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            第一章~出逢い~ 
何年前になるだろうか。
その時、私はまだライターとしては駆け出しだった。
幾つかの若手インディーズバンドの短く小さな記事を書いていた。

はっきり言って私は彼らに対し全く魅力を感じていなかった。
いや、全くと言うのは過言かもしれない。でも、記事を書いていても面白くなかった。
真剣にやっていた彼らには本当に失礼だったと、今は思う。
当時は自分もまだ若く、真剣に勢いを持っている半面、まだ世界を甘く見ている部分もある彼らに苛立ちを抱くことさえあった。
しかし、自分は自分、彼らは彼らの人生だと割り切って、ただ彼らのやること・やったことだけを書いていくだけだった。

その日も、義務的に彼らの記事を書いていると、私は編集長に呼ばれた。
何となく、言われることは分かっていた。
この時期、雑誌の売り上げが右肩下がりで編集長を初め編集部は空気は苛立っていた。

案の定、編集長はご立腹で、言われたことは以下の通り……※編集長は関西人

「こんなもんは猿にでも書ける!」

はい、おっしゃる通りで……

「バンドのライブ予定を宣伝するためだけに書くもんちゃうねん!」

ごもっとも……

「ええか?ライターはファンの気持ちになって書かなあかんねん!!わかっとんのか?!」

分かってます……
いや、本当に分かっていた、自分でも。こんな記事を書いてはならないことは……

「よう考えろ!今度こんな記事書いたらクビや!!」

私は本当に辞めてしまおうかと思いながら自分の席に戻った。

「はぁ………」

溜息を吐き、冷えた飲みかけのコーヒーをぐっと飲み干した。
飲み干した瞬間、背後から肩を叩かれた。
ぱっと振り返ると、そこにいたのは副編集長だった。

「ふ、副編集長!」

「大丈夫か?」

「あ、いや……まぁ……」

「あんまり気にするなよ。編集長もイラついてるんだ。」

副編集長は先程までの編集長の声を聞いていたようだ。
というより、編集部の中であんな大声を聞こえなかったという人の方がいないと思う。
それに比べ副編集長はいつも笑っている人だった。怒っているところを見た事が無い。

「しかし、編集長の言葉は正しいです…」

「そうだな。俺もお前の記事を見ているが、あれはあまり良い記事とは言えないな。」

「やはり……」

「ちょっと一息つこう」

そう言って副編集長は私をロビーに連れて行った。二人とも椅子に腰かけた。
そこで副編集長は私に一枚のポスターを手渡した。
バンドのライブ告知のポスターのようだった。
私はそこに書かれていた文字を思わず口にした。

「…ばら…おとめ……」

「そう。『薔薇乙女』」

「バンドですか?……」

「そう。女の子6人組の。」

副編集長はこの薔薇乙女というバンドのライブに行ってみろとだけ私に伝えると、すぐ立ち去ってしまった。

「……?」

改めてポスターに目を落とす。
そこには中世ヨーロッパを彷彿とさせるコスプレ(?)を纏った少女が6人写っていた。
これは一体……?
どんなバンドなのだろうか。
自分達の世界観を如実に表すためにこのような衣装を着ているのか。
または、本当にただのコスプレ好きの女の子達が集まった色物バンドだろうか……
この一枚の告知ポスターだけでも、いろいろな疑問と興味が沸いてきた。

「薔薇乙女か……」

数日後、私は副編集長に言われた通り『薔薇乙女』という謎に満ち足りたバンドのライブ会場へ来ていた。
周りを見れば、彼女達のファンであろう女の子達が彼女達のようなヒラヒラなコスプレ、所謂ゴスロリを見に纏っているのが目についた。

それに比べ、私は仕事場から来たのでスーツのままであった。
まあ、メンバー全員女の子のバンドということでファンの男女の比率は半々と言ったところだ。
私と同じ仕事終わりのスーツ姿もちらほら見受けられた。

