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金「今日はみっちゃんが残業かしらぁ~」

金糸雀は自分の家にいた。

いつもならその時間にみっちゃんが帰ってくる。
しかし今日は会社で残業だそうでまだ戻ってこない。

金「おなかすいたかしらぁ」

生憎おやつと呼ばれる系統の物はきれている。
まぁ、金糸雀が全部食べてしまったわけなのだが……。

金「しかぁし!今朝みっちゃんに玉子焼きをやいてもらったかしら!」

冷蔵庫に向かう金糸雀。

金「この中に愛しのみっちゃん特製玉子焼きがはいっているかしら!」

『愛しの』が『みっちゃん』に対してか『玉子焼き』に対してかは個人の判断を仰ぐ。
冷蔵庫を開ける金糸雀。しかしお目当てのものは見つからない。

金「はうっ……既に食べていたことを忘れていたかしら……」

このあたりはさすが金糸雀である。

金「うぅ……コンビニまでいくかしらぁ……」

金糸雀は財布を持ち、とぼとぼとマンションの外まで歩いていった。

金「これくらいで足りるかしら?」

ここはマンションの近くにあるロ○ソン。
金糸雀の持つ買い物籠にはポテチ5袋とアラレ系のものが3袋入っている。
要は全部が全部『ジャンク・フード』と呼ばれる部類である。

銀「ジャンクぅ?」

……ナレーターの声を遠くで聞きつけた水銀燈がいたとか居なかったとか……。
とにかく、金糸雀はジャ……もといスナック菓子をカゴに放り込みレジへ行く。

「お買い上げの品は以上でよろしいでしょうか?」
金「あ、あと豚まんを3つ貰おうかしら!」

スナックばかりなので一応確認した店員に金糸雀は追加を注文する。
『肉まん』ではなく『豚まん』と言うあたりが金糸雀である。
その総てを袋に入れた店員は袋と代金を交換する。

金「これであと2時間はもつかしらぁ?」

いや、これを二時間で食べるつもりか?金糸雀よ……。
とにかく、金糸雀はコンビニを後にした。
その時金糸雀は気づかなかった。
後ろをつける黒い影を……。
(どうでもいいが、黒くない影を一度は見てみたいものである)
それは金糸雀の5メートル後ろを一寸違わずついていった。

金「ところで……」

先程から何かがつけてきている。
金糸雀は感づいていた。
だから角を曲がったところで巻こうと思っていた。
その角まであと10メートル。
急になにかが接近するスピードを上げた。

金(なっ……早い!)

それはどんどん近づいてくる。
角まであと5メートル。
後ろの何かとの距離は3メートル。

金(まずいかしらぁぁぁぁ!!!)

金糸雀は逃げる対策を数個思いついたが、
生憎捕まった時の対策は思いつかない。
どんどんパニックに陥る金糸雀。
と、そこに

?「金糸雀ぁ?」

聞きなれた声で金糸雀は後ろを振り返った。

金「水銀燈かしらぁぁぁぁ!!!」

そう彼女に急遽近づいた影は水銀燈だったのだ。
そして今彼女は頬を膨らませている。

銀「なによぉ、人を化け物みたいに……」
金「にしても珍しいかしら……ぁ?」

金糸雀は改めて水銀燈をよく見た。
彼女はほっと胸をなでおろしている。
ここまで走ってきたようで、うっすら汗もかいている。

金「どうしたのかしら?」
銀「……よかったわぁ……無事でぇ……」

普段は見れない100%姉妹を想う顔。

金「一体何があったのか……しら?」

金糸雀は突如現れた異様な気配にそっちを向いた。

銀「……ぎりぎりセーフってところねぇ」

水銀燈は見ずともそれが何かわかっている。
そこにはお約束通り異形が立っていた。

金「なななな!?これはもしかしてカナたちピンチなのかしら!?」
銀「大丈夫よぉ」

にじり寄る異形。怯える金糸雀。構える水銀燈。
その手には音珠・メイメイが握られている。

銀「メイメェイ!」
[Set Up!]

