アットウィキロゴ

「Wild Lady,Strange Scientist」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

Wild Lady,Strange Scientist - (2010/06/19 (土) 22:48:48) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

**Wild Lady,Strange Scientist ◆6XQgLQ9rNg  赤茶色の地層に、月明かりが落ちている。  大小さまざまな形の岩が転がる硬質の地面は舗装されておらず、お世辞にも歩きやすいとは言い難い。  だというのに、その荒野を軽やかに疾駆する人影があった。  鮮やかな長い金髪を靡かせて風を切るその人影は女性のものだが、そうは思えないほどに力強い。  だが、そのふくよかなボディラインは十二分に女性的だ。  灰色の毛皮を胸と腰に巻きつけた彼女は、両手両足を使って荒地を蹴っている。  獣を思わせるその女性――エイラは、明かりを灯すことなく駆けていた。  自然の中で生き、その身を武器に狩りを行って生きてきた彼女にとって、この程度の暗闇も荒地も障害にはならない。  エイラの身長よりも高い岩へ、一足で飛び乗る。その先の、更に大きな岩へと跳躍。  最も巨大な岩まで躍り上がると、恐れることなく直ちに降下する。目標着地点が鋭い岩肌であっても構わない。  中空に身を躍らせ、猫のように姿勢を制御する。大気が上空へと流れ、髪が重力に逆らって巻き上がる。  着地までの時間は、刹那。  微かな音と砂埃を上げて地に足を着けると、休みなく再加速する。  額に浮かんだ汗が、エイラの勢いに耐えられず振り落とされる。それでも、汗は次から次へと浮かび上がる。    エイラは、焦っていた。否、怯えていたと言ってもいい。  野生動物に似た生活を送っているエイラは、本能に忠実だ。本能が感じ赴くままに、彼女は生きている。  その本能があのとき、激しい警鐘を鳴らしていた。  剥きだしの憎悪を前にしたとき、本能は強く危機を告げてきたのだ。動物が、その本能で危機を悟るように。  そこには、理屈や理論など少しも存在しない。  純然たる恐怖がエイラの身を支配し、縛り付けていた。  だから、動けなかった。オディオに立ち向かえなかった。  思い出すだけでもゾッとする。強烈な悪意は、エイラの心臓を激しく揺さぶる。  本能は壊れてしまったかのように、未だ警鐘を鳴らし続けている。  本能が、逆らうなと言ってくる。戦っても勝てはしないと、叫んでいる。  だが同時に、本能以上に大きな声が、エイラの心に響いていた。   感情が、許せないと銘じてくるのだ。  たとえ恐くても、こんな傲慢な暴挙に従えるはずなどないと、大声を張り上げている。  動物ならば、本能に従うのが道理だろう。何よりも優先すべき事象が、自分の身であるのは当然だ。    しかし、エイラは人間だ。  だからこそ時には、本能を超えるものが行動基準になり得る。  行動の根幹に本能があるとはいえ、本能だけに衝き動かされて行動するわけではない。  恐れを抱く本能よりも、反逆を主張する感情を、エイラは選ぶ。  オディオ打倒の道を、エイラは迷わずに選択する。  オディオに対する恐怖を闘争心に変え、エイラは駆ける。  視界の中を、月光に照らされた世界が流れていく。  岩石の群れを駆け抜けると、広大な平野が見えてくる。  遮蔽物の見当たらないその平野に、直立している“緑色の何か”を見つけ、エイラは足を止めた。 「……おっと、我輩のフェロモンに惹かれてうかうか小虫がやって来たトカ?  トカゲの側に寄った虫は丸呑みにされる運命。しかし儚い命も美味しく頂くのでご安心をッ!」  そいつもエイラに気付いたらしい。  その“緑色の何か”は、くねくねと珍妙な動きをしてエイラに歩み寄ってくる。  筆舌にし難い気持ち悪さで迫ってくるそれから、エイラは反射的に飛び退った。 「まな板の上でぴちぴち跳ねるお魚のような目をして、怯えを表す必要はないですぞ。  我輩は心優しき科学の子。  百万馬力も何のその、平和的解決こそ我輩の得意分野トカ、違うトカ」  マントを棚引かせ妄言を撒き散らし、“緑色の何か”は距離を詰めてくる。  よく見ると、“緑色の何か”の腹部は白く、尻尾が生えていた。  二足歩行をするその姿を見て、エイラは臨戦態勢を取った。 「何言ってるか、分からない。お前、恐竜人か?」  そう、未だ奇妙なステップを踏む“緑の何か”は、エイラが戦った恐竜人という種族の姿に酷似している。  恐竜人にしては細長いその身を揺らしながら、そいつは、エイラの言葉に目を輝かせた。 「わーおッ! なんだかときめく響きッ!  遺伝子に書き記されたご先祖様の記憶が反応しているトカ?  それとも、これがいわゆる前世の記憶?  ダイナソー星人だった頃の思い出と我輩の甘酸っぱい思い出が混じりあい、とても甘美な化学変化が脳内麻薬を分泌してくる予感!」 