「…………」
「悪かったっつってんだろ!ちょっとはなんか言えよ…」
さて、どうしてこんなことになってるかというと単純でJUMが駅の出口を間違えて遊ぶ時間が大幅に削られてしまったからなのだ。
「…ふぅ、これだから下僕は…」
「悪かったって…とにかく、どっか行こうぜ?」
などと言いながら、結局仲良さ気に手をつないでいるのだから…この前の再会で二人の仲は元に戻ったのを通り越して一気にバカップルの域に達したようである…
…そして、そんな二人を追う怪しい影…
「うふふ…こんな事だろうと思ってあとをつけたら…」
「案の定ですわね…お姉さま…」
水銀燈と雪華綺晶だった。
「しっかし…あれがジュン…人って変わるものなのねぇ…」
「私はよく知らないんですけど…そうなんですか?」
「そうよぉ、昔はなんか引きこもりって感じでねぇ…って、私も人のこと言えないわねぇ」
そんなこと言ってる間に真紅とJUMは歩き出した。
「…どうやら新京極を目指してるようねぇ」
「では、行きましょうか…お姉さま」
と、雪華綺晶はさりげなく水銀燈の手を握り二人のあとを追いだした。
地下鉄を使い、辿り着いたは新京極。本当は寺院巡りなどもやるつもりだったようだが…
まぁ、そんな事を言っても始まらないので二人はいろいろな店を見ながら歩いている。
「おっ、これ俺のデザインしたやつだ…」
「あら、なかなかいい感じの服ね…今日の衣装にさせてもらうのだわ」
…一方、その後ろでは…
「あらあら、まったく仲よさそうねぇ…ちょっとだけイライラしてきたわぁ…ジャンクにしちゃおうかしら?」
「お…お姉さま…少し落ち着いてください…」
なにやら暴走しだしそうな感じの水銀燈を雪華綺晶が止めるという珍しい光景が広がっていた。
一方、真紅とJUMは京土産をいろいろと購入していた。京都に行くといったところJUM PROJECTのメンバーに八橋を買ってくるよう頼まれたらしい。
…ついでに真紅のことをさんざん冷やかされたそうだ。
「あっ…」
いきなり真紅が足を止めた。
「どうした?」
JUMがそちらを見ると、そこには南京錠型のネックレス。シド・ヴィシャスがつけていたもののレプリカが置いてあった。
「…欲しいのか?」
「…いいえ、これは…」
真紅はすぐにそのネックレスを購入すると…
「ジュン…ちょっと屈みなさい」
「ん?はいはい」
JUMをかがませて、そのネックレスをJUMの首につけて。まるで、シド&ナンシーのナンシーのように…
「あなたがまた…どこかに行ってしまわないように…(////)」
「…(////)」
二人は赤面しながらそっぽを向いた。
…一方…
「ジャンクにぃ…」
「お姉さま!落ち着いて!!」
…と、そんな感じで暴れている時、水銀燈はある異変に気づいて暴れるのをやめた。
「きらきー…あれぇ…」
「えっ…あれは…」
ちらりと見ると、真紅とJUMが何やら男たちに囲まれていた。
「パパラッチだわぁ…」
真紅が何やら罵声をはき、パパラッチたちが写真を連射、JUMはこぶしを握りしめ。今にも殴りかかりそうな雰囲気だ。
「やばいわねぇ、このままじゃバンドの名に傷が付いてしまうわぁ…」
水銀燈は悩みだす。バンドのこともあるが、何より彼女の大事な友人二人である。なんとかしてやりたい。しかし、ここで自分たちまで出て行けば余計話がややこしく…
「お姉さま、これを!」
「これは…!!?」
雪華綺晶が水銀燈に手渡したのはマスクだった。スリップノットの…
「アメリカの友人にもらったんです」
「…あなた、本当に交友関係がすごいわねぇ…」
「まったくこれだからマスコミのオスは!!!」
「…」
真紅はフラッシュの嵐に対して罵声を浴びせる。っと、その時…
「っちょっと待ちなさぁい!!」
いきなり乱入したスリップノットのマスクをかぶった(おそらく)女二人がパパラッチと大殺陣回りを始めた。
「さぁ!早く行きなさぁい!!」
グロテスクなマスクをかぶった女に言われて、一瞬唖然としていた二人はその場を後にした。
「なぁ、真紅…今のって」
「…間違いなく水銀燈ね…もう片方はきらきーなのだわ、きっと…」
「だよな!」
二人は顔を見合わせ笑い合いながら走って行った。
数日後、パパラッチを襲った謎のマスク女二人についてのニュースが某新聞の三面記事として日本中に広がるが…それはまた別の話…
最終更新:2008年08月24日 19:54