翠「蒼星石ぃぃぃ、待ってですぅ!」
翠星石はひたすら蒼星石の後を追いかける。
蒼「ほら、急がないと♪」
その前方で走っている蒼星石。
翠星石のペースにあわせるため、彼女にしてはゆっくりと走る。
そして一つ突っ込みたい……。珍しく蒼星石が明るい。
翠「でももう疲れたですぅ、すこし休むです!」
完璧にバテている翠星石。蒼星石に休憩を催促する。
蒼「でも休んでいられないんだよ」
翠「うぅ……」
二人は後ろを振り返る。
遠くか近くか判らないところから呻き声が聞こえる。
だんだんと近づいてきているようだ。
蒼「……走ろうか♪」
翠「そうですね……」
二人は大して恐怖を感じていなかった。
ただ、捕まるのがなんとなくいやなので逃げていた。
というかその状況で蒼星石はなぜ明るいのか……。
蒼「なんでだろうね♪でも楽しいんだよ♪」
……ナレーションに返事しないでほしいな……。
翠「そもそもなんで追いかけられてるんですか?」
蒼「……なんでだろう」
どうやら追いかけられている理由は知らないようだ。
蒼「この間のストーカーさん達かな?」
翠「刑務所を抜け出してきたですか?」
(ここから回想始まる)
最近彼女達はストーカー軍団に付き纏われていた。
キレた二人は軍団をフルボッコにした。
そしてストーカー軍団が連れて行かれた先は病院ではなく警察。
梅「梅岡刑事だよ。リーダーだけちょっと来てね。あとは刑務所行き」
生活安全科の梅岡刑事はリーダー格のM字ハゲの襟首をつかんだ。
リーダー格は他のメンバーと違う場所に連れて行かれた。
ベ「これからが本当の(ry」
リーダーの声が木霊する。
(回想おわり)
蒼「……刑務所は出られないよね……」
翠「ですね……」
呻き声が近くなる。どうやら回想している間に近づいたようだ。
蒼「とりあえず逃げよう」
翠「なんかキモいですからね……」
二人は走り出した。
蒼「にしても……普段運動不足な翠星石を走らせるのって……♪」
どうやら蒼星石が楽しい理由はここに在ったらしい……。
翠「そ……蒼星石はとんだサドですっ!佐渡島です!!」
翠星石…… orz
そのころ、水銀燈は夜空を漆黒の翼で飛んでいた。
銀「う~ん……なんか魔物の気配がしたんだけどぉ……」
彼女は知らないが、実は音珠を通じて魔物の気配が彼女に伝わってくるのだ。
それを彼女は『私も成長したのねぇ?』とか想っているらしい。
音珠の努力はこうして今日も無に帰しているのだった。
銀「あらぁ? あれは翠星石と蒼星石じゃなぁい?」
彼女の目線のその先、地上で走っている双子が見えていた。
後ろを気にしながら走っているが、後ろには何も確認できない。
銀「……また誰かを刑務所送りにしたらぁ……私も困るしぃ……」
独り言で理由を呟きながら降下する水銀燈。
ちょいと急降下しすぎて低空飛行していた鳥にぶつかった。
銀「あらぁ……危ないわねぇ……」
……ように見せかけて、さりげなく鳥をキャッチしていた。
降下を止める水銀燈。眼は手元の鳥に向けられている。
その鳥は彼女と同じ漆黒の羽を持っていた。
銀「あらぁ……カラスぅ?」
水銀燈は手元の鳥にに話しかけた。
銀「あなたぁ……私に似てるわねぇ……」
どうやら親近感が沸いてきたようだ……。
なぜかは知らないが、潤んだ目で水銀燈を見つめる鳥。
彼は今、心の中でこう叫んでいる……。
鳥「……(いや……鵜なんですけど……)」
水銀燈は暗闇にただ一羽飛ぶ烏を逃がしてやろうとした。
しかし鳥は彼女の元を離れようとしない。
急降下を再開した彼女と一緒に降りていた。
銀「なにぃ?情でもわいちゃったのぉ?」
鵜は潤んだ瞳で水銀燈を見つめる。
銀「おばかさぁん」
水銀燈は空中で立ち止まる。そして左腕を水平に伸ばす。
鵜はそこに止まった。
……というかなんでこの鵜は飛んでいる水銀燈に恐怖を覚えない。
それ以前に市内になぜ鵜が飛んでいる?
