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原罪のレクイエム - (2010/07/14 (水) 16:14:33) の1つ前との変更点

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**原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps 思えば、あの日から遠いところへ来てしまった。 そう思うのは、もう何度目になるだろう。 木や草が繁茂した森の中。 進んでも進んでも、景色にほとんど変わりない。 北上するジョウイとストレイボウは、コンパスだけを頼りに進んでいた。 ジョウイは、歩きながら試行錯誤していた。 即ち、如何にしてこの戦いを勝ち抜くかを。 また、如何にしてルカ・ブライトのような強者を倒すかを。 前回、ルカ・ブライトを倒した方法はリオウ率いる都市同盟の軍に夜襲をさせて、大量の矢を浴びかけさせて傷を負わせた。 さらに、都市同盟の選りすぐりの精鋭で波状攻撃をしかけ、遠くからまた矢を浴びせる。 それを幾度か繰り返してようやくルカ・ブライトは倒せたのだ。 壮絶だった。 体に矢が何本刺さっても体も心も屈せず、最期まで戦い続けたルカ・ブライトの姿は。 超人的な戦闘能力で都市同盟の精鋭を何度も退け、死の間際でさえも悪を貫いたことを誇ったその生き方は。 天が味方すれば、世界を平定できたかもしれないとジョウイは思う。 実際、シードやクルガンには嫌われていたものの、ルカの持つ戦闘能力と指揮能力の高さは本物で、ハイランドでは人気があった。 虐殺を働くのはあくまでも他国の人間に対してであって、狂皇子と呼ばれたルカも、国内では英雄に等しい扱いだったのだ。 そんな圧倒的なまでの力を持つルカを、今度はどうやって倒すか。 それこそがジョウイの目下の悩みだった。 ルカに勝るとも劣らない魔王に、聞いたところではケフカという存在も居るらしい。 どれも一騎当千の猛者ばかり。 そして、ジョウイにそれら全員を倒せる力はない。 輝く盾の紋章も黒き刃の紋章もこの手の中にあるとはいえ、ジョウイは己の力を過信してはいない。 罠にかけるのは無理だ。 そもそも罠用のアイテムも支給されてないし、ルカがそう簡単に罠の場所まで誘導されるとは思えない。 ルカ・ブライトは猪突猛進の猪武者ではなく、戦争の天才だ。 下手な罠を仕掛けても、雰囲気で察知されるだろう。 レオン・シルバーバーグのような天才軍師でもいれば、少しは話が違ってくるのだが。 毒を飲ませるのも無理だ。 そもそも、ルカがこの状況の中で、ジョウイに気を許したりはしない。 妹の夫だからといって、特別扱いするような人間ではないのだ。 ルカは妹だからといって、ジル・ブライトを殺すのを躊躇したりはしない。 まだ手にかけてないだけで、もしも本格的に己の道の障害になるのなら、ルカは間違いなく妹でさえも殺す。 それに、毒もそもそもない。 ならば、かつてルカを殺したときのように、人海戦術で押すか。 しかし、残り人数も30人を切りそうなところまでになっている。 この残り30人で、ルカを除く全てが正義の心を持つような人間ばかりではない。 どれくらいの人間が、ジョウイに味方してくれるのか分からないのだ。 下手をしたら、もう残り半分くらいしか、ジョウイに味方をしてくれる人はいないのかもしれない。 さらに、ジョウイの仲間と言えるのは、今のところストレイボウ一人なのだ。 十分な数の手駒すらいない。 やはり、当初の予定通り強者同士による同士討ちしか方法がなるのか。 無い無い尽くしだ。 あまりにも絶望的で、笑いそうにすらなる。 それでも、ジョウイが立っていられるのは、理想の礎になった数々の命を思えばこそだった。 逃げられない、逃げ出して許されるはずがない。 背負った命の数が多すぎて、放り出すことは許されない。 棘つきの鎖で、全身を縛られたかのような感覚。 理想という名の鎖で縛られた雁字搦めの存在。 それが、今のジョウイだった。 ◆     ◆     ◆ 思えば、あの日から遠いところへ来てしまった。 そう思うのは、もう何度目になるだろう。 視界が歪む。 まるで、自分自身の体じゃないみたいに思える。 グルグルと、視界が回ってストレイボウを苦しめる。 自分が真っ直ぐ歩けているかも自信がない。 森を抜けるのはまだか。 早く抜けてくれ。 早く、待ち合わせ場所の船に行かせてくれ。 早く誰かに会わせてくれ。 ずっと、ずっと、ストレイボウは頭の中で繰り返す。 