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「You Know?」金糸雀ファイル~The Truth Story~のテーマ  ※クリックで演奏開始

Music  ピコピコ 氏
本人の意図とは別に、違う方面で評価される例は世間的にみても多くの実例
が見て取れる。
人気ロックバンド、ローゼンメイデンも本人達の意図とは少し違う感じで人気が
出た部分もあった。
それは見た目のビジュアル面での人気がある一部のファンの間で先行し、
アイドル化しているのも事実であった。
そのため新しく発売されるライブDVDに合わせてライブ中のローゼンメイデンや、
その舞台裏の写真集を出すことになっていた。
本来ローゼンメイデン物は幻冬社からよく出版されていたが、今回はある
一風変わった出版物を多く取り扱う会社から、その写真集が出ることになった。
その会社とは一部のマニアなら知っている「たま出版社」であった。
そう、日本のオカルト研究の重鎮であり金糸雀の先生でもある韮澤潤一郎氏
が代表をつとめる出版社であった。

「それじゃ、カナはこのあと写真集のことでたま出版にいってくる
 かしら~」
ライブのリハーサルを見届けると金糸雀はタクシーを拾うと行き先を
告げて急がせる。
車内で何度も腕時計を気にする金糸雀は昨夜、韮澤氏からかかってきた
電話の内容を心の中で整理していた。

「カナちゃんに是非とも聞いてもらいたい話しがある、それにバンドの
 メンバー、雛苺さんだったかな? 謎の光を見たときの彼女の
 行動を詳しくカナちゃんの口から聞きたいんですよ」

カナに聞かせたい話ってなにかしら? それに雛苺の話も・・・。
何度目かの信号と、ちょっとした渋滞をやり過ごすと目的の建物が目に入る。
金糸雀は受付嬢に名前を告げるとすぐに代表である韮澤氏の部屋に通された。

広い応接室の壁際に置かれた棚には世界中から集められたであろう珍しい
骨董品などが並べられている。
そこに上品なスーツを着た韮澤氏は金糸雀に笑顔で握手を求めてくる。
その表情はあくまで柔らかく紳士とした笑みだが、目の奥には真実を
追い求める探求者としての鋭い輝きが見て取れた。

「あの~先生、カナに聞いてもらいたい話って何かしらぁ?」
「あぁ、先日、カナちゃんに言ったよね、あの文字は旧約聖書の一節だった
 って、そして文字は古代ヘブライ後だったってね」
そこまでの話は聞いていた金糸雀はコクリと肯き、その先の言葉をまっていた。

「あの後、私はスタッフと問題の文字が刻まれた石を見に行ったんですよ。  
 そして、実際にこの目で見て、そして石のサンプルを持ち帰って調べて
 みた、するとあの石はスピネル、ペロフスカイト、アノーサイトの含有量
 が桁違いに多く含まれている」
興奮しながら話す韮澤氏に金糸雀は複雑な顔つきになる。
「それってどういう意味かしら?」
「ん、その石の内部には小さな球体、コンドリュームが見られる。
 すなわちそのような石はこの地球上には存在しないのだ、あると
 すれば隕石以外には考えられないんだよ。それにあの石と刻まれた
 文字は恐らく1000年以上はたっている・・・」
その説明に頭の中が混乱する金糸雀。
謎の光、1000年以上前に刻まれた古代ヘブライ語の文字、その石は
地球上にない鉱物、そして雛苺の謎の行動・・・。
金糸雀の頭は混乱する。

