記者「えっと、今回のスペシャル企画は去年のアジアツアーを経て今年欧米ツアーが決定するなどもはや日本だけでなく世界各国で人気を博しているローゼンメイデンにインタビューをしてみたいと思います。皆さんよろしくおねがいします」
真紅「そんな緊張しなくてもいいのだわ」
記者「すいません(笑)でもあのローゼンメイデンが目の前に居るんですよ?!そりゃ興奮しますよ!!」
雛苺「目が怖いの~」
水銀燈「さっさとインタビューを始めなさぁい?ジャンクにするわよぉ?」
記者「ははは・・・・えっとローゼンメイデンの皆さんは出身や生い立ちも結構バラバラなんですけどどういった経緯でメンバーの皆さんが集まったのですか?」
翠星石「ズバリ!この翠星石の
真紅「こういった話は蒼星石が一番いいわ。蒼星石、説明するのだわ。」
蒼星石「えっと・・・。僕と真紅と翠星石は同じ高校に・・・・
舞台は彼女たちが高校生2年生の時まで戻る。
当時真紅と翠星石と蒼星石は私立薔薇学園に通っていた。
薔薇学園は県内では割と進学校として通っていたため部活動はあまり盛んでは無かった。
しかし一つ、いや正確に言えば一人だけ別格な人間がいた。真紅である。
真紅は弓道部に所属しており全国でも三本の指に入る実力者だった。
当然周囲の人間は真紅に期待を寄せていたし、学校側も真紅の全国制覇を望んでいた。
だがある日突然その真紅が弓道を辞めると言いだした。
学校全体が彼女を止めようとしたが真紅は反対を押し切り弓道を辞めてしまった。
記者「弓道ですか?!凄いですね~。でもなんで急に辞めたりしたんですか?」
薔薇水晶「・・・・人気アイドルのクンクンに
真紅「蒼星石、話を続けなさい」
その時、蒼星石と翠星石は物置のようなボロ小屋を部室とする軽音楽部に所属していた。(部の実績などは部室の状況から察していただきたい)
今までは蒼石星、翠星石と三年生2人の計4人で活動していたが、三年生が引退してしまい軽音楽部は廃部の危機に晒されていた。
翠星石「あのヘッポコ三年生が辞めたお陰で軽音楽部は廃部寸前ですぅ~!!」
蒼星石「先輩も頑張ってたんだからその言い方は良くないよ・・・・。でも困ったな・・・。あと3日以内に一人入部してくれないと本当に廃部に・・・・。」
翠星石蒼星石「・・・・・・」
ガラッ
その時部室に漂う不安を一掃するかの如く部室のドアが開いた
そこには学園で注目の的、真紅が立っていた。
蒼石星「真紅・・・・どうして君がここに・・・?」
真紅「蒼石星、紙とペンを頂戴」
蒼石星「えっ・・・・。ちょ、ちょっと待ってて!」
蒼石星が鞄からペンとルーズリーフを取り出し、真紅に手渡すと真紅は蒼石星達に背を向けペンを走らせた。
翠星石(何なんですかぁ?あの高慢な女は・・・・。)
蒼石星(あっ翠石星は初対面か。真紅っていうんだ。僕は一年の時同じクラスだったから。)
翠星石(あれが噂の真紅ですか!なんか感じ悪いですぅ~。)
蒼星石(ははは・・・ちょっと変わってるけど悪い人じゃないよ。でも何しに来たんだろう?)