「……やっぱりお前、何言ってるか、分からない。エイラ食う言うのは、本気か?」  推し量るように、エイラは問うた。  恐竜人は、人間に仇名す存在だったからだ。  残虐に無慈悲に陰惨に、略奪や破壊や殺傷を行う彼らは、エイラたちにとって明確な敵だった。  戦わなければ死ぬ。殺さなければ滅ぼされる。弱い者は死に、強い者が生き残る。  それが、大地の掟。  掟に従って、エイラたちは戦った。  恐竜人たちも同じだ。自分たちが生き残るため、人間と戦った。彼らにとって、人間は敵だった。  単純だが、確かな事実。  長であるアザーラが命を落としたことで、恐竜人との戦いは終結を迎えた。  伸ばしたエイラの手を取ることなく、アザーラは掟に従い死を選んだのだ。  誇り高い最期だった。  彼もまた、エイラたちと同様に仲間を守ろうとしていた。強者となり、生き延びようとしていた。  では、眼前にいるマントの恐竜人は、果たしてどうなのだろうか。  アザーラの死を受け入れ、彼と同じように淘汰される宿命を選ぶのだろうか。  あるいは、存亡を賭けて戦ったアザーラのように、再び人と戦う道を選ぶのだろうか。 「こう見えても我輩はグルメでしてな。節足動物を中心とした食生活を送っております。  カブトムシを腹いっぱいになるまで食べつくすことを夢見て、冷たいねぐらで詩集に手を伸ばすのが最近のマイブーム。  科学の歯車を動かす原動力は、飽くなき夢見であるぞッ!」    しかし、マントの恐竜人の口から飛び出すのは意味不明な戯言の群れだ。  少なくとも、エイラを食べようとする意識はないらしい。だが、何を考えているのか分からない。  ひょっとすると、野生動物相手の方がまだ意思疎通が可能かもしれない。  垂れ流される毒電波に、エイラの脳は熱を増していく。  そんなエイラを無視し、空気の読めないそいつは饒舌に語り続ける。  「しかし、それすらをも凌駕する我輩の最大の夢、それは――ッ」  片手を腰に当て、天を指差すマントの恐竜人。 「果てなく広がる星の海ッ! 何処かで輝く故郷の星ッ! ああ、帰りたい、帰りたいのです。  リザード星の土をもう一度踏みしめ、凱旋したいのですッ!  そのために我輩、テロ活動に勤しんでおりました。悪いことをしながらも、故郷を思う気持ちは一直線ッ!  その一途な願いは、今も変わっておりません。と、いうわけで」  マントの恐竜人――否、リザード星人は、背負っていた袋に手を入れてごそごそとまさぐる。  その動きが止まると、ゆっくりともったいぶるように、そいつは袋から手を出す。 「我輩、夢を実現するために、魔王に魂を売ることにしました。どうぞよしなに」  袋から取り出した武器を迷わずエイラに向けてきた。  鱗に覆われた手が握る得物は、エイラにも見覚えがある物だった。  それは、ルッカが得意とする、銃と呼ばれる武器。その引き金に、指がかかっている。 「笑わば笑えいッ! 旅の恥は掻き捨て、戦わずして得られるものなどあるものかッ!  偉大な科学の力の前にひれ伏せーいッ!!」    リザード星人の奇天烈な言動と不可解な行動が、現状の把握を阻害してくる。  そのせいで、反応が遅れた。  ぽん、という軽い音が夜気に響く。それでも、エイラの動きは間に合わない。  銃口から弾丸が飛び出し、真っ直ぐに飛来する。  丸く小さな飛来物。それが、エイラの額に吸い込まれるように迫り来る。  だが、随分と弾速は遅かった。  エイラの優れた動体視力なら充分に捉えられる程度であり、射出を認識してからでも回避が間に合う程度の速度。  それを捕捉したところで、ようやく事態を把握する。  リザード星人は、エイラと戦うつもりなのだと。  共闘するわけではなく、オディオを倒そうとするのではなく、魔王の意志に従おうというのだと。  それならば。  エイラも、戦うだけだ。  倒さなければ、やられる。殺さなければ、殺される。  ただ、生きるために。  大地の掟のままに、戦うだけ。    そうと決まれば、体は即座に動く。  一気に身を伏せた。地面スレスレまで体を落とし、四肢を用いて全身を支える。  頭上を通過する弾丸の気配を肌で感じ取る。その気配が遠ざかっていくのと、ほぼ同時に。  曲げていた肘と膝に力を込めて、伸ばす。  エイラの肢体が、ばねのように、月夜に跳ね上がった。  ◆◆ 「ななな、何ですとぉ~~~~ッ!?」  まさか避けられるとは思わなかった。星空を背景に降下してくる金髪の女を呆然と眺めながら、トカは叫ぶ。  慌てて手元の銃の照準を女に合わせ、トリガーを引く。  再度、銃が乾いた鳴き声を上げて弾丸を射出する。飛んでいく弾は、しかし、容易く女の手で弾かれる。  銃弾を素手で弾いたはずなのに、女の手からは一滴の血も流れてはいない。  そこで始めて不審に思う。  もう一度、引き金を引く。  三度目の乾いた音。それはまるで、圧縮された空気が破裂したような音で。  