それしか知らないかのように、ただずっと。 先を行くジョウイは、ただ黙々と進む。 ストレイボウのことなど、気にかけてないかのように。 でも、ストレイボウはそれでよかった。 話しかけられたとしても、何と返せばいいか分からないから。 面白い話題も、気の利いたジョークも言えないから、こんな自分と話したってジョウイは楽しくも何ともないだろうから。 だから、ずっとストレイボウは考える。 草をかき分ける音と、時折踏む小枝が折れる音を聞きながら。 これまでに死んでいった人たちのことを。 今まさに死にそうになっている人たちのことを。 不安で脅えているかもしれない人たちのことを。 会ってもいない人たちのことまで、心配してしまう。 気が逸って仕方がない。 当面の目標はあるものの、それまではただ移動。 しかし、移動中とは言え、誰にも会えないことが苦しい。 無為を過ごしている気さえしてくる。 北上するまでのわずかな間すら、ストレイボウは惜しかった。 あの日から、ずっと後悔していた。 確かに当初はオルステッドが苦しみ、憎しみの火に焼かれるのを楽しみながら見ていた。 ストレイボウの心は、あの時確かに満たされていたのだ。 ざまあみろ、と。 俺の苦しみを少しでも味わえばいいと、思ってすらいた。 心が痛かった。 友が絶望に苦しんだ挙句、魔王と成り果ててルクレチアの民を虐殺するのが。 苦しめるのなら俺だけにしてくれと、声にならぬ声で何度も叫んだ。 誰もいなくなったルクレチアを、絶望しながら眺めることしか出来なかった。 その時、初めてストレイボウは知った。 自分のせいで他人が傷つけられる苦しみは、自分のせいで自分が傷つくのよりも遥かに痛いのだと。 魔王オディオはそのことを知っていたんだろう。 だから、ストレイボウは特等席でルクレチアの滅ぶ様を見せられた。 自分が嫉妬に狂ったせいで、他人が死んでいく。 それは、どんな拷問よりもストレイボウの心を痛めつけた。 そして、今ここでも同じことが繰り返されていく。 自分が友を裏切ったせいで、無関係の人が死んでいく。 今すぐにでも、走り出してどこかへ行きたい衝動に駆られた。 罪を償わないといけないと自分を追い詰める。 しかし、未だ目立った成果は挙げられないのだ。 ストレイボウの中で、贖罪の念だけが募っていく。 一度こうと決めたら、後には退けない性格だ。 オルステッドに勝つべく切磋琢磨し、何時でもストレイボウは自分を磨き続けてきた。 今は、オルステッドに勝つという目標が贖罪に変わっただけで、それに向かってひたすら進んでいくのに変わりはない。 言い換えれば、一度やると決めたら、それ以外のことは目に入らなくなりやすいのだ。 気分転換や、休息して辺りを見回すということを、ストレイボウは知らない。 一度こうと決めたら退けないのはジョウイも同じ。 だが、ジョウイとストレイボウは似ているようで、少しだけ境遇が違った。 それは隣にいて、支えてくれる存在。 言わば、ピリカやジルなど、信頼してくれて、傷ついた心を癒やしてくれる存在、理解してくれる人がストレイボウにはいない。 誰かに思いの丈をぶつけて発散させることも、擦り減っていくストレイボウの心を癒やしてくれる人もいない。 だから、ジョウイと違って、ストレイボウは自分の中でどんどん自分を追い込んでいく。 誰かを助けないといけない。 誰かを守って戦わないといけない。 カエルを止めないといけない。 ロザリーたちにまた会わなければならない。 そしていつか、誰かに裁かれないといけない。 それだけを常に考え続ける。 それ以外の行動は無駄だと思うほどに。 食事や休憩や睡眠は怠惰の証。 休憩や睡眠をとることさえ罪なのだと、今のストレイボウは思ってしまっている。 自らの身体を痛めつけることが、贖罪に繋がることなのだと信じているかのように。 早く。 誰か。 会いたい。 償わせて欲しい。 そうしないといけないという、贖罪の意識だけが先行していく。 もしも。 ブライオンで自らの喉を突けば許されると言われたら。 目の前に鍋一杯に煮えたぎった油があって、それを頭から被れば許されると言われたら。 針の山を素足で歩くことが、贖罪になるのだと言われたら。 すまないと思っているのなら、どうして今すぐにでも自殺して誠意を見せないんだと言われたら。 ストレイボウは、躊躇うことなくそれを実行に移すだろう。 ルッカという、ストレイボウとジョウイが埋葬した少女のことを思い出す。 きっと、あの少女は真実を知っていたら、ストレイボウを恨んでいたに違いない。 