二人が声を潜め話していると真紅は手に持った紙を蒼石星の目の前に突きつけた。
真紅「入部するのだわ。」
蒼星石翠星石「えええええええええええ!!!!!!!!!?????????」
翠星石は突然の出来事に動揺したのか口をパクパクさせている。蒼星石も数秒間我を失った。そんな二人をよそに真紅は机に座り紅茶を飲んでいる。
蒼星石「いきなりどうしたんだい?えっと、『入部届 2年A組真紅』って・・・・・本当だ・・・・。」
真紅「いつでも私は正しいと思うことしかしないのだわ。私が入ることで貴方達も廃部を免れる。互いに損は無いと思うのだわ。」
蒼星石「・・・・・・。」
蒼星石が返答に困っていると翠星石が口を開き始めた。
翠星石「確かに廃部はならないけど活動ができないなら意味無いですぅ!!お前楽器はできるんですか?!」
真紅「レディーにお前とは失礼ね。言葉遣いに気をつけなさい。」
翠星石「そっちこそそのひねくれた性格をちょっとは直すですぅ~!」
このままだと取っ組み合いになりそうなので蒼星石が慌てて止めに入った。
蒼星石「やめなよ二人とも!!確かにこの時期は学園祭とかがあるから忙しくなる。だからできれば明日にでも練習をしたいんだ。真紅は何か楽器弾けるかな?」
真紅「ギターなら少しできるのだわ。」
蒼星石「もし良かったらここで弾いてみてくれないかな?ギターならそこにあるしピックなら僕のを使っていいから。」
柔らかく言ったが要するに入部試験をする、ということだ。この時期にズブの素人が入ってくるのは活動ができないため、廃部とほぼイコールであった。
真紅「分かったのだわ。曲は好きなのでいいのね?」
蒼星石「いいよ。一番得意なので。」
翠星石「さっさとやるですぅ~!」
翠星石がそう言うと真紅はストロークを始めた。
蒼星石(あまり上手くないな・・・・。正直辛いかな・・・・。)
翠星石(ふんっ!口のわりには大したこと無いですぅ!!)
真紅のギターはあまり上手いものでは無かった。高校生のレベルで考えると中の下といった所だ。これではこの年代では頭一つ飛びぬけた実力の蒼星石や翠星石にはついっていけないだろう。
すると真紅は口を開き歌い始めた。
蒼星石翠星石(!!)
部室の空気が変わった。
ギターの技術などどうでもよかった。
周りにあるものすべてが芸術作品に見える。
そんな幻を見せるような歌だった。
真紅の口が閉じると部室はもとの汚い部屋に戻っていた。
数秒間の沈黙の後、蒼星石がポツリとつぶやいた。
蒼星石「・・・・・すごい・・・・。」
蒼星石「スゴイ!!凄いよ真紅!!!あんな歌初めて聴いたよ!!!」
真紅「入部は認めてくれるのかしら?」
蒼星石「もちろんだよ!!ねぇ翠星石!!!」
興奮している妹とは対照的に姉は驚きのあまりその場に立ち尽くしていた。
蒼星石「翠星石?」
翠星石「・・・・はっ!!どっ、どうしたですか蒼星石!!」
蒼星石「どうしたじゃないよ!!真紅の入部だよ!!!」
翠星石「まっ、まぁ認めてやらんこともないですぅ・・・。」
真紅「ありがとう」
普段は滅多に見れないであろう真紅の笑顔がそこにはあった。
*
次の日、廃部を免れた軽音楽部は活動を再開していた。しかし・・・・・。
翠星石「あぁ~っ!!また真紅間違えたですぅ~!!」
蒼星石「気にしないで、もう一回やろう。」
明らかに真紅のギターが足を引っ張っていた。
真紅の歌唱力は素晴らしいものがあるが、ギターはあまり上手くなく、しょちゅうミスをしていた。
翠星石「またですぅ!!何回ミスるですか!!」
蒼星石「まぁまぁ翠星石、まだ時間はあるしこれから修正していけばいいよ。」
真紅はさっきから口数が少ない。やはりさっきから2人の足を引っ張っている自分に負い目を感じているのだろう。
