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蒼星石「まずいな・・・・。どうしよう・・・。」

蒼星石は真っ暗な部屋の中で呆然としていた。

大会の翌日、疲労が蓄積していた僕たちは一日だけ休日を取ることにした。
僕は前々から考えていた曲を作るために部屋に篭っていた。
もしみんなが賛成してくれれば二ヵ月後の全国大会で使いたいと思っていたからだ。
翠星石は出かけたらしい。真紅とでも遊んでいるのだろう。

蒼星石「よーしがんばるか・・・。」

蒼星石はベースに手を伸ばした。


蒼星石「・・・・もうこんな時間か・・・。熱中しすぎちゃったな。」

朝からずっと作業していたため時計の針は一周してしまった。

蒼星石「マズいなぁ・・・・。今日は僕の番だった。」

蒼星石は夕食を作るためキッチンへ向かった。

ガチャ
翠星石「ただいまですぅ~」
蒼星石「あっゴメン夕食今から 
翠星石「蒼星石ははなまるハンバーグ好きですか?」
蒼星石「すっ、好きだけどどうした 翠星石「蒼星石は今のバンドが好きですか?」
蒼星石「もちろん好きだよ。急にどうしたんだい翠星石?」
翠星石「・・・・・じゃあジュンは?」
蒼星石「!!」

蒼星石が今自分がどんな顔をしているのははっきりと分かった。

翠星石「蒼星石はジュンのことをどう思ってるですか?」
蒼星石「え・・・・あの・・・その」
翠星石「答えるですぅ!!蒼星石!!」

翠星石の怒声が家中に響く。翠星石は蒼星石の胸ぐらを掴んでいた。

翠星石「翠星石は今日ジュンと一緒にいたですぅ・・・。」
蒼星石「・・・・・。」
翠星石「ジュンはいつも蒼星石と翠星石を比べやがるですぅ・・・。」

ジュンはいつも翠星石にいつも「なんで妹と姉でこんなに違うんだ・・・。」と翠星石にいつも愚痴をこぼしていた。
今日もいつも通りそれを翠星石に言っていた。翠星石はせっかく2人でいるのに妹の名前が出てくるのが辛かったらしい。

翠星石「蒼星石はジュンのことが好きですか?!答えるですぅ!!」

翠星石は涙を流しながら怒りを蒼星石にぶつけていた。
一方蒼星石は驚くほど冷静だった。
蒼星石はジュンを特に意識したことは無かった。
ただの友達だった。
しかし否定ができない自分がいる。
この時蒼星石は初めて自分の気持ちに触れた
そうか僕は今まで必死に自分を隠してきた。
バンドのリーダとしての「蒼星石」の持つ責任感で。
翠星石の気持ちも分かっていた。
でも僕は気付かないフリをしていた。
それに気付くと僕の気持ちも表に出てしまうから。
僕はジュンくんのことが・・・・・

翠星石「蒼星石ぃ!!!」
蒼星石「・・・・・。」

何も答えることができなかった。
話したいことは沢山ある。
でも何かがそれも押さえつけている。

翠星石「・・・・大会の時、2人でどこに行ってたですか?」
蒼星石「そっ、それは誤解だよ翠星石・・・・・。」

やはり気付かれていた。
あの大会の後から翠星石はどこか変だった。
「蒼星石」は2人に聞かれて演奏に支障をきたさない様に、ということだったが本当は「僕」が翠星石に気付かれない様に2人で話したかったからなのだ。
「僕」はその事で少し優越感に浸っていたのだ。

翠星石「答えるです!蒼星石!!!」

その言葉と同時に頬に激痛が走った。そして「僕」の何かが大きな音を出し切れた。

蒼星石「・・・・け」
翠星石「え?」
蒼星石「出てけ!」
翠星石「蒼星石・・・・。」
蒼星石「出てけ出てけ出てけ出てけ!!出てけぇぇぇええええええ!!!!!!!」

蒼星石が今までに出したことが無いような声を出しながら怒りの矛先を翠星石へ向ける。
バタンっ
翠星石は涙を流しながら家から出て行った。
蒼星石は一人家の中で立ちすくんでいた。

                    *

真紅「それはあなたが悪いわ。」
翠星石「真紅ぅ~だってだって~」
真紅「わ、わかったからとりあえず泣き止むのだわ。」

あの後翠星石は真紅の家へと向かった。
真紅からすればドアを開けたら号泣している翠星石がいたのだから相当驚いたに違いない。
真紅はとりあえず自分の部屋に入れ事情を聞くことにした。