三発目にして、ようやく理解した。  それが、殺傷力など皆無な、ただのエアガンであると。  当然三発目の弾丸でも女にダメージを与えられるはずもなく、勢いを削ぐことすらできない。 「えぇーいッ! こんなはずではッ!  しかしこの程度のびっくりドッキリな展開で、科学の進歩は止められませんッ!」  トカの叫びに構わず、女は両手を振り下ろす。空気を切り裂く拳は、それそのものが凶器となる。  重い一撃が、振り落とされる。  ギリギリで身を反らして回避。目標を失った拳は、平野の草を押しつぶし地面を抉り取る。   「戦うなら、容赦しない! エイラ、お前、倒す!!」  女――エイラは、地面を叩き潰した反動を利用し、トカへと肉迫する。  洗練された貫手が、鱗を貫き破こうと飛んでくる。  それが到達する前に、トカは急ぎエアガンを持ち替える。銃身を握り、グリップをエイラに向けた。 「やらいでかァ――ッ!!」  エアガンのグリップ部分を、思い切り叩き付ける。  狙うは、肘。貫手によって伸び切ろうとする肘を砕ければ、片腕の機能をほぼ奪える。  そんなトカの狙いを予感してか、あるいは単純に、危機を察してか。  エイラは、貫手の軌道を変える。鋭い爪が中空を貫いていく。  エアガンのグリップも、同じように宙を抜けるが、構わない。  前へ体重をかけるようにして殴った勢いをそのままに、トカはエイラの横をすり抜け疾走を開始した。 「撤退、撤退~~ッ! 明日の日の出を拝むため、今日のところはオサラバさせてもらうぜェ――ッ!」  盛大な土煙を上げ、全力で足を動かす。  頭脳派であるトカなのだ。ステゴロの肉弾戦など望むところではない。 「逃がさない!!」    急ぎエイラから距離を取ったトカの背に、大声が飛んでくる。  そっと優しく振り返ってみると、野獣のように四肢を使ってしなやかに追走してくるエイラの姿があった。   二足歩行で逃走するトカゲと、それを追う四足歩行の人間。  トカゲも必死だったが、人間の速度は尋常ではない。ぐんぐん距離は詰まっていく。 「あ~~~れ~~~ッ! お~~た~~す~~け~~ッ!!」  通りすがりの頼れるお兄さんの助けを期待して、救難信号を出してみる。  闇を引き裂く怪しい悲鳴は、しかし、暗い平野に響き渡るだけだ。  トカは、大慌てでデイバックに手を入れる。その直後、大きく踏み込む音が聞こえ足音が消失する。  手をデイバックに入れたままで、もう一度だけ、ちらりと後ろを確認する。  エイラは、またも跳んでいた。  中空で身を丸め回転し、その長い足をトカへと向ける。  エイラが、咆哮を上げた。  荒ぶる野生を剥きだしにした、闘志と戦意の塊を思わせる絶叫が、夜気を震撼させる。  その迫力に圧されたかのように、重力が彼女の味方をする。   増していく落下速度をそのままに、真っ直ぐ飛んでくるエイラ。  まるで、地を這う獲物を空から狩る猛禽類のように。  あるいは、夜を切り裂いて飛ぶ流星のように。  鋭く重い蹴りが、トカを砕き潰しブチ抜こうと落ちてくる。    負けじと、トカも足に力を込める。全身全霊の力を両足に預け、全神経ただ走ることだけを足に命じ続ける。  残像で足が多く見えているのではないかと思うほど、必死で駆ける。  空気を裂く音が迫ってくる。接触まで時間などない。  トカは無我夢中で、デイバックから小さな何かを取り出した。  それが――そのカプセルが、見覚えのあるものだったことに、トカは安堵する。 「堅実さと科学信仰が売りの我輩ですが、にっちもさっちもいかないなら仕方ねぇッ!  頼むぜ不思議な魔法のカプセルッ!」  トカが、デイバックから出てきたクレストカプセルの蓋に手をかけた。  その中に詰め込まれた、クレストソーサーが顕現する。    それよりも、僅かに早く。  エイラの足が、トカへと到達した。  重力加速度の恩恵をたっぷりと受けたエイラの跳び蹴りは、彼女の卓越した筋力も相まって、鱗を破り肉を潰し骨を割る必殺の一撃となる。    重く鋭い蹴りは、確かに衝突していた。  トカの、長い尻尾へと。 「ひぎぃいーッ! 刺激的な電気信号がゾクゾクと駆け上がってきよるーッ!  頂点まで上り詰めた先に見えるのは出世の道トカ違うトカーッ!?」  珍妙な絶叫を上げるトカ。だが、致命傷には至らない。  トカゲとは、尾を切り捨て自身のスケープゴートにすることもある生物なのだから。  それを知っているのだろう、エイラの爪が容赦のない追撃をかけてくる。  存分に速い攻撃だが、トカには届かない。  同時に、トカの手が、クレストカプセルの蓋を開け放っていたからだ。  甲高い音が、生まれた。  それは次第に大きさと数を増し、重なり合い、音を編み上げていく。  大気が流れ空気が混ざり風が回転する。  小さなカプセルが生んだのは、旋風だった。  逆巻く旋風は草を引きちぎり土を巻き上げ、エイラに襲い掛かる。  エイラはバックステップで距離を取ろうとするが、旋回する大気が、彼女の動きを制限する。  