蒼星石も口では真紅を庇いながらも真紅をメインギターとする3ピースバンドは無理だと感じていた。
蒼星石(このままじゃマズいな・・・。まだ安心してギターパートを任せられるレベルじゃない・・・。どうしよう・・・。)
ギターが弾ける人間。
蒼星石は心当たりが無いわけでは無かった。しかしそれは危険を伴う、ある種の賭けだった。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
蒼星石「おっともう完全下校の時間だね。今日は終わりにしようか。」
翠星石「蒼星石~一緒に帰るですよ~。」
蒼星石「ごめん。今日はどうしても行かなきゃ駄目な場所があるんだ。」
翠星石「そうですかぁ・・・・。先にご飯作って待ってるですぅ。」
蒼星石「ありがとう翠星石。」
そして蒼星石は目的地へと足を向けた。幸い自宅からは割りと近い距離なので翠星石を心配させることは無さそうだ。
蒼星石は一軒家の前に立つとインターホンを押した。
蒼星石「みんなー部活の前に聞いてほしいことがあるんだ。」
翠星石「『みんな』って言う程の人数でもねぇですよ・・・・。」
蒼星石「コホンッ。えっと新しくメンバーを増やしたいと思うんだ。」
真紅翠星石「?!」
蒼星石「そのためには2人の意見を聞きたいんだ。どうかな?」
真紅「パートは?」
蒼星石「ギターだよ。だから真紅には歌に専念してもらいたい。」
真紅「わかったわ。」
蒼星石「翠星石は?」
翠星石「蒼星石が決めたことなら喜んで協力するですぅ!」
やはり言葉には出さなくても3人とも同じ考えだったのだろう、と蒼星石は感じた。
翠星石「で、どんなやつですかぁ?真紅みたいにひねくれたやつはカンベンですよ~」
真紅「やはりあなたとは決着をつけなければいけないようだわ。」
蒼星石「(ハァ・・・なんでこうなるんだろうな・・・・。)ちょっと待ってていま呼んでくるから。」
殺気漂う部室を後にし、蒼星石はその人物との待ち合わせ場所へ向かった。
数分後
蒼星石「ただいま~」
蒼星石とその人物が入ってきた。
翠星石「おかえ・・・・ぇぇえぇええええええ!!!!」
翠星石は叫び声をあげた。
それもしょうがないだろう。蒼星石が連れてきたのは容姿こそ普通だがメガネを掛けた小柄な男だったからだ。
蒼星石「っど、どうしたの?!翠星石!?」
翠星石「どうしたじゃないですぅ!!そのメガネのオタクオーラ出しまくりのチビ人間は誰ですか!!」
蒼星石「あぁ翠星石は初対面だったね。彼は桜田ジュンくん。のり先輩の弟さんだよ。」
桜田のりとは軽音楽部の設立者で蒼星石たちとは2歳違いの先輩だ。ギターの腕は優れたものを持っており、今はスタジオミュージシャンとして働いている。
翠星石「いくらのり先輩の弟はいえこんなチビにギターが弾けるわけないですぅ!」
ジュン「初対面なのに言い過ぎだろ!!それにお前のほうがチビだろ!!」
翠星石「チビはチビですぅ!!」
真紅「落ち着くのだわ2人とも。蒼星石が困っているじゃない。」
ジュン「あぁスマンな真紅。」
翠星石「え?真紅は知り合いなんですかぁ?」
真紅「隣の席同士なのだわ。ジュン弾いてみせて。」
真紅の一言で落ち着きを取り戻したジュンはケースからギターを出し、チューニングをし音作りを始めた。
ジュン「曲は?オリジナルでいいか?」
蒼星石「一番得意なのでいいよ。」
ジュン「わかった。いくぞ!」
そしてジュンの演奏が始まった。
疾走感のある印象的なリフから速弾きへと移る。
なるほどセンスの良さは姉譲りか、どことなくのりとプレイスタイルが似ている。
真紅は目を閉じて、翠星石はポカーンとして演奏を聴いている。
翠星石の目には普段のジュンとギターを弾いているジュンとのギャップでものすごい光景が映っているのだろう。
蒼星石(流石のり先輩の弟だ。これなら間違いなくいける!)