前途ある未来の道を閉ざされた揚句、殺したのはかつての仲間のカエルと魔王だというのだ。 カエルはストレイボウも知っている通り、元は忠義に溢れた騎士だった。 それが、何らかの事情で変節を遂げてしまい、今やかつての仲間ですら手にかけるようになった。 そうなってしまったのはオディオのせいだろう。 仲間同士であろうと殺し合わせる、残虐非道な催しをオディオが考案したせいで、こうなった。 だが、それは単なる事実の一端でしかない。 元をただせば、嫉妬に狂ったストレイボウのせいでもあるのだ。 結局のところ、カエルとルッカの仲を引き裂いたのはストレイボウになるのだ。 罪の意識が大きくなりすぎて、ストレイボウの身体にも負荷を与えていた。 まるで孫悟空の頭の輪で、ギリギリと締め付けられるような感覚。 ストレイボウの頭を外から痛めつける。 まるで脳の中に、少しずつ大きくなる石が存在しているかのような重みを感じる。 ストレイボウの頭を内側からも痛めつける。 二つの痛みが、頭皮と頭蓋骨を板ばさみにして圧迫する。 変わりたい、変わるはずだと決めていたのに。 今も、こうしてストレイボウは歩き続けるだけ。 贖罪という名の鎖で縛られた雁字搦めの存在。 それが、今のストレイボウだった。 彼らは進む。 決して消えることのない十字架を背負い続けて。 十字架には、『義務』と『贖罪』という文字が、刻まれている。 【E-8 一日目 午後】 【ストレイボウ@LIVE A LIVE】 [状態]:健康、疲労(中)、罪の意識が大きすぎて心身に負担 [装備]:なし [道具]:ブライオン、勇者バッジ、記憶石@アークザラッドⅡ、基本支給品一式 [思考] 基本:魔王オディオを倒す 1:カエルの説得。 2:戦力を増強しつつ、ジョウイと共に北の座礁船へ。 3:ニノたちが心配。 4:勇者バッジとブライオンが“重い”。 5:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない。 参戦時期:最終編 ※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません) ※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます ※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません 【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】 [状態]:輝く盾の紋章が宿ったことで傷と疲労は完治 [装備]:キラーピアス@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち [道具]:回転のこぎり@ファイナルファンタジーVI、ランダム支給品0~1個(確認済み)、基本支給品一式 [思考] 基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先) 1:生き延びる。 2:ストレイボウと共に座礁船に行く。 3:利用できそうな仲間を集める。 4:仲間になってもらえずとも、あるいは、利用できそうにない相手からでも、情報は得たい。 5:僕の本当の願いは……。 [備考]: ※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で2主人公を待っているときです。 ※ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。 ※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています ※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。 ※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。  それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。  紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾 *時系列順で読む BACK△100:[[トカ、『楽園』を望む]]Next▼098-1:[[Fate or Destiny or Fortune?]] *投下順で読む BACK△100:[[トカ、『楽園』を望む]]Next▼102:[[アシュレーのパーフェクト首輪教室]] |091:[[ジョウイ、『犠牲』に操られる]]|ジョウイ|106-1:[[届け、いつか(前編)]]| |~|ストレイボウ|~| #right(){&link_up(▲)} ----
