ある日、水銀燈は薔薇水晶と歩いていた。
薔「だから……銀ちゃんには……腹だしが……」
銀「……って、そんなことするわけ無いでしょぉ」
二人は次のライブで着る衣装について語っているようだ。
だれだ?今の会話でエロイことを考えた奴は……。
銀「大体ねぇ……!?」
薔「……どうしたの……銀ちゃん?」
銀「……あれ……私の目の錯覚じゃないわよねぇ?」
薔「何を?……!ついに……」
二人の目線のその先、黒く蠢く異形が座っていた。
いや、実際ソレには手足があるのかすら判らない。
それは水銀燈を見た瞬間、襲い掛かってきた。
銀「ひっ!? って言ってる場合では無いわぁ……」
水銀燈の後ろに翼が現れる。それは黒い羽を打ち出す。
しかし異形はそれが無であるかのように前進を進める。
薔「銀ちゃん……下がって……」
薔薇水晶が一歩踏み出し、前方に水晶を張って防御する。
それにぶつかり、数秒後にぶち破る異形。
薔「なっ!?」
二人を喰らわんとする異形、軽くピンチである。
二人は目をつぶる。しかし衝撃はない。二人は目を開ける。
二人「!?」
そこには一人の男が立っていた。
異形と向かい合い、その片手だけで異形を止めていた。
正確にはその手から出る結界が止めていたのだが……。
?「大丈夫かい?」
銀「!……社長!?」
薔「……お父様」
その男、槐は更に力を使い、その異形を弾き飛ばす。
槐「まにあったようだね。薔薇水晶に水銀燈」
銀「なによぉ、そのとってつけたような言い方はぁ?」
槐「いや、今日はキミに用事があるんだYO」
薔「……私は……おまけ?」
槐「いや、君が一番だよ?薔薇水晶!」
何やら板ばさみに合っている槐。
そこに異形が襲い掛かる、が。
槐「邪魔!」
手をかざしただけで吹き飛ばしてしまった。
銀「……強いわぁ……。で、私への用というのはぁ?」
槐は無言で光る球体を差し出した。
槐「音珠(オンギョク)第一号機・メイメイだ」
銀「……オンギョクぅ?……綺麗だわぁ」
槐「音珠はあいつらに効く唯一の兵器。これを使ってあいつらを!」
そこに異形が向かってくる。
槐「これを受け取れ!そして念じろ。自分の武器を!!」
銀「でもぉ……」
槐「これはローゼンがキミ達に残した兵器なんだ!!」
その言葉が水銀燈を動かした。
水銀燈は槐から渡されたその珠を握る。
銀「私の武器……私……私はローゼンメイデンのギタリスト!!」
珠が光りだす。
銀「私はローゼンメイデンのギタリスト!!水銀燈よぉ!!!!」
珠の光が増し、空間が捻じ曲がる。
珠を中心にドコからとも無くパーツが現れ合体する。
そして光がそれの上を走り、6本の線になる。
銀「……フライングV?」
そこには1本のギターが出来上がっていた。
ただ一つ違うのは、ピックアップが一個だけ、それも珠だということ。
槐「それを自分の重いをこめて弾け!その想いと音圧が敵を滅ぼす!」
説明口調の槐が熱く語る。
銀「……とりあえず、やってみるわぁ!!!!!」
水銀燈は槐の話を信じきったわけではない。
しかし今の状況で槐の話が一番自分に未来が在るから実行するしかない。
水銀燈はギターをストロークする。
C#m、なぜこのコードを弾いたかは覚えていない。
それを珠が受け取り、思念の塊として打ち出す。
それは光の塊となり、異形にぶち当たる。
異形に攻撃が当たった……は良かったがあまり効いていない。
銀「ちょっ、効いて無いじゃなぁい!」
薔「銀ちゃんの……想い……不足」
槐「これは『音圧』と『想い』を力にする武器なんだ」
銀「私がギタープレイに心を向けてないとでも!?」
薔「銀ちゃんは……リフのほうが……良い……」
あぁ、なるほど。水銀燈は両手を叩いた。
銀「ならば……これでどう!?」
定番の攻撃的なギターソロを弾き出す水銀燈。
先程とは桁違いの光が断続的に異形を襲う。
大いにダメージを受けて動きが鈍る異形。
そこに更なる光が襲い掛かる。
槐「う~ん、流石だね~」
薔「うん……銀ちゃん……このまま……このまま?」
はたと何かに気づく薔薇水晶。
薔「お父様!私にも音珠……ある?」
槐「え、なんでまた?」
その時水銀燈が叫ぶ。
銀「キーボード!」
そう、この曲はギターソロの後にキーボードソロが来る。
水銀燈はノリすぎて自分ひとりで演奏していたことを忘れていたのだった。
銀「あ……」
キーボードソロの時、水銀燈はバッキングも何もやっていない。
どうしたらいいものか考えている。というより思考が止まっている。
何か弾けばいいのだが、それでは自分の想いが上手く乗っからないらしい。
その間にも少しずつ回復を行う異形。
薔「お父様!」
あせる水銀燈を見て更にあせる薔薇水晶。
槐はひとしきり何かを考えるとおもむろに叫んだ。
槐「……薔薇水晶。これを使え!」
薔薇水晶に手渡されたのは水晶の埋め込まれた小さな竪琴。
槐「ローゼンのパクりで作った擬似音珠入りハープだ」
薔「……キーボードじゃないの?」
槐「あんな重たい物……持ち歩けない。orz」
どうしようか考えている水銀燈の耳に効きなれたフレーズが流れてきた。
銀「薔薇スィー!」
振り返ると薔薇水晶がハープで援護している。
マルチプレイヤー薔薇水晶にとって、楽器であれば種類は無いのだ。
再びの攻撃をまともに浴びる異形。
しかし所詮『擬似』なので威力は水銀燈のより低い。
それでも回復に集中していた異形には思いもかけないダメージだ。
薔「銀ちゃん!」
銀「……(ニヤリ)!」
薔薇水晶のソロが終わった瞬間、ギターが吼える。
完璧なハーモニーで異形にぶつかる2つの光。
それは一つの渦になり異形を包み込む。
薔「これで!」
銀「終わりよぉ!!!」
最後にキメの音を吼えさせると二人は異形に背を向ける。
薔「やれやれだぜ……」
銀「ジャンクになりなさぁい」
二人の台詞と共に異形は音も無く崩れ去った。
銀「お父様……なぜ私達に戦う力を持たせたのですか……」
薔「多分……私達が音楽をやると……予測していた……」
槐「あいつは君達を魔物から守るために音珠をつくったんだよ」
銀「それ以前になんで私達が狙われるのよぉ!?」
槐「しらねwwwww」
銀「笑 い 事 じ ゃ な い わ よ !!」
槐の胸倉に黒い羽を突き刺す水銀燈。
社長にそんなことをしていいのか?
薔「お父様……今のは笑えない……」
槐「薔薇水晶まで……orz」
薔「……銀ちゃん……どこに行くの?」
水銀燈は走り出していた。
槐「いや、飛べよwwwww」
薔「お父様……おかしくない……」
頭をはたかれる槐。
水銀燈は今、急に彼女の妹達が心配になったのだ。
これは、彼女らの長くも短い戦いの幕開けだったのだ。
槐「いや、長いのか短いのかどっちだよwwwww」
薔「……お父様……」
第一話終了。次回につづく
(以下執筆継続中)
最終更新:2007年04月24日 16:56