ジュンのギターは荒い印象もあるがそこもまたジュンという人間性が映し出されているような感じで味があった。
蒼星石は確信していた。このメンバーなら今まで見たこと無い高い世界まで登っていけると。
ジュンの演奏が終わった。ジュンはいい演奏ができたと感じたのだろう。笑顔になっていた。
蒼星石「今の曲名は?」
ジュン「Flying High」
蒼星石「いい曲だね。」
ジュン「ありがとう」
蒼星石「じゃあ今度は僕たちの番だ。」
真紅はいつものポーカーフェイスでマイクの位置に立った。
翠星石は我に返ったように慌ててスティックを握る。
ジュン「どうしたんだ。」
蒼星石「ジュン君だけテストするのは不公平だからね。僕たちの演奏も聞いてもらうよ。」
ジュン「なるほどな。」
翠星石がカウントを取る。この瞬間から世界を揺るがすモンスターバンド「ローゼンメイデン」の原型ができた。
*
一ヵ月後、薔薇学園の学園祭(通称薔薇祭)の日がやってきた。
薔薇祭は生徒会や部活動の出し物で非常に盛んだった。
軽音楽部とてそれは例外では無く、校舎の端にある大教室を借りて演奏している。
しかし去年は先輩の実力不足なのか教室の位置が悪いのかそれとも宣伝を全くしなかったせいか10人程度しか集まらなかった。
今年こそは、と翠星石と蒼星石(特に翠星石)は張り切っている。
翠星石「ということでこのチラシを配ってくるですぅ!!」
ジュン「何で俺なんだよ!!」
翠星石「真紅は実行委員、蒼星石はクラスの出し物で今いないですぅ!!今手が空いてるのはチビ人間だけですぅ!2時間後には演奏するから早く配ってくるですぅ!」
ジュン「お前だって空いてるだろ!!」
翠星石「そのチラシは翠星石が作ったですぅ!早く行くですぅ!!」
ジュン(どうせ蒼星石が作ったんだろ!どう見ても蒼星石の字じゃねぇか!)
しかしジュンはもう口論を続けるのは無駄だと思いチラシを配りに行った。
・・・・ふぅ
ジュンは30分かかってなんとか1/3近く配ることができた。ジュンは喉が渇いたので校舎裏の自販機に行って飲み物を買うことにした。
そこにはメイド服姿の蒼星石がいた。
ジュン「どうしたの?」
蒼星石「わっ!!!ジュ、ジュンくん!!!」
不意を突かれたからだろうか蒼星石は相当慌てていた。
蒼星石「あの・・・クラスの出し物で・・・・。」
なるほど。さっき翠星石が言っていた『クラスの出し物』とやらだろう。大体想像はつくのでどんな事をやっているのかは聞かないようにした。
蒼星石「はずかしいなぁ・・・・。あれ?それ昨日僕が作ったチラシ・・・。ジュンくんが配ってくれてたの?」
案の定蒼星石が作ったチラシだった。配り終わったら文句言ってやる。
蒼星石「そんな量一人で配ってたの?大変だったでしょ?店で僕も配るから半分ちょうだい。」
ジュン「え?いいのか?」
蒼星石「いいよ。そっちのほうが効率いいし。あっそろそろ時間だから僕は行かなきゃ!ミニライブ成功させようね!」
いい人だ。どうしたら双子の姉妹の性格がここまで異なるのだろうか、とつい考えてしまう。
蒼星石に別れを告げチラシを再び配ることにした。
ついにミニライブが始まった!が・・・・
翠星石(どういうことです?この人数は?)
かなり広めに作ってある大教室には4人しか人がいなかった。
蒼星石(おかしいなぁ・・・。でも来てくれたんだからちゃんと演奏しなきゃ)
真紅(心配しないでそのうち増えるのだわ)
翠星石のカウントが始まった。
2曲目が終わるころにはメガネをかけたぽっちゃりした女の子一人だけになっていた。
翠星石(もうやめるです!増えるどころか減ってるですぅ!!去年よりひどいですよ!!)
蒼星石(でもあの子は僕らの音楽を聴きにきているんだ。一人でも客がいたらちゃんと演奏しないと。)
ジュンはさほど動揺は無いみたいだが、真紅はため息をついている。
ザワザワ
廊下のあたりが騒がしくなっていることに4人は気づいた。すると先ほど出て行った二人が10人近く教室に入ってきた。
翠星石(どっどういうことですぅ?!)