開場してからも開演までには時間があった。
しかし、すでにファン達は今か今かと待ちわびて、ステージに期待を寄せている。
あまりの熱気に会場に入ってすぐ私はスーツを脱ぎ、シャツの袖を捲くった。
一体、これからどんなステージングが繰り広げられるのだろうか……
私も、色んな意味で期待を寄せた。

ちなみに、今の時点で私が把握している薔薇乙女に関する情報は、
副編集長からもらったポスターに載っている彼女達の姿だけだった。
どの子が何と言う名前でどのパートなのか、分かっていない。
調べようと思えば簡単に調べられたと思うが、あえて分かっていない方が面白い。
私はもう一度ポスターに目を落とし、彼女達の姿を確認した。

まず目に付くのは、赤いドレスを纏った金髪の少女。
地毛か着け毛か、サイドを縦巻カールにしてヘッドドレスを装着している。
これも地かカラコンか、青い瞳からはしっかりとした強い意思と情熱が感じられる。
まるで、フランス貴族のお嬢様といったような凛としたたたずまい。
はっきり言って美人である。

この子に負けじと魅力的なオーラを放っている子がいる。
黒い逆十字をあしらったドレスを身に纏った銀髪ロングの少女。
背が高く胸も大きくグラマラスな体型だ。
赤ドレスの子と違い、大人っぽい妖艶な雰囲気を醸し出している。
切れ長の目、口元の笑みは、まるで全てを見下したような表情をつくっている。
勝手なイメージだが、この子はギターが似合いそうだ。攻撃的なサウンドでぐんぐん攻めてきそうである。
かと思えば、大きなピンクのリボンを着けたロリ…いや……
黒ドレスの子とは対象的な、子供にしか見えない女の子が太陽より眩しい笑顔をポスター越しに向けている。
ピンクのリボンにドレス。
栗色ボブの髪をふわっとカールさせている。
可愛らしくあどけない笑顔は見ている者まで幸せにするであろう…………
これはお世辞なんかじゃない、本当にそのくらい眩しい笑顔なんだ。
この子はどのパートなんだろうか……
ギターやドラムというよりはヴォーカルとかキーボード、もしくはタンバリンなんか似合いそうだ。
…って失礼だな。
そして、次に紹介したいのが向かい会い手を重ね合わせてこちらを見ている顔が瓜二つの二人。
髪型は違う。
一人はロングでカール。一人はショートでシルクハットを被っている。
目の色は二人ともオッドアイというのか、カラコンであろう赤と翠である。
違うのは左右逆であるということ。
ロングの子は頭にメイド(?)みたいにレースを着けて、翠色のロングスカートを穿いている。
対象的にシルクハットの子は、蒼い衣装でメンバー唯一ズボン(?)である。
一見、美少年かと思ってしまう程だが、副編集長は確かに女の子6人組バンドと言った。
完全な一卵性双生児であろう。

さ、最後に紹介するのは謎な雰囲気が漂う薔薇の眼帯をした女の子だ。
紫色の長い髪とドレス。
その片目はどこを見つめているのだろうか。
その見事なまでの無表情は、何の感情も読み取ることが出来ない。
彼女は楽器をやるのか?
実は超能力を持ってて、舞台ではスプーン曲げたり物浮かせたりするパフォーマンス担当なのかもしれない!
なんて思えるくらいの謎オーラなのだ。

この6人。
非常に美少女である。
一体どんな演奏を見せて聴かせてくれるのか。
私の期待感は増していくばかり。
副編集長が勧めてくれたロックバンド。
自分を変えるきっかけになってくれる事を祈る。

~~♪…
「きゃーっ!!」
照明が暗くなりSEが流れ出すと、客のボルテージは早くも急上昇した。

そして、メンバーが一人ステージの中央にやってきた時、そのボルテージは最高潮に達した。

(以下執筆継続中)



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最終更新:2006年12月10日 01:39