
コーラスの雛苺はぷりぷりと怒っていた。
「…銀ちゃん…大丈夫?」
キーボーディストの薔薇水晶は、心配そうに水銀燈を見つめた。
「大丈夫よ、ばらしぃー」
そういって、水銀燈は微笑む。情けないのか、若干苦笑気味ではあるが…
そのまま、メンバー達はしばらく談笑し、夕方には帰っていった。
「…ふぅ、暇ねぇ…病院でギター弾くわけにも行かないしぃ」
と言いつつ、真紅が差し入れで持ってきてくれたDVDプレーヤーでスレイヤーのライブDVDを見ていたが、ジッとしながら見ても少々盛り上がりに欠ける。
「…散歩でもしようかしら?」
そう呟き、水銀燈は車椅子に乗ると病室を出た。
有栖川大学病院はなかなか大きな病院で、水銀燈はあちこちを回った…が…
「…そもそも、病院にそんな変わった物が有るわけ無いわよねぇ…」
と、彼女が完全に退屈して部屋に戻ろうとした時…
「「もういいから出てって!!!」」
いきなり大きな怒鳴り声が聞こえ、水銀燈は驚き、目を丸くした。
辺りにいた患者や看護士は、「またか」という表情をする。
「あぁ、まためぐちゃんね」
近くに居た看護士がそう呟いた。
「めぐぅ?その娘、いつもこんなに騒いでるの?」
「えっ……そうなのよ…私たちが部屋に入るのをよく嫌がってね…」
その看護士はウンザリした様子で言った。
「へぇ…」
水銀燈はニヤリと笑った。
「ねぇ、看護士さぁん。その娘の病室連れてってくれなぁい?」
そう水銀燈が頼むと看護士は一瞬変な顔をしたものの、めぐの病室へと水銀燈を連れて行った。
「ここよ…私は、入ると嫌がられるからここまでね」
と言って、看護士はその場から逃げるように立ち去った。
水銀燈はその病室のドアを開ける。
…からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ…
中にいた少女、めぐは歌を歌っていて水銀燈に気づかなかった。
「…」
…からたちのとげは痛いよ 青い青いはりのとげだよ…
水銀燈はしばらく少女の歌に聴き入る。
「…めぐぅ」
そして、いきなりファーストネームで名前を呼んだ。
めぐは驚き、水銀燈のほうを見る。
「…素敵な歌声ね」
水銀燈はニッと笑って見せた。
「…あなた、誰?」
めぐは不審者を見る目で水銀燈を見る。
水銀燈は、何もかもを見抜くような鋭い視線をした。
びくっとめぐは一瞬怯える。
「私は水銀燈。よろしくね」
最終更新:2008年03月20日 21:06