「負けたです・・・・・・」
「負けたかしら・・・・・・」
1-3での日本初戦敗北を前に、こんな時だけ2人は仲良く床に膝をついていた。
雛苺は「あしたはあしたの風がふくのよ」とか言いつつうなだれる翠星石と金糸雀の肩に手をかけて慰めている。
「やっぱりねぇ・・・・・・こんなことだろぉと思ったわぁ」
水銀燈は同点の時点から大方負けを予想していたらしく、いやにあっさりとした口調だった。
「残念だったね。せめて同点で終わればよかったんだけど」
と言いつつ蒼星石はさほど残念でもなさそうだった。彼女も特にサッカーに関心があるわけではないのだろう。
恐らく応援グッズなども買いに行かされたに違いないが、気の毒なことである。
「結果は重要ではありません・・・・・・いちばん重要なのはお姉さま・・・・・・」
薔薇水晶はそもそも何を観ていたのやら。
「・・・・・・眠いわ」
とはいえ真紅も、後半の敗退ムード濃厚な展開に慣れぬ夜更かしとが相まって、猛烈な睡魔の誘惑をうけていた。
そのため真面目に試合を観戦していたとは言いがたい。『静かに観たい』などと言った手前、試合の途中で寝てしまうのもプライドが許さず、今は紅茶の覚醒効果に頼ってなんとか目を開けている状態だ。
そのような朦朧とした意識のなかで、やおら翠星石が何かを叫んだ。
「こうなったら・・・・・・」
がばと立ち上がった翠星石に皆が注目する。控えめに言ってもいい予感はしない。
「えー・・・・・・ワールドカップがしょっぱなから面白くないのでぇ・・・・・・・今からRozen Maiden内における胸囲杯(バストカップ)を行いたいと思うですっていうか行うです」
Music nursery ◆rws0WgtlXY 氏
『おかしい。いつものハイテンションじゃない』
いきなり素っ頓狂な大会の開始を告げられた事実よりも先に、全員が反応したのはまずそこだった。
翠星石は完全に目が据わっていた。ついでに口からは『ふしゅるるるるる』と気炎とも呼気ともつかない怪音を漏らしている。
ああいう翠星石は前にも幾度か見たことがある。それら全てのケースで共通していたのは、こうなったら誰にも翠星石を止められないという点だった。
「けけけけけけ、大体結果は見えてるですけどぉ・・・・・・全員の乳を翠星石自ら計測しちゃるですからぁ・・・・・・優勝者に対しては全員でバストアップの秘訣を訊きまくりの揉みまくりでウサ晴ら・・・・・・ゲフン、その栄光を讃えるですよー」
Illust ID:9WL+O+gy0 氏(37th take)
何しろ怖い。
逆らったら何をされるかわからない。実際ほぼ全員の脳内に過去にまつわる苦い記憶があった。
(おのれ・・・・・・)
今少なくとも真紅・金糸雀・蒼星石・水銀燈の思考は一致しているに違いない。
(何故・・・・・・)
すなわち、こうなった原因を作り出した張本人たちに対して、
(何故負けた・・・・・・)
試合終了の瞬間ですら抱かなかった深い恨みの思念。
( お の れ 日 本 代 表 ! ! )
4人は、全国のサポーターの誰よりも激しく、日本敗退に対する怨嗟の声を心中に轟かせていた。
※
まず、抵抗するということを全く知らない雛苺と薔薇水晶が翠星石の毒牙にかかった。
まず雛苺の場合。
「・・・・・・おまえホントに高校生ですか?時の流れは誰にも平等だと思っていたですが」
「むー、ヒナはこれからおっきくなるんだもん!!」
続いて薔薇水晶の場合。
「ていうか白いですねー・・・・・・うあ、何て言えばいいですかね、これ。桜色?薄桃パールジャムピンクとでも言おうかです・・・・・・こりゃ大きさとかどうでもよくなりそうですね」
「・・・・・・あ、あまり触らないで・・・・・・あっ」
そんなこんなで2人には翠星石によって次のようにクラス(階級)判定が下された。
「『せんたく板』なんてひどいのー!!」
「・・・・・・『陶磁器』は・・・・・・大きさが関係ないような・・・・・・」
「細かいことはうっちゃれダイナですぅ。続いていくですよぉ~!!」
残った4人がぎくりと身を強張らせた。とっさにお互いの表情を見交わすと、全員が
『逃げられないのならせめて順番的に一番最後がいい』
と考えているようだった。
「とりあえず金糸雀からいくです。こっちゃ来いですぅ」
「と、とりあえずって何かしら!それにそんなこと言われて誰が行くもんですかかしらよぅ!!」
指名を逃れた3人は胸を撫で下ろしていたが、金糸雀はとっさにソファの裏側に隠れるように移動した。
背もたれからおでこだけを覗かせている。
「逃げても無駄ですよぉ・・・・・・行くですしもべたち!」
「金糸雀もやらないとずるいのよー」
「・・・・・・死なばもろとも」
翠星石が怪しい笑顔とともにメジャーの先端を引っ張り出すと、それを合図としたかのように計測を終えた2人がゾンビのような動きで金糸雀を左右から挟撃した。
「て、てめぇら寝返ったかしらー!!」
「うや、さいしょから裏も表もないの」
「・・・・・・私たちだけでは不公平です」
ばっちり両脇から抱えられ、金糸雀は抵抗むなしく翠星石の前に引きずり出された。
以下、計測の模様をダイジェストで。
「こ、これは・・・・・・!!」
「な、なんなのかしら?」
「バストとウェストが全く同じサイズですッ!!」
「嘘つけかしらーーーーーーーッ!!」
それやこれやで金糸雀に与えられた称号は以下の通りだった。
「『こけし』って何かしらぁぁぁぁぁぁ!!ていうか胸の大きさ関係無かとぉぉぉぉぉぉ!!?」
「やかましーですねぇ・・・・・・対して雛苺と変わらんくせに。次いくです」
やはりというか何と言うか、最もたやすい相手から順に剥いていった翠星石の次の標的は蒼星石だった。
「み、みんなの前でなんて・・・・・・僕やだよ翠星石・・・・・・」
「んふふん?いーんですかねぇそぉーんなこと言って」
「ど、どういうことさ」
「私が知らないとでも思ったですか蒼星石!!素直に言うことを聞かねば皆に蒼星石のパジャマとパン」
「わわわわわ!!何で知ってるの!?やめて、やめてってば」
とたんに蒼星石の顔色が変わった。必死に翠星石の口を塞ごうとしている。おそらく何か秘密を握られているのだろう。
ますます不憫な子だ。
「わかったよ・・・・・・やればいいんでしょ・・・・・・やれば」
こうしてあわれ蒼星石までもがその肌と現実の数値を白日の下に晒されることとなった。
その時の様子は都合により音声のみでお楽しみいただきたい。
「んふ?んふふふふふふ?ほぉー、はぁー、成長したですねぇ、蒼星石・・・・・・」
「は、はやく終わらせてよ・・・・・・」
「んんー、しかし、これは、なんとも、うりゃ」
「ひぁっ!?ちょ、翠星石!!?」
「あ、動くなです、ちょっと細かく測ってるだけですから」
「嘘だ、どうしてメジャーを置い、あ、あんッ、だめ、だめだってば翠星石・・・・・・ッ!」
すったもんだで蒼星石に冠されたのは、
「『青い果実』って何・・・・・・」
「もうちょっとで食・べ・ご・ろですぅ♪」
真剣に身の危険を感じたのか、両腕で自らをかき抱いて震える蒼星石だった。不憫。
最終更新:2008年04月05日 17:21