**原罪のレクイエム ◆SERENA/7ps 思えば、あの日から遠いところへ来てしまった。 そう思うのは、もう何度目になるだろう。 木や草が繁茂した森の中。 進んでも進んでも、景色にほとんど変わりない。 北上するジョウイと[[ストレイボウ]]は、コンパスだけを頼りに進んでいた。 ジョウイは、歩きながら試行錯誤していた。 即ち、如何にしてこの戦いを勝ち抜くかを。 また、如何にして[[ルカ・ブライト]]のような強者を倒すかを。 前回、ルカ・ブライトを倒した方法はリオウ率いる都市同盟の軍に夜襲をさせて、大量の矢を浴びかけさせて傷を負わせた。 さらに、都市同盟の選りすぐりの精鋭で波状攻撃をしかけ、遠くからまた矢を浴びせる。 それを幾度か繰り返してようやくルカ・ブライトは倒せたのだ。 壮絶だった。 体に矢が何本刺さっても体も心も屈せず、最期まで戦い続けたルカ・ブライトの姿は。 超人的な戦闘能力で都市同盟の精鋭を何度も退け、死の間際でさえも悪を貫いたことを誇ったその生き方は。 天が味方すれば、世界を平定できたかもしれないとジョウイは思う。 実際、シードやクルガンには嫌われていたものの、ルカの持つ戦闘能力と指揮能力の高さは本物で、ハイランドでは人気があった。 虐殺を働くのはあくまでも他国の人間に対してであって、狂皇子と呼ばれたルカも、国内では英雄に等しい扱いだったのだ。 そんな圧倒的なまでの力を持つルカを、今度はどうやって倒すか。 それこそがジョウイの目下の悩みだった。 ルカに勝るとも劣らない魔王に、聞いたところではケフカという存在も居るらしい。 どれも一騎当千の猛者ばかり。 そして、ジョウイにそれら全員を倒せる力はない。 輝く盾の紋章も黒き刃の紋章もこの手の中にあるとはいえ、ジョウイは己の力を過信してはいない。 罠にかけるのは無理だ。 そもそも罠用のアイテムも支給されてないし、ルカがそう簡単に罠の場所まで誘導されるとは思えない。 ルカ・ブライトは猪突猛進の猪武者ではなく、戦争の天才だ。 下手な罠を仕掛けても、雰囲気で察知されるだろう。 レオン・シルバーバーグのような天才軍師でもいれば、少しは話が違ってくるのだが。 毒を飲ませるのも無理だ。 そもそも、ルカがこの状況の中で、ジョウイに気を許したりはしない。 妹の夫だからといって、特別扱いするような人間ではないのだ。 ルカは妹だからといって、ジル・ブライトを殺すのを躊躇したりはしない。 まだ手にかけてないだけで、もしも本格的に己の道の障害になるのなら、ルカは間違いなく妹でさえも殺す。 それに、毒もそもそもない。 ならば、かつてルカを殺したときのように、人海戦術で押すか。 しかし、残り人数も30人を切りそうなところまでになっている。 この残り30人で、ルカを除く全てが正義の心を持つような人間ばかりではない。 どれくらいの人間が、ジョウイに味方してくれるのか分からないのだ。 下手をしたら、もう残り半分くらいしか、ジョウイに味方をしてくれる人はいないのかもしれない。 さらに、ジョウイの仲間と言えるのは、今のところストレイボウ一人なのだ。 十分な数の手駒すらいない。 やはり、当初の予定通り強者同士による同士討ちしか方法がなるのか。 無い無い尽くしだ。 あまりにも絶望的で、笑いそうにすらなる。 それでも、ジョウイが立っていられるのは、理想の礎になった数々の命を思えばこそだった。 逃げられない、逃げ出して許されるはずがない。 背負った命の数が多すぎて、放り出すことは許されない。 棘つきの鎖で、全身を縛られたかのような感覚。 理想という名の鎖で縛られた雁字搦めの存在。 それが、今のジョウイだった。 ◆     ◆     ◆ 思えば、あの日から遠いところへ来てしまった。 そう思うのは、もう何度目になるだろう。 視界が歪む。 まるで、自分自身の体じゃないみたいに思える。 グルグルと、視界が回ってストレイボウを苦しめる。 自分が真っ直ぐ歩けているかも自信がない。 森を抜けるのはまだか。 早く抜けてくれ。 早く、待ち合わせ場所の船に行かせてくれ。 早く誰かに会わせてくれ。 ずっと、ずっと、ストレイボウは頭の中で繰り返す。 それしか知らないかのように、ただずっと。 先を行くジョウイは、ただ黙々と進む。 ストレイボウのことなど、気にかけてないかのように。 