世界的祝祭、サッカーワールドカップの中継が間もなく始まろうとしている。
熱狂的にわかファン、翠星石の召集に(否なく)応じて双子の自宅までやって来たRozen Maidenのメンバー7人も、今やテレビを前にして日本が出場する試合の開始を待ちわびていた。
「今度こそはぜぇったい日本が優勝するです!予選なんぞ余裕のよっちゃんイカ!勝たなければ翠星石がメンバー全員絞め殺しちゃるです!!」
「燃えるかしらーっ!!薔薇小のヘッドストライカーと呼ばれた頃がなつかしいってなもんよぉ!!ガンバレニッポンかしらーーーーーっ!!」
「えーと、うーと、よくわからないけど、あいと、あいとーーーっ!!」
早や熱狂ムードで試合の前番組を見ながら叫んでいるのは翠星石、金糸雀、雛苺の3人だった。
いつの間に用意していたのか、揃って日本代表のユニフォームを着ている。
「呆れた。メガホンまで用意しているの?」
その様子を横目で見ながら真紅が呟いた。
「うん、チケットが手に入らなかったからね・・・・・・せめて気分を盛り上げるんだって」
言いながら向かいの蒼星石が熱い紅茶を真紅に差し出した。続いて人数分のグラス(ちゃんと氷入り)にもお茶を注いでいく。
熱狂3人娘以外はソファに腰掛けて卓を囲んでいる。真紅の隣には薔薇水晶、その向かいには水銀燈がいた。
「サッカーは嫌いじゃないけどぉ・・・・・・あんまり勝てないのよねぇ・・・・・・つまんないカンジぃ・・・・・・」
水銀燈はアイスティーにミルクを注いでかき混ぜながら、どこか投げやりな雰囲気である。
そもそも翠星石の召集にもあまり乗り気でなかったらしい。
「大勢で見たって結果が変わるわけじゃなし・・・・・・ねぇ?」
対照的に薔薇水晶は珍しく・・・・・・本当に珍しく・・・・・・浮かれた様子だった。
「・・・・・・力をあわせて・・・・・・お姉さまに・・・・・・会わせてもらえて・・・・・・ワールドカップ」
先ほどから水銀燈の方ばかり見ながらそんなことをごにょごにょと囁いてる。(だから水銀燈は最初渋ったのかもしれない)
このようにバンドを離れた場で水銀燈と同席できるのが嬉しいのだろうが、そろそろ慣れてもらわなければ困る。
でなければしょっちゅう周囲から危ない人呼ばわりされている現状が打開できないというのに、本人は気にした様子すらないのだった。
「やれやれだわ。全く」
真紅はカップを手に取り、紅茶をすするとため息をひとつ吐いた。
(騒がしくなりそうだわ)
真紅自身はサッカーに対して興味というほどのものは持っていなかった。しかし試合の勝敗程度は気になるわけで、モニター越しとはいえ観戦するならするで普段あまり目を向けない対象を観察する機会だ。
となればどうせ観るなら、
「あなたたち、もうちょっと落ち着きなさい。まだ試合は始まってもいないのよ?」
真紅の言葉にテレビの前の3人が振り向いた。
「何言ってるですか、ワールドカップは選手が入場する前からワールドカップです」
「遠足のときの先生みたいなことを言わないの」
「真紅にはこの熱き血潮のたぎりがわからんのかしらー!?この薔薇小の」
「ヘッドストライカーじゃなくて、あなたは単にボールを全部おでこで受けていただけでしょう」
「真紅はだれがすきー?雛ね、アルシンドのファンなのー!!」
「誰!?雛苺にひどい嘘を教えたのは!!」
緊張と弛緩が半々の割合で空間を占めるなか、もうすぐ試合が始まろうとしていた。
Illust ID:inTk1QvD0 氏(36th take)
最終更新:2006年06月19日 10:34