「そ、それと雛苺の行動はどんな意味があるのかしら?」
「それなんだ、カナちゃん、私が一番の問題とするのは!」
金糸雀にソファーに座るように薦め、お茶を煎れる。
湯気のたつ湯呑みを口に運ぶ金糸雀に向かって説明を続けた。
「カナちゃんは予言とかは信じるかい?」
「予言? いちおう信じてるかしらぁ」
「じゃ、神の存在はどうかね?」
「神って何なのかよく解らないかしらぁ」
「うん、キリスト、仏陀、マホメッド、モーゼなどは知ってるね?」
「それくらいは知ってるかしらぁ」
「うん、じゃぁ、彼等は神の言葉を聞いたと言われて数多くの予言を残している。
 そして彼等は偉大な業績を成し遂げた。この神とは何なのか?そしてその声は
 どうして彼等しか聞けなかったのか?これは未だに謎なんだよ。ただ超能力と
 いうのかな?それに近い特殊な力を持った人間にだけ神といわれる存在の声が
 聞けたのかもしれないと私は思うんだよ」
「超能力かしら?あのスプーンとかを曲げるヤツかしらぁ?」
「まぁ、それもあるだろうけど、例えば犬の嗅覚を持った人間がいたら、それは
 ある意味、超能力だろう、そのように普通の人間には聞き取れない波長の言葉を
 聞ける人間がいたとしたら?」
そこまで聞くと金糸雀は愕然とする。
あの時の雛苺は確かに謎の光に向かって話していたからだ。

「ま、まさか雛苺が・・・」
「そうかもしれない、私たち研究者の間ではそのような人間を媒介、ミーディアム
 と呼んでいるんだよ」
金糸雀が持っている湯呑みが微かに揺れている。
あまりのも現実離れをした話に頭の整理がつかない。

「OK、ターゲットは解った。金糸雀ではない、雛苺だ。
 繰り返す、ターゲットは雛苺だ」
盗聴マイクから漏れてくる金糸雀と韮澤氏との会話を特殊なイヤホンで聞く
数人の男達。
その指令を黒塗りのバンの中にいる別な男達が聞いている。
「了解、今ちょうどローゼンのメンバーがライブ会場から出てきた所だ。
 これより尾行にうつる、以上」
そのような会話が飛び交っているとも知らずに雛苺はライブの疲れを癒す
ために大好物の苺大福を頬張りながら出てくる。
「よくライブの後にそんなの食べれるわねぇ~」
「だってヒナ、うにゅ~が大好きなの~」
「ほら、チビ苺、慌てて食べたらノドに詰まるですよッ」
いつもの他愛のない会話するローゼンメイデンのメンバー達を乗せた車が
ゆっくりと走り出す、その後ろを一定の速度で付いていく謎の黒いバンがあった。

ローゼンメイデン達を乗せた車は都内の某洋風居酒屋で停まると彼女達は
笑顔で店内に入り、ライブ後の打ち上げを始める。
そこに少し遅れて金糸雀がやってくると、やや強引に雛苺のとなりに座る。
そして雛苺の横顔を興味深げに観察しながら韮澤氏との会話を思い出していた。

「カナちゃん、もし雛苺さんが媒介、ミーディアムなら用心したほうが
いいですよ。彼等は雛苺さんを欲しがるはずだ」
「彼等ってダレかしら?」
「私もよく正体は解らないのだが、国の組織だと思う」 
「警察とかかしらぁ?」
「解らない、でも警察よりもっと上の機関だろう」
「そんな人たちが雛苺を狙う理由は何かしらぁ?」
「力、そうテクノロジーが欲しいからだと思うよ」
「テクノロジーかしら・・・?」
「私が思うに光の存在は恐らくUFOだろう、UFO問題はどこの
 国でもトップシークレットなんだよ。あのテクノロジーが手に入れば
 世界征服も夢でなくなるからね。だから彼等は必死なんだ。そこに
 異星人とコンタクトができる人物がいたとしたら欲しがるのは当然だよ」

雛苺がミーディアム。
すぐには理解できない、ましてや常識を完全に遺脱している世界の話である。
金糸雀は笑いながらカクテルを飲んでいる雛苺を見ていた。

「おつかれさまなの~、バイバイなのぉ」
「お疲れ様、じゃ、またね」
「また明日ですぅ~」
「まぁたねぇ~」
「・・・さようなら
打ち上げも終わり、ほどよくアルコールが回った彼女達はそれぞれの家に
帰るためタクシーに乗り込む。
真紅と雛苺は同じマンションに住んでいるため同じタクシーに乗り、しばらく
今夜のライブの反省点などを話しあう。
同じボーカリストであるため気持ちが通じるものがあるのか、こうして
話していると新しいアイデアなどがよく浮かぶのである。
ただ、今回はお酒が入っているためか、タクシーを降りてマンションの
エレベーターのボタンを押すころには全く違う会話になっていた。
「あのね、真紅ぅ。ヒナはね、最近変な夢を見るの~」
「どんな夢?」
「なんだか、お空の上から街を見てるの~、そしてね、どこか山の上で
 ヒナが歌ってるの~」
「あらそう、それは性的な欲求不満なのだわ」
「ちがうのぉ、そんなんじゃないの~」
「あら、いけない、郵便物を取るの忘れてたわ。先に行って頂戴」