風のクレストソーサー、ヴォルテックが、エイラの身が空へと吹き飛ばす。    それを尻目に、トカは改めて逃走を開始した。エイラの一撃に潰された尻尾を、涙目で撫でながら。  ◆◆    エリマキトカゲ、否、カモシカのように平野を駆け抜けたトカは、森林に飛び込んだところでようやく立ち止まった。  振り返るが、もう追走してくる野生児の姿はない。 「はひー、はひー……。おのれ、ブルコギドンさえ完成していれば……ッ!」  完成していたとしても支給されるはずはないのだが、それはそれだ。  痛々しい傷を負ってしまった尻尾を、トカは改めて見やる。  砕けた鱗からは命の証である血液が流れ落ち、筋繊維が覗いていた。   「ひでぇことしてくれるじゃねぇかッ!  だが、どんな仕打ちを受けようとも、我輩の夢の翼は折れもちぎれもしねぇぜッ!」  と、無意味に啖呵を切ってみたのはいいが。  手元にある武器はエアガン。  そして、一度使ってしまうと、中身を入れ直さない限り使えないクレストカプセルだけだ。  デイバックの中を確認すると、クレストカプセルは5つ入っていた。  そのうち1つは既に空っぽ。残り4つにも、何が入っているのやら。  まともに使えそうな武器は支給されていなかった。  『自家製爆弾』も、『博士の異常な爆弾』も、『シェフの気まぐれ爆弾』もない。 「味な真似をしてくれやがるぜ。しかーしッ、諦めません勝つまでは!  見ていてくれ、ゲーくん。我輩は必ず、星に帰ってみせる。たった、一人でも……ッ!」  惑星Fで、頑張って生きていくゲーの姿を想像する。それだけで、トカの身に活力が沸いてくる。  友の姿を思うだけで、尻尾の痛みも忘れられそうだ。  友情の素晴らしさを噛み締めながら、トカはデイバックを背負い直す。  故郷へ帰るための新たな一歩を、トカは踏み出した。  ◆◆   「ぐぅ……ッ」  突如巻き起こった暴風は、その突然の発生と同様に、前触れもなく収まった。  中空に投げ出されたエイラを落下させたのは、先ほどは味方だった重力だ。  なんとか受身を取れたのと、地面に草が生い茂っていたため、落下のダメージはそれほどでもない。  だが烈風によって刻まれた傷は、無視できるようなものではない。  特に、右足。  蹴りを繰り出した足の傷が、特に深い。ぱっくりと裂けた傷口からは、鮮血が零れ落ちていた。  少し動かしてみるだけでも、痛覚が敏感に反応し痛みを訴えてくる。  悔しいが、あの“敵”を追えそうになかった。  しかしそれでも。  エイラは、立ち上がる。  あの、恐竜人に似た敵の存在が、エイラの闘争本能に火を点けていた。  この程度の傷が何だと言うのだ。  まだ立てる。動ける。  ならば、戦える。  奴は、逃げたのだ。背中を向けて、逃亡したのだ。  まだ勝負は付いていない。故に、絶対に倒す。やられっぱなしなど、性に合わない。   不屈の心を抱き、エイラはふと天を仰いだ。    そこに浮かぶのは、雄大な月。   降り注ぐたおやかな光を浴びて、エイラは深く息を吸う。  冷たい夜気を、自然の空気を、体全体に澄み渡らせて。  そして、エイラは吼えた。  傷の痛みを薪にし、闘争心を鼓舞するように。  魔王オディオに向けて、“敵”に向けて、宣戦を布告するように。  雄叫びを、上げる――。  【C-3 平野 一日目 深夜】 【エイラ@クロノトリガー】 [状態]:全身に細かい裂傷。右足に深い裂傷と出血。疲労(中) [装備]:なし [道具]:ランダム支給品1~3個(未確認)、基本支給品一式 [思考] 基本:オディオを倒す。襲ってくる者には容赦しない。 1:オディオを倒すための手段を探し、仲間を集める。 2:トカを倒す。 [備考]: ※名簿未確認。 ※参戦時期はシルバード入手後。詳細は後の書き手さんにお任せします。 【C-4 森林 一日目 深夜】 【トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:疲労(大)、尻尾にダメージ大。 [装備]:エアガン@クロノトリガー [道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(1つは空)、基本支給品一式 [思考] 基本:リザード星へ帰るため、優勝を狙う。 1:他の参加者を殺し生き残る。 2:科学的な武器が欲しい。 [備考]: ※名簿を確認済み。 ※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。 ※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。 *時系列順で読む BACK△014:[[HUNTER×HUNTER]]Next▼016:[[そして僕にできること]] *投下順で読む BACK△014:[[HUNTER×HUNTER]]Next▼016:[[そして僕にできること]] |&color(blue){GAME START}|エイラ|037:[[White or Black? There is no gray.      ?]]| |~|トカ|040:[[BIG-TOKA SHOW TIME]]| #right(){&link_up(▲)} ----
**Wild Lady,Strange Scientist ◆6XQgLQ9rNg  赤茶色の地層に、月明かりが落ちている。  大小さまざまな形の岩が転がる硬質の地面は舗装されておらず、お世辞にも歩きやすいとは言い難い。  だというのに、その荒野を軽やかに疾駆する人影があった。  鮮やかな長い金髪を靡かせて風を切るその人影は女性のものだが、そうは思えないほどに力強い。  だが、そのふくよかなボディラインは十二分に女性的だ。  灰色の毛皮を胸と腰に巻きつけた彼女は、両手両足を使って荒地を蹴っている。  獣を思わせるその女性――[[エイラ]]は、明かりを灯すことなく駆けていた。  自然の中で生き、その身を武器に狩りを行って生きてきた彼女にとって、この程度の暗闇も荒地も障害にはならない。  エイラの身長よりも高い岩へ、一足で飛び乗る。その先の、更に大きな岩へと跳躍。  最も巨大な岩まで躍り上がると、恐れることなく直ちに降下する。目標着地点が鋭い岩肌であっても構わない。  中空に身を躍らせ、猫のように姿勢を制御する。大気が上空へと流れ、髪が重力に逆らって巻き上がる。  着地までの時間は、刹那。  微かな音と砂埃を上げて地に足を着けると、休みなく再加速する。  額に浮かんだ汗が、エイラの勢いに耐えられず振り落とされる。それでも、汗は次から次へと浮かび上がる。    エイラは、焦っていた。否、怯えていたと言ってもいい。  野生動物に似た生活を送っているエイラは、本能に忠実だ。本能が感じ赴くままに、彼女は生きている。  その本能があのとき、激しい警鐘を鳴らしていた。  剥きだしの憎悪を前にしたとき、本能は強く危機を告げてきたのだ。動物が、その本能で危機を悟るように。  そこには、理屈や理論など少しも存在しない。  純然たる恐怖がエイラの身を支配し、縛り付けていた。  だから、動けなかった。オディオに立ち向かえなかった。  思い出すだけでもゾッとする。強烈な悪意は、エイラの心臓を激しく揺さぶる。  本能は壊れてしまったかのように、未だ警鐘を鳴らし続けている。  本能が、逆らうなと言ってくる。戦っても勝てはしないと、叫んでいる。  だが同時に、本能以上に大きな声が、エイラの心に響いていた。   感情が、許せないと銘じてくるのだ。  たとえ恐くても、こんな傲慢な暴挙に従えるはずなどないと、大声を張り上げている。  動物ならば、本能に従うのが道理だろう。何よりも優先すべき事象が、自分の身であるのは当然だ。    しかし、エイラは人間だ。  だからこそ時には、本能を超えるものが行動基準になり得る。  行動の根幹に本能があるとはいえ、本能だけに衝き動かされて行動するわけではない。  恐れを抱く本能よりも、反逆を主張する感情を、エイラは選ぶ。  オディオ打倒の道を、エイラは迷わずに選択する。  オディオに対する恐怖を闘争心に変え、エイラは駆ける。  視界の中を、月光に照らされた世界が流れていく。  岩石の群れを駆け抜けると、広大な平野が見えてくる。  遮蔽物の見当たらないその平野に、直立している“緑色の何か”を見つけ、エイラは足を止めた。 「……おっと、我輩のフェロモンに惹かれてうかうか小虫がやって来たトカ?  トカゲの側に寄った虫は丸呑みにされる運命。しかし儚い命も美味しく頂くのでご安心をッ!」  そいつもエイラに気付いたらしい。  その“緑色の何か”は、くねくねと珍妙な動きをしてエイラに歩み寄ってくる。  筆舌にし難い気持ち悪さで迫ってくるそれから、エイラは反射的に飛び退った。 「まな板の上でぴちぴち跳ねるお魚のような目をして、怯えを表す必要はないですぞ。  我輩は心優しき科学の子。  百万馬力も何のその、平和的解決こそ我輩の得意分野トカ、違うトカ」  マントを棚引かせ妄言を撒き散らし、“緑色の何か”は距離を詰めてくる。  よく見ると、“緑色の何か”の腹部は白く、尻尾が生えていた。  二足歩行をするその姿を見て、エイラは臨戦態勢を取った。 「何言ってるか、分からない。お前、恐竜人か?」  そう、未だ奇妙なステップを踏む“緑の何か”は、エイラが戦った恐竜人という種族の姿に酷似している。  恐竜人にしては細長いその身を揺らしながら、そいつは、エイラの言葉に目を輝かせた。 「わーおッ! なんだかときめく響きッ!  遺伝子に書き記されたご先祖様の記憶が反応しているトカ?  それとも、これがいわゆる前世の記憶?  ダイナソー星人だった頃の思い出と我輩の甘酸っぱい思い出が混じりあい、とても甘美な化学変化が脳内麻薬を分泌してくる予感!」 「……やっぱりお前、何言ってるか、分からない。エイラ食う言うのは、本気か?」  推し量るように、エイラは問うた。  