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「なぁ、なんで僕が真紅のカバンを持たなきゃいけないんだよ」
「あら、ジュンは女の子に荷物を持たして平気なの?」

くそぉ~、そう言われたら持つしかないじゃないか・・・。
ジュンが転向して来て早1週間が過ぎ、同じ軽音楽部にいる
真紅、翠星石、水銀燈とは必然的に接する時間が多い。
その為にジュンは真紅達とは自然な会話ができるようになっていた。

「ほら、早く歩きなさい。 遅刻するわよ」
「はいはい」
「はい、は一回でしょ」

くそ~、いちいち。 黙っていればそれなりにカワイイのに・・・。
別に申し合わせた訳ではないのに自然と同じ時間帯に顔を合わすジュンと
真紅は、この2~3日ほど一緒に登校する毎日が続いていた。

   ~Singin’ in The Rain・You Can’t Hurry Love~  

「真紅おはようですぅ。 おいオタク人間、翠星石の鞄も持ちやがれですぅ」
「おはよう翠星石。 最近は早いわね」
「そ、そうですかぁ? 翠星石はいつもどおりですよッ」

まぁた、今日も2人分の鞄を持って登校かよ・・・。
自分のを合わせて3人分の鞄を持ったジュンが学校近所の
空き地に差し掛かると後ろから大型バイクの排気音が近づいてくる。
そのバイクがジュン達を追い越し、空き地に入る。

「おはようぉ~。 今日は天気もイイから気持ちイイわぁ」

ヘルメットを脱ぎながら水銀燈はバイクのキーを抜き、ジュン達に
手を振っている。

おいおい、バイク通学つーか、免許取ること禁止なんじゃ・・・?
そう考えるジュンに水銀燈は何食わぬ顔でヘルメットを渡す。

「先生に見つかったらマズイからぁ、これ部室に置いといてねー」
「えっ、部室? 僕がもっていくのか?」
「あったり前ですぅ~、オタク人間はローゼンのマネージャーですよッ」

おーい、僕がいつお前らのマネージャーになったんだよ・・・!
そう言い返す間もなく校門付近まで来ると真紅と翠星石はジュンの
手から自分の鞄を取ると水銀燈と一緒に校舎の中に消えていった。
くそぉ。そうなんだよな、僕はいつも心では拒否してても口では
いい子ぶってんだよなぁ。 それに顔は作り笑いだよ・・・。
やや自己嫌悪に落ちながらもジュンは水銀燈のヘルメットを持って
部室の階段を上がりドアを開ける。

「へっ・・・?」
「の・・・覗きかしらぁぁあ!!」
「うわぁ、ち、違う。 ゴメンなさいぃぃ」

クルリと180度むきを変えたジュンはそのままドアを閉め、表札を
見るとしっかり「軽音楽部部室」と書かれている。
だっ、誰なんだ今の娘は・・・?

み、見られたかしらぁぁぁ・・・!
部室で私服から制服へと着替えていた金糸雀はちょうどジーンズを
膝まで下ろした姿をバッチリとジュンに見られていた。
怒りと恥ずかしさで薄っすらと目に涙を貯めた金糸雀は制服に
着替えると、いきおい良く部室のドアをあける。

「見たかしらッ、カナの着替えを覗いたかしらッ!」
「チラッとしか見えなかった、いや、何も見てないよ」
「今、チラッとって言った・・・あっヤバイかしらッ、
 お前も早く隠れるかしら」

そう言うと金糸雀はジュンの手を取り部室の中に隠れる。
金糸雀は指を口に当ててジュンに声を出すな! と伝える。
コクコクと頷くと誰かが階段を登ってくる音が聞こえる。

足音はだんだん近づき部室の前で止る。
ゆっくりとドアノブが回る。
ガチャッ、そしてドアが開き誰かが部室の中を見渡しているようだ。

(なんで隠れるんだ?)

足音が部室に向かっていると判断した金糸雀はジュンをロッカーの
中に押し込み、自分も入っていた。
小柄な金糸雀の口がジュンの胸元で囁く。

(生活指導の白崎かしら、あいつに見つかったらウザイかしら)

あぁ、真紅達がウザイ先生がいるって言ってたな、でもこの体勢は
嬉しいけどちょっと微妙だな・・・。
狭いロッカーの中で密着したジュンと金糸雀。
朝のシャワーを浴びたのか金糸雀の髪から香るシャンプーとリンス。
女の子とこんなに近付くなんて運動会のフォークダンスくらいか? いや
1週間前にあの翠星石と・・・。
そう考えているとドアが閉まり、足音が遠ざかっていく。