蒼星石(多分あの2人が僕たちの演奏を聴いて連れて来てくれたんだと思う)
先ほどの2人のグループからガンバレー!などの応援の声が聴こえる。4人は涙が出そうになった。
その後曲を終えるごとに人数が増えるのがわかった。1人や2人は無く10人単位で増えている。
そしてある人物が教室に入ったとき爆発的に人数が上がった。
のりだ。
いや、正確に言えばのりでは無く普段から交流のあるインディーズの歌手を中心としたミュージシャンたちだった。
ついに、教室には入らなくなり廊下に溢れかえってしまった。
ジュン(あのブス余計なことしやがって!!・・・・・ありがとよ)
そこで、急遽体育館を借り、一時間後に再開するということに決まった。
そして一時間後、体育館に移動した4人は涙が溢れそうになった
体育館が人で埋め尽くされている
もともと小さめの体育館とはいえこんなことは滅多にあるものでもない。(このときのりの連れてきたインディーズのミュージシャンたちは「俺らのライブより入ってるよw」と言っていたらしい)
そして再び演奏が始まった。
真紅「次で最後の曲なのだわ」
客席からは「えぇー」「もっとやって!!」などの声が聴こえる
翠星石のフィルインから始まる、
そして蒼星石の高速スラップ、ジュンのギターが入る。
そして真紅の魔法の声が加わる
客席はこの日一番の盛り上がりを見せる
「Flying High」
あの時ジュンの弾いたものにアレンジを加えたものだ。
その時4人は空を飛んでいるような気分だった。(後に「これが今までで最高の演奏」と真紅たちは語っている)
演奏終了後アンコールが起こる。しかしこの曲で燃え尽きた4人はアンコールに答えることはできなかった。
その時のりたちが4人のもとへ来た。
その中の一人が握手を求めてきて言った。
「いつか君たちと同じ世界で会おう」
*
あの薔薇学園の伝説となったライブから一ヶ月。季節は秋となっていた。
今日は珍しく軽音楽部のミーティングなるものをやるらしい。
ジュンは授業終了のチャイムがなると食堂へと向かった。
よくわからないがこういった話し合いのときは部室を使わない。
部室は音楽を演奏するためだけの場にしたいのだろうか?
中に入ると真紅と蒼星石の姿があった。
ジュン「翠星石は?」
真紅「よくわからないのだわ」
あいつ・・・自分から「明日は緊急ミーティングですぅ!!」なんて言い出しやがったくせに・・・・。
蒼星石「でも、遅いな・・・。もう10分過ぎてるよ・・・。」
ジュン「あれ?一緒じゃないのか?」
蒼星石「チャイムがなってすぐ教室から出ていったよ・・・。だからもう居ると思ったんだけど。」
ガタッ
バタバタ
バンッ!!
翠星石が来た。慌ただしく食堂に入ってきたと思ったら急にこっちに向かって走ってきて何かをテーブルに叩きつけた。
ジュン「お前今までなに
翠星石「大会にでるですよ!!」
ジュン翠星石真紅「え?」
翠星石「大会にでるですよ!!」
蒼星石「翠星石、もうちょっと詳しく
翠星石「大会にでるですよ!!大会にでるですよ!!大会にでるですよ!!」
ずっと同じ調子で同じ台詞を喋っている。機械かお前は。
真紅「事情を詳しく説明するのだわ」
翠星石「これを見るですぅ!!」
ジュン「なになに・・・。『高校生バンド大会
アリスゲーム』・・・・」
チラシにはこう書いてあった
参加資格 ・参加する全員が同じ学校の高校生であること
・ソロ・グループを問わず、コピー・オリジナルの制限はありません。
音楽ジャンル・演奏形態もすべて自由
(但し1曲につき6分以内であること )
特典 ・全国大会で優勝すると人気バンドのenjuとCDを出すことができます。