恐竜人は、人間に仇名す存在だったからだ。  残虐に無慈悲に陰惨に、略奪や破壊や殺傷を行う彼らは、エイラたちにとって明確な敵だった。  戦わなければ死ぬ。殺さなければ滅ぼされる。弱い者は死に、強い者が生き残る。  それが、大地の掟。  掟に従って、エイラたちは戦った。  恐竜人たちも同じだ。自分たちが生き残るため、人間と戦った。彼らにとって、人間は敵だった。  単純だが、確かな事実。  長であるアザーラが命を落としたことで、恐竜人との戦いは終結を迎えた。  伸ばしたエイラの手を取ることなく、アザーラは掟に従い死を選んだのだ。  誇り高い最期だった。  彼もまた、エイラたちと同様に仲間を守ろうとしていた。強者となり、生き延びようとしていた。  では、眼前にいるマントの恐竜人は、果たしてどうなのだろうか。  アザーラの死を受け入れ、彼と同じように淘汰される宿命を選ぶのだろうか。  あるいは、存亡を賭けて戦ったアザーラのように、再び人と戦う道を選ぶのだろうか。 「こう見えても我輩はグルメでしてな。節足動物を中心とした食生活を送っております。  カブトムシを腹いっぱいになるまで食べつくすことを夢見て、冷たいねぐらで詩集に手を伸ばすのが最近のマイブーム。  科学の歯車を動かす原動力は、飽くなき夢見であるぞッ!」    しかし、マントの恐竜人の口から飛び出すのは意味不明な戯言の群れだ。  少なくとも、エイラを食べようとする意識はないらしい。だが、何を考えているのか分からない。  ひょっとすると、野生動物相手の方がまだ意思疎通が可能かもしれない。  垂れ流される毒電波に、エイラの脳は熱を増していく。  そんなエイラを無視し、空気の読めないそいつは饒舌に語り続ける。  「しかし、それすらをも凌駕する我輩の最大の夢、それは――ッ」  片手を腰に当て、天を指差すマントの恐竜人。 「果てなく広がる星の海ッ! 何処かで輝く故郷の星ッ! ああ、帰りたい、帰りたいのです。  リザード星の土をもう一度踏みしめ、凱旋したいのですッ!  そのために我輩、テロ活動に勤しんでおりました。悪いことをしながらも、故郷を思う気持ちは一直線ッ!  その一途な願いは、今も変わっておりません。と、いうわけで」  マントの恐竜人――否、リザード星人は、背負っていた袋に手を入れてごそごそとまさぐる。  その動きが止まると、ゆっくりともったいぶるように、そいつは袋から手を出す。 「我輩、夢を実現するために、魔王に魂を売ることにしました。どうぞよしなに」  袋から取り出した武器を迷わずエイラに向けてきた。  鱗に覆われた手が握る得物は、エイラにも見覚えがある物だった。  それは、[[ルッカ]]が得意とする、銃と呼ばれる武器。その引き金に、指がかかっている。 「笑わば笑えいッ! 旅の恥は掻き捨て、戦わずして得られるものなどあるものかッ!  偉大な科学の力の前にひれ伏せーいッ!!」    リザード星人の奇天烈な言動と不可解な行動が、現状の把握を阻害してくる。  そのせいで、反応が遅れた。  ぽん、という軽い音が夜気に響く。それでも、エイラの動きは間に合わない。  銃口から弾丸が飛び出し、真っ直ぐに飛来する。  丸く小さな飛来物。それが、エイラの額に吸い込まれるように迫り来る。  だが、随分と弾速は遅かった。  エイラの優れた動体視力なら充分に捉えられる程度であり、射出を認識してからでも回避が間に合う程度の速度。  それを捕捉したところで、ようやく事態を把握する。  リザード星人は、エイラと戦うつもりなのだと。  共闘するわけではなく、オディオを倒そうとするのではなく、魔王の意志に従おうというのだと。  それならば。  エイラも、戦うだけだ。  倒さなければ、やられる。殺さなければ、殺される。  ただ、生きるために。  大地の掟のままに、戦うだけ。    そうと決まれば、体は即座に動く。  一気に身を伏せた。地面スレスレまで体を落とし、四肢を用いて全身を支える。  頭上を通過する弾丸の気配を肌で感じ取る。その気配が遠ざかっていくのと、ほぼ同時に。  曲げていた肘と膝に力を込めて、伸ばす。  エイラの肢体が、ばねのように、月夜に跳ね上がった。  ◆◆ 「ななな、何ですとぉ~~~~ッ!?」  まさか避けられるとは思わなかった。星空を背景に降下してくる金髪の女を呆然と眺めながら、トカは叫ぶ。  慌てて手元の銃の照準を女に合わせ、トリガーを引く。  再度、銃が乾いた鳴き声を上げて弾丸を射出する。飛んでいく弾は、しかし、容易く女の手で弾かれる。  銃弾を素手で弾いたはずなのに、女の手からは一滴の血も流れてはいない。  そこで始めて不審に思う。  もう一度、引き金を引く。  三度目の乾いた音。それはまるで、圧縮された空気が破裂したような音で。  三発目にして、ようやく理解した。  それが、殺傷力など皆無な、ただのエアガンであると。  当然三発目の弾丸でも女にダメージを与えられるはずもなく、勢いを削ぐことすらできない。 