「真紅もロック聞くのねぇ…知らなかったわぁ」
「それはこっちのセリフなのだわ」
再会して最初に交わした会話がこれである。
一見何の変哲もない会話だったが、真紅の声は動揺を隠しきれていなかった。
真紅は激しく動揺していた。水銀燈との突然の再会に…ではなく…
「(これが本当に水銀燈!!?)」
同じ中学校に通っていた頃の水銀燈と今自分の目の前にいる水銀燈。
その雰囲気は180°変わっていた。
黒いタンクトップに破れジーンズというハードな服装。
昔からの特徴だったねこなで声は、何故か人を威圧するような力強さを感じさせる。
そして、目は鋭く、何もかもを見抜くような鋭い釣り目。
しかし、その白銀の髪と紅色の瞳は間違いなく水銀燈のものであった。
「ふふ、私がロック聞くようになったのは貴方に会わなくなってからぁ、当たり前よぉ」
水銀燈がそう言うと、真紅は胸を締め付けられるような心地悪さを感じた。
それは、自分の罪悪感によるものだとすぐに分かった。
「す…水銀燈、あの時は!!」
真紅が言いかけると、水銀燈は人差し指を真紅の唇にあてて黙らせた。
「…ここじゃなんだから、喫茶店でも行かない?」
そう言う水銀燈の目は、優しいものだった。
「何より、ちょっとここ居づらいわぁ」
と言って、水銀燈は親指で背後を指差す。そこにはCDを試聴しつつ、思いっきりヘドバンする少女の姿があった。
…彼女たちはまさかその少女が、後にローゼンメイデンのコーラス兼デス声担当になるとは予想もしていなかっただろう。
「た、確かに…分かったのだわ。いったん出ましょう」
二人は近場にある喫茶店へとやってきた。
「ここ、私がよく来る喫茶店でねぇ。紅茶もおいしいから、気にいるわよぉ」
「そ、そうなの…」
笑顔で話す水銀燈に対して、真紅の表情は晴れなかった。
水銀燈は入ってすぐに頼んだ乳酸菌飲料を一口飲む。
「…気にしなくて良いのよぉ?」
「………」
水銀燈はそう言うが、真紅はやはり何か引っかかってる模様。
「…私ぃ、あの後別の施設に移されたの…それは知ってるわよね?」
「…えぇ」
水銀燈は話し出した。
自分が新しく入った施設では、みんな自分を受け入れてくれたこと。
その仲間達のおかげで、学校にも復帰できたこと。
そして、今は施設を見学しに来たある人物の養子になったこと。
「槐さんって言うんだけどねぇ、よくしてもらってるわぁ」
その槐の娘と本当の姉妹のように仲良くしていること。
彼女の影響でロックに興味を持ったこと。
最近エレキギターを始めたこと。
「…ねぇ、水銀燈…」
楽しげに話す水銀燈を見ていて、真紅は口を開いた。
「…今、幸せなの?」
真紅は、やはり不安そうな顔のまま聞いた。
水銀燈は優しそうな笑顔で真紅を見る。
「当たり前じゃなぁい。毎日が最高よぉ…だからぁ」
水銀燈の手が真紅の頭に伸びる。
「同情なんかしないでほしいわぁ」
水銀燈がそう言ったことに、真紅は涙ぐんだ。慌てて顔を隠す。
「そ…それは良かったのだわ」
真紅はそう言って、すっかりぬるくなった紅茶を啜る。
そんな真紅の様子を、水銀燈は微笑みながら見ていた。
その日から、再び水銀燈と真紅の交流は始まった。
主に音楽の話で意気投合した二人は、共に同じ高校を受験し合格。
その後蒼星石達に出会い、現在に至るわけである。
「…これで、水銀燈と私の昔話はおしまい」
「…」
真紅の話は終わり、沈黙が病室を包んだ。
「…じゃぁ、私はもう帰るのだわ」
真紅はそう言って帰っていった。
残されたのは、何かを考え込むめぐと、穏やかに眠る水銀燈だけだった。
(以下執筆継続中)
最終更新:2008年03月26日 23:47