メイメイが光り、その中から機械音声が響く。
虚空に現れるパーツ。それらがメイメイを中心に合体していく。

[Change Guitar! System,all Green! Ready for use,Master!]

それはギターの形を成し、水銀燈の手に握られる。

銀「行くわよぉ!」

水銀燈はギターをストロークする。

銀「喰らいなさぁい!」

水銀燈のギターから激しいリフが流れ出す。
それは光となって異形とぶつかり合う。
……はずだったのだが、異形はそれら総てを避ける。

銀「あらぁ?意外に素早いわねぇ……ならこれで!」

ライトハンド奏法を組み合わせたリフに切り替わる。
先程よりも細かく、素早く光が放出される。
それでも異形の速さには追いつけない。

銀「このぉ……にげまわらないでほしいわぁ」
金「それは不可能かしら……」

怯えながらも一応つっこみ担当の金糸雀。

銀「にしてもぉ……このままだとまずいわぁ……」

このまま延々と音撃(と槐が呼んでいた)を避けられたと仮定する。
音珠は持ち主の想いや精神エネルギーを音と共に打ち出す。
つまり集中力や精神力、更にはそれを支える体力が大事になってくる。
このまま避け続けられると水銀燈の体力が持たないのだ。

銀「……う~。当たらないわぁ……」

……それより先に集中力がきれそうだ。

水銀燈と異形の攻防(水銀燈が一方的に攻撃している)は数分に及んだ。
軽く疲れ気味の水銀燈と次の攻撃を避ける為に身構える異形。

銀「あ~、も~。疲れてきたわぁ」

集中力が切れ掛かっている水銀燈。
痺れを切らしてギターを鳴らす体制に入る。
しかしその時、足が何かにとらわれた。
水銀燈は気づいていなかったが異形はただ避けていただけでは無かった。
異形の体からは紐が伸びていて、それが地面すれすれを覆っていた。
俗に言う紐で出来た結界である。

金「そんなの無理かしら!紐をピンっと張るには色んな場所に引っ掛け……」
銀「……てるわねぇ」

よく見ると近くの電信柱や壁を巻き込んでいた。
そして紐が交差している点は見事なまでに水銀燈の立居地に収束していた。

銀「これ……意外にヤヴァイわぁ……。メイメぇイ!」

[Change Blade! Ready for use,Master!]

ギターのボディが変形して剣となる。
それを慎重に構える水銀燈。紐を斬ろうとしているのだ。しかし、

金「水銀燈!危ないかしら!!!」

視界に突如として金糸雀が現れた。
その向こう、凄まじい速度でこちらに向かってくる異形。

金「水銀燈はカナがまもるかしら!」

空中で体勢を立て直せない金糸雀に異形の牙が迫る。

今にもその牙が金糸雀に刺さろうとしているその時、

?「まったく……無用心すぎだYO!」

水銀燈と金糸雀は後ろから大きな手に抱えられた。
と、同時に異形との間に光の壁が生じる。

金「斥力場かしら!?」
銀「社長!」

二人を抱え、守ったのは槐だった。

槐「金糸雀、武器も無しに戦場に飛び込むのは関心しないな」
金「でも……水銀燈が……やられそうに……」

急に力が抜けたのか、喋る声も息絶え絶えな金糸雀。

銀「でもぉ、どうやってここにぃ?」

水銀燈のその問いに槐は無言で上を指差す。
そこには時空の歪み・兎の穴が開いていた。
中から薔薇水晶と槐家の執事・ラプラスが出てきた。

ラ「まったく……あのような戦い方とは……トリビュアル!」
薔「ラプラス……銀ちゃんの音珠は……あれとは相性が悪い」
ラ「……まぁ、そうですね。メイメイはパワータイプですからね」