enjuとは邦楽界で人気・実力ともにNo1といわれているバンドだ。どうやらenjuが若い世代への期待を込めて企画した大会らしい。
あのenjuとCDが出せるとなれば全国の高校生が応募するだろう。だとしたら相当狭き門になる。
ジュン「・・・・本気か?」
翠星石「マジですぅ!!あのenjuとCDを出せるんですよ!!それに・・・。」
蒼星石「それに?」
翠星石「あの・・・体育館でのあの感覚をもう一度感じたいですぅ・・・。根拠とかは無いですけどこの大会ならあの感覚をもう一度味わえるような気がしたですぅ・・・。」
暫く重い空気が流れた。そう、あの体育館の快感に限りなく近い感覚を誰もが味わいたいと思っていた。
それ故今の演奏にはいつも不満が残っていた。時々言い争いになることだってある。
この大きな大会でその感覚が掴めるならいいけどもしも不満が残る演奏をしたら今まで溜まっていたものが一気に爆発してしまうのでは無いかと思った。
しばらく沈黙が流れた。そして
真紅「・・・出ましょう。」
沈黙を破ったのは真紅だった。
蒼星石「そうだね・・・。出よう・・・・。」
翠星石「真紅・・・蒼星石・・・・。」
真紅「ジュンはどうするの?」
ジュン「えーっと・・・。」
真紅「あなたも翠星石と同じ事を考えているのか、それとも違う選択肢を選ぶのか・・・。それは自由だわ。だけど・・・。」
ジュン「だけど?」
真紅「何かを得るためにはリスクは付きまとうわ。リスクを恐れていては何も掴めないのだわ。」
ジュン「逃げてなんかいない!!」
蒼星石「ジュン君・・・。君の考えていることは察しがつく。なぜなら僕たちも同じことを思っていたから。でも、それを乗り越えなきゃきっと今のバンドはバラバラになっていくと思う。だから僕はこの大会に出てあの感覚を掴みたい。」
ジュン「・・・・・。」
真紅「乗り越えられるかどうかあなた次第なのだわ。」
ジュン「・・・・出よう。」
翠星石「ジュン・・・・。」
ジュン「もう一度空を飛ぼう」
それからは練習漬けの毎日だった。寝るとき以外は楽器をしていたと思う。
しかし、何かに専念したい時は大抵何か邪魔が入るものだ。
そう期末試験だ。あと一週間後に期末試験が行われる。
薔薇学園は定期試験で赤点を取ると一週間部活禁止となり補修へと参加しなければいけなかった。
真紅と蒼星石は問題無いだろう。あの2人は学年で常に10位以上をキープしている。
俺も・・・・まぁ赤点は今まで取ったことないし一応大丈夫だろう。
ただ問題児が一人いた、翠星石である。蒼星石が学年で指折りの秀才なのに対し翠星石は補習の常連だった。
前にも思ったがなぜ双子の姉妹なのにここまで正反対なのだろうか・・・・。
部活一週間前は原則として部活禁止なので俺たちは翠星石の家に行き家庭教師をしていた。
そう、大会前に一人でも欠けるような状況は避けたい。だから俺たちはなんとか翠星石の連続補修参加記録をストップさせようとしていた。
が、しかし・・・・・。
蒼星石「さっき教えた公式言ってみて・・・。」
翠星石「えーっとはははは・・・・・。」
蒼星石「はぁ・・・。」
真紅「appearの意味は?」
蒼星石「アッ、アッパー?」
真紅「はぁ・・・・。」
ジュン「この人物はなにをした人か言ってみろ。」
翠星石「・・・トイレ?」
ジュン「これは酷い・・・・。」
いくらなんでもこれは酷すぎる。このままじゃ赤点確実だろう。
翠星石の能力を知ってから3人は付きっきりで教えた。
そして試験当日
翠星石「おはようですぅ・・・・。」
ジュン「あぁおは・・・ってえぇ!!」
翠星石は物凄くやつれて見えた、目の下にもクマが出来ている。
ジュン「蒼星石・・・・。何があったの?」
蒼星石「いや、ちょっと試験前の追い込みを手伝ったらあんな風に・・・・。」