でも、ストレイボウはそれでよかった。 話しかけられたとしても、何と返せばいいか分からないから。 面白い話題も、気の利いたジョークも言えないから、こんな自分と話したってジョウイは楽しくも何ともないだろうから。 だから、ずっとストレイボウは考える。 草をかき分ける音と、時折踏む小枝が折れる音を聞きながら。 これまでに死んでいった人たちのことを。 今まさに死にそうになっている人たちのことを。 不安で脅えているかもしれない人たちのことを。 会ってもいない人たちのことまで、心配してしまう。 気が逸って仕方がない。 当面の目標はあるものの、それまではただ移動。 しかし、移動中とは言え、誰にも会えないことが苦しい。 無為を過ごしている気さえしてくる。 北上するまでのわずかな間すら、ストレイボウは惜しかった。 あの日から、ずっと後悔していた。 確かに当初はオルステッドが苦しみ、憎しみの火に焼かれるのを楽しみながら見ていた。 ストレイボウの心は、あの時確かに満たされていたのだ。 ざまあみろ、と。 俺の苦しみを少しでも味わえばいいと、思ってすらいた。 心が痛かった。 友が絶望に苦しんだ挙句、魔王と成り果ててルクレチアの民を虐殺するのが。 苦しめるのなら俺だけにしてくれと、声にならぬ声で何度も叫んだ。 誰もいなくなったルクレチアを、絶望しながら眺めることしか出来なかった。 その時、初めてストレイボウは知った。 自分のせいで他人が傷つけられる苦しみは、自分のせいで自分が傷つくのよりも遥かに痛いのだと。 魔王オディオはそのことを知っていたんだろう。 だから、ストレイボウは特等席でルクレチアの滅ぶ様を見せられた。 自分が嫉妬に狂ったせいで、他人が死んでいく。 それは、どんな拷問よりもストレイボウの心を痛めつけた。 そして、今ここでも同じことが繰り返されていく。 自分が友を裏切ったせいで、無関係の人が死んでいく。 今すぐにでも、走り出してどこかへ行きたい衝動に駆られた。 罪を償わないといけないと自分を追い詰める。 しかし、未だ目立った成果は挙げられないのだ。 ストレイボウの中で、贖罪の念だけが募っていく。 一度こうと決めたら、後には退けない性格だ。 オルステッドに勝つべく切磋琢磨し、何時でもストレイボウは自分を磨き続けてきた。 今は、オルステッドに勝つという目標が贖罪に変わっただけで、それに向かってひたすら進んでいくのに変わりはない。 言い換えれば、一度やると決めたら、それ以外のことは目に入らなくなりやすいのだ。 気分転換や、休息して辺りを見回すということを、ストレイボウは知らない。 一度こうと決めたら退けないのはジョウイも同じ。 だが、ジョウイとストレイボウは似ているようで、少しだけ境遇が違った。 それは隣にいて、支えてくれる存在。 言わば、ピリカやジルなど、信頼してくれて、傷ついた心を癒やしてくれる存在、理解してくれる人がストレイボウにはいない。 誰かに思いの丈をぶつけて発散させることも、擦り減っていくストレイボウの心を癒やしてくれる人もいない。 だから、ジョウイと違って、ストレイボウは自分の中でどんどん自分を追い込んでいく。 誰かを助けないといけない。 誰かを守って戦わないといけない。 [[カエル]]を止めないといけない。 [[ロザリー]]たちにまた会わなければならない。 そしていつか、誰かに裁かれないといけない。 それだけを常に考え続ける。 それ以外の行動は無駄だと思うほどに。 食事や休憩や睡眠は怠惰の証。 休憩や睡眠をとることさえ罪なのだと、今のストレイボウは思ってしまっている。 自らの身体を痛めつけることが、贖罪に繋がることなのだと信じているかのように。 早く。 誰か。 会いたい。 償わせて欲しい。 そうしないといけないという、贖罪の意識だけが先行していく。 もしも。 ブライオンで自らの喉を突けば許されると言われたら。 目の前に鍋一杯に煮えたぎった油があって、それを頭から被れば許されると言われたら。 針の山を素足で歩くことが、贖罪になるのだと言われたら。 すまないと思っているのなら、どうして今すぐにでも自殺して誠意を見せないんだと言われたら。 ストレイボウは、躊躇うことなくそれを実行に移すだろう。 [[ルッカ]]という、ストレイボウとジョウイが埋葬した少女のことを思い出す。 きっと、あの少女は真実を知っていたら、ストレイボウを恨んでいたに違いない。 前途ある未来の道を閉ざされた揚句、殺したのはかつての仲間のカエルと魔王だというのだ。 カエルはストレイボウも知っている通り、元は忠義に溢れた騎士だった。 