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浜辺で寝ている自分に気づいてから一週間が経った。
夏の日差しに長時間晒され干からびかけていた私を助けてくれたのは桜田のりだった。
面倒見が良いのりのおかげでここ最近は体調も良くなり快適な生活を送れている。
ここ一週間でわかったことはここが日本の南端に位置している土地であるということ、自分の生い立ちなど自らの個人情報がすっかり思い出せず生きるために必要な情報は忘れていない、自分がこの土地の人間ではないということだ。
土地のことはのりに聞いたところ快く教えてくれた。
自らのことは思い出せない、手がかりとなるものはギターに刻まれたShinkuという名前らしきものだけだった、だが一般常識は覚えているらしく箸の持ち方も覚えているし九九もスラスラ言える。
そして自分がここの人間ではないことは一目瞭然だった。私がのりに見つけられた時の服装は長袖でこんな猛暑の中で生活するには辛い服装であったし、普段からこの日差しの中生活している住民達に比べ肌の色が白い。

「真紅ちゃ~ん、ちょっと手伝って~」

今は桜田家の好意で居候をさせてもらっているがこのままで居てはいけない。
いつまでも居候をしているわけには行かないし真紅のことも知らなければいけない。

「真紅ちゃ~ん早く~」

何も思い出せないまま一ヶ月が過ぎた

「ジュンはまだ部屋から出てこないの?」

私はのりに尋ねた。ジュンとはのりの弟だ。が、彼は部屋にずっと篭っているので私は一度も顔を見たことが無い。

「・・・・・。」

のりは寂しそうな目をした。
なぜだろう、それを見た私は胸が熱くなった。
以前にもこんな事があった。本能でそう感じた。
ふと私は部屋の隅に置いてあったギターが輝いた気がした。
ギターが私を呼んでいる。理屈じゃない、そう感じる。
急に頭の中が涼しくなったような感覚を覚えた。
私はギターを取り出しジュンの部屋の扉の前に立った。

「真紅ちゃん、どうしたの?ギターなんか持って・・・・。」
「・・・・・。」

のりの質問に応えず私はチューニングをした。自然と身体がそう動くのだ。
二、三度指でボロンとギターを鳴らす。
私はギターを構えた。もちろん弾き方なんてわかりっこないはずだ。でも弾けるという自身だけはなぜかあった。

指はなめらかにダンスを踊るかのように動いている、口からは美しいメロディーが発せられていた。
気がついたら私は歌っていた。
本当は知らないはずの歌を私は今歌っている。歌っている途中で本当に自分が歌っているのか疑わしくさえ思った。
次々と言葉が出てくる、指が動く。
私は結局一曲丸々歌い上げてしまった。
のりが唖然としてドアを見ている。
ドアが鈍く、ぎこちなく開く

「・・・・もっと聞かせてくれよ。ドア越しじゃ聞こえにくいんだ。」
「ジュン君・・・・・。」

真紅の魔法の歌声は今まで決して開くことがなかった開かずの扉をいとも簡単にあけてしまった。





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最終更新:2007年10月12日 00:22