真紅「蒼星石・・・あなたいったい・・・・。」
恐怖を感じた俺と真紅は足早に教室へと向かった。
数日後・・・・。
あの家庭教師のおかげか俺と蒼星石と真紅はかなり高い点数が取れた。蒼星石にいたっては学年二位といった有様だ。
そして翠星石はというと・・・・
翠星石「よっしゃーですぅ!アリスゲームに向けて頑張るですぅ!!」
今日も元気にスティックを振り回しています
*
そして、来るべき時が来た。
アリスゲーム都大会開催当日。
この日4人は学校を休み朝早くから会場入りしていた。
係員「学校名とバンド名を言ってください」
蒼星石「薔薇学園でホーリエです。」
係員「あなたたちが薔薇学の・・・・。わかりました。二階が出演者の特別席となっていますのでご案内します。」
二階に上がると他校の生徒が「ほら、あれ・・・・。」「まじかよ・・・。凄いよな・・・。」と噂しているのが聞こえる。
そしてリハーサルの番となった。
真紅(こんな大きい所で歌えるなんて幸せなのだわ・・・。)
翠星石がカウントをとる。曲は体育館でのあの曲だ。
リハーサルだというのに他校の生徒が真紅たちを見ている。
リハーサルが終わると一気に会場がざわついた。
そして席に戻る際、蒼星石はジュンに話しかけた。
蒼星石「ジュンくん。ちょっといいかな。」
ジュン「何だよ」
蒼星石「ちょっと2人で話せる場所がいい。外へ行こう。」
ジュンと蒼星石は会場の外の自販機へと足を運んだ。
ジュン「ほらよ。で、なんだ?」
蒼星石「ありがとう。で話なんだけど。」
蒼星石がいつになく真剣な顔になる。
蒼星石「何かあった?」
ジュン「どうしたんだよ急に・・・。」
蒼星石「いつもの君の音じゃない。」
ジュンは黙り込んでしまった。
蒼星石「さっきは上手く誤魔化したけど、いつもの君の音じゃない。」
ジュン「黙ってようと思ったんだけど・・・・。」
ジュンは事の一部始終を話した。
単身赴任している父親が過労で倒れてしまったらしい。
それだけならまだよかったが、倒れる際、頭をぶつけてしまって、今危険な状況らしい。
母親は自分とのりが行くからお前は安心して大会に行け、と言ってくれたがやはり気が気ではないらしい。
蒼星石「そうか・・・。辛いだろうね・・・。だから細かいミスが多かったのか・・・。」
ジュン「ありがとう。本番では頑張るよ。」
蒼星石「無理はしないでね。さてそろそろ行こうか。」
ジュン「あっ、俺はもう少し風に当たるから。あとさっきのことはみんなには言わないでくれ。」
蒼星石「わかった。頑張ろうねお互い。」
*
翠星石「おかえりですぅ。チビ人間はどうしたですかぁ?」
蒼星石「あっ、ちょっと今トイレだよ。」
翠星石「きっと長い糞垂れてるですぅ。」
真紅「下品なこと言わないで頂戴。」
ジュン「ただいま・・・。」
翠星石「遅いですぅ!!」
ジュン「あぁスマン・・・。」
真紅「そろそろ始まるわ。」
会場の使用上の注意と開会宣言が行われた。そしてアリスゲームの進行の手順の説明があった。
それによるとどうやらまず予選グループを4つに分けるらしい。
そしてそこから各グループから一組ずつ選出し、4組で決勝戦が行われる。
真紅たちはAグループなのですぐに順番が来た。
「それでは薔薇学園 ホーリエでfaceです」
この曲は真紅の作詞に蒼星石が作曲したものだ。人間の内面を上手く表現しているミディアムテンポな曲だ。
蒼星石(やっぱりジュンくん・・・・。)
ジュンが出す音はいつもとは全く違っていた。
真紅、翠星石、蒼星石が絶好調でカバーできているが、このまま決勝に行ったら厳しいものがあった。
なんとか真紅たちは演奏を終了した。そして予選結果が発表された。
真紅たちはAグループ代表となった。次にB、C、Dと発表されていった。
「Dグループ代表ASOです!!」
蒼星石(まずいな・・・。)
ASOは都内の高校生バンドでは敵無しと言われているバンドだ。
小さいころから英才教育を受けてきた人間で組まれたバンドで演奏力が高い。
特にボーカルのkazukiとギターのtaro、ドラムのumeokaには目を見張るものがあった。
普段なら真紅たちと互角だろうが、今回はジュンの不調により真紅たちは分が悪かった。
蒼星石(さっきのジュンくんのままじゃ・・・・。)
真紅「ジュン何があったの?」
ジュン「え?」
真紅「そんな縮こまった演奏では優勝は狙えないわ。」
ジュン「真紅・・・・。やっぱり気づいて・・・。」
真紅「メンバー内で隠し事は良くないのだわ。」
ジュンは真紅を信じて全てを打ち明けた。
真紅はそれを聞いて呟いた。
真紅「・・・それはあなたが試されているのだわ。」
ジュン「試されている・・・?」
真紅「ここで中途半端な演奏をすればあなたのお父様は助からないわ。
ただここで持てる力を全て出せばお父様は助かる。これはあなたの覚悟を試されているのだわ。」
ジュン「・・・・・。」
蒼星石「真紅・・・・。」
真紅「お父様を助けるのはあなた、死なせるのもあなた。」
蒼星石「真紅ちょっとその言い方は」
真紅「分かる?お父様を助けれるのはあなたなのよ。」
ジュン「・・・・。」
蒼星石「・・・・。」
ジュンの閉じていた口が開いた。
ジュン「・・・真紅、ありがとう。」
真紅「その言葉は優勝してから聞かせて。」
蒼星石(真紅は凄いな・・・。それに比べて僕は・・・。)
係員「ホーリエさんスタンバイおねがいしま~す。」
一方そのころASOはステージに立っていた。
「芽華美高校 ASO 曲は 大地の風です。」
taroのギターがけたましく鳴り響く。
umeokaのドラムが上手くハマる。
そしてkazukiの美声が発せられる。
まさに敵無しといった感じだ。
高校生A「やっぱりASOはスゲーなぁ。」
高校生B「taroさんかっこいいよな。シビれるぅ憧れるぅ!」
高校生C「umeokaもすげーってありえなくね?」
高校生D「やっぱりkazukiだろそこらへんの歌手より上手いぜ。」
ASOの演奏が終わった。この日一番の拍手が送られる。
そしてラストは真紅たちだった。
「薔薇学園 ホーリエ 曲は Flying Highです。」
高校生A「薔薇学も上手いけどやっぱり優勝はASOだろ」
高校生B「あのギターが足引っ張ってるよな。」
次の瞬間翠星石のドラムの音が会場に響き渡る。
蒼星石のスラップが暴れまわる。
そしてジュンのいつも以上のギターサウンドが乗っかる。
そして真紅のかける魔法によりそれは一つの怪物へと化した。
高校生C「すげぇ!!!!本当に高校生かよこいつら!!」
高校生D「ギターの音がしっかりするとここまで変わるのか・・・・。」
怪物は止まることを知らずに会場を壊していった。
そしてギターソロが始まった瞬間怪物は進化を始めた。
演奏が終わり怪物は消える。
ステージには高校生4人がいた。
そして高校生4人は拍手の嵐に囲まれた。
優勝を果たし、真紅たちは全国大会への切符を勝ち取った。
そしてその帰り支度のとき
プルルプルル
ジュン「はい、もしもし。」
「ジュンか?」
ジュン「父さん・・・?!」
「父さんな。夢の中でギターを弾いてるお前に会ったんだよ。そしたら父さん意識が戻ったんだ。」
ジュン「父さん・・・。」
「心配かけてすまなかった。泣くな泣くな。」
ジュン「じゃあ今そっちに行くから。うん・・・。わかった。」
ジュンが振り返ると3人は笑顔だった。
ジュン「ありがとう・・・。」
真紅「どういたしまして」
最終更新:2007年01月27日 14:28