真紅「今日はもう遅いわ。事情は聞いたから今夜は私の部屋で寝ていいのだわ。愚痴くらいなら聞くわ。」
翠星石「持つべきものは友達ですぅ~真紅は乳は無いですけど心は広いですぅ!!」

ゴツン

翠星石「シクシク・・・・。」
真紅「・・・布団は用意したわ。シャワーはいつでも使っていいのだわ」
翠星石「ありがとうですぅ!じゃあ遠慮なく使わせてもらうですぅ!!」

数十分後
シャワー浴びた翠星石は真紅とシャワーの順番を交代した。
とりあえずやることが無くて暇な翠星石は真紅の部屋を物色することにした。

翠星石(うわっ、高そうなティーカップですぅ・・・。
    シャーペンとかも高そうですぅ・・・。
    うわっすごい服の量・・・。ブランドもんばっかですぅ・・・。)

翠星石は棚を開けてみた。すると大量の下着類がそこにはあった

翠星石「プッ・・・・ハハハ!!」

翠星石は腹を抱えて笑っていた。

翠星石「ヒャハハハハ・・・・ヒーッ」
「そう・・・。何がおかしいの翠星石?」
翠星石「真紅のやつこんなガキみたいな下着持ってやがるですぅwwwこんなのブラの意味が

ゴツッゴツン

翠星石「シクシクシクシク・・・・。」
真紅「・・・・とにかくそこに座って話しましょう。」

2人はベットの上に座った。
最初他愛のない話から切り出した。学校のこと、私生活のこと、昔話・・・・。
そして一区切りついたところで真紅が核心をつく。

真紅「あなたジュンのことどう思っているの?」
翠星石「・・・・・・。」
真紅「黙っていては分からないのだわ。」

真紅が見えないプレッシャーを翠星石にかける。

翠星石「最初はチビで地味な野郎だと思ったですぅ・・・。でも、練習しているうちにギターを弾いているジュンがかっこよく見えて・・・いつのまにかジュンそのものを好きになってたですぅ・・・。」
真紅「・・・・。」
翠星石「でもジュンはいつも翠星石と蒼星石と比べるですぅ・・・・。」
真紅「翠星石・・・。」
翠星石「蒼星石に嫉妬してた!だんだんその気持ちはだんだん強くなっていた!!」
真紅「翠星石・・・。あなた・・・。」
翠星石「死んでしまえばいいのにと思った!!でも・・・・でも!!蒼星石は翠星石に比べてなんでもできるから・・・・」

真紅は翠星石が全てを話してしまう前に翠星石を優しく抱きしめた。

翠星石「・・・・真紅?」
真紅「もうそれ以上自分を責めないで・・・。あなたにはあなたにしか、蒼星石には蒼星石にしかない輝きを持っている。」
翠星石「しっ、真紅・・・。真紅!!」
真紅「もう泣かないで・・・。今日はもう遅いわ。さぁ寝ましょう。」

2人は一緒の布団に入った。

真紅「翠星石・・・。これだけは覚えていてほしい・・・・。私たちの全国大会出場は蒼星石の力が大きいわ。」
翠星石「そんな・・・。みんな頑張って演奏したですぅ・・・。」
真紅「技術面では無いわ。それ以外の部分なのだわ。」
翠星石「それ以外?」
真紅「ジュンを誘ったのは蒼星石。学園祭のチラシを作ったのも蒼星石。大会の細かい手続きしたのも蒼星石。あの汚い部室がいつもきれいなのは蒼星石のおかげ。そしていつも周りのことを考えて行動していたのは蒼星石。」
翠星石「!!」
真紅「それだけは覚えていて欲しいのだわ。おやすみなさい。」
翠星石「真紅!!用事が出来たですぅ!!今日はありがとうですぅ!!」

翠星石は急に立ち上がると部屋を出て行ってしまった。

真紅「フフッ・・・やっぱり姉妹ね。」

僕はなんて事をしたんだろう。
バンドに異性を入れることで最も恐れていたことが起きてしまった。
バンド内で起きる恋愛感情
このことが原因で解散してしまったバンドを蒼星石は沢山知っている。

(僕たちももう解散しちゃうのかな・・・。)

蒼星石は暗い部屋で一人泣いていた。
ガタッ

「蒼星石!!」
「えっ?」

翠星石が目の前にいる。走ってきたみたいで息を切らしている。
ガバッ

翠星石「全く心配かけやがってですぅ!困った妹ですぅ!!」
蒼星石「く、苦しいよ翠星石・・・。それにそれは僕の台詞だよ・・・。」
翠星石「蒼星石はいつも一人で何でもやりすぎですぅ!!たまには翠星石のこともコキ使うですぅ!!」
蒼星石「・・・・・ありがとう。」