エレベーターが1階につき、扉が開きかけると真紅は背を向けて
ロッカー式になっている郵便受けを見る。
雛苺はそのままエレベーターに乗ると目的の階を押す。
「ふにゅ~、今夜は少し飲みすぎたの~」
独り言を言いながらエレベーターから降りる。
雛苺の部屋はエレベーターを降りて角を曲がった突き当たりにある。
そして真紅の部屋とはとなりどうしである。
「そこの角で隠れて真紅を脅かすの~」
簡単なイタズラを思いついた雛苺はニコニコしながら角にさしかかる。
その時、2人組みの男が飛び出してくると素早く雛苺の背後に回りこむみ、
雛苺の口にハンカチを押し当てる。
「むぅぅぅ、うぐぅぅ~」
まともな声が出ない、助けが呼べない。
どうにか逃げようとするが、すぐに意識がボヤけだす。
(真紅、助けてなの・・・)
男はガクリと力が抜けた雛苺を抱えるように持ち上げる。
「貴方達、なにをしているの! 雛苺を放しなさい!!」
その時ちょうどエレベーターから降りてきた真紅は手にもっていた
郵便物とセカンドバッグを投げつけると、雛苺を抱えている男に
勢いよく体ごとぶつかっていく、男はグラリと少しバランスを崩すが、
その鍛えられた体は倒れることはなかった。

反対に真紅はもう一人の男がポケットから出したスプレーを顔に浴びせられる。
「キャッ」
苦しい、息が詰まる、激しくセキが出る、目がかすみ、大量の涙が出る。
ヨロける真紅を突き飛ばすように2人の男は雛苺を抱えて走り去ろうとする。
真紅は突き飛ばされた際にやや強く背中を壁にぶつける。
涙でかすむ先にはエレベーターに乗り込もうとしている男達が見えた。
真紅はとっさに壁にある火災報知器のボタンを力いっぱい押す。
ジリリリリリリイイイィィィィ~
耳を塞ぐほどの音で警報ベルが鳴り響く。
真紅はヨロけながらも、もう一度男に体当たりする。
警報ベルに気を取られていた男は大きくバランスを崩す。
すると、雛苺の袖がビリッと破け、そのまま床に雛苺は仰向けの状態で落ちる。
警報ベルに驚いたマンションの住人達が部屋から出てくる。
「チッ」
2人組みの男は吐き捨てるように舌打ちをすると膝をついて咳き込む
真紅と床に倒れている雛苺をそのままにして急いで立ち去った。
散らかったデスクの上に吸殻が山のようになっている灰皿に短くなった
タバコを押し付けながら大きなアクビをする不精ヒゲの40代中頃の男は
面倒くさそうに名前を呼ばれて振り返り、くたびれたジャケットを着る。
「釧山(くんやま)さん、事件ですよ」
「あぁ、どんな事件だよ、殺しか?」
「いいえ、誘拐未遂と傷害ですね」
「ほぉ~穏やかじゃねぇなァ、ヤクザ同士のイザコザかぁ?で、
 被害者はどうなんだ、重傷か?」
「いえ、ケガの程度はしれてますが、今回の被害者は凄いですよ」
「どこぞの政治家か?」
「違います、ローゼンメイデンってバンド知ってますか?」
「ローゼン、なんだソレ?」
「知らないんっすか? 凄い人気のカワイイ娘ばかりのバンド
 なんすよ~、オレもファンなんすけどね」
「あぁ、女のロックバンドぉ、てめぇ浮かれてんじゃねぇぞ桜田」
釧山と呼ばれた刑事は同僚の若い桜田刑事の頭をパシッと叩きながら
パトカーに乗り込んだ。


最終更新:2008年04月05日 14:51