「えぇーいッ! こんなはずではッ!  しかしこの程度のびっくりドッキリな展開で、科学の進歩は止められませんッ!」  トカの叫びに構わず、女は両手を振り下ろす。空気を切り裂く拳は、それそのものが凶器となる。  重い一撃が、振り落とされる。  ギリギリで身を反らして回避。目標を失った拳は、平野の草を押しつぶし地面を抉り取る。   「戦うなら、容赦しない! エイラ、お前、倒す!!」  女――エイラは、地面を叩き潰した反動を利用し、トカへと肉迫する。  洗練された貫手が、鱗を貫き破こうと飛んでくる。  それが到達する前に、トカは急ぎエアガンを持ち替える。銃身を握り、グリップをエイラに向けた。 「やらいでかァ――ッ!!」  エアガンのグリップ部分を、思い切り叩き付ける。  狙うは、肘。貫手によって伸び切ろうとする肘を砕ければ、片腕の機能をほぼ奪える。  そんなトカの狙いを予感してか、あるいは単純に、危機を察してか。  エイラは、貫手の軌道を変える。鋭い爪が中空を貫いていく。  エアガンのグリップも、同じように宙を抜けるが、構わない。  前へ体重をかけるようにして殴った勢いをそのままに、トカはエイラの横をすり抜け疾走を開始した。 「撤退、撤退~~ッ! 明日の日の出を拝むため、今日のところはオサラバさせてもらうぜェ――ッ!」  盛大な土煙を上げ、全力で足を動かす。  頭脳派であるトカなのだ。ステゴロの肉弾戦など望むところではない。 「逃がさない!!」    急ぎエイラから距離を取ったトカの背に、大声が飛んでくる。  そっと優しく振り返ってみると、野獣のように四肢を使ってしなやかに追走してくるエイラの姿があった。   二足歩行で逃走するトカゲと、それを追う四足歩行の人間。  トカゲも必死だったが、人間の速度は尋常ではない。ぐんぐん距離は詰まっていく。 「あ~~~れ~~~ッ! お~~た~~す~~け~~ッ!!」  通りすがりの頼れるお兄さんの助けを期待して、救難信号を出してみる。  闇を引き裂く怪しい悲鳴は、しかし、暗い平野に響き渡るだけだ。  トカは、大慌てでデイバックに手を入れる。その直後、大きく踏み込む音が聞こえ足音が消失する。  手をデイバックに入れたままで、もう一度だけ、ちらりと後ろを確認する。  エイラは、またも跳んでいた。  中空で身を丸め回転し、その長い足をトカへと向ける。  エイラが、咆哮を上げた。  荒ぶる野生を剥きだしにした、闘志と戦意の塊を思わせる絶叫が、夜気を震撼させる。  その迫力に圧されたかのように、重力が彼女の味方をする。   増していく落下速度をそのままに、真っ直ぐ飛んでくるエイラ。  まるで、地を這う獲物を空から狩る猛禽類のように。  あるいは、夜を切り裂いて飛ぶ流星のように。  鋭く重い蹴りが、トカを砕き潰しブチ抜こうと落ちてくる。    負けじと、トカも足に力を込める。全身全霊の力を両足に預け、全神経ただ走ることだけを足に命じ続ける。  残像で足が多く見えているのではないかと思うほど、必死で駆ける。  空気を裂く音が迫ってくる。接触まで時間などない。  トカは無我夢中で、デイバックから小さな何かを取り出した。  それが――そのカプセルが、見覚えのあるものだったことに、トカは安堵する。 「堅実さと科学信仰が売りの我輩ですが、にっちもさっちもいかないなら仕方ねぇッ!  頼むぜ不思議な魔法のカプセルッ!」  トカが、デイバックから出てきたクレストカプセルの蓋に手をかけた。  その中に詰め込まれた、クレストソーサーが顕現する。    それよりも、僅かに早く。  エイラの足が、トカへと到達した。  重力加速度の恩恵をたっぷりと受けたエイラの跳び蹴りは、彼女の卓越した筋力も相まって、鱗を破り肉を潰し骨を割る必殺の一撃となる。    重く鋭い蹴りは、確かに衝突していた。  トカの、長い尻尾へと。 「ひぎぃいーッ! 刺激的な電気信号がゾクゾクと駆け上がってきよるーッ!  頂点まで上り詰めた先に見えるのは出世の道トカ違うトカーッ!?」  珍妙な絶叫を上げるトカ。だが、致命傷には至らない。  トカゲとは、尾を切り捨て自身のスケープゴートにすることもある生物なのだから。  それを知っているのだろう、エイラの爪が容赦のない追撃をかけてくる。  存分に速い攻撃だが、トカには届かない。  同時に、トカの手が、クレストカプセルの蓋を開け放っていたからだ。  甲高い音が、生まれた。  それは次第に大きさと数を増し、重なり合い、音を編み上げていく。  大気が流れ空気が混ざり風が回転する。  小さなカプセルが生んだのは、旋風だった。  逆巻く旋風は草を引きちぎり土を巻き上げ、エイラに襲い掛かる。  エイラはバックステップで距離を取ろうとするが、旋回する大気が、彼女の動きを制限する。  風のクレストソーサー、ヴォルテックが、エイラの身が空へと吹き飛ばす。    それを尻目に、トカは改めて逃走を開始した。エイラの一撃に潰された尻尾を、涙目で撫でながら。  ◆◆    エリマキトカゲ、否、カモシカのように平野を駆け抜けたトカは、森林に飛び込んだところでようやく立ち止まった。  振り返るが、もう追走してくる野生児の姿はない。 「はひー、はひー……。おのれ、ブルコギドンさえ完成していれば……ッ!」  完成していたとしても支給されるはずはないのだが、それはそれだ。  痛々しい傷を負ってしまった尻尾を、トカは改めて見やる。  砕けた鱗からは命の証である血液が流れ落ち、筋繊維が覗いていた。   「ひでぇことしてくれるじゃねぇかッ!  だが、どんな仕打ちを受けようとも、我輩の夢の翼は折れもちぎれもしねぇぜッ!」  と、無意味に啖呵を切ってみたのはいいが。  手元にある武器はエアガン。  そして、一度使ってしまうと、中身を入れ直さない限り使えないクレストカプセルだけだ。  デイバックの中を確認すると、クレストカプセルは5つ入っていた。  そのうち1つは既に空っぽ。残り4つにも、何が入っているのやら。  まともに使えそうな武器は支給されていなかった。  『自家製爆弾』も、『博士の異常な爆弾』も、『シェフの気まぐれ爆弾』もない。 「味な真似をしてくれやがるぜ。しかーしッ、諦めません勝つまでは!  見ていてくれ、ゲーくん。我輩は必ず、星に帰ってみせる。たった、一人でも……ッ!」  惑星Fで、頑張って生きていくゲーの姿を想像する。それだけで、トカの身に活力が沸いてくる。  友の姿を思うだけで、尻尾の痛みも忘れられそうだ。  友情の素晴らしさを噛み締めながら、トカはデイバックを背負い直す。  故郷へ帰るための新たな一歩を、トカは踏み出した。  ◆◆   「ぐぅ……ッ」  突如巻き起こった暴風は、その突然の発生と同様に、前触れもなく収まった。  中空に投げ出されたエイラを落下させたのは、先ほどは味方だった重力だ。  なんとか受身を取れたのと、地面に草が生い茂っていたため、落下のダメージはそれほどでもない。  だが烈風によって刻まれた傷は、無視できるようなものではない。  特に、右足。  蹴りを繰り出した足の傷が、特に深い。ぱっくりと裂けた傷口からは、鮮血が零れ落ちていた。  少し動かしてみるだけでも、痛覚が敏感に反応し痛みを訴えてくる。  悔しいが、あの“敵”を追えそうになかった。  しかしそれでも。  エイラは、立ち上がる。  あの、恐竜人に似た敵の存在が、エイラの闘争本能に火を点けていた。  この程度の傷が何だと言うのだ。  まだ立てる。動ける。  ならば、戦える。  奴は、逃げたのだ。背中を向けて、逃亡したのだ。  まだ勝負は付いていない。故に、絶対に倒す。やられっぱなしなど、性に合わない。   不屈の心を抱き、エイラはふと天を仰いだ。    そこに浮かぶのは、雄大な月。   降り注ぐたおやかな光を浴びて、エイラは深く息を吸う。  冷たい夜気を、自然の空気を、体全体に澄み渡らせて。  そして、エイラは吼えた。  傷の痛みを薪にし、闘争心を鼓舞するように。  魔王オディオに向けて、“敵”に向けて、宣戦を布告するように。  雄叫びを、上げる――。  【C-3 平野 一日目 深夜】 【エイラ@クロノトリガー】 [状態]:全身に細かい裂傷。右足に深い裂傷と出血。疲労(中) [装備]:なし [道具]:ランダム支給品1~3個(未確認)、基本支給品一式 [思考] 基本:オディオを倒す。襲ってくる者には容赦しない。 1:オディオを倒すための手段を探し、仲間を集める。 2:トカを倒す。 [備考]: ※名簿未確認。 ※参戦時期はシルバード入手後。詳細は後の書き手さんにお任せします。 【C-4 森林 一日目 深夜】 【トカ@[[WILD ARMS 2nd IGNITION]]】 [状態]:疲労(大)、尻尾にダメージ大。 [装備]:エアガン@クロノトリガー [道具]:クレストカプセル×5@WILD ARMS 2nd IGNITION(1つは空)、基本支給品一式 [思考] 基本:リザード星へ帰るため、優勝を狙う。 1:他の参加者を殺し生き残る。 2:科学的な武器が欲しい。 [備考]: ※名簿を確認済み。 ※参戦時期はヘイムダル・ガッツォークリア後から、科学大迫力研究所クリア前です。 ※クレストカプセルに入っている魔法については、後の書き手さんにお任せします。 *時系列順で読む BACK△014:[[HUNTER×HUNTER]]Next▼016:[[そして僕にできること]] *投下順で読む BACK△014:[[HUNTER×HUNTER]]Next▼016:[[そして僕にできること]] |&color(blue){GAME START}|エイラ|037:[[White or Black? There is no gray.      ?]]| |~|トカ|040:[[BIG-TOKA SHOW TIME]]| #right(){&link_up(▲)} ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: