Story ID:5WTC+opD0 氏(124th take)
冬も中盤を向かえ、春の足音もまだ聞こえてこない1月中旬
翠星石は独り、部屋で曲のアレンジを考えていた
「ん~、今回の曲はちとめんどくせぇですぅ・・・」
そう呟くと彼女は文字通り頭を抱える
腰程の高さがある黒いデスクの上には
メッシュパッドとドラムスティック
MTR、リズムマシン、スコア
ノート等
いかにも「ミュージシャン」という感じのモノが陳列している
「・・・バラードなんてやった事ないですよぉ・・・」
ドラムスローンに座りデスクに突っ伏しつつパッドをトントンと叩く翠星石
彼女の音楽的ルーツはもっぱらメタル系統の曲が多いので
スローテンポの曲は苦手だ。
なんせスロウバラードとメタルとでは何もかもが違う
テンポは勿論の事
バスドラ、シンバルのヒット数等々、・・・とにかく色々違う
「えーと・・・だからココにシンコペ入れるですか・・?」
因みにロウテンポの曲にシンコペを入れると
聞いてる側はリズムを見失ってしまうので入れてはいけない
「ラスト辺りでスネアロール・・・ココに倍テンポ入れとけばいいですね」
翠星石はそんなバラードの『タブー』ことごとく無視し
どんどんロック・ドラムのテクニックを盛り込んでいく
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「あ~もうやってらんねぇです!」
開始して30分が経った頃、突然そう叫ぶと
手に持っていたスティックを放り投げ
デスクに置いてあった全てのモノをフローリングめがけすべり落とし
バタリとデスクに倒れこんだ
ガチャガチャと音を立て落ちていく精密機械はもう2度と・・・
「ぁっ・・・」
彼女は小さく悲鳴を上げると
アチャーと言う顔をしコロコロと転がっていくMTRのツマミをただ眺めていた
「・・・いったん休憩でーす」
近くに置いたあったサングラスを掛け
お決まりのセリフを吐く彼女は吐き気がする程ユーモアリスト
そのまましばらくデスクに突っ伏していると
いつの間にか彼女は眠りに落ちていた
あれからどのくらいの時間が経っただろうか
翠星石は不意に目を覚ました
自然な流れで前方の壁掛け時計にチラリと目を通し
寝ぼけ眼をゴシゴシとこする
「んぅ・・・もうこんな時間ですか・・・」
そう言いうとノソリと身を起こし
しばしボーとする
「アハハ・・・ちと寝すぎたですぅ」
時計の双針は丁度12を示していた
最後にドラムを叩いていた時間は大体8時頃なので
単純に4時間寝ていた事になる
~♪
「・・・ん?なんです?」
壁掛け時計を睨みつけ
自分の不甲斐なさをオカズに感傷に浸っていると
隣の部屋から澄んだ歌声が聞こえてきた
寝起きの頭に木霊する心地のよい歌声は
翠星石の脳ミソを刺激する
「・・・聴いた事のない曲ですねぇ」
思わず聞き入ってしまう
その歌は暗いメロディーと
歌と言うよりもセリフに近いボーカルが印象だった
「?蒼星石は何を歌ってるですか・・・?よく聴こえんですぅ」
そう吐き捨てる様に言うと
隣の部屋に隣接する壁に耳を引っ付けて
全神経を聴力に捧げた
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ナ~ショナル勃起♪ナ~ショナル勃起♪
ナ~ショナルキッドの♪
おちんちぃ~ん♪
「うはwwwwwおkwwww把握したwwww」
最終更新:2007年01月12日 22:53