カラスだと思っている水銀燈にそんな疑問が沸くわけは無い。
水銀燈は鵜に話しかける。
銀「私と来ても食扶持は保障しないわよぉ?」
鵜は首をかしげる。
さりげなく憂いに満ちた顔をしている。
銀「『なんで?』って顔ねぇ……私は動物の世話は苦手よぉ?」
それ以前に薔薇乙女で動物の世話にむいているのは蒼星石しか居ない。
ちなみに、翠星石は一見大丈夫そうに見えて実は植物専門だ。
銀「私に飼われると不幸になるわよぉ?」
鵜は首を横に振った。
銀「?……あなたぁ……人の言うことがわかるのぉ?」
鵜は、今度は頷いた。
銀「……フフフフフフフフ……おかしなカラスも居たのもねぇ」
鵜「……(だから……鵜なんですけど……)」
烏……もとい、鵜の気持ちは水銀燈には伝わらない。
銀「……じゃぁ私といらっしゃぁい♪ カラスさん♪」
鵜「(一応期待に沿ってカラスになっとこう……)……カァァ……」
鵜よ……お前は大人だな……。
翠「ゼェ……ゼェ……もう歩けんです……」
翠星石は壁に手をかけ、肩で息をしている。
蒼「……本当に運動不足じゃない? マズイよそれ……」
一方蒼星石は軽く息を弾ませている。
一応翠星石の名誉のために言うと、彼女らは既に10kmは走っている。
常人ならば疲れて当たり前。もう走ろうとも思わないだろう。
蒼星石がおかしいのだと思う。
蒼「君も翠星石も……へタレだね……」
溜息交じりに蒼星石が言う。
翠「『君も翠星石も』?誰に話しかけてるですか?」
蒼「いや、言葉のあやだよ」
蒼星石の言葉に違和感を感じ質問する翠星石。
それを冷や汗交じりで避ける蒼星石。
だからナレーターに返事をするなとあれほど……。
翠「う~ん、よくわからんですが、まぁいいです」
何故か今ので納得できた翠星石。
とりあえず蒼星石はナレーターに答えるのを控えてほしい。
蒼「(ボソッ)だって聞こえるんだからしかたないじゃないか……」
そうこうしている間にも音はどんどん近づいてきていた。
蒼「まずいね」
翠「まずくは無いです。もう体力は回復したですよ?」
いや、早すぎだよ翠星石。
蒼「じゃぁ走れるね♪」
翠「いやそれは……(うぅ……墓穴を掘ったですぅ)」
走るのがいやな翠星石。
走りたい蒼星石。
双子でもここまで違うものなのだろうか……。
翠「やっぱりまだ……はい?」
急に会話を止めて翠星石は固まった。
蒼「ん?……あれ?」
蒼星石も違和感を感じたようだ。
何かの気配が近場に現れている。
それも気づかないうちにだ。
蒼「まさか声の主?」
翠「うぅぅ……さすがに不気味ですぅ……」
あたりを見回す蒼星石とビビりながら小さく身構える翠星石。
その時、物陰からものすごい勢いで何かが飛び出した。
翠「ひぃぃぃ!!!??」
蒼「くっ!?」
翠星石と蒼星石は黒い影と対峙している。
蒼「く……来るなら……来い!!」
庭師の鋏を取り出した蒼星石。
翠「うぅぅぅ……」
その後ろで縮こまりながら如雨露を構える翠星石。
ふいにその時、雲が晴れた。
月明かりに映し出されたその姿に二人が驚く。
「「ば……薔薇水晶!?」」
薔「うぃ……」
右親指を立てて挨拶する薔薇水晶。
刹那、如雨露の一撃が薔薇水晶の頭を直撃する。
翠「てめぇは何人を驚かしてやがるですか!!」
薔「……痛い……」
抑揚のない声で返した薔薇水晶だが、うずくまって頭を押さえている。
明らかにクリーンヒットして痛がっている。
蒼「翠星石、やりすぎだよ! 薔薇水晶、立てる?」
なみだ目になっている薔薇水晶を起こす蒼星石。
翠「で、何しにきたですか?」
薔「あ、そうだった。これを渡しに……」
薔薇水晶はポーチの中から青い光を放つ珠を取り出した。
薔「これは……蒼星石の……音珠……」
蒼「オンギョク?なんの話だ……い!?」
薔薇水晶が音珠をかざす、そこから波動が出る。
それは翠星石と蒼星石にあたると消え去った。
翠「……なるほど……納得ですぅ」
