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 一、乙女たるもの麗しくあれ

 《Rosen's story【Ⅰ.薔薇乙女】》 

「あ、紅薔薇様。黒薔薇様。さようなら
 二人を見つけた女生徒達は一人がそう声をかけ、後の二人が続けて頭を下げる。
「さようなら」
「さようならぁ」
 紅薔薇、黒薔薇と呼ばれた二人はほほ笑みながら返す。
 声をかけた生徒達は返してもらったことに大満足だった。
「やっぱりお二人は綺麗ねぇ。少し、お急ぎのご様子だったけど」
「そうそう。何してても画になるし」
「この前、八人揃ったとこを見たけど、あれはとても美しかったわぁ…」
 それぞれがそれぞれの感想を話し始める。
 大体そういう時は他の二人の話など聞いてはいない。
 ここ、薔薇学園は明治からある国内でも優秀でそれはそれは厳しいと言われている学校である。
 薔薇学園には代々伝わる『薔薇乙女』という名の生徒会がある。
 学校側が才色兼備と認めた八人が晴れて『薔薇乙女』のメンバーになれる。
 今、声をかけられたのはそんな『薔薇乙女』の紅薔薇、黒薔薇と呼ばれている二人である。
 そんな二人の会話を少し聞いてみようと思う。

「ねぇ、水銀燈。今の三人は誰?」
「知らなぁい。一々、顔覚えてらんないしぃ、知らない子に優しく対応も仕事の内でしょぉ?」
 二人は忙しなく足を動かしていた。
 もちろん、それには理由がある。
「そんな事より急ぐのだわ!遅れて…あっ!」
「げ、生活指導のA先生…!」
「こ、ここはルートを変更して…」
「あらっ真紅さんに水銀燈さんじゃない。急いだご様子で、どこか行かれるの?」
 くるっ、と方向転換し掛けた時に声をかけられた。
(ちょっと真紅ぅ。貴女が対応しなさいよぉ)
(何で私なのよ)
(だってぇ、真紅は先生のお気に入りでしょぉ?)
(腑に落ちないけどまぁ、いいわ…)
「何をこそこそ言っているの?」
 眼鏡の淵を持ち上げながらAと呼ばれた先生は言った。
「何でもないですわ。先生」
 にこぉ、と笑いかける真紅は猫を三匹程かぶっていた。
「私達、今から図書館でお勉強なんです。よろしいでしょうか?」

Illust ID:TmlgMnZZO 氏(43rd take)

「あら、引き止めてしまってごめんなさいね。じゃ、頑張ってね」
 Aが振り向き歩きだした瞬間に真紅達は走りだしていた。

「勉強ぅ?音楽のぉ?」
「うるさいわ、水銀燈。正直に話したらどうなるか分からないわよ」
「おっかなぁい…」

 この学園は近隣の学校の数倍は規則が厳しかった。例えば、

 頭髪が肩にかかる場合は耳より下で二つに結う、もしくは一つに結う。一つの場合高さは自由。
 ただしその髪は垂らす、もしくは三つ編みのみ。
 また、遺伝などで先天的にカールが入っている場合は担任に届け出る。
 前髪が眉より下のものはピン留めで分ける。色は黒、もしくは各々の頭髪の色(先天的なもの)と似通っているもの。結んではいけない。

 等。
 それ故二人はこのような髪型になっている。
 こめかみの髪を下ろしているのは生徒会、というちょってしたコネがあるから。
「はぁ、もうやんなっちゃうわぁ。こんな学校」
「しょうがないのだわ。私達、孤児を拾ってくれたお父さまがこの学園の理事長なんだもの。学校に行けるだけ感謝するのだわ。そんな事より本当に急ぐのだわ!リハに遅れてしまう」
 時計を見ながら巻くしたてる真紅に水銀燈はニヤリと笑ってみせる。
「こうなったら奥の手ね」
 と、言いながら水銀燈は自分の結っていた髪を解き、胸元のリボンを外す。
「ちょっと、見つかったらどうすんの!」
「大丈夫よぉ、学園からはもう離れてるし、こっちの方まで来る薔薇学生なんかいないわよぉ」
 確かにそこは大通りから少しはずれた路地でこんな方まで来るお嬢様はいないだろう。
「もう、知らないのだわ」
 真紅はため息を吐き、二人は先を急いだ。

 そして、二人は小さなライブハウスの裏口から入った。

「まぁったく、おめぇらは遅すぎですぅ。時計も見れねぇですか?」
 楽屋に入った途端、既に本番用衣裳に着替えていた翠星石に二人は怒られた。
「衣裳…コレ」
 と、薔薇水晶が二人に渡す。
「悪かったわ。ありがとう薔薇水晶」
「ごめんなさぁい。Aに少ぉし引き止められたのよぉ」
 二人はそう言いながら着替える。
「うゆー、蒼星石ぃ、ヒナの腕のリボン結んで?」
「はいはい」
Illust ID:TmlgMnZZO 氏(43rd take)

「みんな、急ぐかしらー!リハできなくなるかしらー!」
 金糸雀が叫ぶ。
「先、行ってて頂戴!」
「すぐ行くわぁ」
 二人の着替えを雪華綺晶が手伝う。
 真紅、水銀燈、翠星石、蒼星石、雛苺そして薔薇水晶は今をときめく『RozenMaiden』というロックバンドである。
 そして、先程叫んでいた金糸雀はそのバンドのマネージャー兼作詞を担当している。
 そして雪華綺晶は衣裳のデザインを担当している。 この八人は全員は同じ学校の同学年で更に『薔薇乙女』メンバーである。
 それぞれ、紅薔薇、黒薔薇、翠薔薇、蒼薔薇、桃薔薇、紫薔薇、黄薔薇、白薔薇と呼ばれている。

「じゃ、リハ行ってくるわ!」
「行ってらっしゃいかしらー!」
 裏方の二人はもうライブ後の飲み物や簡単な食事の用意をし始めた。
 そして、楽屋をノックする音が聞こえた。
「はい、誰かしら?」
「カナ?本番30分前だから。今日は多めに時間取ってあるから、そのつもりでね」
 ドアを開けたのは草苗みつ、というこのライブハウスの責任者、通称みっちゃんである。
「わかってるかしら、いつもありがとうなのかしらー」
 金糸雀とみっちゃんは昔からの知り合いなので格安でこのライブハウスを貸してくれる。
 じゃ、頑張ってね。と言い残してみっちゃんは扉を閉めた。

「水銀燈、調律した?少し音がずれてるよ」
「いけなぁい!昨日してなぁい!」
「早くしなさいよ!」
「皆、十分前です!水銀燈!早くするですぅ!」
「わかってるわよぉ!急かさないで!」
 水銀燈は素早く調律器に繋げると、弾いては巻く、弾いては巻くを繰り返した。
「よしOKだわぁ。行くわよぉ!」
 と、水銀燈は言った。
 そしてライブは大成功を収めた。

つづく


最終更新:2006年07月14日 22:21
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