薔薇水晶は異形をにらみつける。

薔「よくも……銀ちゃんを……傷つけかけたね……」

薔薇水晶はハープを取り出す。
表情こそ変わってないものの、その心は怒りで満ち溢れていた。
ハープから鋭い音とともに素早い光が異形を襲う。

槐「スピードはメイメイより上……でもパワーは低いか……」

その斬撃ともいえる鋭い光を槐は眼で追う。

槐「金糸雀……戦う意思はあるか?」
金「え?それってどういう……」
槐「ここに君の音珠がある。ピチカートだ」

槐の手のひらには黄色く光る音珠があった。

槐「これを使って戦うか?」

その問いかけに金糸雀はしばらく考えた後、決意の眼差しでこたえた。

金「カナが皆を守るかしら!!」
槐「よし!ならば手に取り念じろ!自分の武器を!!」

槐はピチカートを差し出す。

金「任せるかしら!!!」

金糸雀はピチカートを握り締めた。

金「私の武器……私はローゼンメイデンのマネージャー!!」

ピチカートが光りだす。

金「金糸雀かしらぁぁぁぁ!!!」

虚空に現れるパーツ。それらが総て珠を中心に合体していく。

[Set up! Change Trumpet! Ready to use,Master!]

金糸雀の手に一つの楽器が握られる。

金「……なんでトランペットかしら?」

金糸雀としてはバイオリンか何かが良かったようだ。

銀「……多分……「金」糸雀だから金管楽器ぃ?」
金「何その安直な判断はぁぁぁぁ!!」
金「うぅ……これでもカナはローゼンメイデン!扱えない楽器なんてないかしら!」

金糸雀は意を決して異形に向かう。
薔薇水晶が飛び退く。

金「喰らうかしらぁ!!!」

トランペットを短く、強く吹く金糸雀。ノズルから打ち出される空気の渦。
反射的に横に飛ぶ異形。
しかしこの武器は広範囲攻撃。横に飛んでも射程からは逃れられない。
その横向きの竜巻に飲み込まれた異形。
放物線を描きながら後ろに吹き飛ぶ。

槐「パワー・スピードと共に中位だが広い攻撃範囲でカバーしている、か」
ラ「まだですよ、ピチカートにはあの能力が……」

吹き飛んで壁にぶつかり、しかし体制を立て直した異形。
そこに金糸雀はもう一発、長く吹き込んだ。
打ち出される空気の渦に光の粒子が混じる。
その瞬間、異形はその場にひれ伏した。
否、アスファルトに食い込む体を見るに、動けなくなったのだ。

槐「これこそピチカートの能力」
薔「……重力操作……」

ピチカートの特殊能力。それは相手にかかる重力を弄る力。
異形に途方も無い重力をかけてその場に固定する能力。
はたまた異形にかかる重力を軽くし、派手に吹き飛ばしやすくする能力。
今回は前者の能力を使っている。

薔「銀ちゃん!」
銀「えぇ、金糸雀が押さえてる今のうちに!!」

水銀燈はギターを、薔薇水晶はハープをそれぞれ奏でる。
金糸雀の音と交じり合い、破壊力を倍増する光。
異形はなす術も無く消え去った。

金「……なるほどかしら」

金糸雀はこれまでの説明を受けて大体を理解した。
もっとも、ぶっとんだ話なので頭では理解していない。
しかし心で理解している。

金「とりあえずあいつらを撃退すればいいのかしら?」
槐「そうだ……バンド活動と並行しないといけないが……よろしく頼む」

いや、金糸雀はマネージャーだから実際の活動は……。

銀「他の姉妹にもはやく音珠を渡さないとぉ」

確かに他のメンバーにも早く渡さないと危ないのである。

金「その前に質問かしら?」
銀「……なぁにぃ?」
金「なんで薔薇乙女がねらわれてるのかしら?」
全員が首をかしげた。
全員「知らねwwwwwwwwwww」



金「こんなんでいいのかしらぁぁぁぁぁ」

第二話終了 第三話へつづく




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最終更新:2007年05月08日 01:00