蒼「これがボクの武器なわけだね」
青い音珠、レンピカが持つ特殊能力。
それは人に『心の映像を見せる』能力。
使用者が伝えたいことを思い描き、それを音珠に送り込む。
レンピカはそれを幻覚として相手に送り込む。
相手はそれを『理解』し『納得』する。
また、それを逆ベクトルで使えば相手の心を読むことも出来る。
薔薇水晶は今のところ判っている魔物の知識や音珠のこと等を送った。
レンピカを蒼星石に渡す薔薇水晶。
蒼「そうか……これがボクの武器なのか……」
翠「……ってちょっとまつです。翠星石の武器はないのですか?」
翠星石も先程の幻覚を受信している。
彼女は自分にも音珠があるはずということに気がついた。
薔「お父様が……調整中」
そう、翠星石の音珠・スイドリームは現在槐が調整中なのだ。
今の自分は戦えない。調整が終わるまで戦えない。
翠星石はあせりを覚えた。
銀「調整ってぇ……どのくらいかかるのぉ?」
空から突如水銀燈が舞い降りて会話に混ざった。
蒼「うわぁ、びっくりした」
翠「水銀燈、脅かすなですぅ!!!」
薔「大体2~3日」
驚く双子といつもどおり平然と会話を続ける薔薇水晶。
蒼「って、薔薇水晶。なんで君は驚かないんだい?」
薔「驚く?……!銀ちゃん……いつのまに?」
どうやら水銀燈がきたことには気づかず、会話への返事は脊髄反射らしい。
銀「バラスィー orz」
翠「ところで水銀燈、エルボーの上に乗せてるそれはなんですか?」
ここでようやく翠星石が水銀燈の肩に乗っている連れに気がついたようだ。
蒼「……(って、肩はショルダーだしwwwwwwwww)」
蒼星石のつっこみは翠星石には聞こえていない。
銀「見て判らなぁい?私の新しいペットよぉ?」
翠「いや、そんなことは判ってるです。なんて種類か聞いてるんです!」
ごもっとも。
薔「あ……私知って……」
銀「・・・カラスよぉ、見れば判るでしょぉ?」
水銀燈は未だにこの鳥をカラスだと思い込んでいるらしい。
蒼「……(絶対違う)」
真っ向から否定する蒼星石。いや、否定も何もね……。
薔「……(……鵜なのに……)」
発言を途中でかき消された薔薇水晶。
鵜「(……期待に沿わねば)……カー」
銀「ほらねぇ?」
大人な鵜と空気が読めない水銀燈。
おもわずふきだしている薔薇水晶。
そしてふいにPCを取り出す蒼星石。
蒼「良ネタだwwwwwうぇwwwwwwww」
その日、VIPにはこんなタイトルのスレが立った。
【大人な鳥】黒い鳥をカラスだと思い込むギタリスト【子供なあいつ】
まぁ、中身はご想像にお任せする。
薔「銀ちゃん……その子……霊力が強い……」
突然明後日の方向に話を進める薔薇水晶。
翠「いきなりオカルティズムなことを言うなです!」
蒼「でも意外に幽霊鳥だったりしてwww」
翠「い……いらんこというなです!!」
相変わらず怖いものが苦手な翠星石をからかう蒼星石。
そんななか一人だけさめている水銀燈が口を開く。
銀「音撃関連なのぉ?」
その一言で場が静まり返る。
薔「……うん……。これは音式神の……原型の……生き残り」
翠「オンシキガミ?なんですか?その陰陽師に出てきそうな名前は」
薔「音式神は……こういうもの」
薔薇水晶は懐からディスクを取り出す。
それを擬似音珠に当てると、ディスクは鷹に変形した。
全員「おぉ!!」
薔「これが音式神。そのu……じゃなくてカラスは原型の末裔」
あくまで鵜ではなくカラスといわなくてはいけないのか・・・。
薔「ところで……」
翠「どうしたですか?」
薔「……カラスの鳴き声って……アホーじゃないの?」
全員「……え?」
薔薇水晶が突然電波を出し始めた。
しかしそれを電波と思えなかった奴がいた。
鵜「(……もうやけくそだ!)……アホー」
薔「……(かかった。ニヤリッ)」
あぁ、電波を電波と見抜けない奴に(ry
(以下執筆継続中)
最終更新:2007年06月12日 14:14