それが、何らかの事情で変節を遂げてしまい、今やかつての仲間ですら手にかけるようになった。 そうなってしまったのはオディオのせいだろう。 仲間同士であろうと殺し合わせる、残虐非道な催しをオディオが考案したせいで、こうなった。 だが、それは単なる事実の一端でしかない。 元をただせば、嫉妬に狂ったストレイボウのせいでもあるのだ。 結局のところ、カエルとルッカの仲を引き裂いたのはストレイボウになるのだ。 罪の意識が大きくなりすぎて、ストレイボウの身体にも負荷を与えていた。 まるで孫悟空の頭の輪で、ギリギリと締め付けられるような感覚。 ストレイボウの頭を外から痛めつける。 まるで脳の中に、少しずつ大きくなる石が存在しているかのような重みを感じる。 ストレイボウの頭を内側からも痛めつける。 二つの痛みが、頭皮と頭蓋骨を板ばさみにして圧迫する。 変わりたい、変わるはずだと決めていたのに。 今も、こうしてストレイボウは歩き続けるだけ。 贖罪という名の鎖で縛られた雁字搦めの存在。 それが、今のストレイボウだった。 彼らは進む。 決して消えることのない十字架を背負い続けて。 十字架には、『義務』と『贖罪』という文字が、刻まれている。 【E-8 一日目 午後】 【ストレイボウ@[[LIVE A LIVE]]】 [状態]:健康、疲労(中)、罪の意識が大きすぎて心身に負担 [装備]:なし [道具]:ブライオン、勇者バッジ、記憶石@[[アークザラッドⅡ]]、基本支給品一式 [思考] 基本:魔王オディオを倒す 1:カエルの説得。 2:戦力を増強しつつ、ジョウイと共に北の座礁船へ。 3:ニノたちが心配。 4:勇者バッジとブライオンが“重い”。 5:少なくとも、今はまだオディオとの関係を打ち明ける勇気はない。 参戦時期:最終編 ※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません) ※記憶石にルッカの知識と技術が刻まれました。目を閉じて願えば願った人に知識と技術が転写されます ※記憶石の説明書の裏側にはまだ何か書かれているかもしれません 【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】 [状態]:輝く盾の紋章が宿ったことで傷と疲労は完治 [装備]:キラーピアス@[[ドラゴンクエストIV 導かれし者たち]] [道具]:回転のこぎり@[[ファイナルファンタジーVI]]、ランダム支給品0~1個(確認済み)、基本支給品一式 [思考] 基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先) 1:生き延びる。 2:ストレイボウと共に座礁船に行く。 3:利用できそうな仲間を集める。 4:仲間になってもらえずとも、あるいは、利用できそうにない相手からでも、情報は得たい。 5:僕の本当の願いは……。 [備考]: ※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で[[2主人公]]を待っているときです。 ※ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。 ※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています ※ピエロ(ケフカ)と[[ピサロ]]、ルカ、魔王を特に警戒。 ※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。  それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。  紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾 *時系列順で読む BACK△100:[[トカ、『楽園』を望む]]Next▼098-1:[[Fate or Destiny or Fortune?]] *投下順で読む BACK△100:[[トカ、『楽園』を望む]]Next▼102:[[アシュレーのパーフェクト首輪教室]] |091:[[ジョウイ、『犠牲』に操られる]]|ジョウイ|106-1:[[届け、いつか(前編)]]| |~|ストレイボウ|~| #right(){&link_up(▲)} ----

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