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「…そんなに警戒しないでよぉ」

水銀燈の目が穏やかになると、めぐの緊張は解けた。

「何しに来たの?」
「べっつにぃ、暇だったから散歩してただけよぉ」

あっけらかんと言う水銀燈に、さっきまでの雰囲気はなかった。
めぐはそんな水銀燈の雰囲気にすっかり毒気を抜かれてしまう。

「ねぇ、さっきの歌。なんて名前なの?聞いたことがない歌だったわぁ」
「この歌のこと?」

…からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ…
…からたちのとげは痛いよ 青い青いはりのとげだよ…

「そう、その歌。童謡?」
「う~ん、私もよく分からないけど…お祖母ちゃんが教えてくれたの」

そう言った後、めぐの顔は一気に曇った。

「…死んじゃったけどね」
「……そうなの…」

しばらく沈黙。

「ところで、めぐぅ。あなたは何で入院してるの?」

水銀燈がそう言うと、めぐは儚げに微笑んだ。

「私ね、心臓に病気を持ってるの」

そうめぐが言う。水銀燈は別段驚きはしなかった。

「心臓移植しないと治らないんだって」
「そうなのぉ…じゃあ、すればいいじゃない」

水銀燈が軽く答える。めぐは何も言わず、沈黙が病室を支配した。

「…私には出てけって言わないのねぇ?」

水銀燈が言う、めぐは沈黙を守った。
めぐ自身不思議に思っていた。何故自分は彼女を追い出さないのかが…

「…まぁ、いいわぁ。もう会話も続かなさそうだしぃ」

そう言って、水銀燈は病室の外へと出て行った。
最後に、

「また、来るわぁ」

と言い残して。


翌日、
本当に水銀燈はやってきた。しかもその手には…

「…ギター?」

そう、アコースティックギターを持っていた。

「バンド仲間に持ってきてもらったのよぅ」

そう言って、5フレットに指を持っていき、チューニングを確認する。
そして、アルッペジオで演奏を始めた。
めぐはしばらくその演奏を聞いていたが、しばらくして気づいた。

…からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ…
…からたちのとげは痛いよ 青い青いはりのとげだよ…

水銀燈の演奏に合わせて、めぐは歌った。
いつもと同じ歌なのに、不思議と気分が良かった。
ふと、ギターの演奏が止まっていることに気づく。
水銀燈を見た。微笑んでいた。

「やっぱり綺麗な声ねぇ…」

そう言って、再びギターをかまえる。
演奏が再開される。
めぐは、目を閉じた。もう一度歌い出す。

…からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ…
…からたちのとげは痛いよ 青い青いはりのとげだよ…

…からたちは畑の垣根よ いつもいつもとほる道だよ…
…からたちは秋もみのるよ まろいまろい金のたまだよ…

しばらくすると歌は終わり、演奏も終わる。
再び沈黙が訪れる…しかし、二人は微笑みあっていた。

「水銀燈、ギター上手いね」

めぐは初めて水銀燈の名前を呼んだ。
水銀燈も微笑み、言う。

めぐの歌には負けるわぁ」

歌というものは、案外凄い物のようだ。
少なくとも二人の間に友情を作るだけの力はあるらしい。

その日から、水銀燈はめぐの病室に行きギターを弾き、めぐが歌うというのが二人の日課になっていった。

…看護士が来た時、二人揃って

「「出てけ!!」」

というのも日課になっていった…





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最終更新:2008年03月21日 22:30