「蒼星石!早く衣装に着替えるですぅ!!」
「う…うん、ちょっと待って!帽子の位置がいまいち…」
蒼星石は頭の上の帽子の位置を直す。ようやく納得のいく位置になったのか鏡の前から立ち上がりベースを手に取った。
「よし!みんな、行くよ!」
蒼星石がメンバーたちに言う。
「いいわよぉ」
「準備万端なのぉ!」
「こっちも、OKなのだわ」
「行きましょう、お姉さま」
「………行こう」
「あらぁ?今日はいつになくやる気いっぱいねぇ、ばらしぃー」
「………コクコク」
メンバー全員が各々の楽器を抱える。
「今日は蒼星石のベースソロで開始なのだわ」
「う、うん…緊張するな」
そう言いながらも、蒼星石はダッシュしてステージへと向かった…
ホールにはBGMがかかっている。古い日本のロックばかりで客層にはあっていないのだが、そのBGMは今日はじめてステージに立つ人物を皆に想像させた。
やがてBGMは消え、ホールを闇が包む。
「「Let’s ROCK!!」」
真っ暗なステージからシャウトが聞こえる。皆そのステージに向けて歓声をあげた。
やがて、太く美しいベースソロが流れ出す。
スラップ奏法による美しい旋律。
スポットライトが当たり、真剣な顔でベースを弾く蒼星石の姿が浮かび上がった。
徐々にリズムが速くなっていく。
それに合わせて、ツーバスの音が響きだす。
ステージがライトアップされる。
蒼星石の後ろで翠星石がドラムを叩く。
それに絡むように、水銀燈と雪華綺晶がギターソロを奏でる。
ショルキーを背負った薔薇水晶の美しい旋律が足され、壮大なシンフォニーが生まれる。
すべてを見守っていた真紅と雛苺がお互いを見て、笑い合い、振り向いた。
「「We Are ROZEN MAIDEEEEEEEEEEEEENNN!!!!」」
お決まりのシャウトを二人で叫ぶ。
ファンたちがメロイックサインと拳を天へと突き上げる。
「さぁ、いくのだわ!!」
「皆!おもいっきりノルのよぉぉ!!」
刻まれだしたギターリフは蒼星石の作詞作曲した「
rocking rocking rocking」
昔ながらのハードロックサウンドに、真紅の力強い歌とデス声でなくても十分に魅力的な雛苺のコーラス。
ベーシストである蒼星石が作曲しただけあり、リズムとコード進行のしっかりした曲だ。
そして、Doorsすら霞むようなエロティックな歌詞。
蒼星石の反骨精神いっぱいのロックナンバーだ。
曲がソロに入ると、蒼星石は水銀燈と背中を合わせ微笑みあってソロを弾く。
それに対抗するように、薔薇水晶と雪華綺晶も背中を預け合いソロを弾く。
その後ろでは真紅と雛苺が金糸雀の用意した紅茶と苺大福を楽しんでいる。
翠星石はドラムなので一人でリズムを刻むが、時折蒼星石とアイコンタクトをする。
「(いくですよ、蒼星石!!)」
「(うん!思いっきりやって!!)」
二人はアイコンタクトで合図を出す。とたんにビートは加速する。
そこからは水銀燈と雪華綺晶の超絶ギターソロだ。
今度は水銀燈と雪華綺晶が同じ動作をしながら美しく激しいソロを奏でる。
蒼星石はベースを弾きながら翠星石の横へと行き、ウィンクをした。翠石星もそれに応えてウィンクする。
「さぁ!みんなもっと盛り上がるのぉ!!」
雛苺が苺大福を頬張りつつ叫ぶ。
「食べ終わってからにしなさい。雛苺」
真紅が紅茶を飲み終え言う。ファンたちがどっと笑う。
そのまま二人は歌い始める。
「ふぅ、まあ曲はいいのだけれど…歌っててここまで恥ずかしい歌はなかなかないのだわ」
曲が終わり、MCで真紅はそう漏らした。
「普段は真面目なのに、蒼星石が作詞する曲はいつもアウトサイダーだったりエロティックだったりするのよねぇ」
と、水銀燈も苦笑い。
「私はとっても気に入ってますよ。お姉さま」
雪華綺晶は妙な同調を示す。
と、こんな感じでしばらく蒼星石イジリが続き、客席からの笑いも絶えなかった。
こうして、京都でのライブも無事幕を閉じて行く。
それぞれの思いを胸に、ローゼンメイデン達は最後のライブへと向かった。
ツアーのラストライブは、東京。
しかし、彼女達はまだ知らなかった。
そのツアーラストの前に立ちふさがる、強大な影の存在を…
最終更新:2008年10月04日 21:45