ありがとう。お姉ちゃん。

                    *

あの大会から一週間後
蒼星石は珍しくギターを構えていた。
どうやら新しい曲ができたので3人にそれを披露するというのだ。
蒼星石の太くて綺麗な声が部室に響き渡る。
3人はそれに聞き入っている。

蒼星石「・・・・どうかな?」
ジュン「流石だな・・・。」
翠星石「凄いですぅ!!翠星石の妹だけあるですぅ!!」
真紅「蒼星石・・・。今の曲の名前は何ていうの?」
蒼星石「えっと、『Funny kiss』っていうんだ。」
真紅「みんな、あと一ヶ月で完璧に仕上げるのだわ。」

各自編曲に取り掛かった。
蒼星石のパートはもうすでに出来ているためその上に各自が乗っかっていく形になった。
そして一週間後ついに曲が出来上がった。
ベースソロこそ無いが蒼星石の作ったコミカルなベースラインが翠星石のドラム、ジュンのギター、真紅の歌を上手く引き立たせるような曲になった。
そして練習漬けの日々が過ぎ、大会の前日となった。

のり「ジュン君?久しぶりに一緒にギター弾いてみない?」
ジュン「どうしたんだ急に。」
のり「これから全国大会に出るギタリストとセッションがしたいと思って。ダメ?」
ジュン「いいけどこんな時間に弾いたら近所迷惑だろ?」
のり「大丈夫よ。お姉ちゃんの仕事場使わせてもらうから。じゃ行きましょ。」

ジュンとのりは車に乗り込んだ。

蒼星石「どうしたの?やけにスティック出したり閉まったりして。」
翠星石「蒼星石こそ、ベース磨きすぎですぅ!!」

蒼星石と翠星石は互いに見つめあった。

2人「・・・・・プッ。アハハハハハ!!!」
翠星石「緊張してるですか?」
蒼星石「バレた?」
翠星石「お互い妙にソワソワしてるですぅ。」
蒼星石「・・・ちょっと外に出て散歩しようか。」

真紅「紅茶が切れたのだわ・・・。」
真紅「今から行けば間に合うのだわ。」

真紅は着替えて紅茶を買うために店へ向かった。

2人はセッションを終え、雑談に入っていた
のり「また上手くなったねジュン君。」
ジュン「そっちこそな。」
のり「卒業したらこっちの方の進路に進むの?」
ジュン「・・・・いや、どうしてもやりたいことがあるんだ。」
のり「そう・・・。ジュン君ほどの腕ならもったいないけど・・・やりたいことがあるならお姉ちゃんは応援するわ。」
ジュン「ありがとう。」
のり「さぁ、そろそろ行きましょう。お母さんが心配するわ。」

蒼星石と翠星石はかつて通っていた中学校の体育館に来ていた。

翠星石「凄いですぅ!全く変わって無いですぅ!!」
蒼星石「そうだね。このステージに立つとやっぱり思い出すなぁ・・・・。」

このステージは中学校の音楽祭で初めて2人が演奏した場所だった。
2人の音楽の原点がここにあると言っても過言では無い。

蒼星石「ついに・・・明日なんだね・・・。」
翠星石「ですねぇ・・・・。去年の有様から考えると信じらんないですぅ・・・。」
蒼星石「僕たちの音楽が全国で通用するかどうか。」
翠星石「大丈夫ですよ。この4人でならきっといけるですよ。」
蒼星石「うん・・・そうだよね。」
「コラーッ誰だー!!」
翠星石「マズいですぅ!!」
蒼星石「翠星石!!こっち!!」

真紅「いつもの・・・・いつもよりいい紅茶を頂戴。」
「はいよ。どうかしたのかい?真紅ちゃん。」
真紅「明日私たちは空を飛ぶのだわ。」
「なるほどねぇ。前に何回か言ってた話のことかい?」
真紅「そうなのだわ。お金は?」
「今日は特別にタダであげるよ。その代わり必ず優勝してくるんだよ。」
真紅「約束なのだわ。おやすみなさいおじいさん。」

のり「ジュン君!!あれ見て!!」
ジュン「なんだよ・・・うわぁすげぇ・・。」

誰も居ない道路に2人の足音が響く
翠星石「ハァ・・・ハァ・・・蒼星石!あれ見るですぅ!!」
蒼星石「えっ?すごい・・・。綺麗・・・。」

真紅「あら?ふふふ・・・。いい物見たのだわ。」
巨大な美しい満月が4人を祝福するかのように照らしていた。




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最終更新:2007年01月27日 14:31