「もう行ったかしら?」
「うん多分ね」

2人はロッカーから転がるように出ると、いきおい余った金糸雀は
軽く尻もちを付く。
クスッと小さく笑ったジュンは手を差し伸べる。
その手を取る金糸雀はジュンの片方の手がもつヘルメットに始めて気付く。

「誰か知らないけど、どうして貴方が水銀燈のメットを
 もってるかしら?」
「あぁ、これは水銀燈に頼まれたんだよ、それより君はどうして
 部室で着替えなんがしてたんだ?」
「さすがに私服で教室には行けないかしら。 それにコレ持っては
 マズイかしら~」

そういうと先ほど2人で隠れていた隣のロッカーを開ける。
マンガやお菓子に混じり黄色いヘルメットが入っている。
どうやらこの金糸雀も水銀燈と同じくバイク通学をしている
ようだ。

「君もバイク通学かい? 水銀燈みたいに大きなバイクに乗ってるの?」
「カナのバイクは250ccよ、水銀燈のはリッターバイクかしら」

「リッターバイク?」
「排気量1000ccのをリッターって言うかしらッ。 それにロックと
バイクは同じ領域のものかしら~」

そういい金糸雀は部室の窓を開け、ほらアレよ、という感じで指をさす。
その方向に目を向けると、先ほど水銀燈が停めたバイクの横に黄色い
バイクが見える。

この娘がアレに乗ってるのは想像できないな・・・。
そう思いジュンは金糸雀の顔をチラッと見ると授業開始の
チャイムが鳴り出した。

「あぁ、遅刻になったかしら~。 貴方が覗きをしなければ
 こんな事にならなかったかしらッ」
「いや、だから僕は水銀燈に頼まれてヘルメットを、って言うか
 君はなんでこんな所で着替えていたんだよ?」
「バイクに乗るから制服だとマズイし、いつもカナは私服よ、
 それより貴方は何者かしら?」

それで着替えていたのか、でも水銀燈は制服で乗ってたよなぁ~、
まぁ彼女ならそんなこと気にするタイプじゃないみたいだし・・・。
そう考えるジュンの顔をみる金糸雀の目付きは、まだ少しジュンを
疑っているように感じられた。
そこで、ジュンは転校してからの経緯を金糸雀に話す。

授業開始のチャイムが鳴ってどれくらいたったのか?
結局1時間目をサボッたジュンは転校して来てからの1週間を簡単に
話すと金糸雀はニコッと笑う。

「水銀燈から聞いてるかしら~。 いきなり翠星石を食べた人かしら」
「た、食べてないよー。 一体どういう情報が流れてるんだよ! とこ
ろで君は誰?」
「私は金糸雀よ、ローゼンメイデンのキーボード担当かしらッ!」

あぁ、そういえば軽音楽部は僕を入れて5人だって言ってたよな、
それでバンドのベースは翠星石の妹で高校が違ったはずだな・・・。
頭の中で整理するジュンをよそに金糸雀はバンドの話しを続けた。

「で、カナは幼馴染の水銀燈と一緒にバイクもロックもヤッてきた
 かしら~」
「それで高校で真紅と翠星石と会ってローゼンメイデンを組ん
だってことかな?」
「そうよ、とにかくローゼンは最高のバンドかしら」
「でも、まだ僕はローゼンメイデンの演奏は聴いたことがないな~」
「それはカナがカゼで休んでたから練習しなかっただけかしら」
「じゃぁ今日は聴けるんだ。 所で真紅や翠星石もバイクに乗ってる
 のかい?」
「バイクはカナと水銀燈だけよ、翠星石なんて自転車にも乗れないかしら」

そうか、翠星石って自転車に乗れないのか~、笑っちゃうな・・・。
ジュンがもちだしたバイクの話に金糸雀は興奮気味に話す。
バイクとロック、いやロックという特定のジャンルではなく全ての音楽が
もっている高揚感、そのトキメキに近い感覚はバイクがもたらすスピードを
感じる感覚の中にあるのと同類。

 ・・・スピードとビートは同じ領域・・・

そんな事をマジメな顔付きで説明する金糸雀。

「楽器もバイクも経験が無いから僕には解らないな~」
「じゃぁ乗ってみるぅ?」
「あっ、水銀燈。 授業はどうしたんだ?」
「得意のサボリかしら~」
「だってぇ~、数学って眠くて眠くてぇ。 それに堂々とサボッて
 るあなた達に言われたくないわぁ」

確かに僕と金糸雀はサボッてる最中だ・・・。
水銀燈は「借りるわよ」とだけ言うと金糸雀のヘルメットを
ジュンに投げ渡して、手招きする。

「じゃ、真紅と翠星石にお昼までに帰るって言っといてぇ」
「解ったかしら~」


最終更新:2006年07月16日 02:16